ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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お待たせしました、今回で樹海編は終わりとなります!

仮面ライダーゼロワン、ついに明日最終回…はたしてどうなるのか。

感想、評価をいつでもお待ちしています!


第8話 継承と次なる旅

『この本によれば、『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『ハルツィナ樹海の大迷宮へと向かう我が魔王一行を狙ってきたのは、前日敗北したはずの若い熊人族の集団。そのリーダーのレギンはアナザーカブトへと変身し、部下達もワームへと変貌、我が魔王達を襲撃してきた』

 

『アナザーカブト攻略に必要なのはシア・ハウリアが持つ仮面ライダーカブトの力。そしてついに彼女は自らの未来を掴み取るべく…動き出した』

 

 

――――――――――

 

 

「いきますよおおお!!」

 

カブトはクナイガンを持ちながらアナザーカブトと戦い、その刃を振るう。

 

「くっ!この忌み子が!フェアベルゲンに仇なす化け物をここで葬ってやる!」

 

アナザーカブトはその豪腕でカブトのクナイを弾き、殴りつける。

 

「ぐううっ!」

 

後ずさるカブトだが、『身体強化』を足に発動させ加速。強烈な廻し蹴りを打ち込み、アナザーカブトが下がる。

 

「おのれ…クロックアップ!」

「クロックアップ!」

《CLOOCK UP》

 

アナザーカブトとカブトは共にクロックアップを使い、ハウリア達には視認できない高速戦闘を開始。

 

「ハアッ!」

 

アナザーカブトは相も変わらず拳を中心とした攻撃をしてくるが、シアはツカサからの言葉を思い出す。

 

『カブトの戦法はスピードを生かした戦い…敵が強引にでも来るときは…』

 

 

太い樹木をへし折るほどのパンチをくらい吹き飛ばされたカブト。それと同時にクロックアップが解除される。

 

《CLOOCK OVER》

 

「シア!」

 

ジオウが止めに入ろうとするが、ディケイドがそれを遮る。

 

「よく見とけハジメ…お前とともに歩きたいって願ったやつの強さを…」

 

 

 

吹き飛ばされ、なおも立ち上がるカブトだが…その背後を狙いアナザーカブトが加速する。

 

「終わりだ、死ねえ!忌まわしき化け物!」

 

勝利を確信したアナザーカブトだが、この時点でカブトは既に勝利をつかんでいた。

 

《ONE TWO THREE》

 

ゼクターについた3つのボタンを素早く押したカブトはカブトゼクターをマスクドフォームの状態に戻し、ゼクターホーンに手を添えるが…

 

 

「遅いっ!」

 

それよりも早くアナザーカブトの豪腕がカブトの頭を吹き飛ばそうと振り抜かれて

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

後一歩届かず、攻撃が空振りした。

 

「え…?」

 

シアがこの時使っていたのは、ハウリアの長所とも言える気配遮断の技術。

完全に気配を消すのではなく、カム達が昨日行ったように存在をボカす程度で使ったことでアナザーカブトは正確な位置を把握しきれず空振りしたのだ。

 

「ライダーキック!」

《RIDER KICK》

 

空振りした瞬間、カブトの叫び声と共に放たれたカウンターキックがアナザーカブトを捉え、アナザーカブトは爆発を起こした。

 

 

 

―――――――――――

 

 

爆風が晴れるとそこには変身が解け肩で息をするシアと、ボロボロになりながらもウォッチを持つレギン。

 

「あいつ…マジでやりやがった…」

 

ジオウが驚いていると、シアは疲労した体に鞭打つかのように走ってくる。

 

「ハジメさ~ん!私勝ちましたよ~!」

 

飛んできたシアを巴投げしたジオウはレギンを見つめる。

 

 

「く…キサマら、許さん…我が同胞達を葬るなど…!」

 

憎々しげに睨んでくるレギンに対し、ジオウはため息をついた。

 

「何が『我が同胞』だよ。タイムジャッカーに利用されて全員殺されてるのにも気づかねえで」

「な…何を言っている?」

 

ジオウの言葉に耳を疑うレギン。

 

「お前知らないんだろうけど…あいつらが変身したワームって『人が変身した』んじゃなくて、『人に擬態する怪物』なんだよ。生前の記憶とかまでそのまま模倣して人の社会に潜り込む連中だ」

 

そう。ワームになったということは恐らく彼らはレギンの知らないところで殺されたと見て間違いないのだ。

 

 

「ば…馬鹿な!そんなはず…」

「ううん…ハジメの言ってたとおり」

 

