「何してやがる鋼刃!?」
「……落ち着けお前ら。新太郎もドライバーを下ろせ」
「お前の態度次第だ」
「はぁ、もう良いやそのままで」
突然目の前で行われた行為に、
けど、そんな状況に関わらず、鋼刃は特に焦った様子は無く倫太郎や唯香も、鋼刃を止めようとはしない。
そんな状態の中、鋼刃が語り出した。
「最初、一夏と約束を結んだ時、正直に言えば何となく気付いていた」
「アイツが………キングだって事にか?」
「それもあるが、俺が言いたいのは、一夏は言わば俺たちの敵だ」
敵。そう短く告げられた言葉に返したのは、私たちや臨戦態勢の允たちでも無かった。
それは、さっき吹き飛ばされた一夏本人だった。
「俺は………一度死んでいる」
「だろうな。じゃなきゃ、あそこまでの侵食や依存度は高くないはずだ」
「………死にたくなかったんだ」
意味がわからない。
一夏が、死んでいる?嘘だ。一夏は、あの一夏は私が何度も一緒にバカをしたり、自分を誰よりも大切にしない、他人をそこまで信頼しないのに、誰かを守ろうとするお人好しな、あの一夏だ。
死んだって、そんなのもはや別人じゃない。
「イレギュラーのせいで、最初はそんな事もあるかと思ったが、そうなったのは、俺たちだけじゃない」
「残党か………」
「一年前、俺は第二回モンド・グロッソを観戦するために、ドイツに行った。そして、誘拐された」
私が困惑する中、男たちの間で話しが進む。
それよりも、一夏がドイツに行ったのは知っていたけど、誘拐されたのなんて、初めて聞いた。
そして、そんな私を置いて、一夏は話しを続けた。
「俺を誘拐した奴らの目的は、俺じゃなくて秋十だった。そして、俺が秋十じゃないと気づいたそいつらは、何の躊躇いなく俺に銃口を突きつけ引き金を引いた」
「俺は、確実にその時死んだ。よく分からないし、その時の事は覚えていないけど、夢のような場所でコイツに………」
『人のその醜い生への渇望に、私は価値を見出したのだ』
そう一夏の言葉を繋げるように、秋十との対決で出来たコウモリが、傲慢な態度で現れた。
「お前が、コイツを見出したのはそれだけじゃないだろ?」
『ふっ、貴様は中々に頭が回るようだな』
「テメェに褒められても嬉しかねぇよ。仇は良いのか?」
『使命も無ければ、完膚なきまでに敗北を味わってまで、抗う。それこそ、私の嫌う生き恥だ。貴様の事など、もはやどうでも良い。私は、この男の一生を見届ける。それだけだ』
話しの意図が全く理解出来ていないけど、ただ鋼刃とあのコウモリには因縁があって、今の一夏が居るのはあのコウモリのお陰であると言う事だけは、私にも理解出来た。
「……単刀直入に言うが、一夏。お前は、このままいけば長くない。もともと死んだ人間を生き返らせてんだ。それだけで、無理してるのにお前の体は、少なくとも3、4体が混ざってる」
「……ファンガイア、オルフェノク、オーバーロード」
「それから、アンデッドだ」
アンデッド………確か、日本語で不死身だったっけ。他にも知らない単語は出てきたけど、この、アンデッドってのだけは、一番ヤバそうに感じる。
「それは、なんだ?」
「………総称として怪人と呼ばれる化け物さ。ライダーの力は元々それの対抗策として作られた」
「そして、別世界から持ち込まれた、イレギュラーの一つよ」
「別世界、イレギュラー、ですか?」
新太郎や唯香の言葉に、セシリアが疑問を返す。
そして、鋼刃の行動に納得がいったのか、2人は臨戦態勢を戻すとその場に力なく座り込んだ。
「これから話す事は信じられないかもだから、別に構わないけど、そうなったら記憶は悪いけど、ね?」
「お前たちは、どうだ?允、新太郎」
「……構わねぇよ」
「俺もだ………」
当人たちから了承を得たことで、鋼刃や倫太郎たちは、ことの経緯や私たちの知らない鋼刃達のことを話し始めた。
転生、転移、異世界。
何度反芻しても、理解出来ない。けど、そんなバカな話しを鋼刃たちが話す訳がない。
