黒幕はフィーネ   作:雨宮417

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小説投稿して11話まで括弧付きでしゃべらなかった主人公がいるらしいですよ。
うちの子です。


お前をぶん殴る。泣いて謝ったって許してやらない

1

BF2にある資材貯蔵庫と札が掲げられた室内は他と比べかなり室温が低かった。

ここに来るまでの道中、逃走中の被検体が暴れたのか、かなりの職員が床に伏していた。

連絡を取り合う職員の話している内容を聞き取るにBF3へ逃げ込んだようだ。

その職員たちもすべて制圧し床に転がしている。

背後から忍び寄る私に気付かなかった彼らは悲鳴を上げる間もなく上にいた職員と同じ目にあう。

貯蔵庫の様子はBF1での武器研究室と同じ様相であった。

つまり工事現場や工場で見るような資材やパレットが積み重なっているような一般的な資材置場では無く壁一面、長方形のガラスケースが並べられていた。

木造の棺桶を縦に並べたと言えば理解しやすいだろう。

そしてその中身は人間だった。

目は閉じられ体中にコードを貼り付けられている。

中は緑透明な液体に満たされており頭部から漂う髪はゆらゆらとなびいている。

口元には何もつけられていない。

SF映画でよくみる呼吸のできる液体なのだろう。

ガラスケースに付いているモニターからは納められている人間の生命には問題がないことを示している。

病院で見る心電図、心拍、他何かを示している数字が多数。

開閉はこのガラスケースからは出来そうに無い。

壁を見るとケースを操作するためのタッチパネル式の端末が掛けられている。

所謂パッド。

ケース前まで持っていけるように取り外しができる。

壁に掛けられていた場所には充電機構を確認できた。

本当に一般的に使われるパッドに近い。

しばらく端末を操作する。

この端末でも開閉はできない。

指定した場所に輸送できるようだ。

研究室、準備室、廃棄室、搬入口。

それぞれの部屋で受け取りその部屋から開閉を操作できるようになっている。

無駄に凝っている。

文字通りの資材貯蔵庫。

仮にこの部屋へ外部の人間が侵入し捕えられた人間を解放しようとしてもそれぞれの部屋に送るしかない。

職員は送られた部屋で待ち構えて配送された人間を人質にもできるだろうし、侵入してきた人間を袋のネズミにもできるわけだ。

舌打ちをしながら端末を操作する。

画面をスクロールしていくと資材一覧表という項目が確認できた。

タップする。

結構な数のフォルダ。

だが親切設計、右上に検索欄がある。

小日向未来と入力する。

少し経ってヒット。

 

いた。未来は確かにここにいたんだ。

逸る気持ち、指先は震えている。

顔写真に全裸の写真、管理番号、年齢、身長、体重、経歴、そして能力。

素の状態での聖遺物及び人工聖遺物に対する適合率、出力基準値、発動値、特性値。

対応するエネルギーの種類。

備考には簡易検査にて干渉性に関して極めて高い能力を持つため本部にて精密調査と書かれている。

再度項目を一番上まで戻してみると今日の午後に本部受取済とある。

タップ。

詳細情報に画面が切り替わる。

大手配送業者の名前。

そして配送先住所。

配送時の事前連絡、搬入方法手順まできっちり載っている。

まるでお役所仕事。

記入漏れなど許さないとばかりに隅から隅まで書かれている。

写真を撮る。

必要な情報は手に入れた。

しかし画面を戻し最初にあったフォルダを確認する。

資材一覧、移送済、使用中、使用済、調査前、調査中、解体済、処分済。

いくつか不穏な文面が見受けられる。

よせばいいのに、見なければいいのに。

そのまま未来を追いかければよかったのに。

私の指はタップする。

何千人もの名前がずらり。

 

スクロール。

何人も見知った名前を見かける。

ライブ後に失踪した。

同じ学校でいじめられていた人。

一年生だった頃は同じクラス。

二、三年は別のクラスだった。

写真に目を通す。

顔写真、裸体、そして脳。

剥き出しの筋線維、腹を裂かれタグを縫い付けられた臓器、ガラス瓶に入れられた眼球、爪、毛髪、歯、舌、乳房。

そして緑の液体に揺蕩う白い骨、全身骨格。

余すことなくバラバラにされ、それぞれに詳しい調査結果が記載されている。

脳はやはり統計よりエネルギー調整機能が他の臓器に比べ高い。

眼球の強化は硝子体を直接機能強化するよりも人工物に入れ替えた方が向上が見込める。

脳以外の神経も人工物に置き換えた方が反応性が向上する。

臓器は不要いっそ脳以外すべて人工物で良いのでは。

次回の調整会議で提案予定。

解体済。

私のかつてのクラスメイトを何人も見つける。

学校の事件で転向していった何人か。

タップ。

同様の写真。

但し脳には電極が刺さりその電極から延びるコードはまた別の脳が繋がっている。

廃棄処分。

かつてテレビに出ていたが今は見ないタレント、汚職の発覚した政治家、起業家、無差別殺人で死刑になった犯罪者、病院で不祥事を起こして刑務所にいるはずの医者――。

私でも知っている名前がいくつもいくつも出てくる。

 

