ガンプラ作りにはまって投稿が遅くなりました…
感想、評価が作者の力となります!
『この本によれば…『元』普通の高校生だった南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『ユエ、シア、クロハネのステータスプレート作成…そして大都市のギルド支部長とのコネクションを作るべく北の山脈へと向かう我が魔王達』
『ですがその先で彼らは思いがけない再会を…そして、新たなウォッチが彼らのもとに現れます。そのウォッチは『希望の魔法使い』。そして…』
「おっと…先まで読みすぎました」
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広大な平原のど真ん中を2台のバイクと大きなエアバイク型のメカが移動していた。
「ヒャッホー!ですぅ!」
ハジメのアーティファクトであるシュタイフに乗っているのはシア。
「シア!あんまりはしゃいじゃダメですよ!」
マシンディケイダーに乗るのはツカサとクロハネ。
「ハジメ君、そういえばこれ使ったことなかったね」
「ん…確かに」
「ああ…こっちのスピードも確かめようと思ったが、中々いいなこれも」
エアバイク型メカ『タイムマジーン』に乗っていたのは操縦者のハジメと、同乗者のユエと香織。
このタイムマジーン、ジオウの力を手に入れたとき奈落で入手したのだがこれまではシュタイフなどの試し乗りなどもあって操縦したことはなかったが、ついに日の目を見ることとなった。
「シュタイフのフルスピードに合わせても、これなら半日くらいで山脈麓の町に着くだろう。ノンストップでいくぞ」
日本なら法定速度を超過してるだろう猛スピードで走る一同。
だがそれにはきちんと理由があった。
「な、なんかハジメ君、嬉しそうだけど…」
「そりゃそうだろ…なんたってこの先の町では『稲作』が盛んなんだ。つまり…」
ハジメの言いたいことが理解できた香織とツカサ。
「つまりは…お米ってわけね」
「大正解!俺らの故郷、日本の主食が待ってる!」
「ハジメさんの故郷の主食…香織さん!後でレシピとか教えてくださいね!」
「いいよー!」
捜索対象が生きている可能性を高めるために猛スピードで走っていたのだが…途中から目的がすり替わったことに一同は気づいていない。
「ヒャッハー!飯だ飯だ飯だぁ!久しぶりの白飯、たらふく食ってやるぞ!」
彼らの向かう場所は…『湖畔の町、ウル』
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「はぁ…今日も手がかりなしですか…清水君、一体どこに…」
肩を落とし、ウルの町をトボトボと歩いていたのはハジメ達と一緒にトータスに飛ばされた唯一の大人である畑山愛子。
「愛ちゃん先生、そんなに気を落とさないでください。部屋だって荒らされてたわけじゃないですし、あの清水に限って負けるなんてそうそうあるはずないじゃないですか!」
「そうだぞ、愛子。こういう時こそネガティブな思考に染まってはいけない。幸利は優れた術師で、引き際だってきちんと見極めるだけの実力を持っている」
そんな愛子を励ましているのは『愛ちゃん親衛隊』としてついてきた園部と、教会から派遣された騎士団のリーダー『デビット』。そして周囲には他の騎士だけでなく玉井達他のクラスメイトもいる。
愛子達がこのウルの町の農地改革を行って三週間が経過していたが、事の発端は二週間前の夜。
親衛隊の中でも有数の実力者だった清水幸利が突如行方不明になってしまった。
当初こそ事件に巻き込まれたのかと騒ぎになったが、彼の部屋が荒らされた形跡のないこと、そして清水は闇系統だけでなく他の属性魔法にも高い適性を持っていたことから事件性は低いと判断される。
元々彼は夜な夜な自身の技術である『洗脳支配』の魔法で魔人族の魔物を奪取するという研究のために強い魔物を探して出歩くことが多かったので、技能を磨くための修行から帰ってこなくなったと考える人が多くなった。
愛子としては、清水の行方不明にどうしても嫌な予感が拭えなかった。
(どうか…無事に帰ってきてくれると嬉しいんですけど…)
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「ええ!?じゃあこの料理もう食べられないんですか!?」
宿泊場所である『水妖精の宿』の食堂で園部が思わず声を上げる。
頭を下げていたのはこの宿のオーナー。
「はい、申し訳ございません。何分材料が切れまして…いつもならこのようなことがないように在庫を確保しているのですが…ここ一ヶ月ほど北の山脈が不穏ということで採取に行く者が激減しております。先週も調査に来た高ランク冒険者一行が行方不明となりまして、ますます採取に行く者がいなくなりました。当店に香辛料がいつ入荷されるのかわかりかねる状況なのです…」
