ダイヤのスラッガー   作:カザミドリ

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プロローグ 始まり

 

小さい頃、一度だけプロ野球の試合を生で観戦したことがある。

あの時は誕生日のお祝いにと、両親が俺の応援している球団のホーム球場に連れて行ってくれたんだ。

当時応援していた球団には、国民的に有名な選手がいて、俺はその選手に夢中だった。

野球はやるのも見るのも好きだったけど、その中でも俺はホームランというものが一番好きで、ホームランを打った瞬間こそが最も格好いい姿だと思っていた。

多くホームランを打つ選手の中でも、最高に格好いい一発を放つあの人こそが、俺の【ヒーロー】だった。

球場に着いて、プロの選手たちが到着し、試合前の練習中にあの人が姿を現した時はテンションが跳ね上がった。

興奮しながら俺はあの人にサインをねだった。

そしたら、彼はそれに応えてくれて、サインを書いてくれたんだ。

正直、テレビ以外で初めてあの人を間近で見られたのと、念願のサインが貰えたのが嬉すぎた。

興奮のあまり試合のことは半分忘れかけていたくらいだが、そんな俺の姿を見て両親は微笑んでいたな。

試合が始わると、俺の応援しているチームは負けていた。

だが、その日、松木選手はピンチから一気に大活躍を見せたんだ。

最初にホームランを放った時、それまで落ち込んでいたファンたちが一斉に舞い上がった。

たった一振りで、これほどまでに人の心を動かす。その力に俺は驚いたし、感動した。

テレビで何度も見てきた光景だが、生で見る迫力はあまりにも違った。

 

「ワアアアアアアアアアア!!」

 

「すげぇぞ!!松木!!」

 

「このまま打ち続けてくれ!!」

 

(うわぁ、凄く格好いい。なんて人なんだ……)

 

正式に次の打席でもホームランが飛び出し、観客は彼を称えるように再び歓声をあげる。

しびれるような感覚に包まれながら、俺はベースを回る松木秀喜を見ていた。

点差があと二点まで縮まると、応援席からは 次も打て というコールが巻き起こる。

俺もスタンドの人たちと一緒になって、夢中で声を張り上げた。

最後の打席、ランナー満塁であの人が回ってきた。

だが相手チームも抑えの切り札を投入し、二ストライクに追い込まれてしまう。

スタンドには諦めムードが漂い始めていた。

でも、次の球であの人は試合を決めた。

最後の決め球を芯で捉えた打球が、一直線に俺たちの応援席へと放たれたサヨナラホームラン。

あの光景は今でも忘れることはない。

 

「……………」

 

言葉にならなかった。

あの瞬間、俺は本当に野球の虜になったんだ。

いつか俺もプロになって、ホームランバッターになりたい。そんな一つの夢を抱いて。

これが、俺が本格的に野球を始めた理由だ。

それからは毎日、時間の許す限り白球を追い続けた。

周りが呆れるくらいがむしゃらにのめり込んで、野球のない生活なんて考えられなくなった。

幸か不幸か、野球ができる喜びでどこへでも行った。

近所の野球好きのオッサンたちや、同年代の仲間と草野球をしていた頃は本当に楽しかったし、完全に 野球馬鹿 になっていた。

だが数年経って、家の都合で野球ができる時間が減っていった。

もともと姉と弟がいたんだが、その後に双子の弟妹と末っ子の妹が生まれた。

姉の反抗期や、下の弟妹たちの世話が必要になった。

家族のために自分のやるべきことをしなければならない状況で、好きな野球も望むようには手を出せなくなった。

それでも、夢への情熱だけは失わなかった。

自分にできる範囲で必死に取り組み続けた結果、俺は大きな舞台に立つことができた。

中学生になって、部活動で一生懸命やってきた甲斐あってか、一年生の頃から試合に出場できた。

県大会や地方大会にも何度も勝ち進んだ。

そして、三年生の最後の大会。チームは地方大会で優勝し、念願の全国大会出場を決めたんだ。

ここまで来た以上、狙うは全国制覇のみ。

ひたすら自分のプレーをアピールしながら、全力を尽くした。

初戦を突破し、迎えた準々決勝。

優勝候補の本命と言われるチームとの一戦。

 

「両者整列! 4対3で勝者は堺第二中学。両者互いに礼!」

 

「「「ありがとうございました!!」」」

 

それが、俺の中学野球最後の試合になった。

 

「のう、自分。水野くんやろ?」

 

整列を終えたあと、独特なイントネーションの声に呼び止められた。

 

「……ああ。君は武内、だったよな」

 

「いやぁ、自分えげつないな! 完敗や、完敗。わし、あんな打球飛ばされたん初めてやわ。正直、個人としてはボコボコに負けたと思ってんねん」

 

武内はニカッと笑い、首の後ろをかいた。

 

