目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
ジム。それはデトワール地方に8つ配置されている道場のようなものである。ジムにはジムリーダーという強いトレーナーがいて、勝つとジムバッチを貰える。そしてジムバッチを8つ集めるとポケモンリーグという大会に参加出来る。そして、そこの大会で優勝すると四天王への挑戦権を得ることが出来る。そして四天王全員に勝ってようやくチャンピオンすなわちナナの兄と戦えるのだ。そこでチャンピオンと戦い、勝つことが出来れば晴れてチャンピオンになることが出来るのだ。
「ダークライ。ムンナ。いくわよ!」
そして始めてジムの前に立つナナ。目の前にある氷で出来たドーム。これがジムだ。これから始まる。初めてのジム戦。それはどんなものだろう。どんなポケモンと戦えるだろうか。そんなことを考えると不思議とワクワクしていた。
「ムンナ。緊張しないで。ポケモンバトルで大事なのは楽しむことだよ」
「ンナッ!(うるせぇよ! 緊張なんかしてねぇし!)」
「ふふっ。期待してるわよ」
扉を開くと氷のスタジアムがあった。目の前には上半身裸で髪の毛が一本もない男がいた。しかし体はかなりがっしりしている。これがジムリーダー。ものすごい覇気だ。
「よくきたな。俺の名はニリン。氷タイプの使い手だ。お前の名前と所持バッジ数を言え!」
「ナナ。ジムバッチは0です!」
「初めてか。それなら俺の使えるポケモンは二体。そしてナナのポケモンも二体。これは面白いバトルになりそうだな!」
「よろしくお願いします!」
「おうよ。さっそく始めようではないか!」
ニリンがボールを投げる。出てきたポケモンはタマザラシ。
それに対してナナはムンナを繰り出した。僕は二番手か。
「フハハハハハ! いくぞ!」
「ええ! ムンナ。頑張ろうね!」
「ムンナァァァ(お前は俺がいないとダメなんだな!)」
「ゆけっ、タマザラシ! アイスボールだ!」
タマザラシのアイスボール。それはあまりに速かった。それこそナナの指示が間に合わないくらいに。ムンナが吹き飛ばされて、ナナが唖然とする。しかしムンナは何事もなく立ち上がる。それからのナナの反応は速かった。
「ムンナ。のろいをしてもう一度タマザラシの攻撃を受けて!」
「そうくるかぁ! それは悪手だぁ! タマザラシはそのままアイスボールじゃ!」
「ムンナ!」
ムンナが雪玉のように転がってきたタマザラシに跳ね飛ばされる。しかしムンナは思っていたよりダメージを受けてないようで、簡単に立ち上がる。
「アイスボール。攻撃が当たるまで、続いて、威力が倍増する技というのは知っています」
「……ほう?」
「のろいすると硬くなるんですよね。そしてムンナは元々丈夫ですから、二度目くらいのアイスボールなら受けれると判断したんです」
「……知識はあるようだな。でも三度目はどうだ?」
「ムンナ! やつあたりを右二十度に撃った後に左六十度に撃って!」
「ムンナァァ(あいよ!)」
やつあたりをして、転がってくるタマザラシを回避。しかしタマザラシも転がりを続けて追撃する。そこでナナが言った左六十度にやつあたり。それは追撃を回避するための動作だった。そこまで完全に計算していたのだ。そしてタマザラシの動きが止まる。その隙は見逃さない。
「ムンナ! タマザラシにやつあたり!」
「……タマザラシ。まるくなるで攻撃を流せ!」
タマザラシはまるくなって完全にムンナの攻撃を受ける。しかし、おかしい。ムンナの攻撃が明らかにグラエナと戦った時より低い。どういうことだ?
