第1話
ある雨の日、煙草の硝煙と激しい雨が青年を包む
「あーあ、まじでつまんねぇよ。 くっそ やっぱりお前らなんか相手にしても面白くねぇよな」
青年が一人でに言う、しかし独り言を言ったわけではなかった。彼の周りには数人の不良が伸びているのだ。
「じゃ、俺行くけどもう構ってくんなよ? 今度は最後までやめねぇから」
青年が立ち去ろうとしたその時に、不良の一人がよろよろと立ち上がり彼めがけて鉄パイプを振りかざした。
「スカしてんじゃねぇぞこの糞ガキがァァァァァァ!!!」
ゴヅッ!!
鈍い音が辺りに響く。 しかしその音は直ぐに雨によって掻き消されていった。
「は、はははっ 油断してんじゃねぇよ。 大人しく死んでろっ」
ゾクリッ
不良の背筋が凍る 雨に打たれたせいではない、たった今殴った筈の青年が此方の方に振り返る。
青年の頭から血が流ていた。しかし彼はそんな事は気にも留めていない 只々目の前の相手を見ていた。その口もとが微かに釣り上がる。
「っひ!?」
「あぁぁぁ!! いーねぇ まだ相手してくれるんだァ さっき言ったよなぁ? 今度は最後までやめないって」
「ひっ ゆ、許してくれっ!! もぅお前には関わんないって!」
「そんじゃぁ 始めるかぁ どっから壊して欲しい?」
不良が逃げるために振り返ろうとするが上手く立ち回れずに転んでしまう。
青年は転んだ不良の足を思い切り踏みつけグリグリと地面に押し付けた。
「いぎぁぁぁ 、いっでぇぇ!!」
たまらずに叫び出す不良、それとは正反対に青年は笑っていた。
「あっははぁ!! おぉおぉ いー声で鳴くじゃん その調子その調子♩」
暫くするとゴキッという音と共に不良の声がピタッと止んだ。どうやら余りの痛みに失神してしまった様だった。
「ちっ おいおいおいおい これからだろォがよ ちっとばっか折れたくらいで失神とか だっせぇな」
倒れた不良を適当に蹴り上げると青年はおもむろ空を見上げた。
「あーあ、 相変わらずつっんまんねぇー」
_____桐生 礼央 それが彼の名前。
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〜桐生家〜
「たっだいまぁ」
「おやぁ 礼央 おかえり。今日は遅かったんだねぇ」
「あぁ ただいま、ばぁちゃん。 いやぁちょっとゴミ掃除してきてな」
礼央は嘘をつく。その答えはあながち間違ってもいない?のだが
「そりぁ偉いことをしたねぇ あ、そう言えばじぃちゃんが呼んどったよ。なんでも道場の方に来て欲しいって」
「じぃちゃんが? んーわかった 行ってみるわ」
礼央はそう言うと道場の方へと足を進めていく。
(そういえば、道場に行くなんて久しぶりだな。あの時以来なんとなく行きにくくなっちまったし)
〜道場〜
礼央が道場に付くと広々とした空間の真ん中に一人の老人が座っていた。こんなに広い場所に老人が一人、普通ならば違和感を覚えるだろうが違っていた。 老人が放つ威圧が場を支配しているのだ。礼央の手にじんわりと汗がたまる。
「よっ、じぃちゃん。ただいま」
「礼央 帰ったか」
「んで? 帰った孫をいきなりこんな所に呼び度出すってぇのはどういう事なんだ?」
「ん? 小夜から聞いてないのか?」
「んにやぁ なんにも」
小夜とは祖母の名前である。ちなみに祖父は禅、両親のいない礼央にとってはこの二人が育ての親であった。
「なぁに、お前に最近こっちにきとらんかっただろう。久しぶりに型を見てやろうと思うての」
「なんだよ、爺ぃの暇潰しじゃねぇか」
「まぁそう言うな。 ほれ きいてみぃ」
チョイチョイと 小馬鹿にするように指を曲げる禅。先の不良との喧嘩で礼央の機嫌が最悪だったこともあり、安安とその挑発を買う。
「はぁ いぃぜ。やってやんよ」
礼央と禅がお互い構える。礼央はそっと目を閉じ自分の集中力を高めていく。
そして一つ呼吸をおき 一気に気を吐き出す。
「すぅ はぁ
一式 残花っ!!!!!」
ビュウっという風が道場をかける。礼央は一瞬で禅を通り抜けて行く
「ふぅ」
礼央が呼吸を戻すと 彼の背後から ドゴォ っと禅が倒れる音がした。
「残花」
一瞬にして相手を抜き気を自分の突きにのせ攻撃があたかもその場に残っているかの様にみせる技である。
「くっ!! また腕が上がっているのぉ ワシもそろそろお前には超えられそうじゃわい 道場に来ないまでも鍛錬はしとったようだの」
「嘘つくなよ 完全にガードしてんじゃねぇか」
「当たり前じゃ!! 誰が技を教えたと思うておるっ」
「ドヤ顔すんなよ頼むから、んで次やるのか?」
「いや、もういいわい 悪かったの 付き合わせて」
「なんだよ、結局型を確かめるだけだったのか?」
「ほほほっ 師匠としてはの どれ、時期に夕飯じゃ。ワシは先に行っとるぞ
それとな 礼央…」
「ん? なんだよ」
「…いや、なんでもない。 精進せい」
そう言って禅は道場から去っていく。
「なんだったんだ?」
不思議に思う礼央だったがグゥと腹の虫が鳴ったので、取り敢えずは気にない事にした。
〜屋根上〜
ふぅ と紫煙が礼央を包む。夕食を取り終えた彼はお気に入りの場所である屋根上へと来ていた。 今は夜、暗い辺りの中を月明かりが照らす。今日は満月であった
「はぁ」
自然と溜息が漏れる。礼央は黄昏ていた。別に彼は何かに打ち込んでいる訳でもない、趣味と呼べるものはなく 学校でも仲のいい友人は少ない。ただ単に繰り返される日常にあきていた。
「なんか、おもしろいことないもんかねぇ」
そう言って月を見上げた。
____てっ!
____たすけてっ!!
ふと、声が聞こえた。
「なっ!?」
辺りを見渡す礼央。だがそこには誰もいない、しかし声だけははっきりと聞こえていた。
「…まじかよ ついに幻聴か。煙草やめねぇとな」
煙草を消しながらそうつぶやく礼央、そしてもう一度月を見上げる。
「はぁ はいはい 助けれるもんなら助けてやるよ」
誰に言うわけでもない返事。しかし彼は答えた。これが始まりとも知らずに
「ん?」
部屋に戻ろうとする礼央であったが次の瞬間、彼の目の前は真っ白になった。
どうもです