黒幕はフィーネ   作:雨宮417

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響ではなく別の人です。
モブにするルートと名持ちのルートどちらにしよう。
(気分で決まる模様)


人の数だけ物語がある

1

広く、無機質な部屋。

大型の機器、そしてケーブルが床を占めているものの移動の動線には影響は無い。

天井の数ヶ所にある光源から放たれる光は部屋全体を影ができない様に照らしている。

そして中心の手術台に拘束されている裸の俺自身。

周囲には丁寧に準備をしている男たち。

壁にはぐるりと色の違う部分があるが、お決まりの事を考えるのならば白衣を着た科学者がいやらしい笑みを浮かべているに違いはない。

なんとか拘束を解こうともがくが周囲の男達に抑えられ首筋に弛緩剤を打たれる。

身体から力が失われ、股間からは無色の液体が流れる。

彼らは何の感情も見せず、もくもくと台と俺を清掃する。

「数か月。

実に生きのいい検体だ。

手配してくれた彼には感謝の念が尽きえない。

君はあとどれくらい私たちに貢献してくれるのか。

実に、実ぅに楽しみだ。」

壁と天井に備えつけられたスピーカーから男の声が室内に響く。

この声はここに運び込まれたとき所長と呼ばれていた男の声だ。

性根の腐った野郎だ!!。

下水の汚物を体中に浴びて喜んで、腐臭をまき散らすドブネズミ!!

有らん限りの罵声を発しようとするが声は出ない。

「では今日の実験を開始しよう。

なに、我々にとってほんのすぐの事だ。

君にとってどうかは知らんがね。」

天井の光が光度を上げる。

ああ、糞が、クソが、くそが。

また、あんな―――。

 

 

 

2

記者をしていた俺はあのライブで妻と娘を失った。

妻は俺に釣り合っているのだろうかと思うほどいい奴だった。

気立てよく、快活で、あいつの笑顔が好きだった。

娘は妻に性格は似なかったが、笑った顔は若いころのあいつにそっくりだった。

家族を愛していた。

 

あの日俺は娘が通っている学校の小娘から取材を受けていた。

空調の効いた喫茶店でアイスコーヒーのグラスをストローでかき混ぜながら彼女を見据える。

記者が記者に取材するとかどうなんだとか色々言った気がするが、どうも彼女は俺が一時期追っていた全国の失踪事件に関しての情報が欲しいようだった。

同じ学校に通っている彼氏が千歳で発見され心身喪失の状態らしい。

失踪事件は彼のおまけに過ぎない。

失踪事件から彼の事を追いたい。

言い切る彼女に中学生の癖に彼氏かよと揶揄したが、そういえば妻との付き合いも中学からかと思いだす。

真剣な表情の彼女に折れた俺は当時の資料を一部渡した。

さすがに全部は渡せねえよ。

そう言った俺に十分ですとお礼を言い喫茶店から出ていった彼女はこのまま学校の部室に直行するのだろう。

「若さってなんなんだろうな。」

コーヒーのグラスに口づけ一気に呷る。

ストローが鼻に入りそうになった所は見られていない。

店員を呼び会計を済ませようとすると、お会計はすでに頂いておりますと言われる。

「可愛くねえガキだこと」

俺のかき集めた情報はアイスコーヒー1杯か。

安い情報料だこった。

だが何んとなしに心地よさも感じる。

誰かの為のジャーナリスト。

昔はそんなのも目指していたかもな。

 

北の春はまだ寒い。

平地に雪こそ無いものの山から下りる風は寒気を詰め込み吹いてくる。

辟易、ため息をつき、この後の予定を考えながら駅へ向かう。

 

俺に電話が掛かってきたのは夕刻、もう日も沈みかけで薄暗くなった時だった。

 

 

 

3

某病院で聞かされた妻と娘の死因は他の避難者の踏み荒らされたことによる頸椎の損傷。

他、身体に打撲痕や潰された痕跡もあったそうだ。

霊安室で見た家族は補修がされており見た目はおかしな感じはしなかった。

だが手を握れば体温は冷たく、指はぶよぶよとしている。

それがどうしようもないほど死んでいるのだと俺に理解させる。

うなだれ、立ち尽くす俺に遺体が残っているのは奇跡だと医者は言う。

家族が死んでいるのに奇跡だと。

思わず激高し殴りかかる。

拳は頬を突き、医者は派手な音を立てて転倒。

そのまま馬乗りになり何発が殴ったところで待機していた警察に取り押さえられ別室へ連れていかれる。

落ち着いたところで、、いや、落ち着いてはいないのだが、ましにはなった俺に対して先ほどの医者とは別の医者、それに警察の人間が説明をする。

ライブの死傷者はノイズによる炭化の他に生存者同士の脱出路の奪い合いにより殺傷された人が多かったそうだ。

妻と娘はそれに含まれる。

家族を殺したのはノイズじゃない。

ライブに来ていた人間だ。

再び激高するも警察の手で押さえられる。

葬儀屋の手配や政府の見舞金やら色々な話があったと思うがよく覚えてはいない。

 

