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次の日の朝。
打ち上げも流石に長くやり過ぎると、寮監である織斑先生に何か言われそうだったので、
「よお、セシリア」
「おはようございますわ。允さん。簪さんも」
「……お、おはよう」
一夏のお陰かセシリアは、あの場にいた俺たちとは上手く打ち解けた様で、互いに名前で呼び合う程度の仲にはなれた。
「そういや、昨日は聞きそびれたが、クラス代表の件はどうするんだ?」
「辞退しますわ。あの程度で、カッとなる様では上に立つ者の資格はありませんわ」
「真面目だな。それなら、誰がなるんだ?」
「り、倫太郎くんじゃないの?」
そう言うセシリアの言葉に俺が疑問を返すと、簪がおずおずとそう返して来た。
まぁ、普通ならそうだろうけど、アイツは、と言うか秋十とセシリア以外の俺たちは立候補していないから、多分秋十になるか?
「織斑秋十でも、推薦しますわ。貴方方よりも、風当たりは良いでしょう」
「へぇ、言うようになったじゃねぇか。セシリア?」
「い、いえ、これは言葉の綾で」
「はは、分かってるさ」
軽くセシリアを揶揄いながら、一組の教室に着いたので簪と別れて中に入る。
すると、いきなり喧騒が聞こえて来た。
「なぜ、貴様が秋十に勝てたのだ!?」
「………はぁ」
その場所に、目をやるとそこには一夏と今にもその手に握る竹刀を振るいそうな箒が、2人相対していた。
いまいち何が起こっているのか、分からなかったが、苦笑いをしている新太郎を見つけた俺は、呼んで事情を把握する。
「あれ、どうなってんだ?」
「あー、俺も最初からいた訳じゃ無いんだが、一夏が教室に来ると同時に、箒があの手に持ってる竹刀を振り抜いたんだよ」
「物騒ですわね」
「それを、避けた一夏にずっと、決定戦のあの試合に対してイチャモンを付けてんだよ。暴論並び立ててな」
「なるほどね」
「そう言う事だったのですわね」
だが、正直困ったぞ。箒は、全国1位となった実力者だ。
怪我はしないだろうが、好き好んであの中に入ろうとは思わない。それに、俺が割って入った所でその場しのぎにしかならないから、どうしようもない。
「私が、正してやる!」
そう思ってたら、箒がもう一度竹刀を振り被る。
だが、今度は一夏は避けようとはしない。それを見て、当たると思った瞬間、何かが箒の竹刀を握る手の甲に当たり、その痛みで竹刀を床に落としてしまう。
「何をする!邪魔をするな!」
「邪魔?面白いことを言うね。掃除用具が」
「そ、掃除用具だと!?」
何かが飛んで来た方を見ると、何かを投げた状態から直る倫太郎の姿があった。ただ、今までの倫太郎の雰囲気とは違った確かな苛立ちを感じさせるオーラを放っていた。
それから、多分箒にとっては禁句であろう言葉を発すると、それにキレた箒が一夏から倫太郎に標的を変えて、落とした竹刀を拾い、また振り被る。
「私をその名で呼ぶなぁ!」
「黙れよ」
激昂する箒の竹刀が、不自然に軌道を変えると倫太郎の頭に振り被られた竹刀が、倫太郎の手に渡る。そして、次の瞬間には倫太郎の貫洞が、軽快な音と共に箒に入った。
「無刀取り………」
「柔術の動きしてなかったか、今?」
「の、応用編だよ。対人特化に俺が組み替えたね」
良くは覚えてないが、どっかの流派の奥義だった筈の技。
刀を持ってない状態で、刀を持ってる奴を相手にする時の対応術。けど、俺の知ってるのはあんなカウンターの技じゃねぇ。
「あ、俺はサボるから織斑先生に説明頼んでも良い?」
「ほう?私のいる前で、堂々とサボるとは良い度胸だっ!」
「なんとぉっ!!」
バシンっと、出席簿が竹刀とぶつかった音が教室に響く。
「今の見えませんでしたわ………」
「俺もだよ………」
「部活の影響で、ちょっとは見えたけど……」
だからと言って、受けれんだろ。アレは。と語る新太郎に頷きながら、何とか喧騒が収まったのを確認した織斑先生は、SHRを始めた。
途中で遅れた秋十は、敢え無く織斑先生の出席簿に沈められた。
「み、皆さんって、優しいのですわね」
「どっちかって言うと、ノリが良いだな」
秋十が来た後、セシリアは一週間前のことを謝罪してクラス代表に秋十を推薦すると、その終わりに女子たちからお褒めと色々な話しを受けてぐったりした様子で
「倫太郎さんは、凄いのですわね」
「多分、何かやってたんだろ?まぁ、生身とISは違うから慣れてないだけだろうし」
「運が良かったんですわね」
「後は、性格的にもあるだろな」
実際、鋼刃や倫太郎本人からは、手を抜いてたってのは昨日聞いたからな。
そう言えば、鋼刃の奴は来てないが、サボったのだろうか。
昼の頃
「おう。倫太郎か。どうした?」
『どうした?じゃないよ。サボるならサボるって、言っておいてよね。今何してるの?』
「私用で、魚釣ってる」
『いや、まぁ、ここ海の上だけど』
箒は、多分秋十の事を狂信的に想っているかもしれないが、色々と面倒な事をしてくれる。
「お前が、やるのは良いが、対処はお前に投げるぞ」
『分かってるよ。俺の責任でもあるからね』
それじゃあ。と、言って倫太郎からの通話は終わった。
「お!キタキタ!」
それと同時に垂らしていた糸に魚がヒットし、釣り上げる。
大きくはないが、6、7匹既に釣ったから丁度いい量だろう。
「天ぷらにでもして食べるか」
今日の晩飯は、決まりそうだ。
もう一話ほど、続くと思います。