そう言って現れたのは先ほど姿を消したユエと、ワームのものと思われる粘液にまみれた複数の熊人族の遺体を運んできたカム達。

 

ワームの生態をツカサから聞いていたハジメはコピー元の死体があると睨み、カム達に探させていたのだ。

 

「森の中に隠されてた…擬態された時に殺されたと見て間違いない」

「そ、そんな………!」

 

ハジメ達の言葉が真実だったことに絶望するレギン。

あとはウォッチを回収すれば一件落着と誰もが思ったが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

突然、体が動かなくなる。

 

「なっ!?これって…」

「これが…タイムジャッカーの力…!」

「その通り」

 

現れたのは姿を消していたはずのデュール。

 

「愚かだな…アナザーライダーという『化け物』に成り下がってもなお勝てぬ負け犬…」

「ぐ…貴様!貴様が同胞達を…!」

「何を言う?こうなっても構わないと部下をワームに差し出したのは貴様のほうだろう?」

 

デュールの嘲笑う顔にレギンは怒りをぶつけようとするが、体が動かない。

 

 

「まあいい。もう貴様に用はない…あとは」

 

レギンからアナザーカブトウォッチを奪い取ったデュールは、もう一度ウォッチを起動させる。

 

《カブトォ…!》

「…ぬぅん!」

「んぐっ!ぐうあああ!!!」

 

ウォッチを埋め込まれたことでレギンは苦しげな叫び声をあげ、再びアナザーカブトに変身してしまう。

 

 

「さて、オーマジオウ…そいつは好きにするがいい」

 

そう言い残し、デュールが姿を消すと全員の体が動くようになった。

 

 

 

「だぁくっそ!最後に余計なもん置いていきやがって!」

 

ジオウは対抗しようとするが、アナザーカブトは周囲を滅茶苦茶に破壊しながら暴れまわり苦戦してしまう。

 

「っハジメ!」

 

ディケイドが咄嗟にジオウを庇い、変身が解ける。

 

「兄貴!っの野郎!」

 

キレたジオウの攻撃も通用せず、アナザーカブトは暴れまわる。

 

 

「シア。もう一度いける…?」

「…すみません。ちょっと…いえ、かなりキツイです…」

 

クロハネが聞くが、シアは首を振る。

どうやら、カブトとしての本格的な戦いが予想より負担をかけたらしい。

 

「…いや。一つだけ手がある」

 

シア達の横に立ったのはいつの間にか変身を解除したウォズ。

 

「シア・ハウリア。君の持つライドウォッチを我が魔王に託すんだ。そうすれば我が魔王もカブトの力を扱うことができるようになる」

「え………これを?」

 

シアはこれまで幾度となく自分を救ってくれたカブトウォッチを取り出す。

 

「ああ。だが…ウォッチを手放している限り、君はカブトにはなれない。我が魔王が一時的に所有権を手放せば再び変身することも可能だが…君にその力を一時的とはいえ手放せるかい?」

 

そう言われ、シアは僅かながら戸惑いを見せるが…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「構いません…今私が動かなきゃ、ハジメさんが危ないんですから…!」

 

シアは全力で走ると、アナザーカブトと戦うジオウに向かってウォッチを投げる。

 

 

「ハジメさん!受け取ってくださ~い!!」

 

彼女の声に気づいたジオウはアナザーカブトを蹴り飛ばし、ウォッチを受け取る。

 

「シア…お前これって!」

 

カブトウォッチを受け取ったジオウに対し、シアは力強く頷いた。

 

 

「私の力を貸しますから!絶対勝ってくださいね!」

「…サンキュ!ありがたく使わせてもらう!」

 

 

ジオウはカブトウォッチのウェイクベゼルを回転させ、ボタンを押す。

 

《KABUTO!》

 

――――――――――

 

 

気が付くと以前ビルドウォッチを起動させたとき同様、真っ白な空間に立っていた。

 

「ここは…」

「ほう…お前がカブトを継承できる可能性を持った…ということか」

 

ハジメの後ろにはいつの間にかモデルのような端正な顔立ちをした男が立っていた。

 

「俺は天の道を往き、総てを司る男…天道総司」

 

天道は自らの名を名乗ると、ハジメも名前を名乗る。

 

「俺は…南雲ハジメだ」

 

ハジメが名乗ると天道はハジメに問いかける。

 

 

「お前のこともあのウサギの少女のこともウォッチを通じ見てきた…だから、俺からの質問は一つ」

 

 

「お前は…大切なもののために全てを投げ出してでも戦えるか?」

 

