ありふれた職業と最強兄弟   作:狼牙竜

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お待たせしました、第5話となります!


ガンプラ作りは沼です…どっぷりハマってたら中々小説に手をだせず遅れました。

感想、評価が作者の力になります


第5話 俺達の道

『この本によれば…『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』

 

『ある貴族の少年を救うため湖畔の町、ウルにたどり着いた我が魔王達はそこで同郷のメンバーと恩師、畑山愛子と再会を果たす』

 

『どうやら、またしても我が魔王達はトラブルに巻き込まれるようで…』

 

 

――――――――――

 

改めてハジメ達はテーブルにつき、初対面のメンバーが自己紹介をする。

 

「ん…私はユエ。ハジメの女2号」

「シア・ハウリアです!ハジメさんの女3号です!」

「えっと…クロハネって言います!皆さんとは友達というか…旅する仲間といいますか…」

 

その自己紹介に親衛隊メンバーがどよめいた。

 

「おいシア。お前は違うだろうが!」

「そんな…ハジメさん、私のファーストキス奪っておきながら何を言うんですか!」

 

ハジメがシアに口を出すが、シアは引き下がらない。

 

「お前な、あれは人命救助だって言ってんだろ!それともそのまま溺れさせたほうが良かったってのか!?」

 

そんな話を聞いていた男子の反応は…

 

 

「おい聞いたか?あのうさ耳の子と金髪の子、南雲の女って…」

「くっ…どうしてだ!異世界で俺達は出会いが無かったってのに…」

 

「おいちょっと待て!さっきあの子達、2号と3号って言ってたよな…?」

 

男子達だけでなく女子達の視線は、ハジメとペアルックと言えそうな服装をした少女に…

 

 

 

「えっと…白崎香織、ハジメ君の『婚約者』です…」

 

 

おずおずと恥ずかしそうに小さく挙手した。

その左手の薬指には、錬成師であるハジメ特性の指輪が輝いている。

 

 

 

「「「うああああああああああああ!!!」」」

 

その事実に男子達は絶叫し、蹲る。

 

流石にここで愛子も我に返り、ハジメに話しかけた。

 

「は、ハジメ君!」

「先生…?」

 

 

「女の子のファーストキスを奪った挙句、さ、さ、三股だなんて!4ヶ月も戻ってこなかったのはこれが理由なんですか!?」

「先生俺の弁明聞いてませんでしたかねえ!?あれは人命救助のための人工呼吸!中学の頃救命講習受けてるんだよ!」

 

 

場がカオスになっていく中、小さなため息をついたツカサが手を叩いて全員の意識を自分に向けさせる。

 

 

「はいはい。一旦積もる話は飯食ってからでいいか?」

 

 

 

―――――――――――

 

 

 

改めて席に着いたハジメ達の前に注文した料理が届き、ハジメ達は食べながら愛子の質問に答えることになった。

 

「それで…3人とも奈落の底に落ちてから何があったんですか?」

 

最初の質問に答えたのは香織とツカサ。

 

「正直はっきりとは覚えてないんですけど…たしか、地面にぶつかる前に横から吹き出してた水の流れに飲まれて…気がついたら迷宮内部を流れる川の中で私とハジメ君は倒れてました」

「俺はその途中ではぐれてな…結局かなりの時間をかけてどうにか二人のもとにたどり着けたってのがあの後の話だ」

 

 

 

「では…ハジメ君と白崎さんの見た目が変わっているのは一体何があったんですか?それに…その左腕にだけ着けてる鎧と右目の眼帯は…」

 

全員がまず気になっていたのはそれだろう。

二人とも身長が伸びているし、体格もかなり変化している。

特にハジメに至っては性格や目つきまで変わり、普通にすれ違ってもまず気付く人間は少ない。

それと、ハジメがつけていた眼帯の存在や上着を脱いでもそのまま左腕に着いていた武骨な鎧は自然と愛子達の注目を集めている。

 

 

「…この左腕は奈落で最初に魔物に襲われた時に喰いちぎられてな。暫くは片手でどうにか戦えたんだが脱出の目処がついた頃に材料が揃ったから義手を作った」

 