「せやけどな、野球は九人でやるもんやろ? 今回はたまたま、わしの周りにええ奴らが揃っとっただけや。運が良かったんやな、わしらは。仲間に助けられて、運良く勝てただけや。……せやけど次は、運やなくて実力で、自分も試合も両方ボコボコにしたるからな! 覚えときや!」

 

悔しさがこみ上げるが、その真っ直ぐな瞳に言葉が引き出される。

 

「……いや、次こそは俺が実力で勝つよ」

 

「ええ返事や! 気に入ったわ。自分、ええツラしとる」

不敵に笑う武内。マウンドでの繊細なピッチングからは想像もつかない、図太い男だ。

 

「……俺たちに勝ったんだ、武内。どうせなら全部勝てよ」

 

「当たり前やん、誰に言うてんねん。……ほな、それまで。あと、良かったら連絡先教えてや。君とは長い付き合いになりそうやからな。なぁ、ええやろ? 減るもんやなし!」

 

「減るもんじゃないが、お前、さっきから減らず口だけは一丁前だな」

 

俺が苦笑いしながら返すと、武内は ははっ、よう言うわ! と声を上げて笑った。

お互いに顔を見合わせてニカッと笑い、どちらからともなく右手を差し出す。固い握手を交わしたその手のひらは、お互いにマメだらけだった。

 

「これから長くなりそうだな、武内。それじゃあ、また」

 

「次やるときは、もっとどぎついのかますで! わすれんといてな!」

 

武内と軽く言葉を交わした後はベンチへと向かう。主将として最後の仕事をしなければならない。戻るとそこには敗戦後の重苦しい雰囲気が漂っていた。

ベンチの皆が悔しそうに泣きそうな顔つきをしてるのを見て、自分自身も実感がわいてきた。

 

(……やっぱり負けたんだな)

 

俺はあえて声を張り上げた。

 

「全員、とりあえず荷物をまとめてここから出るぞ! 次のチームが来てるし迷惑かけられないから、ミーティングは球場を出てから始める。今は撤収して早く明け渡すぞ!!」

 

「「はい!!」」

 

球場を離れて俺と監督の野口先生は新聞の記者さんから取材を受けて、取材も終わると皆のところに向かう。

元々俺達の中学は、県大会上位には顔を出すチームではあった。

そこに、地元でも有名な硬式野球のチームが諸事情で無くなり、部活に転向してきたことで一気に強くなった。

硬式経験者の実力者が多く、とても個の強い集団だったが、こうして皆でこの全国の舞台にまで上がれたのはみんなのおかげだろう。

 

「全員いるな? ……よし、ミーティングを始めるか。…………でもその前にみんな、今日はご苦労だったな」

 

野口先生のこの一言で、皆が抑えていた感情が溢れ出してしまう。

 

「うわああああああ、俺がもっと抑えていたら、みんなぁ……!」

 

エースの孝が泣き崩れる。本当に優秀な投手だ。今日も自責点は二点。

 

「なに言ってんだよ孝。お前がいなきゃここまでこれなかった。お前で打たれたなら誰も文句なんて言えないさ」

 

「ずびばぜん、佑都キャプテン……俺のエラーで……っ!」

 

守備職人のナベこと渡辺大樹が声を震わせた。

 

「これまでナベのファインプレーがあったから俺達は大崩しなかったんだぞ。ミスなんて誰でもする。いつまでも引きずんなよ?」

 

「キャプテン……ううううっ」

 

「それを言ったら俺だって……」

切り込み隊長の佐々木淳吾が声を漏らす。

 

「淳吾の明るさがチームのムードをよくしてた。お前の守備と足は、いつだって頼りになってたよ」

 

「キャプテン、すいませんでした……俺今日、何も出来てなくて……」

二番手ピッチャーの田中一志。

 

「一志の存在がエースの負担を軽減してくれた。何も責めることはねぇよ!」

 

「ゆうどぉごめん、最後繋げられなかった」

 

副キャプテンの佐藤陽二。

「気にすんな陽二。お前が陰で支えてくれなかったら、このチームはここまでまとまらなかったさ」

 

「……そうだな」

 

野口先生が静かに言った。

「今日負けたのは、四死球を出した孝のせいだ。エラーをした大樹のせいだ。最終回に佑都まで繋げられなかった淳吾、一志、陽二のせいだ。そして一本しかホームランを打てない佑都のせいであり、皆の力が足りないせいであり、勝利に導けなかった不甲斐ない監督の俺の責任でもある。負けたのは……一人ひとりじゃなくてチーム皆の責任だ。本当によくやった。でもこうして結果は叶わず負けてしまうことはある。抑えないで吐き出せ!! 本当に…………勝たせることが出来なくてすまなかったな」

 

「先生……っ!」

 

「先生、ありがとうございました……っ! 俺たちをここまで連れてきてくれて……本当にありがとうございました……っ!」

 

俺が深く頭を下げると、全員がそれに続いた。

 