天道は、かつてカブトとして戦う中で世界の全てを敵に回してでも大切なものを守ろうとした。

多くを守るため。或いは、大切な存在を守るため。

彼はそのためならばどんな孤独にでも立ち向かうことができ、どんな強敵にだって負けはしない。

 

 

「…当然だ。俺は自身に誓いを立てている」

 

香織やツカサ、ユエ…大切な人達と共にトータスを超え、必ずみんなで地球に帰る。

 

「俺は目的を果たすまで大切な人達とともに生きて、守りぬく…そのためなら、俺は神にだって敵対してやるって決めてるんだ」

 

決して揺らぐことのないハジメの目を見た天道は小さく笑い、首で後ろを指す。

 

「その道を走れ。そうすれば現実に戻る………お前も、その手で未来を掴め」

 

「ああ…ありがとうな!」

 

 

走っていったハジメを見て、天道は小さく笑った。

 

 

「…お前が望みさえすれば、運命はお前の手の中だ」

 

 

――――――――――

 

 

気が付くとハジメの意識は元の世界に戻っており、ジオウに変身したまま彼はカブトウォッチをドライバーに装填。

 

ジクウドライバーのロックを外すと、ジオウは勢いよく回転。

 

《仮面ライダー!ジオウ!!》

《アーマータイム!》

 

ドライバーから2体のカブトゼクターらしきものが出現し、ジオウの周囲を回転すると分解され、ジオウに装着。

 

《CHANGE BEETLE!カブト!!》

 

両肩に巨大なゼクターホーンが装備され、マスクもカブトの角がついた第二のアーマータイム。

 

その姿を見てウォズは高らかに叫ぶ。

 

「祝え!全ライダーの力を継承し、時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者!その名も『仮面ライダージオウ・カブトアーマー』!また一つ、太陽の神と呼ばれるライダーの力を継承した瞬間である!」

 

ウォズの祝福の声を聞いてハジメは小さく「いやそれ毎回やるのかよ…」と言いながら、カブト同様『天を指す』。

 

 

「俺は既に未来を掴んでいる…そしてこれからも………掴み続ける!」

 

 

――――――――――

 

走ってきたアナザーカブトに対し、ジオウはゆっくりと歩きながら迫る。

動きひとつとっても対局的な二人。

やがてアナザーカブトが拳を振るうが、ジオウは受け流してガラ空きになった腹にストレートパンチを叩き込む。

 

「グウウッ!!」

 

痛みに呻くアナザーカブトだが、ジオウは静かに動くと左右連続でジャブを打ち込み、出現させたジカンギレードで切り裂く。

 

「まダ…まだダ!!」

 

アナザーカブトは諦めずに攻撃するが、ジオウは既にアナザーカブトの動きのパターンを読み切っていた。

 

「っ!デヤアッ!」

 

攻撃を受け止めるのではなく受け流す方法に徹し、その隙を突いていくカウンタースタイルでアナザーカブトを追い詰めるジオウ。

 

「グ…なぜだ!なぜ、勝てない…私は、フェアベルゲンのために…」

 

 

「違うな。お前がきたのは、フェアベルゲンのためとかいう大層な理由なんかじゃねえ!」

 

ジオウは逆手に持ったジカンギレードで攻撃する。

 

「お前は怖かったんだ…負け犬として後ろ指さされるのが。だがその結果をお前は見ようともしない!お前の部下達は!お前が呼んだワームに殺されたんだ!」

 

「うう…黙れこの化け物があああああ!」

 

自らの姿を棚に上げて叫び、突撃してくるアナザーカブト。

 

だが、ジオウは既に必殺技の準備に入っていた。

 

《フィニッシュタイム!カブト!》

 

ジクウドライバーのロックを一度解除し、素早く回転。

 

《クロックアップ!タイムブレーク!》

 

必殺技音声が鳴り、振り向いたジオウはアナザーカブトの顎にアッパーカットを決める。

 

「っ!?」

 

いきなりの衝撃に混乱したアナザーカブトだが、落下地点に先回りしていたジオウはそのまま右足にエネルギーを集め…

 

 

 

「せやあああああ!!」

 

アナザーカブトの顔面にジオウの廻し蹴りが炸裂。アナザーカブトは爆炎に包まれ、今度こそアナザーカブトウォッチが粉々に砕け散った…

 

 

 

――――――――――

 

 

それから数十分後。

あのあと、気絶したレギンを探しに来た他の熊人族に対しハジメはボロボロになったレギンを見せつけ、大人しく帰らせた。もちろん、例の『貸し』はアナザーライダーになった一件もつけておくのを忘れずに…

