恋をしたありふれた職業は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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幼馴染カップリングが枯渇したっっっーーーーー!!!(急死)

というわけで、最近ジャンプでTS幼馴染百合カップリングが現れたことでモチベを回復させた厨二病です。
この作品、粗方の流れはできてるんだけどモチベ続かないとオリジナルの部分考えなきゃいけないから止まるんだよなぁ…。

さてさて、長い間お待たせしましたが今回はまあまあ情報盛りだくさんみたいな上に一万文字行ってる感じなので許してくださいませ…。(主人不在)


閑話、【最強】

 ーー香織side

 

 それはハジメが工房に篭ることになって一週間後のこと。香織は、勇者パーティーは珍しくも迷宮から離れていた。

 

 というのも兼ねてから呼び出されていた【ヘルシャー帝国】へと向かっているのだ。現時点では光輝達の実力はまだ人族の間でも上の下程度だ。期間を省みるとそこそこにも思えるが、【ヘルシャー帝国】が注目するにはまだ低い。

 

 しかし特殊性はある。なんと言っても【勇者】の天職を得て、聖剣と聖鎧に選ばれた天之河光輝と【聖女】の天職に付く白崎香織が此度の召喚により呼び出されている。

 

 この二つの天職は世界的に見ても稀であり、才能の面で見れば凡ゆるものをも凌駕しかねない程。現段階ではまだまだではあるが、それでも将来性に関しては確定しているようなものである。しかも一人ならばまだしも二人もいるのだから確認したいと思うのは当然であろう。

 

 そうして天之河光輝、白崎香織を始めとした雫、龍太郎、鈴、恵里、メルドなどの王国側の騎士といういつも通りの勇者一行で【ヘルシャー帝国】へと使いを頼りに辿り着いた。

 

 だが辿り着いて早々、一行は目を張らざるを得なかった。それは帝国には王国にはない仕組みの存在。

 

 ーー奴隷制

 

 香織も周りから聞いてはいたし、覚悟はしていた。しかし目の前の光景は予想以上に無惨と言えた。

 

 人族、虎人族、海人族、有翼族…数多に渡る種族が赤黒い傷を晒しながら己の仕事を全うする。監視員が睨みを効かせるその場では休まる場所などあるはずが無い。

 

 痛みに苛まれてはいるだろうが、止まれない。小さい子供であろうが万が一止まれば、『アレ』が来る。

 

「はぁ、はぁ…」

「貴様ァ! 勝手に仕事をやめるなァ!!」

「ウッ!?」

 

 少し息をついた人族の少女に鞭が振るわれる。またその向こうでは高齢の森人族の耳を鞭が掠めた。女子だろうが老人であろうがそこに容赦は無い。空気を斬る音が鳴るたび、ピシャリと柔肌を打つ音が響く。

 

 泣こうが喚こうが許されはしない。むしろそれは監視員の不機嫌を買い、なお一層鞭が振るわれる。

 

 だからこそ背中が赤く腫れようと、足に小石が刺さろうと歯を食いしばらねばならない。涙も顔をしかめ、無理矢理引っ込める。そうしなければならないから。

 

 苛つきを隠さず鞭を鳴らす監視員、内心の恐怖と辛さを必死に隠しながら苦行を行う奴隷。それを当然の光景として道を歩く帝国民。

 

 知識で知っているのと実物を見るのとはことわざにもある通り話が違う。それが語る凄惨さは格別だ。事実、香織も周囲の一行も全員が顔を歪めた。この中で一番冷静であろう雫でさえもだ。

 

 だがこれはあくまで世界観の差異。たとえ自分たちが認めきれぬ事であろうと、反逆して仕舞えばこちらが犯罪者だ。王国であろうと庇い切れるか分からない。また一部を助けたところで、残された者達がなお一層凄惨な道を歩まねばならないだけだ。

 

「ああ、そういや皆さん。帝国じゃあ最近、腕の良い盗人がしょっちゅう出てくるんでお気をつけを」

「ふむ…そこまでの腕前なのか?」

「ええ。なんなら奴隷まで掠め取って行くような輩ですよ。しかも尻尾も掴めやしない」

「それは物騒だな…」

 

 現に帝国民の使者はその風景を気にした様子もなく、言う。メルドもまた眉をひそめはするものの、激昂することもしない。他国のルールに踏み込むことなどはしない。信じがたいが、彼らの生活には奴隷というのはよく馴染んでいるのだろう。

 

 香織もそれは承知だ。ただ少しでも助けたい気持ちはある。だからこそ杖の魔法陣に魔力を焚べようと、そうしようとした途端だった。

 

