とある女ユンカーの抗争記   作:ラディカルリベラリスト

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―1991年

 

ロンディ二ウムに名高いブロードシート、ロンディニウム・タイムズ紙。

売れればそれでいいタブロイドの連中とは違い、政治家に高級軍人、王室の目となり耳とならんと思って数十年前に私が飛び込んだ報道機関。

世界で初めて戦場に特派員を送った先進性をもつ、連合王国において2世紀を超える歴史と研鑚を誇る報道の一種の頂点。

 

だが全世界の知を欲してやまないタイムズ紙は、私のデスクはある案件について資料を積み上げることが出来なかった。たかが半世紀と少しばかり前の人物について把握することが困難を極めているのだ。

異常である。

 

その案件を追いかける契機となったのは、一年前の連邦共和国の再統一であった。

ルーシー連邦が下手をうったせいで連邦共和国議会は再統一を議決。挙句の果てに議決の直後に『統一と正義と自由』が高らかに歌い上げられる始末であった。ライヒは再び世界に覇を唱えんとはせぬかと鉄の女が狼狽したのも公然の秘密となりつつある。

 

その現実の前で我がタイムズ紙の編集長、磨き上げられた錬鉄の知性たるサイモン・トムソンは、私にこう言い渡した。

 

ジェンキンソン、私が追いきれなかった幻想を解き明かす機会を差し上げよう。連合王国のなかにある小さなプロテスタントの共和国、我々の国の長年のトラブルに幻想の一部があるんだよ。

 

テロと独立の萌芽、摘み取れきれない頭痛にヒントがあると言われ、一年かけて幻想を追いかけるハメになったのは私の報道人生において紛れのない不幸であったと思う。

だが名前は二つ浮かび上がってきた、それだけは誇りたい。繋がらない点を線に出来ないと俯くことになってもね。

 

そう、シャルロット・ペリエールという名前は酷く陰に染みわたっている。

ライヒ訛りのフランソワ語を時折話したという、死を運ぶ魔女。対する連合王国語には上流階級の言い回しと発音が認めれるというのだから、出身はどこかと考えてもこの情報からは分からない。

だが間違ってもフランソワ共和国の出ではない。

いったい彼女のために何人の死体が積みあがったのか、独立を阻む連合王国が契約した悪魔。秘密に彩られたMI6に最精鋭のSASを勇退した我々連合王国の勇者たちはそろって恐怖し罵る名前。ライヒの悪魔と契約せざるを得なかった祖国を恨み申すとオフレコで言われた時には何の冗談かと思ったものだ。

 

長年培った人脈は守秘義務と畏怖のもとに沈黙す、ならば私は次なる名前に手を伸ばそう。サイモンは言ったのだ、ならば最後まで明かす他はない。

 

祖国の最後の瞬間に、連合王国に密告した裏切り者の魔女。

エミーリア・シャルロット・ラ・ペリエール=ケラーマン帝国陸軍魔導上級大尉。

死の魔女はこの悪魔にあやかった名前なのか、そうではないのか。

 

 

 

 

 

 

 

いきなり高度4500の大空という頭の高いとこからで申し訳ありませんが、諸兄皆さまごきげんよう。

エミーリア・シャルロット...ラ・ペリエール=ケラーマン帝国陸軍魔導中尉であります。

空気が薄いせいか最後まで言い切れませんね。次の名前はもっと短くしよう、そうしよう。

 

さて、どこから説明しましょうか。

ああ、なんと私、正式に帝国の貴重な魔導士を一個中隊も預けてもらえるようになりました。といいましても人が足りないのだから現状維持でよろしくって西方司令部が充足できない中隊をほったらかしてるだけですが。

 

次に飛んでる理由ですけども、語学に堪能な自分が恨めしく思います。

先日の戦闘で落とした共和国の魔導士を捕虜に出来ましてね。先の中隊長の遺体とともに歩兵の戦友たちが回収してくれました。のでフランソワ語がネイティブレベルの私にちょっとお話してねという訳でございます。

