黒幕はフィーネ   作:雨宮417

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この時期の防人はまだかわいらしい言葉遣いのはずなのに防人語しか出てこない。(頭を抱える)


響ちゃんピンチ。良かれと思ってノイズを派遣したフィーネさん(戦犯)

1

混乱する戦場から真っ先に立ち直ったのはカリオストロだった。

片手で少女を抱きながら男性の後ろ襟を掴み跳躍する。

両者から苦悶の声が漏れる。

そのまま包囲を飛び越え突き刺さった鋼板の後ろに着地。

それを追って銃口が向けられるが放たれた銃弾は障害物に阻まれ弾かれる。

左右から機械人形が迫る。

着地の硬直で再度回避することは敵わない。

正しく言うならば両手で持っている荷物を見捨てればそれも可能だろう。

しかしカリオストロはそれをするつもりはなかった。

情が湧いたという訳ではない。

する必要がなかった。

爆音と共に片方が吹っ飛ぶ。

飛んでいった機体は包囲を狭めようとしていた何人かを巻き込みながら壁に激突。

響の放った右裏拳。

胸部に直撃したそれはただ力任せに振られた一撃だった。

技術など微塵も感じられない。

そしてもう片方の手は鋼板を振り上げている。

一歩、もう一機の機械人形に踏み込んで振り下ろされた。

身近で鳴り響く爆音に少女は身を竦ませる。

後に残ったのは全身を地面と金属に押し潰されたスクラップ。

左右の手足こそ満足しているが脳を収納している中枢たる頭部、そして胴体は完全に一体化して最早役目を果たすことはない。

隙間から流れる赤色の人工血液と緑透明の保護液は互いが混じりあって床を汚し、甘い匂いを周囲に拡散した。

人の血液ならば鉄臭さにえずくだろうが、そうした特徴的な匂いはしない。

そのまま戦線を前に移そうとする響にカリオストロは声を掛ける。

「ちょい待ち、背中の武器置いて行ってくんない。こっちは玉切れなの」

手をひらひら振る。

響は視線だけを向け背負ったリュックを投げ渡す。

「サンキュー、というわけではい」

そのまま男性に受け渡す。

「はいよ」

返答後には溜息。

しかし動作確認に淀みなし。

カリオストロは肩に手を置き応援する。

「お父さんなんでしょ、娘にかっこいいところ見せてあげなさいよ」

「本職は航空機なんだけどなぁ」

手慣れた手つきで影から射撃。

生身の相手であるならば的確に打ち抜き無力化していくがやはり全身を機械化した相手には痛手とならない。

だが飛び出した響が迎え撃つ。

鎧袖一触。

跳び蹴り、振り下ろし、蹴り上げ、跳ね上げ。

流れるように全身を使い武闘を叩き込む。

目標は一直線。

かつての主治医に最短で突き進む。

「非常識な」

円筒の根元でタブレット端末を操作する医師は口から唾を飛ばし吐き捨てる。

機械人形に搭載されている魔力生成器。

そして生命バッテリー。

魔力と感応状態の人工聖遺物の強度は第二次世界大戦で使用された反応兵器を食らっても刃先が僅かに欠ける程度で済むだろうという試算。

それを生身の拳で突き破ってくるとは。

「素晴らしい。研究のし甲斐があるじゃないか。融合症例、立花響」

脂ぎった頭部を光らせ嫌らしく顔を歪ませる。

「ばらして、並べて、晒して、揃えて、洗いざらい調べつくしてあげようじゃないかぁ。

ああ、君が入院していた時のようなままごとじゃない。本部に移送してそのすべてを――徹底的に、徹底的にッ」

響の耳に高笑いが届く。

響にとってあの担当医はこうして会うまでは櫻井了子や風鳴弦十郎同様に数少ない信頼のおける大人の一人であった。

自分の事を親身になって心配してくれ、頼りにならない警察や教師に比べれば、これが正しい大人なのかと思っていた。

いつの間にか担当が変わっていても感謝は変わらず。

だが、だが。

表で笑顔を見せてその腹では自身の知識欲と功名心で塗りつぶされている。

それを響は残念に思うが。

「―――」