 ーーキィイイインッッ

 

 甲高い音が広場に響いた。剣と剣の唾ぜり合いの音。それを起こしたのは二人の男。

 

 一人は香織達を【ヘルシャー帝国】まで導いた使者の男。年齢はそれなりに高く見え、香織達から見てもかなり強い部類に入っている。

 

 そしてもう一方は香織達もよく知る男だった。聖鎧と聖剣を身につける者はこの世にたった一人しかいない。【勇者】、天之河光輝だった。

 

 急に始まったつばぜり合い。帝国民はそれに沸き立つ。喧嘩が始まったぞ、と。

 

 そんな中渦中の光輝と使者の男は睨み合う。ただし使者は正気を疑うような目で、光輝は『悪』を睨みつけて。

 

「勇者様? 何をしようとしてるかわかってるんですかい? まるで…ウチの国の監視員に剣を向けようとしていたようですが…正気ですかい?」

「むしろおかしいと思わないのか!? あんないたいけな人達をあんな風に…俺は助けるぞ! 邪魔をするなら容赦はしない!」

 

 光輝が監視員へと放とうとした剣を使者が腰に備えていた剣で受け止めている。驚くべきは当に全ステータスを450まで上げている光輝の剣を簡単に受け止めている使者だ。むしろ光輝の方が押され気味になっている。

 

 光輝が監視員を止めようとしようと、この使者が割り入り攻撃を許さないだろう。むしろ使者を眼中から離せば光輝の方が無力化されるだろう。それほどまでに使者の男は強い。

 

 その様な判断もあってか光輝は相手の剣を上へとカチ上げ、強制的に万歳の体勢を作らせると剣を持たぬ手で拳を作り、使者へと叩きつけた。【剛力】を載せた拳は光輝の筋力を底上げし、使者を吹き飛ばす。

 

 だが思った以上に手応えがない。それもそのはず。使者は吹き飛ばされたのでは無く、自ら後方へと飛んだのだから。

 

 光輝の会心の一撃が効いた様子も無く、使者は飄々とした顔で光輝を見つめた。

 

「全く…本気でやり会おうってなら後でピーピー喚くなよ、勇者サマ?」

「ッッ?!」

 

 使者の雰囲気が変わった。まるで鞘から剣が抜かれたかの様。ざわりと空気が揺れ、人々の肌を舐める。

 

 瞬間、光輝は吹き飛んだ。だが使者のような故意によるものでは無い。他者の打撃によるものだ。敵の剣の柄が聖鎧に叩きつけられた、ただそれだけのこと。

 

 光輝は聖剣を地面へと突き刺し、何とか壁への衝突を防ぐ。だがその光輝を出迎えたのは短文詠唱。

 

「穿てーー“風撃”」

 

 風の初級魔法。しかし一般的ものとは練度が違う。放たれた風の弾丸。聖鎧に張られている防御障壁は“風撃”自体は防げど、衝撃は殺しきれなかった。故に内部へと光輝にダメージを与える。

 

 更に風により再び地から突き放された光輝に使者の剣を避ける術は無し。無尽の如き刃が閃き、光輝を瞬く間に切り裂いていく。

 

 聖剣で応戦もするが駆け引きが違う。聖鎧により防ごうともするが、隙間を縫うように剣が振るわれた。メルドを彷彿とさせるかの如き剣技の数々が光輝に襲い掛かった。

 

 地面に戻れば“縮地”により一旦逃げることも出来るが、戻った途端に“風撃”が放たれ、脚をつけさせて貰えない。そして生憎な事に光輝は短文詠唱で済む初級魔法の魔法陣を身につけていない。初級魔法を使わずとも剣技とステータスでどうにかなっていたからこその弊害がここに来て光輝へと襲い掛かった。

 

「この程度かぁ!!? ビビってひよってんじゃねぇよ、勇者サマよ!?」

「ぐ、ぐぅうう!!?」

 

 そしてこのままの状況であれば光輝は確実にやられる。正しく手も足も出ない嬲り殺しの状態。

 

 ならばこそ、光輝が取れる方法はただ一つ。

 

「“限界突破”ァ!!」

「…ほぅ」

 

 光輝の魔力が瞬間、活性化し爆発する。これには堪らず使者も光輝から離れざるを得ない。ニヤリと笑みを浮かべ光輝を見る。

 

 技能“限界突破”、それは特殊技能の一つ。類稀なる素質を持つ者のみが与えられる技能。その力は種族ごとに定められた力を遥かに超える。

 