「「ありがとうございました!!」」

 

地面の乾いた砂に、皆の涙が次々と吸い込まれていく。

周囲からは、こらえきれない嗚咽が漏れ続けている。

けれど、俺の胸に去来していたのは、不思議なほど静かで温かい感情だった。

事情があって俺自身が毎日練習に顔を出せたわけじゃない。それでも、こいつらは俺を主将として受け入れ、協力してここまで連れてきてくれた。本当に最高の仲間たちだ。

 

(ああ……やりきったな。みんな、こんな俺についてきてくれて、ありがとう)

 

視界は涙で潤んでいるけれど、それは悔しさというより、この三年間への、そして目の前で泣きじゃくる仲間たちへの純粋な感謝だった。

この日で俺の中学野球が終わった。

余談だが俺達に勝った堺第二中学はその後勝ち進み全国の頂点にたったようだ。

連絡先を交換した武内から 優勝したで~! 自分らとの試合が一番キツかったわ! という報告を見て、自然と祝福する気持ちが湧いてきた。

 

『次は負けねぇ。……まあ、おめでとう』

 

空を見上げると、夏の太陽がどこまでも高く、眩しかった。

中学野球を引退して数ヶ月。進路希望調査の紙は、白紙のまま机の端で丸まっている。

 

「佑都。……お前が今、野球を続けるかどうかで悩んでるのは知ってる」

放課後のグラウンドの隅。淳吾が絞り出すような声で言った。孝も陽二も、本当は俺を誘いたい気持ちを必死に抑え込んでいるのが伝わいてきて、それが逆に胸に刺さった。

 

「家のこともあるし、お前がどれだけ大変かもわかってる。だから、無理に 一緒に来い とは言わねぇ。……けどな、お前は野球をやめるなよ。それだけは、忘れないでくれ」

 

三人はそれだけ残して、逃げるように去っていった。 野球をやめるな という言葉が、今の俺にはひどく重い呪文のように聞こえた。

家に帰れば、慌ただしくも愛おしい日常が俺を包む。

 

「おかえり、兄さん。秋人達が騒ぐとお腹が空くと思って、おにぎりを作っておいたよ。」

 

3つ下の夏樹が、飄々とした態度で皿を差し出す。学年トップクラスに優秀なこいつは、本当なら学費の高い進学校を狙える実力がある。なのに、俺の前ではそんな素振りも見せず、密かに難関校の資料を眺めている夏樹の姿を、俺は知っている。

 

「……おう、ありがとな」

 

おにぎりを頬張っていると、6つ下の 秋人 が「にいちゃーん! チャンバラしよ!」と木刀を抱えて突っ込んできた。その後ろでは、少し引っ込み思案な 秋奈 が俺の服の裾をそっと掴んで、順番待ちをしている。

 

「にいにー、だっこー!」

 

さらに足元からは、末っ子の 冬華 が両手を広げてせがんでくる。

どんなに将来に悩み、バイトの時間が迫っていても、この子たちの純粋な期待を裏切ることだけはしたくなかった。

 

「よし、秋人。少しだけだぞ。そのあと、秋奈と冬華も一緒に遊ぼうな」

 

「やったー!」

燥ぐ弟妹たちの相手をしながら、俺の頭の中では天秤が激しく揺れていた。

(夏樹の進学費用、秋人、秋奈、冬華……この子たちのこれからの生活。俺が野球を諦めて、地元の高校に通いながらバイトを増やせば、少しは家計が楽になる。でも、もしもプロに行けたら……いや、そんな保証はどこにもない)

家族のために今すぐ働くべきか。それとも、まだボールを追いかけるわがままを通すべきか。答えは出ないまま、時間だけが過ぎていく。

バイトを終えて家路を急ぐ。夕闇が迫る中、頭の中では先ほどの淳吾たちの顔が離れない。 野球をやめるな という言葉が、冷え込み始めた風と一緒に胸の奥に居座っていた。

 

「ただいま……。ん、靴が多いね?」

 

玄関を開けると、見慣れない、手入れの行き届いた革靴が一足。不思議な高揚感が混ざり合う中、居間の戸を開けた。

 

「おかえり佑都。あんたにお客さんよ」

 

母さんの声に導かれるように視線を上げると、そこには意外な人物が座っていた。

 

「野口先生!? え、何かあったんですか?」

 

「よぉ佑都。西東京の高校から、特待生の話を持ってきたぞ」

 

野口先生の隣には、スーツを隙なく着こなし、知的なオーラを纏った女性が座っていた。彼女はスッと立ち上がると、眼鏡の奥の鋭い、けれど温かみのある瞳で俺を見据えた。

「初めまして、水野佑都君。私は青道(せいどう)高校野球部副部長の高島礼です」

 

青道……SEIDOU。野球をやっていて、その名を知らない者はいない。毎年甲子園を狙う全国屈指の名門校だ。

 

