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『この本によれば…『元』普通の高校生南雲ハジメ。彼には魔王にして時の王者『オーマジオウ』となる未来が待っていた』
『3つ目の大迷宮攻略の前に寄り道として湖畔の町『ウル』にたどり着いた我が魔王達。その目的は北の山脈にて行方不明となった貴族の息子、ウィルの捜索。だがそこで我が魔王達はかつてのクラスメイト達と教師、畑山愛子との再会を果たす』
『まさかの出会いに驚く我が魔王だったが、彼女達もまた行方不明になっていた生徒、清水を探していたこと…そして、我が魔王が探していたライドウォッチの一つを畑山愛子が所持していることを知った』
「本日からはついに山脈の調査…さて、どうなるでしょうか…?」
――――――――――
早朝。
ハジメ達がウィルの捜索のため街の外に向かおうとすると…
「…おい。どうしてお前らがいる?」
ツカサが思わず聞く。
そこには愛子を含め、親衛隊の生徒達が揃っていたのだ。
「悪いな兄貴…夕べからこんな予感はしてたんだ。何言ってもついて来るだろうし、連れて行ってくれねえか?」
ハジメが小さくため息をついて説明すると、少し驚いた顔になるツカサと香織達。
あのハジメが理由こそあれど他人を同行させるという選択をしたことが驚きだったのだ。
「私達も連れて行ってください。行方不明者の探索なら人数が多いほうがいいですよね?」
確かに行方不明者の捜索ならば人手は多いほうがいい。
しかし、問題もあった。
「でもハジメ君、どうするの?この人数じゃシュタイフどころかブリーゼも使えないけど…」
「あぁ………こうなりゃ複数で別れていくしかねえか」
ハジメ達の会話に疑問を覚える園部。
「私達、一応馬も準備したけど…難しい?」
少し唸り、ハジメは自身の移動手段だった魔力駆動二輪であるシュタイフや、複数人が乗ることを考えた四輪『ブリーゼ』を宝物庫から出現させた。
「いくら馬でも、これとじゃ移動速度が違いすぎるだろ?それにお前ら含めて人数は13人だが、こいつはどう頑張っても9人が限界。荷台に乗っても手狭になる」
ブリーゼは少し広く造っており、シートは3列。だがそれでも4人ほど余ってしまうため荷台に乗ったとしてもかなり厳しいだろう。
ましてや今回は行方不明者の捜索であり、対象を連れて行くためにも席に空きを作っておかなければならない。
「…なら、俺がシュタイフで二人連れて行く。それならギリギリどうにかなるんじゃないか?」
そう言ったのはツカサ。
「………それしかねえか。もし人数が多かったら…そのときに考えればいい」
人数の問題がクリアできたことで、ハジメは愛子達に目線を送る。
「ところで、山登るのにその服装か?特に先生………動きやすい服に着替えてきたほういいぞ?」
「え?………そ、そうですね…」
今更気づいたが愛子はいつものスーツ姿であり、とても登山に向いた服装ではない。
慌てて宿に戻る愛子を見て、ハジメは小さなため息をついたのだった…
―――――――――――
車とバイクでの移動で1時間。
シュタイフでツカサの後ろに園部、サイドカーにクロハネが乗り、他のメンバーはブリーゼに搭乗(男子達が荷台に乗り、女子達は座席に座ったのは語るまでもない)。
やがて山の中腹まで到着し、車から降りたハジメは自身のアーティファクトの一つを使用。
「南雲…あれって?」
「ああ、無人偵察機『オルニス』。重力を制御して自在に飛行する魔力ドローンで、鳥型なのは瞳部分にカメラアイのような鉱石を搭載してるのと、魔物達から狙われにくいようにするためだ」
鳥の形をしたドローン『オルニス』が4機空を飛び、ハジメが説明する。
「あいつらの見た光景は俺の『魔眼石』と、香織に渡してある『魔射鏡』を通じて見ることができる」
ハジメは一度眼帯を外し、香織もコンパクトミラーのようなアーティファクトを取り出し、捜索を開始。
3人ずつのグループに分かれていた後、ハジメは何かを見つけたかのように足を止める。
「…ハジメ君?何か見つけたんですか?」
愛子が尋ねると、ハジメは返事をする。
「…ああ。木がいくつもへし折られたあと…恐らく大きな戦いの跡だろう。場所は八合目と九合目の間だな」
――――――――――
途中で息を切らせていた親衛隊達を何とか引っ張り、ハジメ達は現場である開けた場所に着く。
「これは…盾?それにカバン…この朽ち具合からして、数日も経ってないな…」
一応、愛子達に確認を取るがそれらの荷物は清水の物ではなく、おそらくは探していたウィル達の物の可能性があるとしてハジメはそれらの『遺品』を回収。
「ハジメさん!これを!」
シアが発見したものを見て、ハジメは一気に警戒心を高めた。
「この足跡って…」
「ああ、間違いなく魔物だ。見たところ身長は2~3メートルほどの二足歩行…恐らくブルタールとかいうタイプの魔物だろうが…」
そこで一度言葉を切り、ハジメは眼前に広がる光景に目をやる。