ユグノーがどうたらうるさかったお婆様のおかげでやや休息が足りませんのよ。思わずシャイセ、と零した時によく怒られた思い出は今はどうでも良いか。

そうそう、あの全身火傷のカエル酷いんですよ。私を見るなり『狼の魔女』と喚きだしましてもう。大方、この琥珀色の目が狼の目で狼に変身できる魔女みたいな蔑みでしょうけどね。あれっ私がネームドってことかな、どうでもいいけども。

 

失礼、無駄話がすぎましたね。

なんとなく予想していた敵の攻勢作戦、それの魔導部隊の一部ではありますが配置をさえずってくれましたの。おかげで阻止攻撃に回されました、ちくせう。

 

「ラインコントロールよりツュプレッセ01。間もなく接敵予想空域に入る、状況知らせ」

 

「こちらツュプレッセ01、天気晴朗なれども雲多し。万事順調なり」

 

「了解ツュプレッセ01、方位260に変針、ザザ―――続行、ザザ―――」

 

いきなりのノイズ、交戦のお知らせですかね。

なんにせよ備えなければ。

 

「各員、会敵に備え!C小隊!高度を1000上げて速度150で追従せよ、貴隊は再編成から間もないことに留意しろよ」

 

「っ、ツェーザーリーダー了解」

 

連携に不安あるから後ろに下がれという命令ですね。出される方は良い気持ちではないでしょうが我慢なされてくださいませ。

 

「アントン各位、速度250へ。ベック曹長!接敵はアントンでやる、ブービーが着いて来れる程度の機動に落としこめ」

 

「了解、落ちない程度に動きます」

 

ベック曹長は理解が速くて助かる。私の戦闘機動を単純にしつつ追従、私のフェイクを削りつつコピーしてくれるでしょう。

あと伍長ちゃんはブービーって言われたくなければうまくやってみせなさい。不満そうな顔してるの見えてるからな。

 

「聞こえてるか、ベルタ!キュヒラー少尉は一撃離脱でいけよ、会敵まではアントンの尻につけ。あとは任せる」

 

「了解!敵は雲の向こうですかね?」

 

「知らんがいきなり出てくるだろうよ、まぁ心配するな。落ちるのは私の前だけだ」

 

新品少尉は案外知りたがりと。まぁ動き止めなければ好きにやってよ、カバーするからね。

 

「ツェーザーリーダーより各位!敵魔導部隊を確認、方位240高度は...4000!」

 

おっ高度取らせた甲斐があったね、雲が多い中上手くやってくれました。少しだけ加点しとくよC小隊。

 

「こちらツュプレッセ01、規模は!」

 

「雲量が多く見失いました!最低1個中隊規模と認む」

 

うーん、最低限。最低限でしかないから加点が微かすぎるね、今日は援護射撃だけやらせるか。

敵戦力不明とはやりにくいです。アントンとベルタはなんとかするけど、最悪シーザーは囮にすることを考えないと。

 

「中隊!進路を方位260へ、先に見つけたのはこっちだ。強く当たるぞ」

 

「了解!」

 

狩らせて貰うぞ、カエルども。

 

 

 

 

 

 

糞ったれ、1個中隊が1個小隊になって返されてから1週間と経たずに出撃とは。命令とはいい抗いたくなる、もともと消耗していたとはいえ大隊なのに2個中隊しかいないとは。

ライン方面司令部に言い訳の利く程度で帰るか?別動する部隊の攻勢作戦のための陽動だ、敵戦力の誘引が出来れば良いのだからな。せいぜい帝国陸軍の魔導中隊を1個ほど拘束したら帰るとしよう。

 

「大隊長!敵です、前方の雲から飛び出てきました!」

 

「大隊!ブレイク、ブレイク!」

 

早速釣れたか、先手を取られたのは痛いが雲も多い。上手く使って往なすとしよう。

 

「ケルヴィン!1個中隊回すから高度6000へ上昇せよ、残りは前方の敵へ当たれ!D小隊は俺と共に待機!」

 

「了解!」

 

こんなもんか。いくら敵の空中管制が優秀だとしても接敵するには早いと言える、この敵はそう多くないはず。

 

「敵の戦力は!会敵した小隊は報告せよ」

 

「およそ2個小隊規模!1個小隊は雲の中に離脱していきます!」

 

まぁそんなもんだろう、1個中隊がいいとこだろうな。それに充足してるか怪しい、各地で中途半端な編成の敵魔導部隊が報告されている。敵も味方も似たようなもんだ。

 