ハジメがそう言うと左手首が外れ、『それ』が本物の腕ではない義手だと証明する。

 

「……っ!」

 

腕を喰いちぎられたという言葉に愛子は絶句。

 

「右目のほうも最下層の魔物との戦いで溶けちまってな…この通り魔力の流れとかを可視化できる義眼を作って入れてる。まあ普段から使うと疲れるし光って目立つから、こうしてアイパッチで隠してんだけど」

 

 

その説明をしていると香織が少し暗い表情になり、ハジメは机の下で香織の手をそっと握る。

 

「あと俺達の外見だが…簡単に言うと俺達は魔物を食った」

「ええ!?」

 

「普通魔物の肉を食えば死ぬんだけどな…奈落で腕を落とされた俺は香織と一緒に錬成で穴掘って逃げたんだが、その奥で神結晶ってレアな鉱石を拾えた。神結晶は数千年分くらいの魔力を溜め込んでいて、それが液体として滲み出る。俺達はその液体…『神水』って薬を飲んだことでどうにか命を繋げられたんだ」

「正直、確証は無かったんですけどね。体の崩壊と同時に神水が体を修復して…の繰り返しで、魔物の力を体内で安定できるようになるまで耐える…おかげで私達はどうにか最下層まで戦えるだけのステータスを得られましたから、こうして外に出られたんです」

 

そこまでの説明の中で愛子はふと疑問に思ったことを口にする。

 

「で、でも…どうして『ツカサ君だけ変わってない』んですか?」

 

そう。同じ状況下でどういうわけかツカサのみ外見に変化がないことに愛子は気がついた。

 

「あー…多分、俺の天職の影響なのかもしれません」

 

「ツカサ君の…?」

 

説明をするツカサ。

 

「俺の天職、『破壊者』ってどうやら世界の法則とかをある程度無視して活動できるらしくて…魔物との戦いでも武器の力を無視したパワーがたまに出せたりしてたので」

 

一部は嘘だが、天職の力に関してはこれまでわかったことを交えて説明していくツカサ。

『武器の力』云々はデタラメだが、法則を無視しているというディケイドの力は紛れもない事実だったりする。

 

そこまで説明すると、愛子は一番気になっていたことを尋ねる。

 

 

「………何故すぐにみんなのところに戻らなかったんですか?」

 

「それは…」

 

香織が言いにくそうにする中、ハジメはきっぱりと告げた。

 

「戻る理由がない。それだけだ」

「そんな、理由がないって…」

 

あまりにもシンプルな言葉に愛子が何も言えずにいると、横で話を聞いていたデビッドがテーブルを叩きながら立ち上がる。

 

「おい貴様!愛子が質問をしているのだ、真面目に答えろ!」

 

その剣幕にハジメが小さくため息をついた。

 

「別にふざけてるつもりはねえよ。先生たちの方に戻るより俺達は単独で動いたほうが行動しやすいし、何より『余計な手間をかけてくるであろうやつ』の干渉を受けずに済む。だから戻る理由がないって言ったんだ。んなことより今俺らは食事中だぜ?テーブル叩くなんてやめて行儀よくしろよ」

 

ハジメの言葉に顔を真っ赤にするほど怒ったデビッド。

彼は教会から派遣された神殿騎士の中でもかなり高い地位におり、それが理由で王国の重要人物である愛子の護衛を任されている。

高いプライドとハジメの愛子に対する態度への怒りからデビッドは一行を見渡し、その中で反論の材料を見つけたとばかりにシアを指差す。

 

「ふん、行儀だと?その言葉をそっくり返してやる。薄汚い獣風情を人間様と同じテーブルに着かせるなど、お前たちの方が礼儀のなっていない愚か者ではないか!」

 

「で、デビッドさん!なんてこと言うんですか!」

 

差別的な発言に愛子が咎めるが、デビッドは止まらない。

 

「愛子も教会で教わっただろう。魔法は神より授かりし力、それを使えない亜人共は神から見放された下等種族だ」

「私達とほとんど同じ姿じゃないですか!どうしてそこまで――」

 