「えっ……あの青道ですか!? なんで、こんなところに?」

 

「野口先生に案内していただいたのは、あなたを我が校にスカウトするためです。中学でのあなたのプレーを以前から拝見していました。私たちは、あなたのずば抜けた野球センスに惹かれたの」

 

高島さんの言葉には、こちらの心を見透かすような力強さがあった。

 

「私たちと共に全国制覇を目指して、青道で野球をやってみないかしら?」

 

あまりに突然の、そして破格の誘い。だが、真っ先に頭をよぎるのは家の経済状況だ。東京の私立なんて、うちの家計でいけるわけがない。

そんな俺の不安を察したのか、高島さんが手元の資料を机に置いた。

 

「もちろん、私立ですから学費や寮費の心配があるのは重々承知しています。ですから今回、私たちは佑都君に 【特別待遇生】 としての枠を用意しました。入学金や授業料の免除はもちろん、寮での生活費に関しても、ご家庭の負担を最小限に抑える準備ができています。経済的な理由であなたの才能を埋もれさせることは、私たちの本意ではないの」

 

その破格の条件に、居間の空気が一変した。すると、それまで黙って俺の顔を見ていた野口先生が、身を乗り出すようにして口を開いた。

 

「……佑都。お前が家族のために野球を諦めようとしているのは、痛いほど分かっている。だがな、俺はお前に野球を続けてほしいんだ。いや、続けなきゃいけないんだよ」

 

先生の目が、かつてないほど真剣に俺を射抜く。

 

「お前ほどの才能を持った選手が、家庭の事情だけでグラウンドを去るなんて、俺は指導者として絶対に許したくない。今回持ってきた青道の話は、お前の人生を変えるチャンスだ。先生はこの場所でプロまで駆け上がれると信じているからだ。お前のバッティングを、もっと広い世界で見せてやれ!」

 

先生の熱意が、俺の中にあった 野球を続けたい という火種を激しく燃え上がらせた。

 

「…………佑都、興味があるのか?」

 

先生の問いに、俺は必死で取り繕おうとしたが……。

 

「え? 何言ってるんですか先生、そんなわけ……」

 

「嘘をつくな。口ではそう言っても、お前の目は行ってみたいと語っているぞ。行きたいなら一度行ってみなさい。バイト先の店主には、私から話をつけておくから」

 

「母ちゃん……」

 

「そうよ。その日のシフトは私が代わりに出るわ。佑都は気にしないで、後ろめたいならチビたちと私にお土産でも買ってきなさいな。家のことを優先してばっかのあんたはそのくらいの我儘くらい家族にいいなさい」

 

「姉ちゃんまで……」

 

家族の言葉、長年にわたる野口先生の熱い想いが、俺の 諦め という壁を粉々に砕いていく。

 

「交通費もこちらで負担します。まずは今週の日曜日、見学会に来てみない? 実際に青道がどんな場所なのか、その目で確かめてほしいの。もちろん、来てもらう際の費用もお土産代も、すべてこちらで負担させていただくわ」

 

外堀は完全に埋められていた。今の俺に、それを断る理由は残されていなかった。

 

「…………わかりました。高島さん、見学の件……是非、お願いします。母ちゃん、姉ちゃん、いいかな?」

 

「いいわよ。高島さん、うちの息子をよろしくお願いします」

 

母さんの言葉に、高島さんは満足げに頷いた。話し合いが終わると、俺と姉ちゃんは騒ぎ始めた下の兄弟たちの面倒を見るために部屋を出た。

こうして、俺は野口先生の熱意に背中を押され、青道高校への第一歩を踏み出すことになった。

新幹線が東京へ向けて加速する数日前。青道高校の一室で、高島礼は受話器を握る手に力を込めていた。

 

「野口先生、お忙しいところ恐縮です。……ええ、水野佑都君の件です。改めて、ぜひ一度見学に来ていただきたいと考えております」

 

電話の相手は、平野坂中野球部を率いる野口。高島が視察に訪れた際、たまたま片岡監督の知人であった縁で繋がりを持った指導者だ。

 

「高島先生、お気持ちは痛いほど分かります」

 

野口は受話器越しに深く溜息をついた。野口にとって、水野佑都は誰よりも才能があり、誰よりも野球を愛している自慢の教え子だ。そんな彼だからこそ、最高の環境でその才能を伸ばしてやりたいと切に願っている。

だが、水野家には本人にしか分からない事情があった。野球への情熱と、家族を思いやる優しさの狭間で、佑都の進路相談は膠着状態に陥っていたのだ。

 

「……ですが、今回は 渡りに船 かもしれません。あいつを預けるなら、俺が最も信頼している先輩、片岡さんのいる青道しかないと思っていました。高島先生、今回のアポイントは彼にとって、そして我々にとってもまたとない機会です。俺も全力であいつを説得します。だから、どうか……」

 

