「まずは、この『雅狼』について説明します」
下準備も終わり、先ずはアリーナで性能や操作の感じを確かめるために移動する。
アリーナはちらほらと自主練をしている生徒が居たが、織斑先生の存在を見て深く関わろうとはしてこなかった。
それから、俺の専用機となる『雅狼』から動かす事になり、斎川さんの説明を聞きながら、手を握ったりその場で軽くジャンプしながら、感触を確かめる。
「この『雅狼』は、両腕に内蔵されたパイルバンカー型拳武装の『壊爪・烈牙』や同様の仕組みで作られた脚武装の『崩爪・爆牙』を使う近接格闘機となっています」
そう言われながら、両手両足を確認する。
かなり小型化されてるが、アンカーが装填されているのを見て、何となくバッタの兄弟が思い浮かんだが、それを振り払い斎川さんに質問を投げる。
「弾数はどれぐらいなんすか?」
「各箇所6発の計24発ですね。また、非固定ユニットのブースター以外にも、『崩爪』を空撃ちする事で、その反動での移動も可能です」
そう言われたので、周りを確認してから言われたようにやってみる。
脚を上げ踏み込みと同時に、バンカーを射出。その反動で、身体に大きな負荷が掛かるが、何とか耐えて移動を行う。
PICだったかを使っているとは言え、十数メートルを一気に移動できるのは、『崩爪』の威力は十分に理解出来るほどに良い結果だった。
「また、射撃武装として、改造型アサルトライフル『群狼』他2種の重火器を備えています」
そう言われて、確認の画面を開いてどんなものかを確かめる。
少し、大きいが手には馴染む感じの丁度いいものが現れた。
「また、三枝くんの格闘能力を活かすために、独立ブースターユニット『青海波』によって、無理な加速操作にも対応できる物になっています」
そう言われた所で、俺は空中を飛ぶ。
『崩爪』の加速と『青海波』のブースター操作を行いながら、縦横無尽に空を駆ける。
最初は、キツイ負荷が掛かっていたが、ある程度続ければ慣れ加速の変化も気にしないレベルまで、出来るようになっていた。
「それにしても、素晴らしい操作技術ですね。やはり、適正Aは伊達ではありませんね」
「そっすか?ありがとうございます」
ISの適正ランクの五段階ある中で、Aは高い方だけど、俺としてはそこまで手放しに喜べる事じゃないから、軽く返しておく。
俺の確認がある程度終わった事で、今度は唯香の『月華』の説明に移った。
正直、唯香がどんな風な戦いをするのか、前も今も見たこと無いので気になるが、先ずは機体の方が興味が湧く。
「この『月華』は、独立非固定ユニット『鳳閃華』を使った中遠距離からの戦闘を目的とした機体となっています。他の武装は大太刀『柳桜』と射撃武器の80mmアサルトライフルの『雛菊』のみですが、唯香さんの腕ならば、使いこなせると思っています」
そう言って唯香は、背後の花の蕾の形をしたユニットを操作しながら、大太刀を振るう。
すると、その周囲が爆発する。
「爆薬?」
「火打ち石の役割が有るんだろう。あのブレード」
どこの剣豪なのかと思いながら、さらに唯香の動きを観察する。
『鳳閃華』が開くと、今度は其処からエネルギーシールドが展開される。さらに、其処から実体剣が現れて、唯香の周りに漂う。
見た感じ、敵を認識して其処に突撃したりするんだろう。パッと見の印象は、セシリアのブルー・ティアーズを思い浮かべるが、アレはセシリア本人が操作していて、唯香のはAIによる判断なんだろう。
「問題ない見たいですね」
『それじゃあ、やる?』
そう通信越しに唯香に聞かれた時のアイツの顔は、やっぱりコイツは鋼刃の嫁だわと思うほどに胡散臭かった。
「いい「おい!お前ら、練習相手にこの俺がなってやるよ!」……あ?」
いいよ。と返事を返そうとしたら、アリーナの別の入り口の方から、そんな声が聞こえて振り向くと、そこには白式を纏った秋十と箒が立っていた。
俺たちの対決を邪魔された俺と唯香は、テキトーに秋十を煽り、この鬱憤をアイツを相手に晴らすことにする。
『俺が先手を打つから、合わせてよ。いける?』
『誰にモノを言ってるのかな?出来なくて、鋼刃の許嫁なんて言ってないわよ』
『はは、そりゃ、そうだ』
そんな他愛ない話をしながら、俺は徒手を構える。
そして、織斑先生の開始の合図と共に、俺はさっきで慣れた加速を使い一気に距離を詰めて、まずは一発。さっき確かめられなかった『壊爪』を使う。
ガガンッ!
「ゴパッ!?」
「くっ!」
派手な爆裂音と共に、秋十が弾け飛ぶ。
何がなんだか分からなかったのか、情けない声を上げるがそんな事は気にせずに、唯香の方に蹴り渡す。
「邪魔してくれたお返しよ。存分に味わいなさい」
そう言うと鳳閃華が、またも開く。
そして、唯香はブレードを振るい白式の装甲にぶつけながら、振り抜く。
「カハッ!」
忽ちに火花が散り、秋十の周りに撒かれた爆薬移り、連鎖爆発を起こす。
さらに、唯香はそこから手を止めずに今度は、ライフルと銃口を展開させた鳳閃華を構えて、思い切り撃ち放つ。
「締めは任せたわよ」
「ああ、分かってる」
余り、目立ちそうな事は出来ないけど、せっかくやれるのだから、オリジナルで撃ち込む。
「圧縮」
『崩爪』のアンカー3つを圧縮装填し、装填していない方の脚で加速。
そこから、こちらに飛んでくる秋十に向かって、こちらの慣性を加えた蹴りを思い切り打ち出す。
「トドメだぁ!!!」
バガァンッ!!!
盛大に爆発した秋十は、白目を向いて気絶したまま、そのまま下へと堕ちていった。
「制裁だぜ」
晴らせてはいないけど、少しはスッキリ出来た試合となった。