最初は理不尽に感じていたこの学園の生活も、二週間を終えて幾分か慣れ始めてきた。
未だに、女子たちの話題の中には
「おはようございますわ。新太郎さん」
「ああ、おはよう。セシリア」
最近は良く朝に合う様になったセシリアと、世間話をしながら教室に向かう。
「鋼刃さん。今日は、来るでしょうか?」
「さぁな?まぁ、来ないんじゃね?」
クラス決定戦後から、鋼刃は朝夕以外姿を見なくなっていた。
昨日、本人になぜサボってるのかと聞いたら、面倒だとかダルいだとか言って、誤魔化されてしまった。
「鋼刃は、今日も居ないわよ」
「あ、唯香さん」
「やっほー。ま、鋼刃は面倒ごとよりも人混みを嫌う時があるから、目立つ事をするのは仕方ないわね」
「そうなのですか………」
途中で、間に入ってきた唯香さんは、鋼刃が何故サボるのか、教えてくれたが、セシリア的には困るだろう。
偶にだが、俺たちは放課後、セシリアに対人戦を教えている。
鋼刃達2人はもちろん、俺も中学ボクシングをしていたし、允も体を鍛えて新しく生身でもかなり動けた。
「生身での訓練は、構わないけど余り無理しないことよ」
「わ、分かっていますわ。ですが、初心者に負けるのはとても悔しいのですわ……」
「まぁ、そうだろうね、けど、欠点見つけて直そうとしているのなら、必ず結果は出てくるわよ」
「そう、ですわよね!」
セシリアを元気づけた唯香さんは、それじゃあ。と言って、自分のクラスの3組に向かっていった。
「さてと、さっさと中に入るか」
「そうですわね」
教室に入ると、中は今までとは違う意味で騒がしく感じた。
「先生来ないな。自習か?」
「いや、多分、これが原因だな」
朝のSHRとなったが、織斑先生どころか山田先生すら来やしない。
その事に疑問に思っていたら、允が1つの動画を見せてくれた。
「おい、これって………」
「イジメの動画ですわ。それも、残虐な」
そこに映っていたのは、1人の女子。リボンの色からして同じ一年だろう。そして、その子を囲う様に暴言や暴力を振るう4名の多分上級生の連中。
普通の学校なら、そこまで驚く事じゃない。
悲しい事だが、良くある事だから。驚く程じゃない。だが、ここはIS学園だ。
世界各国の未来の国の代表として、この地にやってきた者たちが多い学園であり、その動向一つ一つが世界の主要機関が注目している様な場所だ。
それに、どこか一つの国ならば良かったが、顔立ちから察するにイジメている上級生たちは、皆バラバラの国の人だろう。
「けど、全教師が集まるのか?この時間まで」
「問題はそれだけじゃ、ありませんわ。この動画、投稿サイトに出されていますわ」
そこで、全てを察した。
ただでさえ、注目されている学園で行われたイジメ。
しかも、推定5カ国の人物による集団イジメ。
これほど、マスコミが騒ぎたくなる様なモノはないだろう。
「それで動画は?まさか、そのままな訳ないだろ?」
「ああ、昨日の内に投稿されたアカウントもろとも消去されてるが」
「お前みたいに、保存している奴は多いだろうな」
となると、先生たちはこれの対応だったりだとか、対策の為の会議で忙しいのだろう。
「それから、これはまだ広まってない事なんだが、裏板も見つかったらしいんだ」
「これまた、厄介なのが」
裏板。まぁ、裏でやり取りされている掲示板だな。
一般にエリート校として有名なIS学園にそんなのがあったなんて知られたら、大問題も良いとこだ。
「はぁ、今日は授業なさそうだな」
「普通は嬉しいんだけどな」
気長に、ある程度収まるのを待つしかないな。
それよりも、このアングルまるでその場に居たかのように撮られてるけどらどうやったのだろうか。
「へぇ、そんな事あったのか」
「ああ、結局は今日は昼で終わりになったよ。良かったのか悪かったのか」
「だから、こんな時間に会ったのか。あ、それよりも、刺身食うか?」
俺が昼飯を食べようと食堂に着くと、サボっていた鋼刃が何食わぬ顔で、何故か刺身を食べていた。
魚料理は、あったけど刺身は無かったはずだけど、どうしたのだろうか。
「いや、食うけど、この魚どうした?」
「釣った」
「は?」
「いや、だから、釣ったんだよ。この近くの海から」
マジかよ。と茫然としながら、刺身を食べる。
身の色から、多分白身の魚だろう。あまり、種類は分からないが、かなり美味しい味がした。
「結構美味いな」
「良い包丁だったからな」
「え?これ、お前が捌いたのかよ」
「もちろん」
そして、普通の顔でまた食べ始める。
そこで、允やセシリアとかが入って来たのを見て、テーブルに誘う。
「鋼刃さんは、それは?」
「ここら辺で釣った魚の刺身。中々に美味いぞ」
そう言うが、セシリアはちょっと抵抗があるようだ。まぁ、生の魚はヨーロッパ辺りでは抵抗があるんだろう。
けど、俺らが食べているのを見て、思い切って一切れとり食べる。
「お、美味しいですわ!」
「そりゃ、良かった。一夏は?」
「美味い」
「唯香、には聞かなくて良いか」
「ふふ、美味しいわよ。けど、残ってるなら後で何か作って欲しいな」
はいはい、わかったよ。と言って、鋼刃は食べ終えた皿を厨房の中に入っていった。
「鋼刃さんって、料理上手いんですか?」
「そうね。かなり美味しいわよ。活け造りとか作れるし」
何気に、スペックが高いなと思いながらも、俺も腹ごなしを済ます。
明日には、ある程度片付いているだろう。
話しの流れ的にはもう一話付きそうですけど、次話からちゃんと物語を進めます。