恋をしたありふれた職業は世界最強   作:見た目は子供、素顔は厨二

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遅くなりました、二話目です。
本来はこの一話目の時点でそーとーハードにするつもりだったが…。

甘っ甘です!
甘ったるいです、こんちくしょうめ!


1、安堵

 ーー()はどうありたい?

 

 未だにろくに思考が回らない中、ふとそんな声が聞こえた。目を開けようとするが、瞼が震えるだけ。しかし何かがある事、それだけは漠然と理解した。

 

 ーー()はどうありたい?

 

 再度、声は問いかける。聞いたことのある声だとも思ったが、誰とまでは今の思考では分からなかった。

 

 とりあえず僕は聞かれるがままに答えを返した。

 

 強くなりたい、と。

 

 ーーどうして?

 

 瞼の裏に見えたのは一人の少女。月の出ていた夜に約束を交わしたあの人。

 

 あの人に追いつきたいから。何処までも高くにいるあの人の元まで。置いてけぼりに甘んじるなんて、そんなのは御免だから。

 

 ーー追いつくだけでいいの?

 

 …出来ることなら、助けたい。あの人には助けて貰ってばかりだから。僕は何一つ出来ていないから。

 

 あの人の力に、あの人を守れる人に。僕はなりたい。

 

 ーー…うん、そうか。なら行っておいで。

 

 うん。行ってきます。

 

 

 そうして少年は黒い世界から浮上する。新たな誓いを胸に。

 

 ただし、少年は知らない。

 

 少年が見るその先にいくつもの悪意が潜んでいることを。

 

 ☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆☆

 

 目を覚ますとそこに映ったのは、なんと言うこともない白色の天井。この世界に来てからと言うものの、かつての世界の夢を見ては家の天井とは違う景色に虚しさを数え切れないほどに覚えた、その象徴。

 

 だがハジメはそれを見ていつものように落胆することは無く、布団から腕を抜き出し、眼前で何度も拳を開けては閉じた。その手に積もる微々たる疲労感。そこからハジメは今の状況が夢でもなければ死後の世界でもないことを確認した。

 

 すると脇腹がじくりと痛み出す。きっと迷宮での戦いで負った、“火球”による火傷だろう。

 

 その痛みにより完全に意識の微睡みを掻き消したハジメは、あの日の“火球”が急激な軌道の変化を描いていたことを思い出していた。よく思えば最初はハジメのいる方向にあの“火球”は飛来していた。それはまるでハジメを当初から狙っていたかのようで…。

 

(…いや、まさか)

 

 ハジメは自分がクラスメイトから反感を買っているというのは自覚している。日頃、あまり積極的にクラスメイトに関わっていないことやオタク趣味であることもその一因には挙げられるが、やはり主な物はハジメの周囲には何だかんだで人気者達がいることが最もの要因であろう。最近ではハジメが10人に1人がなる天職、“錬成師”であることやステータスが一般的であり、紛うことなく“無能”であることも、反感を倍増させてはいるが。

 

 だがそれでもハジメは誰かに殺されるようなことをした覚えはない。関わりを持っていないと言うことは、逆に害を与えていないことになる。また人気者達はあくまでもハジメの周りにいるだけで、さほど親しいわけではない。むしろ天之河などとは険悪だ。(というか一方的に敵視されている)

 

 唯一の例外と言えば、自分なんかを守ってくれると言ってくれたあの人だけでーー

 

「むにゃ…ハジメ、くん」

「ッ!?」

 

 声を上げなかったのはファインプレーだったのだろう。危うく城ごと揺るがすレベルで叫ぶところであった。

 

 そして今の今まで熟考していたため気づかなかったが、ほんの少しではあるものの足の辺りに何かが乗っているような感覚があった。ちなみにハジメは今の今まで天井を見ながら考えていたので、視野が他の部分に行っていなかったのだ。

 

 だからこそハジメは上半身を上げ、ようやくそれを見た。

 

