IS.輝きを纏いて〜仮面のヒーロー〜   作:TENC

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————負けたのか?私は。

 

————嘘だ。私にそんな事は。

 

————いやだ。また、捨てられたくない。

 

————そうだ、力だ。

 

————力が欲しい。

 

————もっと、もっと強力な力が。

 

————教官のような圧倒的な力が。

 

————だから

 

《搭乗者の意思を確認》

 

《システムシーケンス・チェック》

 

《システムスタンバイ・グリーン》

 

「私に力を寄越せぇえええ!!!!」

 

『Valkyrie.trace——STAND-BY』

 

その時の(ボーデヴィッヒ)は、自分の愚かさを知らなかった。こんな事をしたところで、教官には遠く及ぶ事などは無いはずなのに。

 

ごめんなさい。

 

許して。

 

私に出来る事なら、何だってやる。

 

だから、だから。

 

「助けて………」

 

闇のような何かに侵されていく頭の中に残った理性で、助けを求める。

来るはずのない助けを。

そして、その言葉を最後に、私の意識は完全に呑まれてしまった。

 

 

 

 

「ああああぁ!!」

 

「「!?」」

 

突然に叫び出したボーデヴィッヒの方を向くと、彼女の専用機が固体の形状を保てずに崩れ、ボーデヴィッヒをその泥のようなモノの中に飲み込もうと蠢いていた。

 

「アレは……」

 

「どうするの新太郎?!あのままじゃ、ボーデヴィッヒさんは!」

 

「っ!ああ、わかってる!見捨てるほど、腐ってねぇよ!」

 

あの物体が何か、何処かで見たことがある気がしたが、隣のシャルの言葉に頭を切り替えて、あの泥からボーデヴィッヒを助け出す。

 

「これじゃあ、ボーデヴィッヒに、当たっちまう!」

 

「彼女を態と盾にしてるの!?」

 

シャルの言葉と共に銃火器を構えるが、専用機だったモノは、一丁前にボーデヴィッヒを俺たちの前に向けて、肉壁のように構えている。

その事に気を取られて躊躇していたら、ボーデヴィッヒの姿は完全に見えなくなってしまった。

そして、それからその半固体のような泥は、形を形成していき最後には、前の専用機とは全く異なる形の専用機のようなフォルムに変わった。

 

「アレは、もしかしてVTシステム!?」

 

「は?なんだよそれ?」

 

俺が、何が起こっているのか分からなかったが、何かに気付いたように驚くシャルに俺は質問を投げかけるが、シャルがそれに答えるよりも早くに、目の前のISもどきがその両手に持つブレードを振りかぶって、突撃して来た。

 

「やばっ!」

 

「…………」

 

咄嗟に避ける事に成功したが、流石にこのままではこっちがジリ貧で負けてしまう。

それに、さっきのシャルのVTなんちゃらも気になるし、警報が鳴っているのもぶっちゃけ、意識が向いてしまうが、今俺が明確に分かる事は1つ。

 

「お前を止めなきゃいけないって、事だろ!?なぁ、ボーデヴィッヒ!」

 

銃火器を再度構え直して、俺は未だ反応のないボーデヴィッヒに宣言した。

難しい事なんて、今は考えるな。勝つための一手を詰めていけ。

 

 

 

 

「アッハハハハ!!!!そんな事したって、勝てないんだよー!バーカ!アッハハハハハ!!!」

 

耳障りな笑い声に頭を抑えながら、俺は隙を晒している男の背中に向けて、銃撃。放つ。

 

「おおっと!?そんな攻撃効かないんだよねー!」

 

「そうか。なら、これでどうだ」

 

「そんな事したって、っ!?」

 

マントを翻して、さっきと同じように避けようとした男の動きが止まり、もろに銃撃を受けてその場に倒れ込む。

 

「だ、誰だよ!お前はー!!!??」

 

「なんだ、俺を知らないのか?なら、答えてやる。皇鋼刃。ただのしがない化学者だ」

 

「皇……鋼刃ーッ!?」

 