 その本質は魔力の制御可能以上の活性化。これにより体にダメージを蓄積させながらも身体能力の強化や魔法の向上などを規格外な程にまで行う事ができる。その強化は元のステータスの三倍ほど。

 

 正しく【勇者】に与えられたチートの一つである。

 

「これを使って仕舞えば貴方を殺す事になるかもしれないからやめていた…だけどこれを持って俺は貴方を…倒すっ!」

「光輝! いい加減にしなさい! それ以上は完全に貴方の方がーー」

「雫黙っていてくれ! 行くぞ!」

 

 完全に度を超え出した戦いに、使者の強さに呆気にとられていた雫が静止の声を掛けるが光輝は止まることはない。魔力を魔法陣へと注ぎ込み、光属性付与魔法の一つ“光刃”を発動。聖剣の切れ味を高めつつ、使者へと剣を向けた。

 

 優に千を超えたステータス。規格外なアーティファクト。そしてさらには“限界突破”によるあらゆる強化。

 

 それら全てを余す事なく注ぎ込んだ勇者の一撃は、

 

 

「“限界突破”ーー“■■”」

 

 

 群青の魔力に包まれ、失墜した。

 

 それは正真正銘のチートである香織でも、そして恐らくは光輝でさえも捉えることさえも不可能。何をしたかも分からず、その場は鎮まる。

 

「…ふん、この程度か。思想も青ければ実力も足りんな。…おい、メルド・ロギンス(・・・・・・・・)! 俺様(・・)のことも分かっているだろう。とっとと出てくるがいい!」

 

 使者であるはずの男は下らなそうに光輝を一瞥、そして興味が失せたのか馬車から降りたメルドへと横暴とも言える口調で命令する。

 

 本来ならば正気であるかも怪しい言葉。何故ならばメルドは王国の、しかも騎士団の団長である。帝国とはいえ、使者である男の方が地位としては明らかに下である。

 

 だがメルドは彼の元に近づくと、そのまま傅いた(・・・)

 

「お呼びでしょうか。皇帝(・・)様」

「おいおいなんだそれは…いつもので良い。俺様は強者に対しては寛容だからな。なんなら何時でもウチに来い。お前なら将軍の位にしてやる」

「…はぁ。ならいつも通りさせて貰おう、ガハルド。あと何時もそちらには行かんと言っているだろう」

「そうか、それは残念だ。またの機会にするとしよう」

 

 周囲がざわめく。帝国の者達は先程のメルドのように頭を垂れ、王国の者達は覆面を乱暴に投げ捨てたその男の正体に目を張った。それは使徒の者達も同様だ。その名はこの世界に来て間もない香織達でも知っている。

 

【ヘルシャー帝国】現皇帝でありながら【人族最強】、【戦神】、【乱王】など多様な称号を欲しいままとする男、ガハルド・D・ヘルシャー。それこそが先程まで使者と偽っていた男の正体なのだから。

 

「さて…一応は歓迎してやろう、勇者一行。俺様の城に来るがいい。もっとも期待外れも良いところではあるがな」

 

 そしてこの男こそ、帝国の『弱肉強食』を象徴する男なのだから。

 

 香織達はその言葉に逆らうことは出来ない。ガハルドの地位は勿論のこと、その圧倒的なまでの『強さ』が香織達が首を横に振ることを許さない。

 

 龍太郎が光輝を背に負って、一行は城へと歩を進めた。

 

 その中で香織は後ろをチラリと見つめた。人々の背にある傷は生々しく痛々しさを表している。それ故に、香織は放っておくことができなかった。

 

「…これぐらいしか出来なくてごめんね…“回天”」

 

 香織はそう背中の鞭の痕が消えた子供達に、聞こえないような声で呟いた。

 

 無詠唱で放たれた淡い光は帝国の者が気がつくことさえなく、奴隷の人々に光を灯す。そして効果は瞬く間に現れる。酷く抉れた傷の数々が一瞬で修復して見せたのだから。

 

 恐らくはすぐに彼らは元のように痛めつけられるだろう。しかし香織はたとえ偽善であろうとも、ただ一時だけでも彼らが苦しみから解放されるようにと願わずにはいられなかったのだった。

 

 それを思うと香織は心苦しくて、情けなくて、彼らから顔を背けてしまう。それでもやはり心残りでもう一度見つめようとして…。

 

「…あれ?」

 

 彼らは、奴隷達はもう既にそこにはいなかった。まるで幻のように。あたかも最初からいなかったかのように。

 

「なぁっ!? また『奴隷拐い』か!」

「この頃、しょっちゅう起きやがる!」

「探せェエ!!」

 

