ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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お待たせしました、今回で小説2巻のエピソードは終わりとなります。

次回からは幕間シリーズに入りますが、これからも応援よろしくお願いします!


感想、評価が作者の力となります。


第14話 第2の神代魔法

『この本によれば…『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『ライセン大峡谷の迷宮で主、ミレディ・ライセンと激闘を繰り広げる我が魔王達だが、その中でジオウは新たな姿『ゲンムアーマー』へと覚醒』

 

「祝え!時空を超え過去と未来をしろしめす時の王者!その名も仮面ライダージオウ・ゲンムアーマー!命を管理する神の力と言われしライダーの全てを継承した瞬間である!」

 

 

『…ん゛んっ!そして我が魔王達はついに連携でミレディ・ライセンに大勝利。第2の大迷宮を突破することに成功した…』

 

 

――――――――――

 

 

フラフラになったシアはユエに膝枕をしてもらっていたが、ハジメが声をかける。

 

「ユエ…それにクロハネ。今回はよく頑張ってくれたよ」

「…は、ハジメさんがすごく優しい目をしてます…」

「これって…夢かもしれない」

 

 

二人の反応に青筋を立てるハジメ。

 

「いや、まあ日頃の扱いがあれなのは認めるしこの反応も当然なのか…?」

 

ツカサに肩をポンポンと叩かれ、肩を落とすハジメ。

 

すると、ユエはシアの頭を撫でる。

 

「ハジメはあまり褒めないから代わりに…よく頑張りました」

「クロハネちゃんも…いきなり大迷宮攻略は大変だったかもしれないけどお疲れ様」

 

 

シアは気が抜けたのか泣き出し、クロハネはそのまま香織にもたれかかる。

 

 

 

(…ま、最初の冒険が大迷宮だ。この1週間、相当堪えてても当たり前か…)

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「あの~…いい雰囲気のところちょっといいかな?」

 

なんとウォッチの効力が切れて本来の姿に戻ったミレディ・ゴーレムが声をかけてきたのだ。

 

ハジメはミレディから杭を引き抜いてもう一度刺そうとするが、ミレディが慌てて止める。

 

「だ、大丈夫だって!もう試練はクリア!この後神代魔法あげるから!」

 

どうやら、僅かに残った力で語りかけているだけらしい。

 

「…で?わざわざ何の話だ?」

「話っていうか…忠告かな。例のクソ野郎、エヒトは狡猾で卑劣。倒すつもりならついでじゃなく、最初から『そうする』つもりで挑んだほうがいい」

 

「それとね…必ず大迷宮を攻略して全ての神代魔法を集めて。そうすれば、君の望みは必ず叶う。万が一叶わなくても…ライドウォッチを20個集めさえすれば、君達の未来もいい方向につながるはずだよ」

「だったら迷宮の場所と手に入るウォッチを教えてくれ。少なくとも500年以上が過ぎてて、もう情報が残ってないんだ」

 

かつてハジメが王国で調べていた情報だと、500年前に『竜人族』と呼ばれる亜人がエヒトに反逆し滅びたとされている。

大迷宮の情報はそれよりもはるかに昔のようで、現代ではまともな記録が残っていなかったのだ。

 

「そっか…もう記録も残らないほど長い時間が過ぎたんだ………一度しか言わないから、しっかり覚えて」

 

 

砂漠の中央にある『忍耐の試練』

『グリューエン大火山』。そして手に入るのは『異界の騎士』龍騎ウォッチ。

 

西の海の沖合周辺にある『狂気の試練』

『メルジーネ海底遺跡』。手に入るのは『時の守り人』電王ウォッチ。

 

協会総本山『意志の試練』

『神山』。手に入るのは『英雄と魂を結びし者』ゴーストウォッチ。

 

東の樹海にある大樹ウーア・アルト『絆の試練』

『ハルツィナ樹海』。手に入るのは『鍛錬を極めた鬼』響鬼ウォッチ。

 

そして最後は大陸南側、その東にあるシュネー雪原『真実の試練』

『氷雪洞窟』。手に入るのは『伝説を塗り替えた男』―――

 

 

――――――――――

 

「…以上だよ。頑張ってね」

「随分としおらしいな。あのウザったい挑発的な口調はどうしたんだ?」

「はは…ごめんね。あいつらといずれ戦う事になる以上、少しでも慣れてほしくて」

 

ミレディの言葉から、彼女達はよほどエヒトへの勝利を渇望していたことを何となく察するハジメ達。

 

