やはり俺が一色いろはの家庭教師を任されるのはまちがっている。   作:まーが

2 / 7
敵に塩を送る?

「まあとりあえずそこは後日話し合うとしましょう」

 

「そこに対等な関係はないだろうなぁ」

 

この爆弾発言を聞くや否や俺はとんでもない地雷地帯に足を踏み入れたと自覚した。気心知れた人間相手だったら少し何とかなると思ったが、なるほどあの頃の彼女はどこか行ってしまったようだ。

 

「じゃあ先輩、早速教えてもらいますよぉ~」

 

「分かった。まずは英語からだけど、どこまで進んでる?」

 

基本的に今回の家庭教師の担当としては、高校の教科書や付随した問題、後は生徒の好きな問題集で躓くところがあればその都度足かせを外していくといった具合だ。

 

「先輩、私の志望校見てくれましたか?」

 

「ああ、用紙で見たぞ。俺と同じKO大学だったが」

 

「学部は未定ですが、とりあえず先輩と同じ文学部に行こうと思ってます」

 

「へ、へいへい。学部間の共通項として英語は肝要だからな、とりあえずここを固めさえすれば後は社会1科目をやって終わりだ」

 

「はいはい、社会は世界史なのでそこもお願いしますね♡」

 

うむ、つらい。着実に立派なストーカーと成り上がった(成り下がった?)彼女を俺と同じ所へ進ませるなどというのは矛盾めいたものが腹の中でうずいてむつかしいってもんだ。

 

「はぁ。んじゃま英語から....」

 

 

 

 

 

 

------------------------

 

 

 

 

 

 

 

時は過ぎ、気が付くと夕方の17時。今日は土曜日で、こいつには13時辺りから付きっ切りだったから少し休む必要があるだろう。

 

「よし、じゃあ休憩にするか」

 

「えっ休憩ですか?  はぁ~どうせ邪な先輩のことですから二人きりのこの状況にかこつけてあれやこれやと親が帰ってくるまでに済ませておくつもりなんですね全くこれだから先輩はしょうがないですどこからはじめますか流石にまだ外は少し明るいんでいきなり脱げはちょっと辛いかなと「スト―――――ップ!!」」

 

こう区切りを入れないとすぐに暴走する癖は中々譲らないな。...まぁしかし早口すぎて何を言っているか分からないのはここではある意味救われているのかもしれない。

 

「全く、人の話を遮るなんて家庭教師の名折れですよ」

 

「人の話っていうのは人に聞かせようとして初めて成立するもんだ。いいか、じゃあ少し休憩にして今日は親が帰ってくるまでにしようか」

 

「まあいいですけど。とりあえず飲み物とってくるんで何か飲みたいのありますか?」

 

「おっ悪いな。じゃあコーヒー頼むわ」

 

「はーい了解です!薬を入れやすいものを選んでくれて助かりますよ(この後輩にお任せください)」

 

「本音と建前が逆だ逆!」

 

「てへっ」

 

その場の勢いもあって1階へ駆け下りていったが...被害者(予定)に向かって犯罪予告もどきをしたのにも関わらずそのまま知らんぷりでいられるのって才能だろ...厚顔無恥も度を越えている。

 

 

 

かくて数分後。

 

 

 

「淹(入)れてきましたよ~」

 

「ダブルミーニングか。うまいな一色」

 

「まだ飲んでないのに上手いって言ってくれても私の好感度はこれ以上上がりませんよ!」

 

「いやそうじゃねえだろ」

 

 

わざとしらばっくれてんのか知らんが俺がボケてるみたいで嫌だな。

しかし飲んでみるとあらびっくり薬味はしない。当然一般に知られているコーヒーに薬味などしないが。

 

 

「本当に助かりましたよ、せんぱい」

 

「なーに気にするな。相応のものをいただいてやっていることだからな」

 

「無機質だった勉強に色が芽吹いたのは先輩のおかげですから。間近に先輩の顔があるだけで体が火照...安心します」

 

「なるほど」

 

 

これ以上何も言うまい。

 

 

 

 

 

 

 

「.....生徒会はどうだ?」

 

 

高校の話題に話を振ってみる。

 

 

「みんな良い子で助かってますよ。最初はそりゃ先輩頼ってましたけど、今はもう憂慮することもありません。心配は無用です!」

 

 

彼女の陽気な笑みに自然と俺もほほえましい気分になる。あれだけ子どもっぽかった奴も成長するんだから人間ってすごいよな、と老人らしい思考回路が...

 

 

「あっそうだ先輩」

 

「ん?」

 

「さっき"親が帰ってくるまで"いてくれるって言ってましたよね?」

 

「?...まあそれに遜色ないことは言ったが」

 

 

 

 

 

 

 

「今日、親は帰ってきません♪」

 

「え、お前どういうk「とぅーー!」ぐわぁ!」

 

 

 

 

 

考えをまとめる暇もなく唐突な一色のハグによりベッドに押し倒される。

 

不覚だ。このような隙はとらないようにしたかったが。

 

 

 

 

「はぁあぁあ~~~♡せんぱぁ~~い♡♡」

 

 

 

 

 

...とても幸せそうに抱き着いている彼女を見るとこれで良いんじゃないかという気持ちもあったが、ここで俺の理性の出番が...

 

 

 

 

 

 

(...いいにおいやばい)

 

 

大変だ。一色のにおいに包まれて俺の理性はトンズラをこいたらしい。

 

特にどうこうしようとせず、なすがままに彼女を受け入れていた。

 

 

「んん~~すぅ~~~♡♡はぁ~~~♡♡」

 

 

 

敵に塩を送る。

 

...その結果として塩以上のものを手に入れたわけだが、どうやらこちらとしては手に余りすぎたらしい。

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。