俺は次の日から行動を開始した。

貰った情報を元にライブ当時の情報を集め始めた。

生存者は全国の病院に入れられていたが口の軽い奴らに金を握らせてリストの作成をした。

そして軽症ですでに退院している奴に話を聞きにいく。

あの惨事を生き残ったあなたの話を是非聞かせてください。

もちろん謝礼は致します。

そうして奴らの貰った手当からしては少額だが何人もの人から情報を聞き出す。

自分がどのようにして生き残ったか。

生き残り、罪悪感を覚えてる奴は途中で口を噤む。

そうでないやつはペラペラと喋ってくれた。

自分が押しのけた子どもがノイズによって炭になる様。

押し出し、踏みつけた人の感触、悲鳴。

つまりこういう奴はその後に後ろを振り返っているんだ。

振り返って、さらに犠牲を増やし生き残っている。

さも得意げに生き残った様子を語り、死んだ奴を間の悪い奴、運の悪い奴と、自分の事を普段の行いがいいから奇跡が起きたんだと平気な顔をして言うあいつらに対して、俺は怒りを顔には出さなかった。

お前たちには地獄をくれてやる。

ただ決意のみを滾らせる。

 

記事を書いたのはインタビューがある程度溜まった後でだった。

すぐさま馴染みの出版社に送る。

ツヴァイウイング・ライブの真実。

メールで送ったタイトルにはそう記載した。

着信。

興奮した様子の編集長の様子からこの記事が通る事を確信した。

 

 

 

4

世間は考えた以上に燃え上がった。

俺がインタビューした奴らはお似合いの末路を辿った。

失踪ならまだいい方だ。

朝の朝刊で身元不明の遺体が見つかっていたら自宅のリビングでくつくつと笑っていた。

普段から周囲に声を上げていたから、どっかの誰かに闇討ちでもされたんだろう。

だけどこんなもんじゃ足りなかった。

知り合いのコメンテイターに金を握らせてもっと拡散させる。

ネットでも生存者のリストやインタビュー内容を警察に追われないように慎重に掲載する。

一度火が付けば後は燃え広がるのみ。

俺の憎悪はこんなもんじゃない。

 

しかし期待に反して事態は呆気なく鎮火した。

きっかけはある学校の生徒が暴力事件を起こしたことだった。

その生徒はライブの生存者であり事件後、社会から、学校から、父親から否定され、自棄になり最終的に盛大に爆発した。

それを皮切りに生存者の現状が全国に発信される。

自殺者、失踪者多数。

急遽行われた国の調査でも異常な結果と判定された。

社会は手のひらを返し生存者を擁護し始める。

違う、そうじゃないだろう。

腐っているのは奴らで、助けてくださいと、哀れでか弱いふりをしているだけだろう。

どうしてそれが分からない。

俺は何とか流れを戻そうとリストからまだ所在のわかる生存者を選別する。

奴らの現状を再度記事にして社会から抹殺する。

 

こいつはどうだ。

ダメだ。

さもしおらしい様子でいる。

自分は蚊も殺しませんよとでも言いたげだ。

過去を漁っても周囲の追求には何も答えていない。

曖昧な表情でその場を濁すだけだ。

こいつはどうだ。

ダメだ。

何も考えていなさそうで記事にしてもインパクトが無い。

と言うより周囲なんて気にもしていないぞ。

あの生徒はどうだ。

学校で暴れまわった生徒。

警察の預かりになっている。

何とか調べるが強い記事は書けそうにない。

いや、今旬なのは彼女だ。

何とかこの記事で押そう。

かつての編集長に記事を送る。

返信が来るものの返事は芳しくない。

以前の記事はうまく捌けましたでしょう。

今回も自信を持って言えますよ。

そう言って何とか記事を掲載してもらう。

だがダメ。

世間は生存者を甘やかすがごとくどんどん態度を軟化させていく。

コメンテイターは度重なる失言からか番組を下ろされ自主休業。

どうする、どうする、どうする。

このままでは俺の、俺の―――。

頭を掻きむしる。

そんな俺に一本の着信。

編集長からだ。

「君の記事に合いそうな人がいるんだけどインタビューしてきてくれないか」

北海道に住むある家族。

小学生と高校生の姉妹

俺のリストにはない奴らだった。

すぐに飛ぶ。

目的の人物はすぐに見つかった。

住所から生活範囲まで編集長が手配してくれたからだ。

家も、学校も、交友関係、家族仲、過去も、今もすべて暴き立てる。

何日も掛けその姿を追い続ける。

警察に職質されかけるもうまく躱す。

そうして何日たっただろうか。

秋になりイチョウの葉が地面を敷き詰める中、妹の方が誘拐された。

 

俺も一緒に誘拐された。

 

誘拐方法はよくわからない。

いつものように姉妹を追っていたらいつの間にか真っ白い部屋にいた。

本当にいつの間にかだ。

前兆、予兆は全くなかった。

唖然とする俺達をよそに屈強な男たちが俺達を拘束する。

妹の方はすぐに我に返り暴れるものの、大人と子供、何より人数の差、力の差は歴然であり呆気なく縛られ運ばれる。

彼女が運ばれている間、俺は何もできなかった。

脳が現状を理解する事を拒んでいた。

なんだこれは。

一体ここはどこだ。

お前たちはなんだ。

そんな疑問も口からは出て来やしない。

完全にマヒしていた。

 

そこで俺は気付いてしまった。

俺は編集長に売られたのだと。

彼女を誘拐するために俺をここに来させたのだと。




二章中ボス戦を構想中なんだけど味方サイドの完全体キャロルが強すぎる。
出力70億とか軽く突破して神星かよこいつって感じ。
助けてイザークパパ。(パパ焼き)

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