「そんなタイプの魔物が、こんな広域攻撃なんざ出来ると思うか?」
ハジメ達の視線の先には、川の支流が新しく作られたと思えるほど深く抉られた大地が広がっている。
「ええ…それに、この攻撃の形…下手したら魔物は『1体ではない』かもしれません」
地面が抉られていただけではなく…『台風でも起きたかのように薙ぎ払われた木々』、『水の一部が凍りついている川』、『焼け焦げ、炭と化した数十本の木』、『粉々に押しつぶされた木々』といった様々な被害が抉られた大地のあちこちで目撃された。
「ハジメ…一度先生達と合流しておいたほうがいい。こんな魔物がいるとしたら、俺達でも警戒するべきだしな」
「ああ…」
ツカサの言葉に頷いたハジメは川の近くの滝壺で休憩していた愛子達のもとに歩くと………
「………!気配感知に引っかかった」
「本当!?」
香織が慌てて聞く。
「ああ。この数だと…6人いる。間違いねえ、イルワが言ってた冒険者達だ。ユエ!」
「ん…!」
ユエが頷き、石伝いに滝の前まで移動。
「…〝波状〟〝風壁〟!」
水魔法で滝を割り、風魔法でハジメ達が通れるだけの道を確保。
無詠唱で魔法を使ったユエに驚く愛子達をスルーし、ハジメ達は滝の後ろにあった洞窟に入り、愛子達も慌ててついて行く。
―――――――――――
少し歩く先で、複数人の男たちが倒れていたのを目撃したハジメ。
彼はその中で似顔絵と同じ特徴の青年のもとに駆け寄り、ツカサ達はそれぞれ他の冒険者達の安否確認に向かう。
「おい…おい起きろ!」
ハジメが声をかけるが反応はない。
「も、もしかして死…?」
「いや…息はある。特に衰弱してるわけでもないが…」
何度か頬をペチペチと叩くと、青年はゆっくりと目を覚ます。
「ん………なあっ!?こ、これは…君達は一体、どうしてここに…!?」
「落ち着け。お前がウィル・クデタか?」
ハジメの質問にウィルは小さく頷く。
「あ、ああ…僕がウィル・クデタだが………そうだ!ナバルさん達は!?」
「大丈夫ですよ。皆さん体力を消耗してはいますが、全員無事です。私達はフューレンのギルド支部長であるイルワさんからの依頼で、貴方達の捜索に来た冒険者です」
香織の説明に落ち着きを取り戻したウィルはようやく座り込む。
「そうか…イルワ支部長が助けをよこしてくれたのか」
後ろから声をかけてきたのは、リーダーと思わしき男性冒険者。
「俺はこの冒険者パーティーのリーダー、ナバルだ」
ナバルから自己紹介をし、それから他のメンバーや愛子達もお互いに名乗り、何が起きたのかをウィルたちから聞いた。
――――――――――
五日前、ウィル達はこの山脈の異変を調査するためにウルの町から山を登っていた。
そして八合目の少し上辺りで野営をしていたところ、ウィル達はある光景を目の当たりにした。
「漆黒の龍と黒ローブの男…それに魔人族?」
ウィル達が偶然にも目撃したのは、黒いローブに大きな杖…彼らから見ても国宝級アーティファクトであろう杖を持ったハジメ達と変わらない年代の青年と魔人族が、漆黒の龍を率いて何かの会話をしていたという。
魔人族が関わっていたとなれば無視できずナバル達はこっそり監視していたのだが、運悪くウィルが足音を立ててしまい見つかってしまう。
『っ!見られたか…『シミズ』!奴らは任せるぞ』
魔人族はそう指示を出すとあっという間に翼を持つ魔物に乗って逃走し、黒ローブの男は龍に指示を出した。
『チッ!!おい黒龍!『あいつらを追い払え』!!!』
「それから私達はその場を離れたのですが、その騒ぎで目覚めたブルタール達と交戦…闇魔法か何かで強化された龍は複数の固有魔法を使い、我々は死ぬかと思いましたが…幸いにもその魔法はブルタール達を巻き込み、我々は滝の裏にあったこの洞窟で隠れていたのです…」
その会話の中で、宮崎が顔を青ざめさせていた。
「そんな………そんなことって…!」
――――――――――
それから数分。
とりあえず彼らに食料を分け、一同はウィル達を連れて下山することになった。
ブルタールの群れが動いたことや、謎の黒い龍などの存在を放置してはおけないと思ったが、さすがに消耗した冒険者6人を連れての探索は難しいとツカサ達は判断する。
「よし…帰りはクロハネがシュタイフの運転で俺がブリーゼ、ハジメはタイムマジーンで乗れるだけ連れて行く…でいいな?」
「ああ。それでいい」
「わ、わかりました!このクロハネ、全力で運転させていただきます!」
そんなやり取りをしながら滝壺から出ると………
「っ!」
咄嗟にハジメがドンナーを発砲し、それは自分達を狙っていた巨大な影に直撃。
「グゥルルルルル………」
低い唸り声を上げて現れたのは…『漆黒の鱗と一部に金色の鎧のようなものを纏い、額に真っ赤な宝石のついた異形の龍』だった。
「あ…あいつだ!あいつが僕達を狙って…!」
ウィルが叫び、龍は強力なブレスを放つ…!
次回、ありふれた職業と最強兄弟
ドラゴンバトル2012