俺の名前を聞いた男は、どうやら状況を確認出来たようでさっきまでのコチラを馬鹿にしたような態度から一変して、取り乱したように喋りだす。

 

「な、なんで、お前がここに!?あの時、ボスがお前を!」

 

「ああ、自爆特攻した時だな?悪いが、俺はその程度では死なん」

 

「なら、ボスは何のために!?」

 

「ただの無駄死にだろ?悪党には良くあることだ」

 

「き、貴様ぁ!!」

 

男がキレてこちらに、黒い触手を飛ばしてくるが、俺はクラックから取り出したアイテムを構える。

 

「火縄大橙DJ銃」

 

DJ銃のスクラッチを動かし、ビートを始める。

そして、スピードコントローラーを下に動かして、ビートを低音で鳴らす。

 

「吹き飛べ」

 

「ぎゃあああぁ!!!」

 

大砲モードの一撃をまともに喰らったソイツは、さっきよりも2、3回転して転がる。

生身だと思ったが、意外に丈夫なようだ。

 

「まだだ、まだ、俺は終わらない!今度こそ、我らが願いを果たさないばいけないんだ!」

 

「なに?」

 

「ふふ、貴様には分かるまい!もっと、働けぇ!!」

 

そう言うと男は、さっきの触手と同じような雰囲気の物体を取り出すと、アリーナ内のあのボーデヴィッヒを呑み込んだ何かに向けて、投げる。

 

「ハハハハハ!!!これで、もう、ここはお終いだ!じゃあね!我らが宿敵よ!」

 

「はっ!」

 

高笑いした男が、この場から逃げようとするが、流すわけがない。

アイツをどうにかするなんて、簡単に出来るから殺さずに時間をとめる。

 

「ーー?!」

 

「テメェみたいな小物逃すかよ」

 

さて、ここはどうにか出来たが、あっちは大丈夫なんだろうか。

 

 

 

「くっ、流石にキツくなって来たか……!」

 

「新太郎!」

 

執拗に俺を狙ってくる黒いISの攻撃を避けながら、少しずつ攻撃を与えていたら、シャルがさっきの試合と同じように援護射撃をして、この状況から助かった。

 

「すまん。それよりも、アレなんだ?」

 

「難しい事は分からないけど、アレはパイロットには危険なモノなの」

 

「なら、早く助けなきゃな」

 

危険だって言うんなら、尚更助けなきゃいけない。

シャルに協力して貰って俺は、ISに攻撃を与え続ける。そして、体勢を崩した所に、銃撃をぶつける。

 

「よし!」

 

「………いや、まだだよ!」

 

「嘘だろ!?」

 

やったかと思ったのも束の間、あの黒いISの装甲が、ボーデヴィッヒを呑み込んだ時のように蠢き、形を作り直す。

 

「デカっ」

 

「なんなの、アレ?」

 

動きが止まったかと思ったら、さっきよりも2、3倍はありそうな大きさに変わっているのに呆けていたら、気付いた時には目の前に迫って、こちらにブレードを振りかぶっていた。

 

「がはっ!?」

 

「新太郎!?きゃあ!」

 

そのまま、もろに受けた俺は壁まで弾き飛ばされ、シャルも俺が飛ばされた事に驚いた隙を疲れて、同じように飛ばされる。

 

俺は、残り少ないエネルギーでシャルの前に立ち、壁になるように構える。

 

「し、新太郎。危ないよ……」

 

「俺が残るよりは、シャルの方が良いからな」

 

そう強がってみせるが、正直このままでは変わらない。

変身でもすれば何とかなりそうだが……。

 

「いや、何を迷ってるんだ。俺は」

 

「し、新太郎?!いきなり、降りてどうしたの?!危ないって、言ったでしょ!?」

 

解除して生身の姿を晒す俺に、シャルが驚くがそれを気にせず、俺はドライバーを取り出す。

 

「こんな事を言うのもなんだけど、俺に任せろ」

 

「それは……」

 

「ボーデヴィッヒ!お前を止めれるのは、オレだ!」

 

カードを差し込み、高らかに宣言する。

 

 

「変身!!!」

 

お前をそこから助けてやる。

 

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