言葉は無し。最短距離を突き進む。

遮る障害は悉く粉砕。

飛び交う弾丸、剣線、紙一重で避けつつ的確に相手を行動不可能にしていく。

しかし当然最短で突き進むということは打ち漏らしもあるということ。

後方の三人に機械人形が迫る。

ゆえにカリオストロは影より躍り出た。

姿勢を低く肩を大きく揺らしながら距離を詰める。

「せーのッ」

気合を入れ、タイミングよく腰を捻り拳の連撃を叩き込む。

一発、二発、三発四発五発六発七発。

錬金術により強化された肉体であっても響のように機械人形を一撃で破壊に追い込むことはできない。

しかし大きく体勢を崩すことはできる。

「チャーンス」

軽い口調で大きく跳躍、顎を下から打ち上げる。

そして蹴撃。

胴体に直撃した一撃は機械人形を空中から広場の中心、端末を操作していた主治医の眼前に墜落させる。

そして間髪入れずその躯体は縦に両断。

分かれた機体から響の姿が現れる。

「止めろ」

投降勧告。

外道であっても響には積極的に殺すつもりはなかった。

だが当然怪しい動きをすれば手足の三、四本は引っこ抜いても問題ないと考えている。

主治医もそんな響の心情を察したのか、停止命令を出す。

そして主治医はそのまま床に端末を置き、円筒の根元で頭を抱え這いつくばる。

動くものは無い。静寂が広場に戻る。

機械人形も、武装職員も動かない。

弛緩した空気、長時間の疲労が全員を襲う。

「とでも思ったかッ!!」

円筒に備えつけられたスイッチに向かって手を振り下ろす、はずだった。

鮮血が飛散する。

びたりと手首が地に落ちる。

「あ、あ、ああああ手、手、わたしのてぇ――」

「往生際の悪い」

白衣を掴み、円筒から引き剥がすべく後ろに放り投げる。

察するにこれが彼の切り札。

中身は窺えないが響の脳に破壊せよと声が響く。

しかし今はこれ以上余計なことをされない様に取り押さえておく方が先。

「おかしなことをするな」

そう言って振り向いた響の目に映ったのはカラフルな杭により地面に縫い留められた主治医の姿だった。

言葉にならない空気の塊を口から吐きながら全身を炭化していく光景は見知ったもの。

次の瞬間、間隙無く天井から降り注ぐ多数の杭。

「ヤバッ」

とっさに反応できたのはやはりカリオストロ。

これまで幾多の指令により闘争に身を置いてきた武闘派錬金術師は頭上に障壁を展開し二人を押し倒す。

彼らから離れた位置にいる響はその光景を目に収め状況を察した。

「このタイミングでッ」

特異災害、ノイズ出現。

とっさにノイズが落ちてきた天井を見るがすでに眼前には鋭い穂先。

回避も迎撃も間に合わない。

ならばと咆哮。

増幅された振動波はノイズの体構成を破壊し黒粉へと変えていく。

む、と唸る。

響の顔面に黒粉が降りかかる。

とっさに手で振り払うがその先にはまたノイズ。

迎撃しようと身構えるが背後から衝撃、吹き飛ばされる。

思わず体を確認する。

――大丈夫、炭化していない。

咄嗟に機能をリビルドしたがバリアコーティング機能はしっかり起動している。

これがなければノイズに接触したとたんにお陀仏。

しかしその心配がないのならば。

突進してきたナメクジ型を空中で蹴り飛ばしその反動で体を回転させる。

手に持った鋼板も同じように流れに沿って回転。

空中から此方を狙うノイズを裁断していく。

途中飛びかかってきたノイズを足場にカリオストロ等に合流する。

着地した響は後ろを振り返る。

ノイズは機械人形には見向きしない。

彼等の基準ではもうあれらは人間ではないのか。

武装職員は抵抗も逃げる素振りもなくノイズと同化し炭化していく。

彼等も知らずの内に、彼等自身の脳に差し込まれた電脳チップが上位者の最後に下した命令が効いているためだろう。

痛みはあるのだろうか。悲鳴も上げず崩れていく彼らにライブの光景を重ねる。

しかし今は。

「生きることを諦めない」

拳を固く握りしめノイズに突貫する。

 