野口の切実な願いを受け、高島は眼鏡の縁を指で押し上げた。

 

「ええ、重々承知しております。見学さえ成功すれば、必ず彼の心を動かしてみせます。水野君の才能を、我々も全力で預かる覚悟です」

 

電話を切った後、高島は手元の資料にある水野の鋭い眼光を見つめた。このスカウトに、青道の、そして一人の少年の未来が懸かっている。

 

(何としてもこの見学を成功させ、彼をこちら側に引き寄せなければ。彼の才能を埋もれさせることだけは、絶対に許されないわ)

 

高島は不退転の決意を固めていた。当日は、別のルートで目をつけていた長野の沢村君も同行する予定だ。彼についても、あわよくば獲得できればという期待はあったが、今の彼女の意識の九割は、目の前の怪物・水野佑都に向けられていた。

しかし、この時の高島はまだ知る由もなかった。水野という最大の獲物を射止める決定打となるのが、この時はまだ 同行者のおまけ 程度にしか考えていなかった、沢村栄純という少年の存在になることを。

見学当日、新幹線の中で水野佑都は、恩師である野口と並んで座っていた。

 

「とりあえず時間は…………これで大丈夫だ。後は駅で……調子は大丈夫か佑都?」

 

「大丈夫っすよ。それより先生、今日の付き添い、ありがとうございます」

 

「ついでだ、気にすんな。それに先輩から呼び出されてるしな。後輩としては行かないとな(怖いからな、あの人)」

野口が苦笑いしながら話す 先輩 とは、青道の片岡監督のことだ。佑都は窓の外を流れる景色を見つめながら、これから出会うであろう人物に思いを馳せていた。

 

(東清国……。ドラフト候補の怪物。どんな凄じい選手なんだろうな)

 

友人から見せられた野球雑誌。そこには 高校通算42本塁打 という驚異的な数字と共に、不敵に笑う東の姿があった。プロ目前の選手がどんな顔をして野球をしているのか。純粋な好奇心が佑都の胸を叩いていた。

東京駅に到着すると、ホームで待っていた高島が、一人の少年を連れて歩み寄ってきた。

 

「遅くなったわね、水野君、野口先生。こちらは長野県、赤城中の沢村栄純君。今日一緒に見学を同行することになったから、よろしくね」

紹介された少年、沢村は、佑都の顔をまじまじと見上げたかと思うと、突然大声をあげた。

 

「うわぁ、デカっ!! お前、何センチあんだよ!?」

 

あまりの遠慮のなさに、佑都は一瞬面食らったが、すぐに苦笑いを浮かべた。

 

「はじめまして、沢村栄純君でいいかな? 俺は平野坂中の水野佑都だ。好きに呼んで構わない。今日一日よろしくな」

 

「おう、みずのゆうとか。じゃあ佑都だな! 俺のことは栄純でいいぜ。よろしくな、佑都! ――にしても、近くで見るとマジで壁だな! 飯、何食ったらそんなんなるんだ?」

 

沢村の底抜けの明るさと、どこか野生的な雰囲気に、佑都は不思議と悪い気はしなかった。そんな賑やかな自己紹介を済ませ、一行は青道高校へと向かった。

到着した青道高校のグラウンド。広大な敷地に整備された二つの練習用グラウンド。鳴り響く打撃音と、空気を震わせる選手たちの怒声。中学野球とは一線を画す、完成された野球の聖域がそこにはあった。

 

「どう? うちの野球は」

 

高島の問いに、佑都は一歩引いた大人びた視点で答えた。

 

「選手一人一人の目的意識が極めて高いですね。それに、この環境……。指導者だけでなく、関係者全員が野球に集中できるように努力しているのがわかります。さすがは東京の名門ですね」

 

冷徹なまでの分析力。高島はその答えに、やはりこの少年は特別だと確信を深める。だが、その静かな空気を沢村の絶叫が切り裂いた。

 

「気に食わん!!」

 

沢村は、豪華な施設や野球留学のシステムに対し、強くて当たり前だ、俺は認めないと青道の存在そのものに真っ向から噛み付いた。佑都はその極端な理屈に苦笑しつつも、 強くて当たり前か…… と、かつての仲間たちの顔を思い浮かべ、一理あると感じていた。

 

(……はは、こいつ面白いな。周りの空気に流されずに自分の言葉でぶつかっていく。見ていて飽きない奴だ)

 

佑都は、自分とは正反対の熱量を持つ沢村という存在に、急速に興味を抱き始めていた。

そんな中、打撃ケージの方から雷鳴のような快音と下品な怒鳴り声が響き渡った。

 

「こらぁ! ピッチャー、何やその腑抜けた球は! わしをなめとんのか!」

 

そこにいたのは、佑都が期待していた東清国だった。だが、目の前の光景は、想像していた尊敬すべき強者の姿とは程遠い。

東は後輩の川上に対し、 練習にならん、田舎帰れと、聞くに堪えない罵声を浴びせ続けている。

 