「…最後に君達へのアドバイス。君達は、自分の生きたいように生きて。君が君である限り…どんな未来だろうと必ず君は神殺しを成し遂げる」

 

「私達が信じた、時の王者が…仮面ライダー達が決めた未来が、きっとこの世界にとって最高最善の未来につながる」

 

ミレディの身体から光の粒子が天へと登っていく。

 

「…お疲れ様。色々考えたけど、この言葉しかみつからない」

「私も…今までお疲れ様でした」

 

ユエと香織の言葉を最後に、ミレディ・ライセンの身体は完全に消滅。

 

最後に、ファイズウォッチがハジメの手元に飛来した。

 

 

「…嫌な人かと思いましたけど、全部演技だったんですね」

「うん…ずっと戦ってた、強い人…」

「お前ら、さっさと先に進むぞ。もう次の部屋に進める」

 

ハジメの言葉に女性陣が冷たい視線を送る。

 

「ハジメ君…空気読もう?」

 

香織の言葉に何も言わないハジメだった…

 

――――――――――

 

それから自動で動く床に乗って神代魔法を得られる空間に訪れたハジメ達の前にいたのは…

 

 

 

「やっほーさっきぶり!ミレディちゃんだよ~!」

 

ちっちゃいミレディ・ゴーレムがそこにいた。

 

「「「「……………」」」」

 

「ほれみろ。こんなのだと思ったぜ」

「やっぱりな…」

 

言葉も出ない女性陣だが、南雲兄弟は予想できていたらしい。

 

「管理人のミレディが消えたら、誰がこの迷宮を管理するんだよ?」

「あっちゃー、バレてたか!」

 

「…さっきのは?」

「ん?あれは演出だよ!もしかして、まんまと騙されちゃった!?」

 

その言葉に女性陣はそれぞれが武器を握り…

 

 

「あれ…?これってやばい感じ…?」

 

焦ったミレディがとった行動は…

 

 

 

「………てへぺろ♪」

 

その後、袋叩きになったのは言うまでもないだろう…

 

 

――――――――――

 

「はい、魔法陣に入って~」

 

その後、修復されたボディのミレディに案内されてハジメ達は無事に第2の神代魔法を会得。

 

「…やっぱり重力操作の魔法だったな」

 

「ん!金髪ちゃんは適性バッチリ!次点でそこの大剣使いちゃんかな」

 

どうやらユエは重力魔法の適性があり、クロハネはユエほどではないが扱えるらしい。

 

「そこの治癒師ちゃんはまあまあで…男の子達とウサギちゃんは驚く程適性無いね。できるのはせいぜい体重を変えるくらい?」

「やかましい。錬成とジオウの力がありゃ十分だよ。生成魔法がありゃ重力魔法も活かせそうだしな」

「俺も…ディケイドさえあればな」

「私、適正ないんですね…」

 

そんなやり取りの中、ハジメが思い出したように言う。

 

 

「そうだ、攻略の証ってあるか?あと、少しばかり頼みがある」

「おや?てっきり無理やり持っていくかと思ったけど…」

 

ハジメの申し出に意外そうな顔をするミレディ。

 

「さっきのゴーレム騎士、どういう鉱石使ったのか気になってな。現物を1個でももらえるか聞いておきたい。ウォッチ二つも貰ったし、その恩があるから無理やり盗んだりはしねえよ」

「なるほどね~。私の宝物庫やアーティファクトは迷宮の維持管理に必要だから渡せないけど、鉱石のいくつかに…あとこれ!」

 

ミレディは宝物庫から予備の鉱石を渡し、さらに何かの紙のようなものをハジメに渡す。

 

「これがゴーレムを遠隔操作してた『感応石』。そしてこれは私の視界とゴーレムの視界を繋ぐためゴーレムの目に着けた『遠見石』だよ。で、これがオー君の遺したレシピ!」

 

そこにはオスカー・オルクスの書き残した詳細な鉱石の作り方が載っていた。

 

「…ほう。こいつがあれば色々試せるかもな」

 

第2の神代魔法を手に入れたハジメ達。

果たして、これから先彼らの行く末は…

 

 

――――――――――

 

それから30分ほど経って、ミレディは帰りの道を案内した。

 

「この水の流れに乗れば、峡谷からも出られるはずだよ。あと…ちょっとこの治癒師ちゃん借りてくね!」

「え?」

 

香織はミレディに引っ張られ、ミレディの自室らしき場所へと連れて行かれてしまう。

 

 

 

 

 

 

「あの…どうして私だけこっちに?」

 