 

 

2

リディアン音楽院地下にある特異災害対策機動部には警報が鳴り響いていた。

施設に併設する一課、二課では共に職員が慌ただしく行き来している。

「ノイズ出現位置特定しました。出現位置、北海道千歳郊外にある動物園。すでに現地の一課、および自衛隊が市民の避難を進めております。」

「現地の映像を映し出せないか」

低く張りのある声が指令室に響く。

直立して腕を組む特異災害対策機動部二課司令。

すでに指令室では特異災害の発生警報から十数分も経たずに万全の体制が整えられていた。

深夜にも関わらず職員が集まれたのは地下施設にしっかりとした居住区画があるためだった。

特異災害対策機動部の中枢が女学院の地下である以上安易な出入りはできない。

まして深夜に職員が、特に男性が、都内各地から集まるなど万が一、一般人に知られてしまえばリディアンが築き上げてきた名声に傷がつく。

ひいてはスポンサーからの支援も少なくなるだろう。

そうならない為にも職員には各個人に施設内に居室が割り当てられていた。

とはいえ日の当たらない地下。

精神に不調をきたす恐れもあるので地下敷地外にも寮を完備している。

各職員は数日間は地下に籠り勤務を行い、休日には外にある寮で暮らす生活をしているものも多い。

また一部の職員には地下勤務とか全然平気と言うものがおり、地下勤務のみで一切地上に上がらない者もいた。

そうした職員は福祉上問題になるので強制的に外泊させるのだが。

今回は地下に残っている職員が多かったため迅速な体制が整えられた。

内心ではこんな深夜に叩き起こしやがってと思っているかもしれないが、その分手当を付けるので我慢してくれと言う他ない。

「現地カメラの映像を出します」

オペレーターの一人が対応する。

中央にあるモニターにいくつもの映像が映し出される。

しかしどの映像にもノイズは写っていない。

「――、他のカメラはどうだ」

「出します」

しかし新たに映し出された映像にもノイズは写っていない。

「これで全部か」

「これで全てとなります」

特異災害警報が鳴っているにも限らずノイズの出現が確認できない。

櫻井了子の異端技術により日本全土に張り巡らされた探査機能は絶対と言っていいほどの精度を誇る。

にもかかわらず屋内も屋外も、やけに多い監視カメラの一つにもノイズの痕跡を確認できないとは。

何かがおかしい、そう思った時。

「おじ様」

指令室に少女が駆け込んでくる。

警報を聞いて寮から駆け出してきたのだろう。

「ノイズが出たのですね、すぐに急行します」

だがしかし。

「――、待て翼。間に合わん」

直線距離約800㎞。

仮に政府専用機で急行したとしても空港までの移動時間を含め一、二時間は掛かるだろう。

それだけの時間が経ってしまえば現地へ着く頃にはノイズは自壊作用により消滅。

ノイズが居ないのに貴重な最後のシンフォギア装者を無暗に派遣するわけにはいかない。

口を噤み足を止める翼。

「民間人の避難は現地の自衛隊に任せろ、緒川」

傍に立つスーツを着た男性が頷く。

彼もこの件が何かおかしいと感づいていた。

ゆえに現地に赴くのは特異災害対策機動部二課に置いて十分以上の戦闘、生存能力を持つ忍ぶ者。

「まかせた」

言葉少なく激励する。

場合によっては死地になるだろう場所へ実績からくる信頼を持って送り出す。

 

緒川慎次、出撃。

 




OTONAは致命の一撃を食らっても動き出すので実質、隻狼のKYOSYAなのでは。
ほらGENITIROはすごい死にづらいしISSINも衝撃波飛ばしてくるし。

なおシンフォギアでは爺が火遁で戦う模様。
これは怨嗟インストールしてますね。(確信)

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