 その人はさらさらとした長い黒髪がベッドのシーツにいくつも線を描き、すぅすぅと静かに吐息を上げる。長い睫毛はひっそりと閉じていた。

 

 ハジメの近くに水の入った桶とタオルがあることから、看病をしていていつのまにか寝てしまったのだろう。椅子に座りながら、ハジメの足を枕に寝ているのはきっと彼女がハジメが起きるのを誰よりも心待ちにしてくれていたのだろう。

 

 そんな風に思うとどうしても心の底が熱くなる。未だにこの気持ちの真意を悟れずにいるハジメは少し首を傾げた。

 

 だがそれでもハジメは少しこの思いを漠然とだが、理解した。要は嬉しいのだ。香織という少女が己を心配してくれていることが、何よりも。

 

「…白崎さん」

 

 それを自覚すると自然と顔の筋肉が綻んだ。そして上半身を更に折り曲げて、彼女の近くへと体を倒す。香織との距離が近くなるのに比例するように、ハジメの体が熱くなった。

 

 やがてハジメは香織の髪にそっと触れる。そこに深い意味は無い。ただそこにいるのが確かなのだと感じたくて。幻想では無いと確信したいが故の行動。

 

 もちろんその髪が粒子となり消えることはない。ハジメの手のひらの上で、微風に吹かれ少し踊っている。

 

 それを見て、安心してーー

 

「…ぅうん。……ハジメ、くん?」

「へ?」

 

 ーーだからこそ完全に油断していた。

 

 声の在り方にそっと視線を向けるとその先にいたのは、すっかり瞼を開け、くりりんとした瞳の中にハジメを映している少女の姿だ。すなわち白崎香織、その人である。

 

 香織は目をまん丸にし、ハジメを見ている。否、実際にはハジメの手を見ている。“香織の髪を握る”ハジメの手を。

 

 ここにおいてハジメの発汗は猛スピードで全開となる。震えたのは武者震いでも何でもない。最悪の結末を予想したが故の悪寒だ。

 

 すなわちーー

 

(白崎さんに今、「変態!」とか何とか言われたら…終わる! というか死ぬ! むしろ今すぐ死にたい!!)

 

 香織に嫌悪感マシマシな目で見られたら生きてける予感がしない、という何とも女々しい理由からくる恐怖がハジメを襲ったのだ。思春期男子特有の恥ずかし死にたいメンタル状態なのである。

 

 たとえハジメ的な理由が何であれ、寝てるJKの髪を触っている男の図。それは正しく変態を示すものだろう。少なくともそれで良い顔をするのは恋人同士か変態だけというもの。

 

 もう白崎さんの顔が怖くて見れないッッ、と視線をあちらこちらへと彷徨わせ、同時に髪を手放した手を意味もないのに上下左右にぐるぐるぐるぐる。顔は正しく百面相。面白いぐらいに切り替わっていた。

 

 もちろん言い訳をしようと試みるものの、

 

「え、ええっと。白崎さん! ゴメン! 今のはそのーー別にそういうことじゃなくて! アレだよアレ! きっとソレでーー」

 

 まともに思考は働かない。そもそもの理由を説明したところで無意識的なものであり、説明して納得してもらえるとも思えないものだ。その上テンパっているので、この有様だ。何とも酷いものである。

 

 実際に香織もポカンと口を開けて、ハジメを見ている。

 

(あ、これオワタ)

 

 ベヒモスさん、来てください。いっそ殺してください。そう思わずにはいられなかった。

 

 しかし現実は思いの外フィクションというものだ。

 

 ハジメが悟ったように全てを諦めていたその時、ハジメの体がふわっと包み込まれた。視界に映ったのは黒い髪が広がった様。ハジメには何が何やら分からなかった。

 

 だがハジメがそれを理解したのは耳の元、すぐに聞こえる啜り声だ。

 

「…良かった。…ひぐっ。ありがどう、ハジメぐん。ひぐっ…生きててくれて、ありがとうっ」

 