その言葉に親衛隊のメンバーの相川昇が質問する。
「えっと…不穏というのは?」
「なんでも魔物の群れを見たとか…北の山脈は山を超えなければ比較的安全な場所です。基本的に強い魔物は山を越えてまでこちらに履きません。ですが、何人かの者がいるはずのない山の向こうの魔物の群れを見たのだとか」
「それって…まさか…」
宮崎は、その言葉に僅かながら嫌な予感がした。
「しかし、その異変ももしかするともうすぐ収まるかもしれませんよ」
「どういうことですか?」
オーナーは明るい口調で話す。
「実は今日のちょうど日の入り位に新規のお客様が6人ほど宿泊にいらしたのですが、なんでも先の冒険者方の捜索のため北の山脈へ行かれるとのことです。フューレンのギルド支部長様直々の依頼らしく、かなりの実力者のようですね。もしかしたら…異変の原因も突き止めてくれるかもしれません」
愛子達はピンと来ていないが、共に食事をしていた騎士達は目の色を変える。
気になった仁村が騎士の一人、ジェイドに聞く。
「えっと…そんなすごいんすか?」
「ああ。フューレンのギルド支部長と言えば、ギルド全体でも最上級クラスの幹部職員だ。そんな人物から直接依頼を受けたということは、恐らく『銀』か『金』ランク…かなりの手練だろう」
すると、食堂の方から騒がしい声が聞こえてきた。
「おや、噂をすれば彼らですよ。騎士様、彼らは夜明けには向かうとのことなのでお話になるなら今のうちがよろしいかと」
「そうか…だが、随分若い声だな?『金』にこんな若いものはいなかったはずだが…」
そうこうしている内に、6人の声が近づいて来る。
「なあ『白崎』。ここに来る途中で田んぼ見つけたけど、トータスの米って収穫時期とか変わってんのかな?」
「えっとね…さっき買い出ししたときにクロハネちゃんと聞いたけど、基本的に地球のお米と時期は変わんないみたいだよ?」
「たしか、今王宮から農地改革のための人が来てるって言ってましたよ、『ツカサ』さん」
「ん…どうかしたの、『ハジメ』?」
「急に顔色悪くなりましたけど…大丈夫ですか、『ハジメ』さん?」
「いや…何か忘れてる気がしてな…さっきから寒気が…」
と、その会話に愛子と親衛隊が目を見開く。
少女達の声のうち、一人は忘れることのできなかったクラスの二大女神と瓜二つの声。
さらには会話の中で聞こえた名前に『地球』という単語。
半ば確信を持って愛子は席を区切っていたカーテンを開くと、そこに立っていたのは二人の青年と4人の少女。
「ハジメ君!ツカサ君!白崎さん!」
愛子が叫ぶと、一同が振り返る。
他の男女は見覚えがなかったが、服装こそ違えどそこにいたのは弟と共に奈落に消えた南雲ツカサだった。
「…え、畑山先生!?」
「なんで先生が…」
「あー…そういうことか。愛ちゃん先生がいるから、収穫ペースがやたら上がってたのか…」
ツカサと共に反応したのは銀髪でツカサと同い年くらいの男女。
「その声…ハジメ君と白崎さんですか?」
体格や髪と目の色、服装までも変わっていたため街ですれ違う程度では気づくことは難しかったが、こうしてじっくり見ると二人の面影は残っている。
それに、彼らは愛子を見た瞬間に『先生』と呼んでいた事から間違いなかった。
愛子の言葉を聞いて親衛隊の男子達も香織が生きていたことを知って愛子の傍に駆け寄る。
「よかった…三人とも生きてたのですね…」
責任ある大人として子供たちを無事に地球に返すという使命感を持っていた愛子だったが、その能力故に傍で支えることができなかった悔しさ。
挙句の果てに王国に戻ってみれば三人の生徒の訃報を知らされ、一時期愛子は自責の念にかられてしまった。
そんな彼女にとってハジメ達の生存はこれまでで一番喜べる出来事だったのだが…
「いえ、人違いです。じゃ」
「「ちょっとちょっと!!」」
踵を返して食堂から立ち去ろうとするハジメを香織とツカサが押さえ込んだ。
「…もう無理だろハジメ。人違いで押し通すのはよ…お前らはともかく俺の見た目は変わってないんだし」
「ごめん…今うっかり畑山先生って呼んだから言い訳できない…」
ここで振り切るのは無理と判断したハジメはしばらく黙っていると、やがて盛大なため息をつく。
「…久しぶりだな、先生」
ハジメは観念したように呟いたのだった…
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『ついに…この世界のターニングポイントに到達したようですね』
背後に時計の歯車のようなものが見える世界で、ウォズは語る。
「どうやらこの町で…我が魔王はとても大きな巡り合いが待っている…」
「本日はここまで…これからも、我が魔王の覇道を温かい目で見守ってください…」
次回、ありふれた職業と最強兄弟
第5話 俺達の道