 

愛子が反論するが、神殿騎士達にとっては子供の頃から『亜人は下等種族』という教えの下育っており、もはやそれが彼らにとっての常識である。

 

 

 

 

だが、彼はこの時それを言うタイミングを間違えてしまったことに気づいていない。

 

 

 

 

 

 

「ならばその醜い耳を切り落としたらどうだ?そうすれば少しは人間らしくなるだろう」

 

侮蔑の視線とともに告げられた言葉にシアは萎縮し、俯く。

そんなシアの手を横に座っていたユエとクロハネが握り、ハジメは顔を上げず食事の手を止める。

 

「……………」

 

ユエの凍てつくような冷たい視線とツカサの軽い殺気のこもった視線にたじろいだデビッドは、もはや止められないと言わんばかりに逆上。

 

「な、何だその眼は?無礼だぞ!キサマら兄弟のような他の使徒の足を引っ張ることしかできない無能兄弟の分際でこの神殿騎士に逆らうのか!?」

 

教会の人間でありそれなりに高い地位のデビッドは四か月前の『事故』のことも聞いている。

そう…『無能兄弟が治癒師である香織の足を引っ張り、奈落の底に消えた』という話を。

 

「そりゃ大事な人が侮辱されれば怒るのは人間として当然だ。シアはハジメや俺にとって大切な仲間であり戦友だし、ハジメはこの世界で唯一血を分けた兄弟だ。あんただって大切な人が誰かから悪く言われて、いい気分なはず無いだろ」

「ん………シアを馬鹿にすることでしか自分を強く見せられない…小さい男」

 

 

ツカサとユエの容赦のない言葉に、デビッドは剣を抜いて突きつける。

 

「…異教徒どもめ!その獣と纏めて地獄に送ってやる!」

 

他の騎士や愛子、そして生徒達が止める前にデビッドが動き出し…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

デビッドの頭に香織の放ったゴム弾が直撃し、ハジメの放った実弾がデビッドの剣を粉砕した。

 

 

 

「お、おい…あれってまさか…」

「拳銃…?」

「白崎さんまで持ってるし…てか、片方って実弾…?」

 

愛子達が見たのは知識として知ってはいるものの現物を見たことなどない拳銃…そう、ハジメのドンナーと香織のレーゲン・ハイルメタルだ。

 

「…ハジメ君。さすがにここで実弾はまずいよ?」

「………悪かった。ついカッとなってな」

 

デビッドの額にゴム弾を撃ったのは香織で、ハジメが実弾の込められたドンナーを握ったとき咄嗟にレーゲンで一瞬速くデビッドを撃つことにより、ハジメの放った実弾はデビッドの体ではなく剣を破壊するに留まったのだ。

 

「…ごちそうさん。久しぶりの米は美味かったよ…『邪魔』さえ入らなきゃ文句なしだったがな」

 

ハジメは席から立ち上がり、今にも飛びかかろうとしてくる騎士達に対し『威圧』を軽く放つことで手出しができないようにする。

 

「…シア。これが『外』での普通だ。こんなの相手にいちいち落ち込んでたらキリがないぞ?」

「はい…わかってはいるんですけど、やっぱり人間族にとってこの耳は気持ち悪いんですよね…」

 

シアは自分の耳を触りながら無理にでも笑おうとしている。

 

 

「ううん。私はシアの耳、可愛いと思うよ?」

「ん…同意見」

 

「シア。こいつらはガキの頃から教会だのに洗脳教育を受けてるだけで忌避感が強いんだよ…大体兎人族に愛玩奴隷としての需要があるんだ。少なくともお前を気持ち悪いなんて心から言うのは、こういった極端な例だけだ」

 

ハジメはドンナーをホルスターにしまうと、シアを励ますようなことを告げた。

 

 

「…因みに、ハジメさんはどう思ってます?」

「……………別に?どうも思ってない」

 

あっさりとした言葉にまたしても落ち込むシアだが…

 

 

 

「シアのウサ耳はハジメのお気に入り。毎日シアが布団に潜り込んでくるとき、触ってモフモフしてる」

「ユエさぁん!?何故それを今ばらす!?」

 