「ケルヴィン!上はどうだ!」

 

「3時方向に距離2000、1個小隊規模の魔導部隊です」

 

敵も上は抑えているか。でも悲しいかな、1個小隊規模では不十分だったな。

 

「ケルヴィン、近いづいてくるまでほっとけ!上から統制射撃の援護がメインだ」

 

「了解!巴戦を試みる敵小隊を狙います」

 

「そうだ、俺の中隊から少しでも離れたら撃て!」

 

いいぞ、いいぞ。雲多いくらいで後は上手く運んだ、各個撃破だ。巴戦に一撃離脱、援護射撃が1個小隊づつとはね、近い敵小隊から順に...

 

...巴戦?なぜ?

なぜ、少数の側がこうも打って出るんだ?

 

「速い、速すぎる!当たらない!」

 

「バカ!チェックシックス!チェックシックス!」

 

「ああっ!熱い、熱―――ザザ」

 

嫌に大きい炸裂音が聞こえる、爆裂術式だろうか。なぜ近接戦闘で爆裂術式が使われる?

 

「大隊長より大隊各位!敵は1個中隊崩れだ、落ち着いて複数であたれ!単独戦闘は禁止!複数で」

 

「離脱したクラウツがまた突っ込んでくるぞ!」

 

「どこから!」

 

「畜生、雲に入りやがった」

 

なんでこうも崩されてる?1個中隊だぞ?

...そして雲?

 

「ケルヴィン!援護射撃はどうした、第1中隊が崩されてるんだぞ!」

 

「撃てません!敵小隊が近すぎる、雲が邪魔で味方が把握できない!糞っ、煙が、ああっ、糞!」

 

煙だ、畜生。なんで気づかなかった。爆裂術式を近接戦闘に使う帝国魔導士なんて奴1人じゃないか。糞ったれ。

 

「糞がっ!敵は『狼の魔女』だ!各員分散しろ、距離を取るんだ!距離を」

 

「了解!ああっ、まとわりつきやがって」

 

「ちょこちょこうろついてるクラウツはどうするんだ!」

 

「そんなもん離脱させとけ!魔女から離れることだけ考えろ」

 

第1中隊は崩れきってる、忌々しい。雲と爆風でなにも見えない中で巴戦、合間合間で有利なポジションから一撃離脱を図る別動隊。ああ忌々しい。

 

「大隊長!敵の小隊が突っ込んで来ました、応戦します!」

 

「下は大忙しだ!上は手間取るなよ、さっさと仕留めて加勢しろ」

 

「了解です!」

 

ケルヴィンが吠える、上空の第2中隊にも敵が襲い掛かってくるようだ。意味が分からん、なぜ数的不利で予備兵力だろうなけなしの1個小隊を無駄遣いするのか。

 

「糞っなにも見えねぇ!」

 

「ああ、A小隊が全滅しました!」

 

「ベルト、半壊!」

 

ダメージレポートが飛び込んでくる。第1中隊は半壊だろうか、もうこの大隊は使えないだろうな。

『狼の魔女』め、ただでは帰さんぞ。

 

「シリスタン、状況知らせ」

 

「こちらベルトリーダー!シリスタンはとっくに墜ちてます!」

 

ああ糞、魔女に災いを!

直接仕留めてやる、部下と遊んでいる魔女を...

 

考えろ、状況を好転する一手を編み出せ。どうするべきか、魔女はどうするつもりだ?第1中隊をどう料理するというのだ。

 

いやおかしいな、引っ掛かりを覚える。

魔女と遊んでいるなら、なぜダメージレポートを上げる暇がある?

煙幕代わりの爆裂術式で視界もへったくれもない状況で余裕が生まれる理由は?

第2中隊に予備兵力を使った理由は?

 

「大隊長!第1中隊が不味い!」

 

「ケルヴィンどうした!」

 

「敵小隊が突如降下!奴らの狙いは第1中隊です!」

 

 

ケルヴィン、やっとわかったぞ。

...そうか、そうだ。

魔女はもういないのだ。第1中隊とは遊び飽きたか!

狙いは第2中隊だ、雲と爆風を背に巴戦から離脱するつもりか魔女め!

