異世界サキュバス剣戟録 もし人斬り大好きお侍さんがサキュバスになってたら   作:キサラギ職員

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異世界サキュバス剣戟録 もし人斬り大好きお侍さんがサキュバスになってたら

 ひとつ、ふたつ、みっつ………。

 数えた屍の数は数十は下らない。男は一人戦場を駆け抜けていた。髷に鎧を纏った壮年の男だが、片目は無残にも斬られ、あちこちに矢が刺さり、左腕に至っては機能を喪失していると言わんばかりにだらんと垂れ下がっている。

 ここは戦場。無数の死体が転がっていた。

 当初は余裕と見れた戦いは、側面を突く形で裏切り者が現れたことにより一気に不利に傾いた。

 男は武士だった。とある大名に仕えていた。戦の絶えぬ小国に仕えていたことは、男にとって幸福なことだった。命と命のせめぎあいこそが男にとっての全てだったのだ。

 男は銃弾に倒れた。敵の火縄隊が列を成し一斉射撃を開始したらしい。そのうちの数発の弾丸を事も無げに弾く。

 

 できる、できるのだ。武士、侍、この国のつわもの達にとって、銃弾は弾くことができるものだ。

 だが、いくら弾けるとて、無数に放たれては、重傷を負っていては対応叶わぬ。

 腹が弾け、鎧の破片がくるくると舞いながら散る。

 男も同じように踊るようにその場でまわると、どう、と大地に伏した。

 

「ああ、よき日であった」

 

 来る日も来る日も戦に明け暮れた。というわけではなかった。平和な時代もあった。男が常に刃を用いて戦うことができたわけではなかった。だが男は積極的に斬った。賊を、時には罪人を。理由を付けて殺し続けた。そうして、今日。戦場で死ねる。こんな幸せなことがあろうか。

 失われていく血液。男は震える手で刃を握り続けていた。

 

 意識が遠くなっていくのがわかる。

 思い残すことは無いなどとは言わぬ。辞世の句を詠むほど洒落ているわけではない。

 もっと、もっと、刃と共にありたかったとそう願い、目を閉じた。

 

「は?」

 

 開けた時、男は全くの違う世界にいた。

 

「………なんと」

 

 あろうことか、異世界で目を覚ましたのだ。

 

「この体は?」

 

 そう、サキュバスの体に入っていたのだった。

 

 

 

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異世界サキュバス剣戟録 もし人斬り大好きお侍さんがサキュバスになってたら

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 目が覚めて感じたのは、猛烈なけだるさである。不快感があったが、直前までに感じていた矢傷や切り傷から受け取る苦痛が綺麗さっぱり消えうせている。

 

「ふむ………神仏の仕業か?」

 

 そうとしか思えなかった。

 男はぶつぶつと呟き、気がついた。声が女のものになっているではないかと。目線を下ろすと、見事な山脈が聳え立っていた。富士のように立派な山が二つ、息を潜めている。吐息を漏らせば、体に追従してわずかに歪む。

 更に目線を下ろすと、ぴっちりと体に張り付く下着というには面積が狭すぎるまるで南蛮の娼婦のような装束があった。そしてどう考えても、その下着の下には、あるべきものがない。

 目線を上げてみると姿鏡があった。

 艶々とした銀色の長い髪の毛がふんわりと腰で広がっている。赤いきりりと吊り上った剣呑ななつくりの目が正面を見据えていた。肌の色は、褐色。日焼けでもしたかのよう。耳は、先端にいくに連れてとがっている。(よわい)にして二十頃か、妙齢といって差し支えない美女がそこに立っていた。

 

「まさか、女子(おなご)になろうとは……夢を見ているのか?」

 

 夢かもしれないとあたりを見てみると、目の前にぐったりと倒れこんでいる男がいるではないか。格好はまるで、というよりもまさしく南蛮の装束そのもので、日ノ本(にほん)ではまずお目にかかれないいわゆる洋服だった。

 男は―――元男は―――屈み込むとその人物の頬を張った。

 

「起きろ。目を覚ませ。起きろ」

「な、なんだ………突然光ったかと思ったら……意識が……」

 

 むにゃむにゃと要領を得ない台詞をもらしつつ、男が目を開けた。そして、男ともとい元男と目を合わせ、仰け反った。

 

「あ、あ、あ、そ、その耳……牙…………サキュバスか!?」

「さきゅ……? はわからんが、うううっ!?」

 

 さきゅばすなるものはわからなかったが、相手がこちらを恐れていることは理解した。

 侍は、突然の発作に襲われた。こうあるべしという欲求がこみ上げてきたのだ。それは欲望だった。人を斬りたいという欲求にも似た、もっと原始的なもの。すなわち性欲である。

 ぼう、と、まるで不知火のように妖しげな紋章が体に浮き彫りになる。

 侍はわからなかったが、これは所謂淫紋というものであった。精力を餌にするという高貴な血統のもののみに浮き出るというもので、特に“捕食”前に輝くのだという。

 侍はゆらりと動いた。そうあるべきだったかのように男の上にのしかかると、ぺろりと舌で唇を潤した。

 

「いただきます」

「はぁぁぁ!? まっ、待って…………!!!!」

 

 

 

「も! もう出な………!!! あぁぁぁぁぁぁぁん!!」

 

 

 

 

「ふむ、すっきりした」

 

 ミイラのようにぐったりと床に伏して虫の息の男をよそに、勝手に服を拝借した侍が行く。

 腰には男から奪った剣を。背中には背嚢を。

 天を仰ぐ。綺麗な月が輝いていた。

 

「あぁ、いい日だ。また死合うことができる」

 

 頭にはそのことしかない。いや、あった。食欲を満たす為に、サキュバスとしての本能に従うということが。

 侍からすれば異世界に、人斬りをこよなく愛するサキュバスが解き放たれた日だった。

展開は

  • どんどん○せ
  • イチャラブにしろ
  • いいから完結させろ
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