 

 

 

 

 

 

「ボス!大樹が見えてきました!」

 

先頭を歩いていたカムが指さした方向には…

 

 

 

「なんだこりゃ…?」

 

そこにあったのは巨大な樹木。

だが、明らかに『枯れていた』。

 

ぱっと見た限り、大樹の大きさは直径50メートルはあるなどほかと比べて異様なほど大きいのだが、それだけに周囲と比べて明らかに不自然なほど枯れていたことに疑問を持つハジメ。

 

「この大樹、フェアベルゲン建国以前から枯れているそうですが…一度として朽ちることはなくずっとそのまま残っているんです。それが理由で神聖視こそされてますが、フェアベルゲンの人達からすれば単なる観光名所くらいの扱いですけど」

 

シアの説明に耳を傾けながらハジメ達は周囲に大迷宮の入口らしきものがないか探していると…

 

 

「ハジメ君!これって…」

 

香織が見つけたのは一枚の石版。その中にはハジメの宝物庫同様、オスカー・オルクスの文様が刻まれている。

 

「ってことはここが大迷宮の入口?それに文様があるってことは…」

 

ハジメはオスカーの指輪を外し、石版を観察。

すると裏側にいくつかの窪みのようなものが見つかり、ハジメは試しに指輪をはめ込んでみる。

すると、石版が淡い輝きを見せた。

 

「やっぱり…ビンゴだ」

 

ハジメ達だけでなくハウリア達も集まる中、石版に文字が浮かび上がる。

 

「『四つの証』…」

「『再生の力』…」

「『紡がれた絆の道標』…」

「『全てを有するものに新たな試練の道は開かれるであろう』…か」

 

ハジメ、香織、ユエ、ツカサは表示された文字を読み上げる。

 

「四つの証って…オスカーさんの指輪みたいな攻略者の証のことかな?」

「そうかもしれませんね…それにこの『紡がれた絆の道標』って、この場所にたどり着くまでに亜人族の誰かの案内が必要という意味でしょうか?」

 

香織とシアがそれぞれの推理を口にする。

 

「…再生の力って、私の…?」

「いや、多分違うな。それだとユエみたいな能力を持つ人物が最低1人はいなきゃならねえ…多分再生の力ってのは、ほかの神代魔法のうち『再生』に関するものが存在するんだろうさ」

 

ハジメはここまでの情報をまとめ、ため息をついた。

 

 

「ってことはここに入るには…『再生に関する神代魔法を会得した上で、最低四つの迷宮を攻略』。『亜人族の助けを借りてこの地にたどり着く』の条件がいるわけだ…七大迷宮のうちどれだけ早くても5番目の攻略になるってことは…」

「ああ…そうとう難易度は高いだろうな」

 

なんにせよ、証を一つしか持っていない現時点でのハジメ達はまだここへ入る資格を有していないことになる。

一同は先に他の大迷宮を攻略し、再生に関する神代魔法を手に入れたら戻ってこようと決めたのだった。

 

 

 

――――――――――

 

「というわけで俺達は他の迷宮を目指すことになった。これで大樹のもとに案内するという契約も終わったわけだが…まあ今のハウリアなら魔物や他の亜人程度に遅れを取ることはないだろう。そういうわけでここでお別れだな」

 

ハジメがハウリア達を集めて、ここで契約終了だと説明するとシアが前に立つ。

 

「あ、あの!ハジメさん…お願いが「断る」…」

 

シアの言葉に即答したハジメだが、香織がハジメの手を握って首を振る。

 

「ハジメ君。せめてシアちゃんとクロハネちゃんの言葉くらい聞いてあげなよ」

「ん…わかったよ」

 

小さくため息をついたハジメは、シア達に視線を送る。

 

「もうフェアベルゲンで生活するわけじゃない。それはつまり、お前達の存在がハウリア達に迷惑をかけることはないってことだ。それなのにどうして無理に俺たちについてこようとする?」

 

フェアベルゲンから出て行った以上、シアは忌み子と蔑まれる謂れもない上クロハネも他の亜人達の視線を気にせず済む。

だが、それでも彼女達はハジメ達についていこうとする。

 

 

「それは………」

 

シアはこの10日間で、自分の考えとずっと向き合ってきた。

自分の運命を変えてくれた眼前の青年に対し、抱いていた気持ち。

 

 

「それは、私があなたのことを好きになったから…ですよ」

 

「…んん?」

 

シアからの告白に唖然となるハジメ。

 