 

「違う、ケルヴィン!狙いはお前だ!魔女がそっちに行くぞ!」

 

 

 

 

 

 

 

だいぶやりすぎました。

いつもの要領で爆裂術式を撃っていたら、そりゃぁ目が利かなくなります。雲が邪魔ぁ!

見えない、うん見えません。しょうがない離脱しましょう。

 

「アントン各員、離脱するぞ!」

 

「中尉!そろそろ着いていけませんので、方向を!」

 

ベック曹長まで着いて来れない視界とは不味いですね、あっそうだ伍長ちゃん生きてるよね、忘れてたな。

 

「上昇するだけだ!心配要らないぞ、あと見難いなら見える距離までぴったりつけろ」

 

「それじゃ、アイザックが着いて来れませんぜ!」

 

おう伍長生きてるか、よしよし。喋らないから生きてるか分からないよ、もう。

あとアイザック伍長のためにもゆっくり飛ぶか、限界だろうし。

 

「ブービー、お前のために少しばかりゆっくり飛んでやる。ベック曹長ではなく、私の後ろに直接つけろ」

 

「...りょ、うかい」

 

やばい、青色吐息。まぁ敵が露骨に、私を捕捉出来なくなっていることだしね。楽をさせてやろうともさ。

うん、ちょっと路線変更しようかな。

 

「ツェーザー、状況知らせ」

 

「こちらツェーザーリーダー、もう間もなく接敵します」

 

「予定を変更する、接敵直前に高度4000に降下せよ。私の残飯を漁り給え」

 

よし、敵のもう一つの中隊は爆殺ないし酸素欠乏に追い込むことにする。

もう206中隊の継戦能力は厳しいだろうし、元気なのは私とC小隊だけ。といってもこれから私も元気なくなるだろうけど。

 

「了解。降下後、巴戦に移行する」

 

「ネガティブ。一撃離脱に努めよ」

 

「...了解」

 

おいおい。先日共和国のカエルどもに嬲られたC小隊各員にさ、巴戦なんてさせる訳がないでしょうよ。

減点ですよ、ツェーザー諸君。

 

「ラインコントロール、ラインコントロール。こちらツュプレッセ01、応答願う」

 

「ラインコントロールよりツュプレッセ01、感度良好。突然で済まないが状況を知らせる。敵の狙いは貴隊の拘束にあり、可能であれば戦闘を切り上げ帰投をせよ」

 

うへぇと零したくなる。陽動部隊だったんですね、敵の2個中隊は。

 

「了解、ラインコントロール。そのためにも許可を願う。空間爆撃術式を用いたい、当該空域に警報を流されたし。詳細を送る」

 

「受け取った。ツュプレッセ01、空間爆撃術式を許可する。ウェポンズフリーだ」

 

「了解、ウェポンズフリー。感謝する」

 

今回の空中管制は仕事が早いですね、素晴らしきかな。

 

「中隊各員!警報を見たな。馬鹿煩い合図をだすから、聞いたら206中隊は当空域を離脱しろ。魔導反応は垂れ流しにしといてやるから心配するな、楽ちんに後ろにつけるはずだ」

 

「了解」

 

さて準備しましょうか、魔力チャンバーにこれでもかと魔力を流し込む、なかなか疲れる。日に3度撃てれば良いねという大技ですからね、しょうがない。

あーあー、これで元気なのはツェーザー小隊だけになっちゃいますね。

 

雲が薄くなってきたな、高度は5000か。

 

「ツェーザー降下!」

 

良し、雲を抜けた。敵は、12くらいか、ビックリしてるね。そんなんじゃプレゼントにはもっとびっくりしちゃう...ね。

...うん、なんで表情が分かる?

 

...ちょっと近すぎません?

