取り合えず適当に書いているので原作設定との齟齬があるかもしれませんが、気にしないで下さい。
――『聖杯戦争』――それは七人の
そして自らの左手には聖杯戦争に参加する権利たる聖痕がくっきりと刻まれていた。
この令呪は願望をこの手にする為のものだろうか。答えは――否である。この令呪は近々行われる第四次聖杯戦争に合わせて聖杯が用意したもではない。
その一つ前、第三次聖杯戦争に参加した祖父が本来あり得ないはずの『八人目』のマスターとして参加した際に命からがら監督役の『聖堂協会』の目を欺き持ち帰ったものだ。
第三次由来のこの令呪は、第四次たる今回の令呪とは同じものではあるが別の物だ。故に英霊を召喚するマスターとして権利は当然使えるものではない。
だが、それは万能の聖杯を巡るバトルロワイヤルの参加権としての話だ。別個に冬木市の聖杯戦争とは別に聖杯を用意してしまえばいい、祖父はそう判断したのだ。
第三次聖杯戦争が終結したのち、祖父はもう一度かの地に訪れ、聖杯戦争の核たる大聖杯を誰にもばれずに静かにじっくりと検分し再現した。
とはいえ、偉大な祖父の目的は聖杯戦争の再現でも、奇跡の再現でもない。祖父は聖杯戦争に呼ばれる英霊――その中でも
その目的は彼ら彼女らから魔術を教わること。その目的の真意は自身の生まれた魔術師と呼ぶには歪な一族にあった。
我ら
実際には現代に、その神秘が残って入れば良いというだけなのだが、過去の英霊との遭遇は過去に消えていった神秘の再現を可能とする。
故に己は挑まなければならない。祖父が再現したという英霊召還を、だが如何に祖父が天才でも聖杯戦争の――いや、英霊召還の核たる英霊を呼び寄せる大聖杯の再現は不完全で不安定な代物だ。
もしかしたら英霊以前に悪霊やら怪物やら善くないモノを呼び寄せるかもしれない。本当は祖父が儀式を行うはずだったのだが、肝心の祖父は床に伏してしまった。無理な延命が祟ったのかもしれない。そういう祖父は俺に英霊召還の真似事をしたという儀式について教えてくれた。
呼び出す英霊は一体。奇跡をなせる聖杯は只の魔力を貯める炉心でしかなく、聖杯戦争の英霊を呼び出す餌である万能の願望器とは到底言えない代物。故にこの儀式は英霊に『来てもらう』事になる。名づけるなら英霊召還ならぬ『英霊招来』。
正直、死ぬ可能性は結構ある。狂戦士の席で英霊が呼ばれれば、暴れられて死ぬかもしれぬ。召喚した英霊に殺される可能性とはぬぐい切れないぐらいには多い。そのための令呪だが、そもそもの話、祖父が言うには英霊をサーヴァントとして召喚できるかもくらいの儀式だ。
儀式が失敗する可能性の方が断然多い。失敗したときの話は大体聞いている。九割は仮称大聖杯に蓄えた魔力が暴走して爆発する。
しかしそれでも命を賭ける価値はあると、個人的には思う。第一には証明。祖父が余生を使って練り上げたこの儀式の完成を死に絶えの祖父に告げることが出来る。
第二は、そう本当に個人的な話だ。家督は望月家の当主の座は既に息子に譲り渡してある。魔術刻印も摘出して徐々にだが、息子に受け継がれている。既に己には先代としての立場しかなく、柵もそれほど多くない。安い命だ。故に俺は見たくなったのだ。俺が憧憬を抱いた画面の向こうの彼らを―――――
――そこまで綿々と思考の赴くままに書き連ねて、男――十四代目望月
それから志郎は書き連ねたノートの頁を破り取り、座卓の裏に魔術で持って張り付けた。魔術というより魔力による小細工だが、二十四時間以内に彼が自身の魔力でもって再度術を掛けなければ紙は座卓の裏から剥がれ落ち家内の人間の目につく事だろう。
それは志郎なりの遺書だった。彼はこれより完全に異界となり閉ざされた望月家の地下世界の最奥に赴き、自殺に等しい魔術儀式を執り行う。
先に断っておくが、望月家の地下が異界とかしているのは数代前から神秘の保管庫として利用されているからだ。それは決して大聖杯擬きの影響ではない。異界とかした望月家の地下世界は現代世界の神秘の影響を尽くを防ぎ無限の拡張を可能とする。
その最奥は完全な異界であり、小さな別世界だ。大聖杯擬きはそこで蓄えた魔力が使われる日が今か今かと待ち続けている。そこでの災害は余程の事が起こらない限り最奥での出来事として世界に処理され、望月家の地下世界には何ら影響を与えない。
志郎はもしかしたら世界一安全な可能性のあるその異世界を目指し、立ち上がる。立ち上がった志郎は二十代後半に入ったばかりの若い日本人男性にしか見えない。事実その通りなのだが、彼の息子が既に十歳の誕生日を迎えた事は、魔術に関わらない人間が知れば驚く事だろう。
彼は見た目は普通の日本人なのだが、その中身は五十を超えた人間と何ら変わりはない。つまりはどんな人間だって魔術師であれば普通の人間の認識が役に立たないという事だ。