西暦2089年1月15日、日本国旧首都・東京上空36,000km。東京湾軌道エレベーター内静止軌道ステーション上層・戦闘指揮室で、その男は溜め息をつく。
「なぁんでこんな場所で仕事をせねばいかんのだ…」
男は独り言を続けた。
「外を見渡しゃ常に一面星だらけ。下を覗いてもいつも変わらねぇ、緑と青と白の球体だけだ。最初の頃こそすれ感動したもんだが、今じゃもう飽き飽きだ。早く地上勤務に戻りたいぜ」
「羽島さん、文句を言っても仕事は減りませんよ」
もう一人、CICで隣に座っていた男が、独り言を垂れ流していた羽島に話しかける。
「とは言ってもよぉ、神崎。ステーションとエレベーター同士をつなぐチューブの防衛司令なんて、AIにでも出来るとは思わねぇか?俺にはここで仕事をする意味が分からねぇよ」
「ステーションへの常駐は必要ですよ。第一それは、人ならざるモノに宇宙防衛の引導を完全に渡すと言っているようなものじゃないですか。第一もうすでに大半が…」
「あ〜はいはい分かりましたっ。この話は終わり。俺たち航空自衛官は、国防という与えられた使命を遂行するのみ、国防の在り方を決めるのは俺たちじゃなく政治家だ。そうだろ?」
「はぁ…」
神崎は、何かはぐらかされたような気がしてならなかった。
「しっかし、宇宙はいつ見ても変わらないな。いや変わり続けているけれど、その変化を俺は感じ取れない、の方が正しいか」
羽島は巨大なアクリルガラスに手を当てながら、ただ白い輝点しかない空を見上げる。
黒と言うには黒すぎる背景に、羽島は吸い込まれていきそうになった。
瞬間。空は一面白く光り輝く。
「なっ…!」
羽島は覚悟した。
「対衛星戦闘用意!全員安全ベルトを着用しろ!新型兵器による攻撃の可能性がある!」
CICが慌ただしく動き始める。
そのCICを、今度は原因不明の浮遊感と横Gが襲う。一部の人間はガラス面へと一直線に叩きつけられていった。
叩きつけられなかった幸運な人間達は自身の机に必死でしがみつき、レーダーを睨み、通信を行おうとしてーーーそして絶望した。
「れ、レーダーに感なし!付近に何処の衛星も確認できません!」
「地上、及び他のステーションとの通信途絶!大阪EVも名古屋EVも応答しません!ケーブル損傷の可能性大!」
神崎は運良く、エレベーターの制御装置に手が届いた。
「制御装置作動します!」
「衝撃に備えーっ!」
神崎が叫んだ瞬間、エレベーター備え付けのスラスタが作動する。
12秒ーーー。ステーションが完全に静止するまで、たったの12秒だった。だが、現場に居合わせた人間にとって、そのほんの僅かな時間は、恐ろしく長く、そして静かだった。
「……被害を報告」
「ステーション内にて負傷者が確認できているだけで23名ほど、現在救護班が治療にあたっています。ケーブルについては、自動修復プログラムが作動中です」
「そうか…」
そう言って羽島は、彼らに冷めきった視線を向けている宇宙へと目をやる。
「なあ神崎」
「どうしましたか…っ!」
神崎は羽島と同じ方向を向いて、息を呑んだ。信じられるはずもない光景を目の当たりにしたからだ。
「俺たちの惑星は…」
「こんなにも、デカい星だったか?」
勝ったな、風呂入ってくる()
…という事で、第1話はいかがでしたでしょうか。ハーメルンどころか小説自体が初めてなので、色々稚拙なところもあると思います。そういったところは是非指摘して頂けると幸いです。