「やつあたりはポケモンがトレーナーを嫌ってれば嫌ってるほど強くなる技。ちょっとお前さんのムンナ。なつきすぎじゃないか?」
「ンナッ!(そんなわけあるか! 俺は大嫌いだ!)」
「そうなのムンナ?」
「ンンンンンナッ(お前なんか大嫌いだわ!)」
おう……なんていうツンデレ。ていうかある程度、真面目に指示に従う時点で相当ナナのこと気に入ってるよな。しかもトロピウスの時にボールから勝手に出て、庇うくらいだし。
「自分のポケモンのことすら把握してないとはくだらん。タマザラシ。ぜったいれいどで終わらせて……」
「それを待ってました。ムンナ。あくび」
ムンナが欠伸をする。それによってタマザラシがぜったいれいどを撃つ前に眠りにつく。さすがあくび。ほんとに恐ろしい技だ。ナナは眠ったタマザラシを見て不気味に笑った。
「フフッ。大技を出すと、先程のアイスボールの時とは比べ物にならない隙が出来るんですよ。それこそ簡単にあくびを受けるくらいに。それとムンナ。お疲れ様。そして、ナイトメアの始まりですよ?」
ナナはムンナをボールに戻す。そして僕にフィールドに行けと合図する。やっと僕の出番か。このタマザラシ。倒してしまっていいんだよな。
「いきなさい。ダークライ」
僕がフィールドに入る。それと同時にタマザラシがジタバタと暴れて苦しみ始めた。顔には恐怖が見える。これがナナの作戦だ。そしてニリンはなにが起こっているのか分からずにいた。ポケモンが眠ったと思ったら、もがき苦しむ。その事態を呑み込めていないのだ。
「な、なにが起こってる!」
「このポケモンはダークライ。周りのポケモンに悪夢を見せるんですよね。言うならば特性ナイトメア」
「初めて見るポケモンだから警戒はしていたが……完全に予想外だ」
「ダークライ。そのままタマザラシをあやしいかぜで飛ばしてあげなさい」
手を振るい、紫色の突風をいつものように起こす。それにタマザラシは吹き飛ばされ、宙を舞い、地面に叩きつけられた。そして地面に叩きつけられてもタマザラシは悪夢に苦しんでいた。そこに再び、あやしいかぜを撃って追撃。今度はタマザラシを壁に叩きつけた。それと同時にタマザラシは戦闘不能になり、僕の体から力がみなぎる。
「……タマザラシ。ゆっくりと休んでくれ」
「ダークライ。気を抜かないで。相手はジムリーダー。今までのトレーナーとは違うわよ」
「ゆけっ! フリージオ!」
次は氷の壁のようなポケモンが出てきた。口には氷で出来た鎖のような髭がブラブラと付属している。そしてナナはフリージオをそのまま僕で倒すつもりだ。先程のナイトメア作戦は既に見せている。同じ手はジムリーダーに二度は通用しない。だから、そのまま僕で押し切るつもりだ。
「……ダークライ! やきつくす!」
青い炎がフィールドを駆け巡る。炎がフリージオを捉えると、そのまま覆っていく。相手は氷タイプ。まともに喰らえばタダでは済まないはずだ。たとえジムリーダーのポケモンであろうと。
「……俺に挑むトレーナーはみんな同じことを考えるんだよな。『氷タイプには炎って』」
その時だった。フリージオにまとわりついていた炎が凍り付いた。さすがにナナもそれには唖然とする。まさか炎を凍らせてくるとは……
「お前さんが予想外な手を使うように俺も予想外の手を使う。ポケモンバトルってそういうものだろ? そしてフリージオはこうそくスピン」
「ジオッ(フハハハハハ)」
こうそくスピンで払われた凍った炎の破片が僕の体に突き刺さる。しかも勢いは相当早くて、かなりのダメージが体に響く。そしてフリージオはスピンをしたまま、こちらに突っ込んできて僕の体を吹き飛ばした。しかし、なんとか踏ん張り、壁にぶつかるのだけは回避する。あれは相当厄介だな。
「さて、フリージオ。じこさいせい」
「ジオオオオオッ(振り出しに戻るぜぇぇぇぇ!)」
「……ナナ。ドウスル?」
「ダークライ。あやしいかぜ!」
「無駄なことを。フリージオ。くろいきり!」
辺り一面の言葉通りの黒い霧が蔓延する。それを吸うと体からドッと力が抜けた。動けないほどではない。なんというか体の軽い感じがなくなったみたいだ。
「しまった!」
「これであやしいかぜによるドーピングはなくなったな」
しかも、先程のあやしいかぜでもフリージオは殆どダメージを受けていない。あのフリージオな並み大抵の攻撃では倒せない。弱い攻撃ならじこさいせいで回復されて終わる。
「……ダークライ。やきつくすをフィールド全体にお願い!」
「むだなことよ! フリージオ。れいとうビームで手を凍らせてしまえ!」
「ジオオオオオオオオオオオ(さぁさぁさぁ祭りの時間だぜ!)」
「ナッ!」
手を振って、炎を起こそうとした。しかし手が氷で止められてピクリとも動かない。手を動かすことが出来ないのだ。これじゃあ炎を出すどころか、あやしいかぜも起こせない!
「そして、こうそくスピン!」
「ジオッ!(勝負あり!)」
フリージオのこうそくスピンは僕の腹にダイレクトに当たり、吹き飛ばした。予想以上に重い一撃は僕を倒すのには充分だった。
「ダークライ!」
ナナが叫ぶ。しかし、もう遅い。僕はフィールド外の壁に叩きつけられた。それによって意識を失う。僕は戦闘不能となったのだ。
「……おつかれさま」
そしてボールに戻された。ボールに入ってすぐに意識を取り戻す。そして外を見た。
「さぁあと一体は手負いのムンナ! どうする。ナナ!」
「どうするって勝ちますよ」
試合はまだ続いていた。ナナはまだ勝負を捨てていなかった。
The補足
ジムリーダーの使うポケモンは挑戦者のバッジ数によって変動します。
しかし、それでも一生ジムバッジを一つも手に入れることが出来ずに終わるポケモントレーナーが七割を占めるくらいジムリーダーは強力な存在です。もしもジムバッジを一つでも持っていたらポケモントレーナーとしては相当優秀な部類になるでしょう。