罪を裁くは大罪人【季節姉妹小説】   作:すざもこ兄貴

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結秋の古日記

私は歩いていた。

その時代ではまず見ないであろう、近代的な武器を足のホルスターにしまって、短い草の生い茂る平野を歩いた。

その時は自転車も自動車も無かったものですから、どこまでもどこまでも緑一面の景色が広がって

「…嫌気が差すね。流石に」

そう言葉を漏らした。

 

そんななか、私は突然あるものを見た。

辺り一面がまるで凍りついたかのように結晶に覆われた集落を。

何かが燃えたあともなく、何かが崩れ去ったあともない。まるでそこだけ、「時が止まった」と言う言葉があまりにも似つかわしい空間になっているようだった。

 

そこに、細身の少女が一人。服は薄汚れ、しかし髪は白銀に輝いている。

 

あまりに不自然だった。どうしてその少女だけが、この空間で「息をしている」のか。そして、その少女だけが、確実に生きているのは。ここに…この少女とその両親と思しき「結晶」だけが残っているのが。

 

私は何も言わなかった。何も言えなかったのだ。

そして少女も、何も言わなかった。泥のように眠っていた。

 

私はふと彼女の手をとった。その瞬間、手は神経が断絶された様に固まり、やがて崩れ去った。

その瞬間、全てがはっきりと繋がった。

 

私は「異能を無効化する能力」を創造して、少女を介抱した。

きっと、彼女はこんなこと望んでいないと知りながら宿まで運んだ。

 

やがて少女は目を覚まし、言い放つ。

『…ここは、どこですか』

至極真っ当な返答。頭は働いているのだと思って、

「ここは宿だよ。君は休んでおいたほうがいい」

と伝えた。少女は、私の存在を知らなかったのか少し驚いたような表情をしてから、私にこう質問した。

 

『…私をどうやって運んだんですか?』

まぁそう疑問を持つのが妥当だろう。触れた瞬間腕が霧散するような能力だ。常人が素手で運ぶのは無理がある。

「私は自分の体に細工をした。それで、素手で」

『…そう、ですか。』

少女は俯く。少し土埃で汚れた白銀の髪が光る。

次いで、今度は私が少女に聞いた。

「家族はどうしたの?」

『…巻き込んでしまった、私が。もう…取り返しはつかないんです、よね…』

少女は涙を零して言った。

どんな事情があったのかは知らないが、悪気はないように思えた。それでも普段なら到底同情などしない。これよりひどい目にあった人々は腐るほどいるから。

…しかし、柄にもない事が口から飛び出す。

「私が、家族になろうか?」

咄嗟に口から出てしまった言葉は…偶然か必然か、少女に承諾された。

『…よろしく、お願いします。』

その言葉は、とても冷たかった。吹き抜ける冬の木枯らしのように、私の心と肝を冷やしていった。しかし…ほんの少し、熱を感じた。

 

『そういえば、その傷と血痕は…』

『いいの!気にしないで、シャワーでも浴びてきな?』

私に、おもりはできるだろうか。これからの旅でこの子を失わないだろうか。

そんな不安が漠然と浮かび上がる。だが、彼女を見ていたら…そんな気持ちは、瞬く間に霧散した。

 

こうして、私には初めて家族ができた。

 

「…これも、償いかしら?カミサマ」

失った弾を装填しながら、暗くなった空に向かって吐き捨てた。

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