(……あれが、プロ候補の実力者か。確かにスイングは凄いが、あまりにも傲慢だ。自分が練習できているのは、相手がいるからだろうに。……なめてるな)

 

期待が大きかった分、佑都の中に冷ややかな苛立ちが募る。隣を見ると、案の定、沢村は既に怒りで震えていた。

 

「おい佑都、あいつ……あんな親父みたいな腹でプロ行くってよ! マジでありえねぇよな。相撲やってる方が絶対にいいって思わね?」

 

凍りつく周囲。しかし沢村は止まらない。 野球をやる資格はねぇ この糞デブ! と、ついに決定的な暴言を叩きつけた。激昂し、地響きを立てて迫りくる東。

その混乱の最中、不意に背後から場にそぐわない、軽妙な声が割り込んだ。

 

「ははっ、面白そうだね礼ちゃん。……その生意気な中学生の球、俺が受けていい?」

 

全員の視線が、声の主へ集まる。そこに立っていたのは、眼鏡越しに底知れない笑みを浮かべた一年生の捕手、御幸一也だった。

 

「こらぁ御幸ぃ! お前一年の癖に調子乗ってんじゃねぇぞ!」

 

東が咆哮するが、御幸はどこ風で肩をすくめる。

 

「いやあ、すいませんね東さん。もっと謙虚に、初心に帰れるんじゃないかと思いまして。ねぇ?」

 

その図太い神経。先輩に対しても臆することない不敵な態度。佑都は直感した。(この男、ただ者じゃない。東よりもずっと厄介だ)。

 

「……上等やないか! 御幸ぃいいいい! わからせたるわ! ……おい、そこのデカいガキ!」

東の矛先が、一歩引いて見ていた佑都にまで向く。

 

「自分……ですか?」

 

「そうだ。お前は審判だ。公平に見ろよ。このガキの鼻っ柱が折れる瞬間をな!」

 

結局、なし崩し的に沢村と東の一打席勝負が幕を開ける。

佑都は溜息をつき、ホームプレートの後ろへと歩み寄った。審判として、そして一人の野球人として。この傲慢な怪物が、果たして叫ぶだけの価値がある男なのかを、その目で見極めるために。

 

「ハッハッハ!行くぞおっさんwww」

 

栄純の底抜けた挑発がグラウンドに響き渡る。俺、水野佑都は頭を抱えた。プロ注目のスラッガー相手に、これ以上青筋を立てさせる必要なんてどこにもないじゃないか。

 

「こいや、糞ガキ!返り討ちにしたるわ!」

 

案の定、東さんが怒号を飛ばす。あんたもあんたで、中学生の安い挑発に乗らないでくれ。高校三年生なら、もっと大人な対応があるだろう。

 

「はは目、審判、コール頼むよ!」

 

一番質が悪いのは、肩を揺らして笑っている捕手の御幸一也だ。この状況を誰よりも楽しんでいるのは、間違いなくこの男だろう。性格の悪さが顔に書いてある。

 

「……プレイボール!」

 

俺はなかば投げやりに叫んだ。どうしてこうなった。

プロ注目の高校生と、進路がデンジャーゾーンの中学生。周囲の野次馬は面白がっているが、礼儀知らずな阿呆のせいで、マウンド付近の空気はやけに重苦しい。

事の始まりは、栄純と東選手の口論だった。そこにスカウトの高島さんが 一打席勝負で決着をつけなさい と提案し、なぜか部外者の俺が 公平な第三者 として審判役に指名されてしまったのだ。

栄純が準備をする間、俺は高島さんと御幸さんが話しているのを耳にした。

 

「御幸君、受けてくれてありがとう。彼はとても面白い球を投げるの。でも、彼自身はまだ自分の本当の力を知らない。あなたの力で、それを限界まで引き出してくれないかしら?」

 

高島さんの評価は驚くほど高い。あの栄純の潜在能力を引き出すのは至難の業だと思うが、それを託される御幸という男も、ただ者ではないオーラを放っていた。一年生だと言っていたが、もしかして既にレギュラーなのだろうか。

 

「へぇ、礼ちゃんの期待値高いじゃん。……いいよ、この勝負のリード、俺に任せてよ」

 

さっきまでヘラヘラしていた御幸さんの顔つきから、一瞬で余裕が消え、鋭い勝負師の目へと変わる。

 

「水野君も、よく見ておきなさい。彼の球、本当に面白いわよ」

 

高島さんは眼鏡の奥の瞳を怪しく光らせ、俺に微笑みかけた。

マウンドに上がった栄純は、東さんの威圧感に気圧されるどころか、さらに牙を剥いた。

 

「準備はできたか小僧?今のうちなら詫びを入れて逃げ出してもええんやぞ?」

 

