ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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皆さま、新年あけましておめでとうございます!

2021年もありふれた職業と最強兄弟を何卒応援よろしくお願いします!

今年から第3章に突入していきます…

感想、評価が作者の力となります!


第3章 再会、そして継承
1話 旅立ち、ブルック


『この本によれば…『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『第2の迷宮、ライセン大峡谷を攻略した我が魔王達。これで覇道を進むために必要なウォッチは残り15個』

 

『そして、新たな運命の出会いがこれから先我が魔王達につながろうとしています…その運命の鍵はs』

 

 

 

 

「おっと…ここから先は絶対に明かせない『未来の出来事』でした…」

 

 

――――――――――

 

ブルックの町に流れ着いたハジメ達一行は再びマサカの宿に泊まって数日を過ごし、この間にハジメはライセンで入手した第二の神代魔法『重力魔法』を組み込んだ新しいアーティファクトをいくつか開発に成功した。

だが…

 

 

 

 

 

「……………」

「いくぞ……」

 

次の迷宮に進むことを決めた夜、ハジメは自らが持っていたブランクライドウォッチにツカサの『ディケイド』の力を収めた『ディケイドライドウォッチ』が精製できるかを試していた。

だが…

 

 

 

「………うわっ!?」

 

眼前でディケイドの力を注がれたウォッチは砕け、力は再びツカサに戻ってしまう。

 

「やっぱ無理かよ…この方法じゃディケイドウォッチは作れねえってことか…」

 

世界を越えるためにはディケイドウォッチも必要なのだが、力が大きすぎるためかディケイドの力はウォッチに収まりきらず、逆にウォッチが砕けてしまう。

 

 

「落ち着けよハジメ…ミレディやオスカーの言葉通り力を集める必要があるのなら、ディケイドの力をお前に与える方法だって存在するはずだ」

「…おう」

 

釈然としなかったハジメだが、できなかったのは仕方ないと頭を切り替えることにした。

 

――――――――――

 

翌朝、ハジメ達一行はギルドに訪れ、キャサリンがいる受付に顔を出す。

 

「おや?あんた達が全員一緒なんて珍しいね」

「ああ。実は次の街へ向かおうと思ってな…顔出しついでに色々と情報が欲しくなった」

「なるほど…聞きたい情報ってのはなんだい?」

 

キャサリンの質問にハジメが答える。

 

「グリューエン大火山の大迷宮に挑戦しようと思ってな…何か情報はないか?」

 

そう言うとキャサリンはトータスの大陸地図を取り出し、広げる。

 

「そうさねえ…グリューエン大火山は大陸を西に進んだ砂漠の中にある。挑むなら途中の町で砂漠越えのための準備を怠るんじゃないよ」

 

そしてキャサリンはある一つの町を指差す。

 

「通り道にあるこの町『フューレン』に寄ってみるといいね。ここは大陸一の商業都市だから大抵のものはこの町で揃うはずさ。ついでに、今ならフューレンまで荷馬車護送の仕事が受けられるが…どうするかい?」

 

シュタイフなどがあるため移動手段に困ることはないハジメ達だが、護送任務というのも気になった。

 

「どうする?」

「急ぐ旅ってわけじゃないですし…私は賛成ですよ?この期に冒険者としてのノウハウとかも聞けるかもしれませんし」

「だな…ここはクロハネの意見に賛成だよ」

 

ツカサ達の言葉でハジメも決めたようだ。

 

「わかった。ならこの仕事を受けるよ」

 

ハジメは依頼書を掲示板から外し、仕事を引き受ける。

 

「あ、そうだ。あんた達これを持って行きな」

 

キャサリンがハジメに渡したのは一通の手紙。

 

「手紙か…?」

「ああ。他の街で何か揉め事に巻き込まれたらその手紙をギルドのお偉いさんに渡しときな。大抵のことはどうにかなるはずさ」

 

手紙一通でギルドのお偉いさんに影響を与えられるというキャサリンに驚きを隠せなかったハジメ達。

 

「おっと。詮索は無しさ。いい女には秘密はつきものだよ?」

「…お、おう」

 

 

――――――――――

 