 帝国民はそれに余すことなく慌てる。当然だ。己らの財産が瞬く間に消え失せているのだから。

 

 なおこの後、雫がガハルドやけに気に入られて熱心に付き纏われたり、復活した光輝が二度三度とガハルドに挑んだりといった事件が起こったりもしたが、それはまた別のお話である。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー???side

 

「ふっ、いつ見ても凄まじいな。あのクソ帝王は」

「加齢臭漂う年齢だと言うのに未だ衰えず、か。…全くもって面倒だな。奴に我らが正体が暴かれれば…ジ・エンド、だ!」

「異界から来た勇者…そうか…奴が…」

 

 一方で広場から僅かに離れた裏路地。そこに『奴隷拐い』はいた。数多くの子供や男を俵の如く脇に挟み、誰にも気づかれることさえなく、ここまで彼らは逃げおおせていた。

 

「…ふむ。時は来た。我ら、かの望郷へと『還る』時…」

「いざ行かん。幾千もの尸を超えて…」

「ふっ…勇者よ…また会おう…。次会う時こそが貴様の最後だ…」

 

 ただその者達、種族的特徴、身体的特徴を加味してもなお、かなりおかしかった。主に頭が。脳味噌が、逝かれていた。

 

 なんだか言葉のチョイスがちょくちょくオカシイ。そもそも三人目に関しては勇者と正面から出会っているわけでもない。なのになんかライバル的な、もしくは格上的な感じを醸し出している。

 

 だが彼らの異点をツッコミする者は誰もいない。奴隷の方々もツッコミなんかする余裕がない。急に傷が治ったそんな途端に噂の『奴隷拐い』に捕らえられたのだ。しかも『奴隷拐い』は全員が黒装束。怪しさこの上ない。

 

 だが『奴隷拐い』は奴隷達の疑いの視線など気にした様子もない。そして下水道への道を歩いて行く。

 

 帝国の地下には下水道が張り巡らされている。とはいえ、その整備は行き届いておらず、日本のものと比べれば次元が違うほど汚らしい。肥えた鼠が徘徊し、粘着質なカビがそこら中に張り付いている。

 

 なお飲み水を運ぶ下水道の掃除の必要はない。水を汲み上げる際にはろ過や蒸留により衛生的な水が取れる。魔法があるこの世界では機械が無くともそんなことなど簡単にできるのだ。

 

 だからこそ、下水道はとても人が生活できるような場所ではない。自分たちが閉じ込められていた奴隷部屋よりも衛生状況が酷い。そんな場所。

 

 

 そう、奴隷の誰もがそう考えていた。

 

 

「「「「え?」」」」

 

 ーーワハハハハハ!!

 ーー酒だ、酒だァ!!

 ーー踊れや飲めや!!

 ーーここは桃源郷よぉ!

 

 ここに住む者(・・・)達は言う。ここは楽園だ、と。

 

 その水道はまるで繁華街。闇の中にありながらも愉快な喧騒を隠そうともしない。鼠はいてもそれは野良のものでなく、一匹の家畜として飼育されたもの。カビはあっても闇の中に光を与え、怪しく下水道を照らしている。

 

 太陽を拝むことなどありはしない。しかしここには優しい人族はいても傲慢な人族はいない。あの帝国人はここには来ない。ならば支配されることも無く、ここは楽園であろうと、誰もが言う。

 

「帰ってきたか、人材部隊!」

「ふっ、帰ってきたとも。我々はたとえ死するとしてもなお、我らが長の元に戻る決意をしている」

「成果はどうだ!?」

「上々…否、最上と言うべきだろう。いつも通りの奴隷よ人材だけでなく、かの勇者一行の姿をこの目に刻めた。情報とは万の宝石にあたる。ここで知れたのは僥倖と言わざるを得ん。そうだろう?」

「へぇ! そりゃあカシラも喜ぶだろうなぁ!!」

 

 ここにはあらゆる種族が住む。人族はさることながら海人族、龍人族、虎人族、魔人族…ありとあらゆる亜人族が人族と魔人族と共存するという有り得ない部屋。

 

 彼らは同じ卓を囲み、酒が入ったジョッキを鳴らす。酔っ払いながらも互いを罵る事などなく、むしろ親しみさえもある。

 

 そんな世界が奴隷の彼らからは信じられない。まるで世界がひっくり返ったかのような衝撃をその胸に刻む。

 

 だが衝撃はこれのみにあらず。

 

 カツン、カツンと下水道の向こう側から鳴る靴音。それはこの場にいる者にとっての合図。

 