 

「アントン小隊!防殻術式にありったけの魔力を流しこめ!」

 

撃つしかない、この数に真っ当に囲まれたくない。

ああ、良いね曹長は。私は防殻術式に魔力回せないからね、宝珠の性能的に空間爆撃術式と並行して防殻術式の強化とか出来ない。

 

ちくせう。

 

 

 

 

 

 

「ヒヒッ、ベック曹長!宝珠が安定しきれん、不味いかもしれん!」

 

2倍の敵を討ち破るという見事な武勲を果たした中尉が泣き言を叫んでいる。

巴戦で1個小隊と、空間爆撃術式で1個中隊丸ごと吹き飛ばしたという戦果を上げた人間らしくもない。数字でいや、撃墜確実13、撃破3だというのにこの瞬間はぐだついている。

だが、もろに爆風を食らった調子の悪い宝珠をなだめるのが辛いらしい泣き言を叫びながらも、笑っているという辺りが新品の将校との違いだろうか。

 

「なんでそう楽しそうなんですか、中尉!もう着きますからまっすぐ飛んでください」

 

「いやっ落ちる!制御が厳しいんだ、出力が上がらない。ははっ」

 

先を行く中尉の高度が落ち始める。だからなんで笑うんだ、よく分からん。

 

「中尉、あと200mも飛んでくれりゃ良いんです。なんとかしてください!」

 

「無理だよおやっさん。そうだキュヒラー少尉!隊を率いて、先に補給と整備を受けてろ」

 

「...了解。ベック曹長は残していっても?」

 

おいおい、勘弁してくれよ。少尉殿、あとでいびってやるからな。

 

「許可する!気が利くなぁキュヒラー少尉。暇な時に可愛がってやるぞ!」

 

少尉が逃げていく。いや少尉以外も逃げていく、いいなぁ俺も逃げたい。

 

「シャイセ!イチかバチかで魔力を流し込んでみる、なんとか飛ぶか?」

 

「中尉、やめてください!下は一面、我々の天幕なんですよ!高度下げながらで良いですから、我慢して飛ばしてください!」

 

頼むから我慢してくれ。あと上官殿はなんというか、ピンチで笑うのが好きなんだと把握してはいるが、若干悪癖ではないかと言いたい。笑ってはいけない時もあるはずだろうに。

 

「高度800だ、防殻術式もある!落ちたって怪我のしようがないじゃないか?やってみるぞ」

 

「ああ、ご再考を!」

 

だから下は居住区だって言っているだろうに。見れば子供だっているんだぞ、もうちょっと考えを巡らせて頂きたい。

 

...子供?ラインの前線に?

 

「いいや、やるね!おおっ、行けそ――ザザ」

 

子供も気になるがまずは中尉だ。

が、ぼんと気持ち可愛く聞こえる破裂音と共にダイビングを始めた。始めてしまった。

 

「ああ、もう中尉。受け身を!」

 

笑いながら落ちていく中尉。

空戦機動ほど上手くはいかずとも受け身はしっかりとるのは見えた。地上で何かにぶつかることもなく、平然と起き上がってもいる。大丈夫だな、はぁ。

俺も行くか。

 

出力を絞って手慣れた操作で着地。

駆け寄ってみれば、ハッハーなんて笑ってやがる中尉殿。

 

「怪我は無いようで」

 

「このぐらいで怪我はしないさ。ベック曹長は心配性だなぁ、ははは」

 

地上に降りたせいか少しテンションの落ち着いているようだ。

笑いは止まらんが。

 

 

 

―――ええぇ...

 

 

 

すぐ後ろからため息が聞こえた。気になって振り返って見れば、説明しづらい人物がたっているではないか。

 

髪は金髪、ビロードような青い目、背は俺のヘソを超えたあたりだろうか。

着させられたような糊の利いた軍服から新任の匂いがする。だが新任には似つかわしくない煌めきがあった。帝国軍人皆が敬意を抱く銀翼突撃章という威光が胸の辺りから発せられる。

俺は思わず敬礼をする、せざるを得ない。さぞ立派な軍人...

 

...軍人の子供?

 

「っん」

 

軍服を着た子供も敬礼を返してくれた。

頭がまとまらない、生きた銀翼突撃章とかいう噂があったような。

 

そしていい加減笑いを止めて欲しい中尉殿が敬礼と共に口を開く。

 

 

 

「ははっ。ターニャ・デグレチャフ少尉、ラインにようこそ」

 

 




どうでもいいですが
前書きに本編書いて、書き終わってから気づく。
切り取りめんどくせー

9/18
速度について編集。
指摘ありがとうございます!これでまた拙作のレベルが上がった?
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