ミレディの自室らしき部屋に連れてこられた香織だったが、ミレディはふざけた口調は抜きにして話し始めた。

 

「じゃあ単刀直入に聞くけど…君、何か悩んでることあるんじゃない?」

 

ミレディの言葉に思わず固唾をのむ香織。

 

「…どうして、そう思うんですか?」

 

震え声になる香織だったが、ミレディは続ける。

 

「ずっとね…君達が迷宮に入ってからの行動は監視してたんだ。その中で君、いつもうなされてたのが気になってね」

「……………」

 

しばしの沈黙のあと、香織はゆっくりと語りだす。

 

 

「…私、こわいんです。ハジメ君が、どんどん壊れていくのが」

 

あの日…地上に戻ってきたとき、ハジメはハウリアを守るためにツカサと一緒に帝国兵を躊躇なく殺した。

もちろん、敵対する相手に手心を加えないという考えには香織も至っている。

 

だが、そのあとのハジメの言葉が香織を不安にさせたのだ。

 

 

『…ま、特に何も感じなかったよ。殺したことへの恐怖も、罪の意識も何もない…トータスに来る前の俺と今の俺が別人なんじゃないかって思ってるくらいさ』

 

その時、薄っすらと香織は理解したのだ。

 

まだハジメの心は地獄の底に…あの奈落の底に取り残されているのだと。

 

 

「裏切られて、絶望に染まって…ハジメ君の心は今も壊れる瀬戸際にいるのかもしれない。そう思うと…不安が拭えなくて」

 

ハジメが身も心も変貌したのは、そうしなければ生きていけなかったから。

 

逆に言えば、『この世界に元の南雲ハジメは存在を認められなかった』。

穏やかで優しいままのハジメは、必要とされていなかったことになる。

 

「だから…私は、何があってもハジメ君を裏切らないと決めました。ハジメ君の心がギリギリ生きている今、例えハジメ君の心が堕ちてしまうなら…私は」

 

 

そんな香織の言葉に、ミレディは…

 

 

 

 

「そう。確かに、その選択も一つの答えかもね」

 

香織の考えを否定しなかった。

 

 

「これから先の選択肢は君のものだから…私は深く介入できないよ。でも…人生の先輩として一つだけアドバイスさせてもらうね」

 

ミレディは真剣な顔になり、アドバイスをした。

 

 

 

 

「誰かを救う優しさの形は…傍にいて付き添うだけじゃない。その言葉を忘れないで…」

 

香織はそんなミレディの言葉に、単なるメッセージを超えた『何か』を一瞬だが感じ取った…

 

 

 

――――――――――

 

やがて、香織はミレディによって峡谷からの出入り口に案内される。

 

「ありがとうございます、ミレディさん」

 

「ううん。また来てね香織ちゃん!!」

 

 

手を振ったミレディと別れを告げ、香織は水路へと飛び込む。

 

 

(…結構深い。体が強くなってなかったらすぐ溺れてたよ…)

 

 

数分ほど泳ぎ、香織は湖らしき場所から出ると…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「ん!?んっー!?」

「あむっ…ん…」

 

香織が見たのは、シアがハジメに組み付いてディープキスをしている光景…

 

 

「お、おいシア!さっさと離れろ!白崎が戻ってきたぞ!」

 

横でツカサが必死にハジメからシアを剥がそうとしており、ユエからどす黒いオーラが溢れ出ていた。

 

 

 

「…シアちゃん。何してるのかな?かな?」

 

 

先ほどまでのミレディとの会話が一時的に頭から消えて、香織は背後に真っ白な『般若さん』を出現させていた。

 

 

 

 

――――――――――

 

『…まあ、ここから先の未来は開くまでもありませんね…』

 

 

真っ暗な空間でウォズは小さく呟いた。

 

『ともかく、これにてライセン大迷宮は攻略完了…おや?これは…』

 

 

『どうやら…我が魔王達の存在がすでに覚醒していたライダーを導いたらしいですね…』

 

 

 

 

 

 

どこかの山の中。香織達同様の黒髪に日本の着物を思わせる服装の女性が無数の魔物相手に立っていた。

 

彼女の腰には『手形を模したベルト』が装着されており、両手には『宝石の入った指輪』が輝く。

 

 

「…変身」

《フレイム!プリーズ!》

 

その言葉によって、女性の姿が変化を遂げた。

 

 

 

「さあ…ショータイムといこうかの?」

 

 

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟

『幕間1 竜人の魔法使い』

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