その後、ハジメ達はブルックの正門に向かい護衛の依頼主である隊商が集まっている場所に足を運ぶ。

すると、責任者らしき男が歩いてきた。

 

 

「私の名はモットー・ユンケル。この隊商のリーダーをしている。護衛をよろしく頼むよ」

「ああ、期待は裏切らないと思う」

 

そんな挨拶を交わすと、モットーはハジメ達と行動しているシアにふと目を向けた。

 

 

「………早速で悪いが、君に相談がある」

 

シアの存在に『価値』を見出したであろうモットーはハジメに交渉してきた。

 

「その兎人族…売るつもりはないかね?」

 

するとハジメの背後にいた女性陣から非難の目が向けられるも、慣れているのかモットーは動揺する素振りを見せない。

 

「シアを…?」

「ええ。珍しい髪色にこれまで出会ってきた亜人の中でも一番美しい容姿の兎人族。これほど美しい商品を見るのは初めてでしてね」

 

 

商品と言われたことでシアはさっと香織やユエの後ろに隠れるが…

 

「そうだな………

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

答えは『NO』一択だ。どこぞの神が欲しがろうとも手放すつもりはない。これで満足か?」

 

 

「………そこまで言われたのなら仕方がない。ひとまず今は引き下がろう」

 

ハジメの目に揺るぎないものを見たのか、モットーはあっさりと引き下がる。

 

 

 

 

「まあ待て。シアを譲るつもりはないが、『商売をしない』とは言ってないぞ?」

 

ハジメは何かを思いついたかのような顔になり、モットーに何かを耳打ちする。

 

「……!それは…いや、しかし…」

「何なら、これを見てから判断してくれてもいい」

 

何か用紙をまとめたものをモットーに手渡すと、ハジメが戻ってくる。

 

「ハジメさん…何をしたんですか?」

「ん?これ以上お前が絡まれないようにちょっと…な?」

 

ハジメが懐から取り出したのは………ミレディから受け取った生成魔法で作れる鉱石のレシピだった。

 

 

――――――――――

 

その日の夜。

野営の準備を行っている中でハジメはモットーに問いかける。

 

「今日はどれくらい進んだ?」

「大体三分の一ってところですな。順調に行けばあと4日で着くでしょう」

 

魔力駆動二輪や四輪、ライドストライカーなどを使えば一日で着ける距離だっただけに思った以上のスローな移動に小さくため息をついたハジメ。

 

「因みに食事はどうされるおつもりで?一応食料の販売も行っていますが…」

「いや…心配ない」

 

ハジメがツカサとシアに視線を向けると、二人の手元に食材を詰めた袋が出現。

 

「さて、久しぶりに俺達二人でやるとするか」

「任せてください!!」

 

だが、その光景に驚きを隠せなかった人物が。

 

「な………何ですかその道具は!?」

「あっ…………」

 

この商人の前で『宝物庫』を使ってしまうというミスにハジメが声を漏らす。

 

「えっと…『宝物庫』ってアーティファクトだ。見ての通り食料や武器、道具などを異空間に収納することができて―」

「言い値で買う!いくらほしい!?」

 

モットーがハジメに詰め寄ってくる。

 

(まあ、宝物庫があれば馬車に大量の荷物を詰め込むコストが削減できるもんね…私達も持ち運びが楽になったし)

 

奈落での持ち物はハジメがリュック(というかもう棚)を背負って移動していたのを思い出した香織も苦笑い。

 

結局、その日は『自分達が使う用以外の分はなく、譲ることができない』と説明することでどうにかモットーを避けたハジメだった…

 

 

――――――――――

 

翌日。質問攻めからどうにか逃れたハジメは移動馬車の中であくびをしていた。

 

「ハジメ君、疲れてるなら少し寝てたほうがいいんじゃない?」

 

香織に膝枕された状態のハジメだが、小さく首を振る。

 

「いや…その前にやることがある」

 

起き上がったハジメは割り当てられた馬車の内部で宝物庫から何かを取り出すが…

 

 

 

 

 

 

 

 

「ハジメさん!大変ですぅ!魔物が迫ってます!」

 

シアの言葉にハジメは馬車の中から出てくる。

 

「数は?」

「気配は100匹ほどで、森の中から出てきます!」

 