それは、今まで絡んで来たから分かってる。
けど、だからこそ、私には意味が分からなかった。
「本当なの?」
「ああ、誓って事実だ。だが、さっきも言ったが、別に信じれとは言わない。その時は、まぁ、手荒になるが記憶は消させてもらう」
「………僕は」
皆んなが黙っている中、シャルロットが口を開いた。
「僕は、新太郎たちに助けられた。だから、どんな事でも新太郎たちの味方になりたいって思ってる。だから」
「だから、僕は信じる」
はっきりと告げられたシャルロットの言葉を皮切りに、私やセシリア、簪、ラウラに本音の4人は、信じると告げる。
そうだ。前世だったり難しい事なんて、今は関係ない。その程度で、逃げるようでは、私は一夏たちの味方なんかじゃないのだ。
私たちが、そんな風に意思を固めている中、今まで黙っていた織斑先生が口を開いた。
「私たちの目の前にいる一夏は、偽物なのか?」
「今のままなら………」
「ねぇ、それって、君が持ってる力でどうにか出来るものなの?」
「俺が出来るのはあくまで、アイツを助ける事だけだ。けど、一つ言えるのは」
「なんだ?」
「偽物であっても、あの一夏は本物だ」
「「………」」
短い鋼刃の言葉に、織斑先生と篠ノ之博士は黙りこむ。
2人は、私なんかよりも一夏に近かったから、私なんかよりも思うことがあるんだろう。
「ねぇ、下ろしてくれる?大丈夫。変な事はしないから」
「………」
「ありがと」
そんな時、篠ノ之博士がさっきまでとは、違った雰囲気で鋼刃に言うと、拘束が解かれ地面に下される。
すると、織斑先生のところまで行くと、そのままジッと目を合わせる。
「……-そうだな。私のやる事は変わらないな」
「うん!それでこそ、ちーちゃんだよ!」
「ふ、皇。お前たちの事だが、私たちは信用する。だから、一夏の事は任せたぞ」
「頼んだよ!こうくん!」
「アンタらに言われんでもやるわ」
2人の言葉に素っ気なく返す鋼刃だったが、その目はちゃんとしていた。そして、最後に残った更識会長の方へ皆んな視線が向く。
「はぁ、何だか私が、悪者見たいわね。でも、そうね。私は、ここにいる人たちと比べれば、貴方達とは関わりが薄いわ。なんだったら、さっきの話なんか、殆ど信用してないわ」
「そうだろうな」
「でも、信頼はしてる」
パッと広げられた扇子には、“会長!”と達筆に書かれていた。
「貴方達の事は、この数日で信頼してるわ。それに、仮にも貴方は、生徒を守った。生徒会長として、そんな生徒の言葉を聞かないなんて事はないわ」
「お姉ちゃん!それじゃあ!」
「えぇ、学園生徒会長として、貴方のその言葉しかと聞き届けたわ」
パチンと扇子を閉じて笑う会長に、呆れた顔をしつつも鋼刃は、言葉を続けた。
「一夏。どうやら、ここにいる連中は、バカばかりらしい」
「ふ、そうらしい」
「全力で来い。俺も“全力”で、行ってやる」
「っ!?ちょっと、鋼刃!」
「倫太郎。頼んだ」
突然、一夏に話しかけたかと思ったら、全力と言う言葉に唯香が反応を返すと、今まで動かなかった倫太郎が、唯香を止める。
何が何だか分からない。けど、鋼刃が何か無茶をするのだけは、分かった。
「コウモリもどき。行くぞ」
『ふん。人間、貴様も大概だな』
「ウルセェよ。死に損ないが」
「戦極ドライバー………?」
「…………っ!まさかっ!?」
允達とは同じようにドライバーと呼ばれるモノを取り出すと、腰に装着する。
そして、允や新太郎も何をするのか、分かったのか動こうとするが、寸でのところで、立ち止まる。
『ガブリ』
「変身」
『リンゴ!」『ヨモツヘグリ』
『ロック・オォン!!』
「……変身」
そこには、闇が二つ。
一夏が、後半仲間外れなのはわざと。
それよりも、次回は、ずっと初めて見た時から考えていたフォームよ登場です。
読んでいられるように気をつけますので、待っていてください。