ユエのカミングアウトにハジメが思わず声を上げる。

 

「ハジメ君ケモ耳好きだからね…私も実を言うとバリエーション実家に揃えてたし」

「香織ぃ…何で俺の好みを熟知してるわけ?」

 

 

そんな会話がされているなか、ツカサはハジメ達チームを代表して愛子に伝える。

 

「悪いが、これで話は終わりだ。ハジメは少なくとも自分の意志でここまで来ている。これ以上教会に利用されるのは俺もハジメも望んじゃいない」

 

 

そして、ハジメは香織達に一声かけてから愛子達に告げる。

 

 

「言っておくが…俺はあんたらに興味がない。関わりたいとも関わってほしいともな。今回これまでのことを説明したのはしつこく来られても迷惑だと思ったからで、これから先の目的をわざわざ報告する義務もない…俺たちはここで仕事のために来たのであって、それが終われば俺らはまた地球へ帰るための手がかりを捜す旅に戻る」

 

 

 

「今後はできる限り不干渉で行こう。またその騎士みたいな奴に絡まれたら、今度こそ命はないと思え…!」

 

そう言って南雲兄弟は食堂を後にし、香織は比較的親交のあった園部達に「ごめんね…またいつか」と言うと、ハジメの横まで走っていく。

 

 

「……………っ」

 

そんな彼らの『恐ろしさ』と同時に『強さ』を感じた人物は、何かを決意したかのように拳を握った。

 

 

 

――――――――――

 

 

「ねえハジメ君…最近、またちょっと怒りっぽくなってない?」

 

廊下を歩き、部屋に向かう中で香織はふとハジメに問いかける。

因みに他のメンバーは先に部屋に戻り、香織はハジメと少し話がしたいと言って彼と行動していた。

 

 

「ああ…自覚はしてる」

 

最近、何かと沸点が低いと思えるようになった。

 

疲労がたまっていたことによるイライラも理由だろうが、『ライセンを攻略したあと』から少しづつ自分が暴力的になっているのを何となくハジメは察していた。

 

モットーに対しては一度脅しをかけてから自身の作ったアーティファクトを買わせ、プームに対しても顔面に蹴りを入れて鼻を砕いたり…

先程もデビッドに対して実弾を放つという暴挙に出たりとハジメは少しづつ暴力に抵抗がなくなっている。

 

(理由はなんだ…神代魔法?いや、なら兄貴やユエ、香織に影響がないのは…)

 

神代魔法習得の副作用か何かかと考えたハジメだが、それが違うとすぐに首を振る。

 

 

だが…香織はその理由に予想が付いていた。

 

 

(ハジメ君がライセンを突破してから……いや………『ファイズウォッチ』を手に入れてから、少しづつおかしくなってる…?)

 

ライセンを攻略し、ハジメの手元にあるライドウォッチは『集結させなきゃいけない分』だけで5つ。

だが、ウォッチが集まるということは香織が夢で見た『オーマジオウ』に近づいているという表れでもある。

 

(いや…そんなの、あるわけない………!)

 

あの夢が…ハジメがツカサや雫達を皆殺しにするなどという未来を現実にさせたくない。

そんな思いを抱いた香織。

 

 

 

「………香織。先に戻って兄貴と一緒に先生のところ行っててくれ。説明は二人がいれば十分だしな」

「…うん。ハジメ君も、早く部屋に戻ってね…?」

 

 

香織は二階に向かっていき、ハジメは外の空気を吸おうと宿の外に出て…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「……………お前、さっきから隠れてんだろ?香織も気づいてるが、わざわざ俺一人で話を聞くために外に出たんだ」

 

ハジメは物陰に隠れていた人物に声をかける。

 

 

「………やっぱバレてたね」

「ああ…で?何の用だ………宮崎」

 

 

ハジメと向かい合っていたのは親衛隊のメンバーだった宮崎奈々。

 

「お願い、南雲………

 

 

 

 

 

清水を探して!」

 

 




次回、ありふれた職業と最強兄弟


第6話 世界の真実2001
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