 途端に彼らは立ち上がったを酔っていた者も、寝ていた者も、たった今ここに戻ってきた者達も厳格な表情で起立する。思わず奴隷達も背筋が伸びた。

 

 何が何かもわからぬ。そんな胸中たる奴隷達。

 

 しかし奥から現れたその者は奴隷達に問いかける。

 

「貴様ら…悔しくないですか?」

「……」

 

 誰に対して、とは言われずとも理解できた。帝国民にだ。

 

「本来ならばあったであろう何気ない日々…それを奪われた。それに意義などない。ただ玩具を弄ぶかの如き理由だけ。…それを許せるですか?」

「ッッーー」

 

 そう、彼らが奴隷を虐げるのに大層な理由などありはしない。強いて言うならば、その方が面白いからだ。

 

 その事実を、改めて理解する。同時に歯がギリギリと鳴る。

 

「ある者は矜恃を踏みにじられ、ある者は慰み者にされ、ある者は延々と終わらぬ地獄を味わい…これらを貴様らは受け入れるのですか?」

「ーーーーー違うっっ!!」

 

 今まで見てきた地獄。それをもはや受け入れたくはない。我らは人の玩具などではない。一人の『人間』であるのだと、奴隷の一人は叫んだ。

 

 それに呼応するように他の奴隷も細い喉を振り絞り叫ぶ。そうであってたまるか、と。

 

「そうです! ならば『弱さ』に甘えてはならないのです! 『弱者』であってはならないのです!」

 

 彼女は奴隷たちの明確な意思を前に、強く言葉で訴える。そして力のままに華奢な、しかし確かに力の籠もったその片腕を掲げ、握る。

 

 彼女の言葉には力があった。溌剌と響き渡る声があった。人々に紛れようと一際輝く容姿があった。泥沼に嵌ろうと這い上がる意思があった。絶望を知ってなお立ち上がる執念があった。

 

 そしてこの場の誰よりも…強い。

 

 だからこそ、彼女はその場の誰をも惹きつけた。男だろうが、女だろうが構わない。子供でも老人でも怪我人でも否が応でも引き付けられた。

 

 故につい先ほどまで赤の他人であった奴隷達もまた轟々と燃える熱を携え、この楽園の中へと加わる。されるがまま、という者は誰もいない。誰もが己が意志で立ち上がる。

 

 その奴隷達の意思に満足したのか、彼女はピコピコとウサミミ(・・・・)を揺らし、されど叫ぶ。

 

「さぁ、ザコ共! 今日もビシバシ働くですよ!」

「「「「「「Yes ma'am!!!!!」」」」」」

 

 この楽園の名はーー【反乱軍】。この世界の不条理、【ヘルシャー帝国】を討ち倒すが為にある組織。

 

 そして【反乱軍】隊長にして、【兎人最強】、シア・ハウリアは淡青白色を立ち昇らせながら、その声を下水道全体に響き渡らせた。

 

 ーー反乱の時は、まだ。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー???side

 

 そして更に離れた地。ほぼ全ての種族が知らぬ、世界の果て。或いは魔境と呼ばれる地。その名を【地下要塞レヴナティア】。この世界唯一にして世にも珍しき地中都市(・・・・)。かつてある神代魔法遣いが創り出したクレーターを利用し、作り上げられたとされている。

 

 ここで生活を営むのは多種に渡る種族達。彼らは外での啀み合い啀み合いがまるで嘘かのように共に暮らしている。そして共に自身の天職に合った仕事で、この国に、組織に貢献を果たしている。

 

 しかし数多くの種族がいるものの、その種族の大部分はある二種族となる。他の種族は二割ほどでしかない。

 

 だがそれも当然といえば当然である。この国の、組織を治めるのは二人の各種属の女王。彼女等二人が同盟を結んだことで成り立っているのだから。他の種族はあくまでも彼女等が迎え入れた同士であり、この世界の不条理に涙を流した難民である。

 

 彼女等は今日もこの地下要塞に高々と建つ、塔の天辺でたった二つしか無い玉座に座り、部下から渡された情報に目を通していた。

 

 報告に来た獣人族の男は首を垂れ、ただ女王達の言葉を待つ。沈黙は絶対。許しがあるまで顔をも上げてはならない。それは部下の間で決められた暗黙のルールである。

 

 やがて片側の女王が獣人族の男へと話しかけた。

 

「今度の難民は海人族ですか…。総勢189名、その内女子供は36名。他の方々は戦力として数えられますか?」

「い、いえ。その半数以上が魔物…恐らくは【暴食】による被害を受けています」

「…むしろよくあの魔物に襲われながらそれだけの人数、生き残りましたね」

 