ハジメは昨晩、同行していた冒険者からの話を思い出す。

 

(ここ数週間、魔物の出てくる数が減っていたと聞いたが…このために力を温存してたのか?だが…野生動物のような魔物にそこまでの知能があるとは…)

 

考え事をしていたハジメだが、馬車を引いていた御者はシアの報告を受けて驚愕。

 

「ひゃ、100体以上!?そんな数聞いたことないぞ!?」

 

御者は手綱を引こうとするが、それを香織が止める。

 

「大丈夫です…ここで私達が魔物を殲滅します」

「な、何を言ってるんだ…100匹の軍勢だぞ!」

 

最近大迷宮というハイレベルな場所で戦っていたためか忘れがちだったが、一般の冒険者及び戦う力を持たない商人達にとっては低級魔物といえど100匹はかなりの脅威であった。

 

「ん…ここは私に任せて」

 

そう名乗りを上げたのはユエ。

すでに馬車の上に乗って、迎撃のための魔法を準備する。

 

「ユエ。今回は私も手を貸すよ」

「ん…ありがとう」

 

香織は新たにハジメが開発した武器の『小さな十字架』を複数握り、ユエは魔力操作の技能をカモフラージュするための詠唱を開始する。

 

 

 

「彼の者、常闇に紅き光をもたらさん―――古の牢獄を打ち砕き、障碍の尽くを退けん」

 

天を指すユエの指先に電撃の玉が精製される。

 

 

「最強の一角たるこの力、絆を紡ぎし者達と共にありて、天すら呑み込む光となれ」

 

ユエがよく使う雷魔法は、ハジメ達も知らない新たな魔法へと進化して魔物達に迫る。

 

「〝雷龍〟」

 

ユエが魔法を発動させると、暗雲が出現して雷鳴が集まり、巨大な『龍』を作り出す。

龍は雄叫びをあげ、魔物の群れを飲み込むとほとんどの魔物を一撃で消し飛ばした。

 

 

「………なあ、ハジメ。あれって…」

「俺も見たことねえ…恐らく、雷魔法に重力魔法を付与させたんだろうな」

「ん。大正解…私のオリジナル複合魔法、雷龍。ミレディが言ってたように重力魔法の適正があったから、ブルックのギルドの修練場で練習してた………でも、今のは手加減してる」

 

雷を龍の形にして発動させることで、まるで雷の龍が質量を持ったかのように襲いかかるのだという。

 

「因みに詠唱はハジメ達との出会い、そして未来を詠っています」

 

ドヤ顔でサムズアップを決めるユエ。

だが、僅かに5~6体ほどの魔物が生き残っていた。

 

 

「あとは…私が!」

 

香織は先ほどの十字架アーティファクトを4つ取り出して投げつけると、十字架は魔物を取り囲むように地面に突き刺さる。

 

続いて、香織は魔法の補助としてハジメが新たに作り出したブレスレット型アーティファクト『聖女の慈愛』に魔力を込める。

 

「ここは聖域なりて、神敵を通さず―――『聖絶』!」

 

簡略詠唱の聖絶を発動させると地面の十字架から結びつくように聖絶が発動し、魔物達を聖絶の檻に閉じ込める。

 

「もう一つオマケ!星の力よ、我に仇なす者に大いなる力を叩き込め!『星柩』!」

 

香織が新しい魔法を唱えると、『聖絶』内部の魔物達はまるでなにかに踏み潰されたかのように潰され、消え去った。

 

 

 

 

「…なるほど。重力魔法を結界内部に作用させて魔物の軍勢を叩き潰したのか」

「大正解。流石に大規模な結界の展開は鈴ちゃんほどじゃないからアーティファクト経由じゃないと使えないけど…重力魔法なら範囲を限定すればモノにできたから」

 

それでも魔力の消費が激しかったのか、香織は肩で息をしていた。

 

「お疲れさん…少し休めよ」

 

ハジメがそう言うと、香織はハジメに体を預けて眠りにつくのだった…

 

 

 

――――――――――

 

その後は魔物の襲撃もなく、無事に五日目を迎えてついに一同はフューレンへと到着。

 