「上等だっつーの!逃げ場がねーのはてめぇの方だ!ぶちのめしてやるから、ボールが当たっても文句言うなよ、このメタボン!」

 

「……ククク、メタボンって。やっぱ面白いわ、あいつ」

 

御幸さんがまた噴き出した。この状況でその余裕、やはりこの人の性格は徹底的に 素敵 らしい。当然、東さんの怒りは頂点に達する。

 

「おい御幸、何笑っとるんじゃ!お前もなめとんなら、いてこますぞ!」

 

「あはは、すんません」

 

「プッ、後輩にも舐められてんのかよ!やっぱり豚みたいな体してるからか?」

 

「黙れや糞ガキ!殺すぞ!」

 

いつまでも終わらない罵り合いに、俺の我慢も限界に達した。

 

「皆さん、いい加減にしてください!私語を慎んで勝負を始めないなら、俺、審判辞めますよ!さっさと構えろ、この糞デブ!」

 

静まり返るグラウンド。自分より遥かに巨大な東さんを 糞デブ と一喝した俺に、全員の視線が突き刺さる。東さんは一瞬呆気に取られたが、俺の眼光に何かを感じたのか、毒気を抜かれたように大人しく構えた。

 

『(こいつ、東さんに一番キツイ言葉を突きつけやがった)』

 

マウンドの栄純も、俺の背後から漂う圧力に冷や汗を流して居住まいを正している。

一球目、栄純の放ったボールは地面を叩く大暴投だった。

 

 

「ボール!」

 

東さんは 投げるのが怖いなら今のうちに許したるぞ と鼻で笑っている。だが、俺は違和感を覚えた。今のはただの暴投か? 投球の途中で腕がムチのようにしなり、無理やり軌道が変わったように見えた。

 

(……なんだ、あいつのボール。今、少し変な動きをしなかったか?)

 

今はまだ少し気になる程度だが、あのアホみたいに真っ直ぐな性格が、そのままボールに乗り移ったかのような危うさと面白さがある。高島さんが面白いと評した理由は、この型に嵌まらない予測不能なポテンシャルにあるのかもしれない。

そして運命の最後の一球。御幸さんは、あえてど真ん中にミットを構えた。

 

「ハッハッハ、これで終いじゃ!くたばれクソガキィ!」

 

東さんの渾身のフルスイングが空を切る。バットの数センチ上を生き物のように跳ね上がった白球が通り抜け、御幸さんのミットへ突き刺さった。

「ストラーイク!バッターアウト!!」

一瞬の静寂の後、マウンド上で栄純が爆発した。

 

「おおおおおおおお!よっしゃあああああ!!」

 

腹の底から絞り出すような咆哮。プロ注目の怪物を三振に仕留めたという事実に、栄純は狂喜乱舞している。

だが、俺の意識は、次第にその中心にいる捕手へと移っていった。

この御幸という人は、東選手のプライドの高さと短気な性格を完全に見抜いていた。わざと得意コースを見せて挑発し、頭に血を昇らせて冷静な判断力を奪う。さらに、微妙に座る位置を変え、視覚的な錯覚を利用してファールを打たせる。

 

(……凄いな。こんなリード、今まで見たことも考えたこともなかった)

 

今まで俺が知っていた野球とは何かが決定的に違う。そこには、俺がまだ触れたことのない深淵な捕手の技術と緻密な戦略があった。性格は間違いなく最悪だろうが、この人の隣、あるいは対角線に立てば、見たこともない景色が見えるのではないか。

 

「ナイスボールだったよ、沢村君」

 

そう言って栄純の肩を叩く御幸さんの不敵な笑みを見て、俺の胸に突き刺さったのは、強烈な好奇心と対抗心だった。

 

(ここなら……この人たちがいる場所なら、きっと退屈することなんてないんだろうな)

 

沢村という真っ直ぐで不規則な男と、御幸一也という底知れない男。

この二人に出会ったことで、俺の未来は抗いがたい熱量を持った青道高校へと大きく傾き始めていた。

それからあの日見た沢村栄純の投球が、どうしても頭から離れなかった。

素人同然の危うさを持ちながら、あの怪物・東選手を三振に仕留めた嘘みたいなピッチング。あんな面白い奴が集まる環境なら、野球漬けの毎日もきっと退屈はしないだろう。

 

(……ダメだ。やっぱり、自分の気持ちに嘘はつけないや)

 

学費や諸経費の免除がある特待生枠なら、家の事情もクリアできる。俺は覚悟を決め、両親の前で本当の気持ちを打ち明けた。

 

「父ちゃん、母ちゃん。俺、やっぱり野球を続けたい。東京の青道高校に行きたいんだ」

 

静まり返ったリビングで、母がふっと表情を和らげた。

 

「そっか。いいのよ、あんたのやりたいようにしなさい」

 

「いいのか……?」

 

「あんたは今まで、ずっと家のことを優先して我慢してきたでしょ。自分からやりたいと言ってくれて、逆にお母さんは安心したわよ」

 