【暴食】、いやでも耳にする古代の魔物。魔人族による量産されたオリジナルの魔物も厄介ではあるが、古代の魔物は正しくオンリーワンの性能を持っている。その中でも【暴食】は有名であり、数多くの英雄を終焉へと導いた海上における最強クラスの魔物である。

 

「それがその海人族の中で、最近固有技能に目覚めた者がいるようで…。その者が海人族達の逃走を手助けしたとのことです」

「…ふむ。その者の名は何とされているのですか? そして、できることならば組織の方(・・・・)の一員になっていただきたいところですね。可能そうでしょうか」

「名はレミア。此度の受け入れの感謝に、出来る限りの協力は惜しまないとのことですが…一つだけ頼みがあるとのことです」

「受け入れましょう。あらゆる願いに手を差し伸べる、それが私達の組織の理念なのですから」

「ハッーーどうやら先日、彼女の娘が野盗により拐われ、その身柄を探し出し、保護して欲しいとのことです」

「【暴食】を退ける力がありながら、野盗に遅れをとったのですか?」

「固有技能に目覚めたのは拐われた後日であった、とのことです」

「なるほど…その娘の情報をリストアップしておいてください。それを元にアドゥル様に手配を頼んでおきます」

「かしこまりました」

「それでは宜しい。次の者と入れ替わってください」

 

 獣人族の男はその言葉を聞き、一瞬だけ顔を見上げる。これもまた部下間での暗黙のルールである。この部屋を出る直前だけ、女王達の御尊顔を眺めることが許される、という一見ヘンテコなルールである。

 

 だがこの組織に入っている者ならばこのルールに納得せざるを得ない。何故ならば女王達はそれ程までに美しい(・・・)から。

 

 獣人族がその御尊顔を見上げたのはほんのコンマ数秒。しかしその御尊顔が彼の脳裏に凄まじく焼き付く。

 

 片や漆黒の髪を簪により束ね、これまた黒を基調とした着物に身を包む女性。着物は乱れておらず、きちんと着られているにも関わらず、そのこぼれ落ちるかのような双丘が艶やかな魅力を醸し出す。先ほどから無言を貫き通しているが、女王はどこまでも思慮深く物事を見つめているのだろうと信じられる。

 

 片や金色の髪を垂らし、紅の双眸が瞬く。体形は小さいと言えど、それを補ってもなお余りある全身の黄金比。創造神の寵愛を受けたと言っても過言にすらならない。姿形こそは幼女のそれであるが、どこからとも無く溢れ出る大人の色香は男どころか女性でさえも魅了してしまうだろう。

 

 これこそが部下間で決定された暗黙のルールが理由。ようは女王方が美しすぎるのだ。女王達の部屋に謁見するたびにいつも顔を見ていたら仕事にならないため、仕事に集中できるようにされた絶対である。同時に仕事がんばったご褒美、としての面もある。この部下セルフなアメとムチのお陰でこの国の仕事は滞りなく出来ていると言っても過言ではないのだ。

 

 だからこそ獣人の男は思う、明日も頑張ろう…と。あと俺は断然黒髪万歳です、と。

 

 そうして獣人の男は部屋を後とした。

 

 

 

 

「ところで、ティオ(・・・)。いい加減男性を目の前にしたら恥ずかしがる癖はそろそろやめてはどうですか?」

「じゃっ、じゃって…お爺様に男は狼じゃって昔から言われておるし…」

「…アドゥル様、貴方の孫煩悩…今一度恨ませていただきます。…あら? ならどうして貴方のお付きのリスタス君とは話せるのでしょうか?」

「リスタスかのう? あ奴は弟みたいなものじゃからのう。あ奴も妾のことを姉のように思うとるじゃろうし…大丈夫じゃろ!」

 

 彼女は思った。リスタス君、不憫。多分ずっと昔から片思いしてるのに全く気付かれてなくて哀れ。ただ自分から分かりやすいアプローチをしないリスタス君もわるいですよ、と。

 

「それにしても男が狼…訓練所で汗を流す戦士達の腹筋を顔を真っ赤にしながら凝視していた者と同じ者の発言には思えませんね」

「なっ!? なぁ!!? みっ見ておったのか、御主!?」

「ええ。私がすぐ近くを通っても気づかなかった貴方が悪いんですよ? というか腹筋だけであれだけ興奮するとか…貴方、ムッツリですか? もしくは変態ですか?」

「わ、妾ムッツリじゃないもん! 変態でもないもん!」

「女王の威厳もあったものじゃないですね…」

 