しかし、モットーは宝物庫や聖女の慈愛などのアーティファクトを売ってくれないかとしつこく食い下がっていた。

 

「ハジメ殿、着く前によろしいですか…?出発前に話した宝物庫などのアーティファクトとその兎人族…まだ売る気にはなりませんか?」

「くどい。売るつもりはないって言ってるだろ」

 

アーティファクトのほとんどはハジメが試行錯誤を重ねて作り上げった一品ものであり、戦闘用のものとなるとそう簡単には手放せないほど武器としての価値以外での愛着もある。

宝物庫に至ってはこれから先も必要なものであり、尚且つ現在のハジメでも作れないアーティファクト。

シアに至っては彼女はもう自分達の仲間であり、間違っても売り飛ばすなんてことは考えない。

 

「商会に来ていただければ公証人立会のもと、一生遊んで暮らせるだけの金額をお支払いしますよ?それに貴方のアーティファクト…特に宝物庫は商人にとっては喉から手が出るほど手に入れたい代物ですからな」

 

実際、宝物庫があれば馬車に大量の荷物を積んで運ぶ必要もなくなる。

それだけでなく護衛を雇う人数も削れる。確かに商人にとっては是が非でも欲しい代物だろう。

 

 

「宝物庫の力は個人の手に余る代物…この先、厄介なことになるかもしれませんぞ?例えば彼女達の身に何か起きたり…」

 

 

だが、モットーは欲が走ったあまり言ってはいけないことを口走ってしまった。

 

 

 

 

 

 

「…それはつまり、俺達への宣戦布告…か?」

 

ハジメはいつの間にかモットーの背後を取り、左手を剣に錬成して喉元に突きつけたのだ。

 

「い、いえ!そんなこと…私はただ、あなたが隠そうとしないので…」

 

ここまで言えばもうしつこく言ってくることもないと判断したハジメは左腕を元に戻し、モットーを解放。

 

「…まあなんだ。そんなにビジネスがしたいのなら…ちょっとこっち来てくれ。出発前に言ってた話の続きでもしようじゃないか」

 

そう言うとハジメはモットーを馬車から離れた場所に連れて行く。

 

 

「…ハジメさん、大丈夫ですよね?」

「う~ん…多分大丈夫だよ。だって…」

 

香織はシアに一枚の紙を見せた。

 

「多分『これ』見せに行っただけだろうし」

 

――――――――――

 

「出発前に見せたやつはあくまでもサンプルでな…オレが勧めたいのはこっちだ」

「こ…これは!」

 

モットーが渡されたのはハジメ手作りの『カタログ』。

 

「宝物庫とか戦闘用アーティファクトは渡せないが…いくつか数多めに作った品があってな…例えばこの『魔物の固有魔法を定着させた包丁』なんて切れ味が劣らないし便利な代物だぞ」

 

 

ライセンの野営で使っていたキャンプ用具などは元々この世界で売っていたものを改造したもので比較的容易に材料が準備できていた。

そのためこの五日間で数十個ほど作ることができており、ハジメは宝物庫の代用としてこれらを買い取らないかとモットーに提案していた(余談だが、魔力操作の技能がなくても使えるように簡易魔法陣のシールが付属している)。

 

「特にオススメがこの野営道具だ。このテントは氷魔法と炎魔法を付与させた鉱石によってどんな場所、どんな季節でも快適な空間を作れる上、小型だが食料などの保存に使える冷蔵用の箱まである」

 

自信作でもあった野営道具を見せて力説するハジメ。

 

「テントは骨組みに上級魔物の持つ気配遮断系統の魔法を付与しているからライセン大峡谷でも魔物に見つからずゆっくりと睡眠が取れる。これは俺自身の体験談でもあるぞ。そして今ならこの持ち運びに適した小型荷車!軽量だから女子供でも野営道具を運べるぞ…?」

 

ハジメのトークに引き込まれていったモットー。

 

「気になるお値段はなんと…1セットで―――」

「買います!この野営アーティファクト、買わせてもらいますよ!」

 

 

 

ハジメはこの時思った。

 

『この世界で活動するのに向いてる天職って、錬成師みたいな戦闘に特化しすぎない天職なのかもしれない』と…

 

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟

第2話 プライドオブガールズ2018
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