「正直、状況に釣られたかもしれないってのもあります。私と同じような力を持って、それでいて決して流されたり諦めたりしない…でもそれ以上に、好きになった理由はあります」

 

「私たちとの『約束』を、何があっても違えずに最後までハジメさんは貫き通してくれました。どんなリスクを背負っても、ずっと約束を守ってくれたハジメさんだから、私は好きになったんです」

 

 

『貴方たちの…未来を見たくなってきちゃいましたから!!』

 

この時、ハジメはようやくシアの言葉の意味を悟った。

 

「正直…私はまだ自分の気持ちがどうなのかわからないんですけどね。でも、シアがハジメさんの傍にいたいと願うなら、私は命をかけて親友達を守りたい。だからついていきます」

 

すると、続けざまにクロハネも自らの意思を語る。

 

「…ハジメ。シアとクロハネの覚悟は本物」

「ユエ?」

 

答えに悩むハジメに対し、ユエが声をかける。

 

「この10日間、私と香織はシアとクロハネに対して条件をつけてた…シアが私に、クロハネが香織に少しでも一撃を入れたら、旅の同行を許すって」

 

少し前、シアとクロハネは力、魔力、知恵など持てる技術の全てを駆使して香織達に挑み、そして小さな傷だが一撃を入れることに成功した。

 

小さな傷とはいえ、あの二人を相手に一撃入れるのはハジメでも少し難しい。

文字通り彼女達も死に物狂いで挑んだ。だからこそユエと香織は彼女達を認めたのだ。

 

 

「…俺は香織とユエを愛してる。お前の想いには答えられないかもしれない」

「知らないんですか?未来は『絶対じゃない』。ですよ?」

 

それは行動することで破滅の未来を超えた今だからこそ言える言葉。

 

「化け物だらけの危険な旅だ。生半可な気持ちじゃ、すぐにくたばる」

「化け物…それで今は良かったと思っています。じゃなきゃ、とてもついていけません」

 

ずっと化け物と言われていた。だが、その常識を超えた力があるから、今この場にいられる。

 

「…俺の故郷は別の世界だ。シアはカム達と会えなくなる可能性もあるし、クロハネは自分の過去を思い出しても、戻ってこれないかもしれない」

 

「覚悟の上です。父さまも賛成してくれました」

「それに…過去が見つからなくても構いませんよ。過去が消えていっても、私達は『明日』をつかみます。どんな世界でも、きっとシアやハジメさん達がいれば幸せですから」

 

 

揺るがぬ意思を見たハジメは小さくため息をつき…

 

 

 

「勝手にしろ。もの好きが」

 

 

――――――――――

 

そしてハウリア達の見送りの元ハジメはシュタイフ、ツカサはマシンディケイダーに乗り込む。

 

ちなみに人数も増えたためハジメの前にユエ、後ろに香織、新たにつけたサイドカーにシアが乗り込む。

クロハネはマシンディケイダーに乗り込み、ツカサの後ろだ。

 

 

「ボスうううう!いずれ帰ってくるまでここの迷宮は我らハウリアがお守りいたします!必ず!帰ってきてください!!」

 

「ああ!また会おうぜ!」

 

 

 

 

 

 

樹海を抜け、ハジメ達は次の目的地へと向かう。

 

「そういえばハジメさん。このあとは何処に向かうんですか?」

 

「ああ。とりあえず次の迷宮はライセン大峡谷を予定してるが…確か近くに町があってな。とりあえずそこで一時休憩したい」

「そうだね。そろそろ普通のご飯も食べたいし」

 

香織の言葉にハジメ、ツカサ、ユエが頷く。

 

オルクスではずっと魔物料理だったし、フェアベルゲンではハウリア達が持ってきてくれた保存食で凌いでいた。

ツカサ達はそれぞれ料理技術があったものの、そろそろ魔物由来の食事から離れたかったハジメ達。

 

それに、調味料やらを購入するには『お金』がどうしても必要だ。幸い樹海で色々と魔物を狩ってきただけあり余る程の素材があるので街中で換金できそうな場所も探しておこうとハジメは考えていた。

 

「それに…お前ら二人が加わったんだ。やっておきたいこともあるから次の町で二泊くらいする」

 

 

そう言うとハジメはシュタイフのスピードをあげ、ツカサもディケイダーのスピードを上げる。

 

 

奈落に落ちてからおよそ3ヶ月と少し。

 

ハジメ達はあの日以来久しぶりに『町』に入ることとなった。

 

 

 

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟

第9話 ブルックの町
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