そしてわたしのなまえ。

他の人と同じように顔写真に全裸の写真、管理番号、年齢、身長、体重、経歴。

空欄もあるが備考欄に記載がある。

現在唯一確認されている聖遺物との融合症例第一号。

―月―日より行方不明。

家族からの聞き取りでは友人の家に泊っているとの話だが家族も友人宅を把握しておらず行方を捜索中。

確保次第本部へ移送する事。

 

 

 

2

この研究所に入り、そして下る度に私の頭に響く声は大きくはっきりと聞こえる。

聖遺物との適合率は過去最高潮。

本来ならばすでに倒れ伏している時間にも関わらず歩みに乱れはなく、さらに地下へと下る。

BF3。

眼前には本来は巨大な扉があったのだろう。

奥にそれらしきものが転がっている。

扉事態に傷はなく支えていた鉄筋がコンクリート付きで千切れている。

扉があった位置はぽっかりと空洞になっているから通る分には支障はない。

扉を拾う。

見た目通りの重量を発揮するはずなのだが今の私には手折られた花ほどにも感じられない。

そのまま引きずる。

直進し続け階段。半階分の下がり具合。

そして扉はない。破壊されている。

持ってきた扉が引っかかる。

少し考えて二つに折り曲げる。

反対にもう一度。

もう一度。

何度か繰り返し。

やがて耐え切れなくなった扉は二つに割れた。

それでも通るにはぎりぎり。

両手で鋼板を引きずり扉をくぐる。

開けた眼前。

真っ白。

すり鉢状の広場。

いや、天井と併せて見ると球状と言うべきか。

先ほどの階段を下らなければ斜め上に見えるガラス壁の視聴場に着くのだろう。

反対側まで目を凝らすと床下にはガラスケースが納められ、脳が液体に浸りコードによってつながっている。

身長分の段差を下りて振り返る。

目線の先には、やはり脳。

踏んでいた箇所こそ滑らかな白色タイルだがその下にはガラスケースが納められている。

何百だろう。

直視すると頭がおかしくなりそうだ。

目を閉じ、開く。

声は静かになっていた。

もう聞こえない。

ただただ破壊衝動が沸き上がる。

すり鉢状の一番下。

知らない3人組と対面する白衣を着た頭皮の薄い男性、銃を構え包囲する武装職員、そして時代錯誤な鎧を着て刀剣を手に持つ兵士。

研究者の後ろには円筒があり足元の脳から延びているコードは筒の中に繋がっている。

男性は勝ち誇ったかのように大声で笑っている。

小物臭いセリフを吐きながら自分の研究について語っている。

 

フィーネに勝つ為、そして私自身の功績によって人類は進化する。

錬金術によって人をッ、神にッ。

誰にも成しえなかったことだ、お前たちもその礎にとなるのだッ!!

広場には轟笑が響き渡る。

 

フィーネ。

その名前をあなたから聞くことになるとは思わなかったよ、先生。

手に持つ扉を装甲兵士に投げつける。

爆音。

音速を超えて飛来した金属板により腹から真っ二つになる。

噴出する鮮血、人工血液、そして床に刺さる扉。

落下する上半身と崩れ落ちた下半身から内臓など零れ落ちない。

赤色の金属構造、火花の散るケーブル。

機械人形。

人間だった頃の証は強化ガラスに置き換わった頭蓋の中にある電極の刺さった脳しかない。

脳こそが聖遺物に最も適応するのならそれ以外はすべて機械、人工聖遺物で構成された躯体に置き換えてしまえばいい。

そんな狂気の発想を大真面目に研究して実用化してしまった。

護国強兵計画、そして神器計画。

第二次大戦中から風鳴機関、風鳴訃堂によって影より進められた国防計画。

同盟国(ドイツ)、そして植民地(満州国)より手に入れた聖遺物と技術により国を脅かす特異災害への対抗策としてここに完成を見ていた。

突然の攻撃に怯え、後退るかつての主治医へ顔を隠していたヘルメットを投げつける。

お前の待ち望んだものだ。

絶叫。恐怖。歓喜。

ごちゃ混ぜになった表情で叫ぶ。

「融合ォ症例ィ第一ごーーーーうッッ!!」

「イライラする。だからお前は、お前だけは必ずぶっとばす」

 




研究室の探索パートをカット。
ながなが書いても面白くないから仕方ないね。

この研究員一応オリジナルだけど作中にはすでにでているのよ。
設定的にはフィーネに対して自身が錬金術師というのを隠し通してリディアンの研究データを奪ったり、響の研究データを最後の一押しとして人工聖遺物を完成させた有能枠。

それはそれとして外道なので末路は決まってるね。

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