 なおティオがこの前、廊下に落ちていたエ○本(保健実技の教科書)を正座しながら凝視していたのも彼女は知っているが、敢えて黙っている。多分それを言った途端にティオの羞恥がオーバーフローするから。出来る女王は人の限界を察せるのだ。

 

 そんな彼女の寛大な心を知らないティオは顔を真っ赤にしながらも、彼女を指差したを

 

「じゃっ、じゃったら御主の方はどうなのじゃ!?」

「私ですか? 特に変わったことはしていないと自負しておりますが?」

 

 そう、彼女は超完璧な女王。仕事もできるし、マナーもある。そして自分が世界一可愛いという自負もある。ティオのようなムッツリ助平のような欠点は一切合切無いのーー

 

「御主、一度も求愛されたことなかろう! アレーティア!!」

「…潰しますよ、ティオ?」

「返り討ちにしてくれるわ!」

 

 数秒後、両名が冷静になった頃には塔はかなり崩れていたという。だがこの要塞に住む人々は「いつものことだ」とし、【土操師】の天職を持つ者達を今日も応援するのであった。

 

 ここは吸血鬼族と龍人族が主となり治める国、【地下要塞レヴナティア】。

 

 そしてそれを統べるは【龍人最強】と【吸血鬼最強】。

 

 ーーティオ・クラルス

 ーーアレーティア・ガルディエ・ウェスペリティリオ・アヴァタール(原作名:ユエ)

 

 彼女等、女王達は世界全体に【神敵】として定められている。あまりにも強すぎる『個』としての実力、本来消えるべき運命への叛逆、龍人族・吸血鬼族を支える根幹。

 

 教会が敵とする理由としてはあまりにも多すぎる。

 

 しかしその真の理由はただ一つ。彼女等が持つ思想、そして彼女等が名乗るその名。

 

 ーー【解放者】

 

 ーー彼女等の牙は如何なる方へと向くのか。それはきっと天へと。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー???side

 

 この世界の神はきっと正しく無い。

 

 きっと神が正しいと思っていたとしても、それはきっと神の傲慢だろう。神と人が抱くそれぞそれの正しさは必ず異なるのだから。

 

 だが、そうだったとしても。そうであろうとも。

 

 ()は疲れた。何度も何度も絶望し尽くして、折れてしまった。この世界を覆すことは出来ないのだと、悟ってしまった。

 

 ()には勇気が無かった。資格さえも或いは無かった。

 

 だから、だから、だから。

 

 もしーーもし、この世界の不条理を打ち壊して見せると言うならば。

 

 もし、愉快犯的な神をも引き摺り下ろして見せると言うのであれば。

 

 私はきっとお前達の敵だ。

 

 だから、だから。だからこそ、もし世界を、神を敵に回すというのであればーー

 

 

「私を、殺して見せろ」

 

【魔人族最強】ーーフリード・バグアー。

 

 彼は立ち塞がる者。

 

 ーー彼は虚に世界に従う。たとえそれが間違いであったとしても、彼だけは。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 ーー???side

 

「駒は揃った、か…」

 

 ーーそしてある者は笑う。

 

「王国には【勇者】と【聖女】。帝国には【覇王】、相対する獣は【占術師】。龍たる【守護者】と鬼たる【神子】は手を結び、海人の【邂逅者】を迎え入れる。魔人の【騎士】は我が手中…クックックッ」

 

 ーーかの手中にあるは幾つもの駒。それが適当に盤上へと投げ出される。数多くの駒が盤上から落ちる。

 

「王国は多少役不足にも感じるが…我が駒がごまんといる。いくらでもバランス調整は出来よう…」

 

 ーーだが【勇者】、【聖女】、【覇王】、【占術師】、【守護者】、【神子】、【邂逅者】、【騎士】は盤上にて収まる。それらは円を作るかのように盤上に立つ。

 

「多少イレギュラーはあれど、今回の盤上も無事出揃ったと言えるな。はてさて…何がどうなるやら」

 

 ーーその様子を見て神は、堪らずエヒトは笑う。このような素晴らしき盤上はあの時(解放者)以来だと。

 

「愛しているぞ、人類よ…。此度も我を興じさせるが良い」

 

 ーーだから神は嗤うのだ。やがて来るであろう彼等が絶望を。

 

 ーーだが、神は気付かない。世界は見えていない。

 

 ーーその盤上のふと端に収まる一つの【雑兵】の駒を。

 