父も力強く頷いてくれた。

 

「頑張れよ。お前が選んだ道だ、俺たちは止めない。三年間、夢のために打ち込んでこい!」

 

胸の奥が熱くなるのを感じながら、俺は深く頭を下げた。

 

「ありがとう。……俺、青道の特待生の試験を受けるよ。必ず受かって、プロを目指すから」

 

そして迎えた青道高校の特待生入試。そこで水野佑都という男の力が、名門・青道の指導者たちの度肝を抜くことになった。

筆記試験こそ大きな問題もなく無難にこなしたが、本番の実技では自分の持てる力を思う存分に解き放った。鋭いスイングから放たれる打球が防球ネットを激しく揺らすたび、試験官たちは言葉を失い、衝撃に震えていた。青道のスカウト陣は、自分たちが招いた選手が 【十年に一度の逸材】 であることを、その場でまざまざと見せつけられたのだ。

 

「異議なし。水野佑都は特待生枠の筆記・実技ともに合格だ!」

 

合格後、大阪の強豪・大阪桐生への進学を決めた武内剛からも連絡があった。

 

「俺も負けへんで! 次は甲子園で会おうな!」

 

「ああ、剛。絶対に負けないよ」

 

さらに地元の仲間、陽二、孝、淳吾たちも、自分のことのように合格を喜んでくれた。

 

「よかったな佑都!お前なら絶対に受かると思ってたぜ」

 

「これで俺達は道を違えることになるけど、それでもずっと仲間だ。離れてても心は一つだぞ」

-

出発までの数週間、俺達はグラウンドで共に過ごした。今はまだ仲間のチームメイトである彼らと基礎トレーニングをこなしながら、硬球の感触を鳴らすために準備を進めていた。

 

「いくぞ、佑都! 俺の全力だ!」

 

孝が大きく振りかぶり、渾身のストレートを投げ込む。

パンッ!

静まり返ったグラウンドに、硬球特有の鋭く重い破裂音が響き渡った。バイト代を切り詰めて手に入れた新しいキャッチャーミットを使い、一球ごとに感触を馴染ませていく。

 

「ナイスボール、孝。いい回転だ」

 

「……感触はどうだ?」

 

今、このミットには、味わえない熱い痺れが残っていた。

 

「最高だよ。この重み、この痺れ……。硬球の感覚、たまんないわ。これで準備は万端だ」

 

そして、ついに旅立ちの日がやってきた。駅のホームには、家族と仲間たちが顔を揃えていた。

 

「忘れ物はねぇべ? 向こうに行ってもちゃんと飯食うんだぞ」

 

「たまには連絡するんだよ。あんた、うっかりしてるんだから」

心配性の両親に苦笑いしていると、双子の秋人と秋奈が俺の服の裾をギュッと掴んで離さない。

 

「兄ちゃん、行っちゃやだ……! 」

 

「ずっと一緒がいいのに……お兄ちゃんがいないのやだぁ……」

泣きじゃくる二人の前に視線の合わせるように屈み、俺は優しくその頭を撫でた。

 

「秋人、秋奈。……ごめんな。寂しくなるけど、お兄ちゃんも東京で頑張ってくるから」

 

「……うん。お兄ちゃん、頑張って」

 

「離れてても、応援してるもんね」

 

二人の小さな手を握りしめ、優しくなだめる。姉の彩歌と弟の夏樹も、その様子を温かく見守りながら家のことは任せなさいと頷いてくれた。

その横では、仲間たちが寂しさをこらえた顔で立っていた。

 

「佑都、これ……俺達と野口先生からの餞別だ。他のポジション出来るように新しいオールラウンド型のグラブとスパイク、俺等の野球の専門書、向こう行っても忘れずに大切に使えよ」

 

陽二から包みを受け取ると、ずっしりとした重みが手に伝わった。

 

「みんな……」

 

こみ上げてくるものを抑えきれず、声が震える。

淳吾も孝も、何かを言いかけては飲み込み、ただ真っ直ぐに俺を見つめている。

 

(また高校で。今度は敵として、甲子園で会おう)

 

言葉には出さなかったが、その熱い視線が何よりも雄弁に物語っていた。俺達はただ、力強く拳を合わせることで、最後に見送りの挨拶に代えた。

発車のベルが鳴り響く。

 

「「佑都! いってらっしゃい!!」」

 

「「お兄ちゃん、頑張ってーー!!」」

 

皆の声を背に、俺は新幹線へと乗り込んだ。

一人、大粒の涙を流しながら車窓に流れる見慣れた景色に誓う。

(絶対に俺は日本一になる! そんで必ず、プロへ行く!)

東京行きの新幹線は、青き野望と、大切な家族、そして仲間たちの想いを乗せて走り出した。




便利な物があったので水野佑都のイメージ画像作れました。

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