 抱きしめていた。他ならぬ香織がハジメの事を。その瑞々しい腕を背中に回し、何処にも行かないようにぎゅうっと。気づけばハジメは押し倒された形になっており、その上で香織がハジメを押さえつけ、抱きしめているという図になっている。

 

 瞳からは涙が溢れており、嗚咽混じりの言葉を紡ぐ。だがそこに悲しみは無く、ただ純粋にハジメの生存を喜んでいるからこそのものだと理解するのは、鈍感なハジメでもすぐに分かった。

 

 抱きしめる力はあまりにも強く、ステータスが全般的に低いハジメは呻き声を上げた。が、そんな痛みなど何処へやら。すぐにスッと痛みが引いた。

 

 だがハジメは香織に泣いて欲しくなどない。たとえそれが嬉し泣きでも。宥めるように香織の背中に腕を回して、そっと撫でる。

 

 ふるっと香織の体が震えるが、なお一層腕に込められる力が強くなった。少なくとも嫌がってはいないでいてくれているらしい。多少耳が紅葉色になっているようだったが、ハジメは気にせずに呟いた。

 

「僕の方こそ、ありがとう。約束を守ってくれて。こんなに心配してくれて」

「…うんっ、うん」

「本当にありがとう、白崎さん」

「……うん。どういたしまして、だよ…」

 

 ゆっくりと、ゆっくりと香織の背中を撫で、ハジメはただ感謝を呟く。それは紛う事なきハジメの本心であり、そこに一切の嘘は無い。心の声をひたすら真っ直ぐに吐露し続ける。

 

 するとどうか。香織から啜り泣きの音が消えていく。しかし同時に声が萎むように小さくなっていく。

 

 違和感を感じたハジメ。あれ、そういえばさっきから妙に香織さんが熱いような…。

 

「……………南雲くん、何をしてるのかしら?」

「……………坊主、無事で何よりだ。…で、この状況はなんだ?」

「へ?」

 

 入り口で硬直し、真顔で尋ねてくる保護者二名たる雫とメルド。

 

 やけに抑揚の無い声にハジメが少し冷静になり、今の状況を確認する。

 

 ・ただ今、ベッドの上。

 ・さっきまで密室二人。

 ・現在、抱きしめ合い中。

 ・しかも押し倒されてる。

 ・香織さんの背中を撫でてる。(宥めるため)

 

 この時点でハジメの発汗は先程のものにも勝る速度で加速した。最早滝だ。ベッドのシーツがグッジョグジョである。

 

 しかし香織の顔がチラリと見え、ハジメは更に内心追い詰められる事となる。

 

 ・めちゃくちゃ顔真っ赤。

 ・目が少し潤んでる。

 

(あ、これ明らかにアレな奴だ)

 

 実際にそんなことがあったわけでは無い。ただひたすらにお互いに安否を確認し合い、それが多少過剰に行っただけだ。

 

 しかしお天道様は兎も角、普通の人がこのような状況を見れば凄まじく誤解するわけで…

 

 無表情から一転。保護者二名が素晴らしい笑顔となる。…目の奥を除いて。

 

 そして嵐の前の静けさとはよく言ったもので…。

 

「バカモーーーーンッッ!! 人が心配していたというのに、何盛っとるかーーー!!」

「は、破廉恥よ! 今すぐ離れなさーーーいっっ!!」

「誤解です! 落ち着いてくださぁああああい!!」

 

 ハジメはこのあと、とてつもない噴火を見る事となるのだった。




と、言うわけで本日は甘々モードでした。
次回はこうはいかん!
この作品、原作とは違う意味でハードだから…。

あ、あとヒロインの扱いについてどうするかをアンケート設置するのでヨロ。
言っとくけどユエはエロテロリストじゃないし、シアは残念ウサギじゃないし、ティオは変態じゃないからね。(現在予定)
ご注意あれ。

それとその他を選んだ方は活動報告貼っとくので、それに。
非ログの人は…感想欄にそれとなく忍ばせて?(消えるけど)

再・ヒロイン投票

  • 香織オンリー
  • 香織&優花
  • 原作通りのキャラハーレム
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