 ーー少なくとも、今はまだ。




私「第一回! チキチキ、設定解析のコーナー! いぇええええい!!」
ハジメ「えーっと、このコーナーってなんですか?」
私「このコーナーはとりあえず原作ありふれを私なりに解釈したコーナーですね! この作品、割と細かく考えてるからね。このコーナー必要なの!」
ハジメ「あっ、そうですか」
私「つーかぶっちゃけ、こっちのハジメくんを強化する為に必要だからダヨー。というわけで第一回目は魔法のシステムについてです。魔法はまず主に
・詠唱
・魔法陣
・魔力
の三要素からなるわけです。魔力は単純に言えば電力、詠唱は電線、魔法陣は電子器具だと考えましょう。これら三つは欠かせないものの訳ですね。ここまでは原作でもあった」
ハジメ「でも原作だったら詠唱と魔法陣って基本死に設定ですけどね」
私「それはハジメとかユエさんが魔力を感知して、直接操るから詠唱が要らなくなる。基本的には魔力は体外の物は感知は出来ないものだし、感知出来たとしても自由には動かせない。だから詠唱がある訳だし…。魔法陣の方もユエさんなら“想像構成”するから予め用意しておく手間もないんだよなぁ」
ハジメ「まあ、そもそも原作の僕ってあんまりにも適正が無かったから“錬成”以外は使えなかったんだけど」
私「でも適正ってあくまでも魔法陣省略とかがメインぽいんですよ。あくまでもハジメくんだと魔法陣のサイズがデカすぎて実用化できないだけで。…あ、この設定こっちでも使う予定だからよろしく」
ハジメ「あ、はい」
私「ちなみに適正があるやつは武器にある魔法陣はそれぞれの魔法の起動式(要は電子家具のスイッチボタン)だけだぞ! あとは頭の中だけでプログラム設定する感じ。適正がない奴は肝心のプログラムのアプリがないからプログラム設定を手書き(超膨大)と頭の中でやらなきゃダメだから実用不可。だからこっちのハジメも“集中”とかでプログラムの腕は良いんだけど“錬成”の魔法陣以外は省略不可能。使用は出来るけど、魔法陣が大きすぎで実用不可能ってされてる」
ハジメ「でも、“解析”とか“錬鉄”は僕使えますよ」
私「それは勇者の“剛力”とかと同じように魔法陣を介さない魔法技能になる。この辺りは魔力は使うけど、体内に魔法陣が予めあるから省略できる。変換も体内で完結するから外部の魔法陣に魔力を注ぎ込む為の詠唱も必要ない」
ハジメ「そういえば原作シアの“身体強化”は魔法陣はいるんですか? どっちなんですか?」
私「いらない。あれも体内の魔法陣使うから。でもまあ、そもそも“身体強化”の魔法は持ってる人しか持ってないけど、そのシステム自体は魔力持ってる奴なら常にやってる」
ハジメ「どういうことですか?」
私「普通の人は体内の魔力を活性化させることで身体能力を強化する。ただ技能としての“身体強化”はより効率が高いし体に負担もない形にプログラムされてる。“限界突破”は体にめちゃくちゃ負担をかけるぐらい魔力を活性化させてステータスを底上げする。“身体強化”と“限界突破”はそういう差別化になる」
ハジメ「つまり技能としての“身体強化”はデメリットのない自己バフ、一般的な魔力による身体強化はちょっと自分にダメージが入るバフ、“限界突破”は『一刀修羅』みたいな感じなんですね」
私「まあ、そんな感じ。で、最後に神代魔法ーーなんだけど、これは話したら更に長くなるからまた別の機会に。それではさようならー!」
ハジメ(またいずれかやるのか…)


『各最強一覧』
・人族最強…勇者、こんなに弱いとは情けない。それはともかく十九人目の嫁候補発見。
・兎人最強…私がハー○マン! ですぅ!
・吸血最強…私はモテないんじゃない! 世界が悪いんだぁ!(綺麗は綺麗だけど、鑑賞用が一番…的な感じで見られてる)
・龍人最強…妾、変態じゃないもん!(///)
・海人最強…チュートリアルが【暴食】からの撤退クエストでした。そんなことよりミュウどこ?
・魔人最強…(一人だけシリアス)(空気読めない)(きっと将来禿げる)(ラウス)
・神…やった! 新しいゲーム、神ゲーぽいぞ!

なお、エヒトの言う「イレギュラー」は割と大切な設定ダヨ!

再・ヒロイン投票

  • 香織オンリー
  • 香織&優花
  • 原作通りのキャラハーレム
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