罪を裁くは大罪人【季節姉妹小説】   作:すざもこ兄貴

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季節姉妹の小説がこれから始まります。詳しくは「はじめに」といった投稿があったと思うのでそちらを見てください。


季節姉妹の過去・結秋編

自分が何なのか。それは未だにわからない、だが同時に安心できる。そして、彼女は唯一覚えていることがある。

「私って、なんなのかしらね」

ふと吐き出した一言には、さまざまな感情が混じっていた。

 

友はもとより家族もなく孤独な彼女は、自分で自分を追い詰めるかのように深いため息を吐きながら歩く。

 

すると、草影からいきなり男が現れ

『おい、そこの女。金を出せ』

と言われた。彼女はやれやれといったふうに首を振り、

「それは無理な頼みね。」

と言い放った。

『そんなこと言っていいのか?ここにいるのは俺たちだけじゃないんだぜ』

そう自信満々に言った男に

「そもそもなんでこんな事をするのかしら」

と聞くと、男は

『そういう仕事をしてるからさ。』

と答えた。

さらに、彼女は

「じゃあこの仕事をして、何人人を殺した?」

そう聞くと男は

『そこまで覚えていない。ただ殺した人数は重要じゃねぇ、重要なのは得た財産さ』

そう言い返した。

 

それを聞くと彼女は深いため息をつきこう言った。

「あなたも、そういう人間なのね。」

男はそれを聞くやいなや腹を抱え笑い始めた。

『そういう?笑わせる。この世の中、俺みたいな奴は一杯いるだろう。もういいや、こいつも殺してーー…』

いつのまに、男の足には槍が突き刺さっていた。

突然の痛みに唖然とする男に、彼女は冷たく言い放つ。

「あなたは人を殺した。だからその裁きを今受けている。ただそれだけよ。」

男は現状を理解し、叫んだ。何故だ、なぜ俺が。そんな声が混じった。声は怨嗟に満ちていた。

それを聞いた彼女は

「あなたも人を殺してる。その裁きの順番が、たまたま早かっただけよ。」

と言った。

声が枯れ果ててなお叫び続ける男にほとほと愛想が尽きたのか、

「反省はしないのね。それじゃあ、おさらばよ」

感情もこもっていないその一言。

 

手に拳銃を持ち、一発。

 

動かなくなった男を、見世物にするように槍が固定している。

あの男を尻目に彼女は歩き続けている。

「彼は、なんであんな嘘をついたのかしら。」

周りには人っ子一人いない。威嚇のつもりで言った出任せだったのかと、安堵した。そして、同時に落胆したような素振りも見せた。

「そして、私も。まるで正義の断罪人気取りで」

その場に座り、呟く。

「……彼が罪人なら、私は大罪人。一生罪を背負って、孤独に生きる。自分が何かも知れず、こんな能力まで持たされ、永遠に苦悩するという裁きを受け続ける…」

彼女は、自分が犯した罪が何か覚えていた。そしてそれに対する贖罪は、皮肉にも彼女の唯一の生きる目的であり、力の使いどころでもあった。

 

ふと俯くと一枚の手紙が落ちていた。

それを手に取り眺めると、先程の男とその一家であろう妻子の写真が貼り付けられていた。

そこに、『いつかお金持ちになって、幸せを掴もう』

と書かれていた。

 

彼女はそれを見ても特に何も思わなかった。

別段珍しいものでもなく、涙を誘うものでもない。

ただそれは、幾多の犠牲を伴ったものだと知っていた。

そしてたった今、その犠牲が無駄になった。

その罪を償うため。今まで数えきれないほど犯した罪を償うため。

「勝者は敗者の業を背負って生きる。彼らの分まで。」

少し立ち尽くしたあと、

「そろそろ、行かなくちゃ」

しばらくして、彼女はまた歩き出した。

「そしていつかは、私も。」

一度輝いた目の光は、瞬く間にどす黒い靄に覆われて消えた。

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