目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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14話 メアの戦い方

 ナナとメアが親友かどうかはさておき、友人であるのはたしかだ。

 

「そういえばナナはジムバッジいくつなの?」

「一つよ」

「それじゃあハクガのジムに勝ったんだ! おめでとう! まぁナナなら楽勝だよね」

「楽勝でもなかったかな……というよりかなりギリギリだった」

「……ふーん。ジムリーダーってナナより強いんだ」

 

 そういえばメアはナナより先に旅に出たよな。それなら先にハクガシティに着いてジム戦をしているはずだ。しかし口振りから察するにジム戦をしてないようだ。そう疑問に思っていると僕の疑問を察したのかナナが補足する。

 

「メアはトレーナーじゃないの。だからジム巡りもしてないのよ」

「ナルホド……」

「そうそう。まぁそこら辺のトレーナーに負ける気はしないけどね。ちなみに私が旅をしている理由はアイドルになるため! それにボルノは国際警察の一員になるために旅をしてるんだ。純粋にチャンピオンを目指して旅をしてるのってナナとノエルだけなんだよ」

 

 旅をするということはチャンピオンを目指すということだと思っていた。しかし考えてみればポケモンの世界だって色々な仕事がある。そっち方面を目指すために旅をするトレーナーがいてもおかしくないだろう。

 

「もっとも一般的なアイドルは可愛くて歌って踊れればなれるんだけどね。でも私はそれに加えて戦えるアイドルになりたいんだ」

 

 ちなみにポケモントレーナーというのはポケモンを持っているだけで名乗るものではない。一般的にポケモンを戦わせて生計を立てる人のことだ。つまり生計を立てる以外の目的でポケモンを戦わせる人は一般的にはトレーナーと呼ばないのだ。

 

 しかし、この世界ではありとあらゆる職業でポケモンの知識があった方が便利である。それほどまでにポケモンの存在は人間の社会に溶け込んでいた。そして、ポケモンの知識を深めるために旅をする人も多い。

 

「そうだ! 折角だから私と戦おうよ!」

「いいわよ。でもお金を取られて泣かないでね?」

「ナナこそね」

 

 そうしてポケモンバトルが始まった。勝負は1VS1。ナナは僕を使うようだ。だから今回はムンナの出番は無し。相手が出すのは恐らくハスボー。それか進化してハスブレロか……

 

「お願い! ニンフィア!」

「フィア!(はい。ニンフィアちゃんの登場です!)」

 

 あの時とは違うポケモンか。四つ足で純白の体。そしてピンクの耳、リボンのような触角がある全体的に可愛らしいポケモンだ。

 

「……ダークライ。侮らないで。相手はフェアリータイプで相性は不利よ」

 

 いや、待て! フェアリータイプってなんだよ! ポケモンは全部で十七タイプだろ! そんなツッコミも間に合わず電光掲示板にバトル開始の合図がされる。

 

「それじゃあ! 戦闘開始! ニンフィア! スピードスター!」

「上に飛んでダークライ!」

 

こちらにピンク色の星が飛んでくる。ナナの指示を受けて迷わず反応したため、なんとか回避に成功するが、すぐに次の星が飛んでくる。僕はそれを自己判断であやしいかぜを使い、星と一緒にニンフィアを叩き落した。いくらナナが優秀だと言っても指示の伝達にはコンマ数秒はかかる。だから時には自分で考えて動くことも必要だと判断した。そしてナナなら僕の考えを汲んで、すぐに適切な指示を送れる。そういうトレーナーだ。

 

「ナイス! ダークライ! そのままやきつくす!」

 

予想通りにナナも僕の意図を理解して、驚くことなく追撃の指示を出す。

いつものように青い炎を出して、地面に走らせて、ニンフィアに襲い掛かる。

しかしニンフィアはすぐに態勢を立て直した。そしてメアもニンフィアにすぐに指示を出す。

 

「ニンフィア。あまごいで炎を弱めたら、ようせいのかぜで掻き消して!」

「フィア!(熱いのは嫌いなの!)」

 

 暗雲がフィールド上空に生まれ、大雨が降り注ぐ。ニンフィアに襲い掛かろうとした炎は勢いは弱くする。それからニンフィアは吠えて、上風を起こして炎を掻き消した。普通ならこの程度の風で炎が消えることはない。しかし雨で弱まっていたのが、あまりに致命的過ぎた。

 

「ライブに火器の持ち込みは厳禁!」

「……なんて組み合わせ」

「攻撃技も工夫次第で防御に転用できる。学校で習ったよね?」

「フィア~(もっともすぐに止むけどね)」

「続いてにほんばれ!」

 

 雨はニンフィアの言った通り数秒で止んだ。いや、正しくは止まされたのだ。天気はすぐに晴天になって。室内にも関わらず太陽光が降り注ぐ。仕組みなど分からない。ポケモンのワザとはそういうものなのだ。しかし、ここでなぜにほんばれをした?

 僕もナナも意図が分からずにいた。そしてナナがメアに問いかける。これは明らかに炎技持ちのこちらに有利すぎる行為だ。

 

「にほんばれをすると炎技の威力が上がる。それはメアもご存知のはずよ」

「ええ。でも周りが見えない?」

 

 メアに言われて辺りを見回す。すると辺りには虹がかかっていた。

 まさか先程の雨は炎を消すためではないというのか! 虹を作るためだけに雨を降らせたのか!

 

「メア。ふざけているの?」

「真面目だよ。そして私が目指すのはアイドルよ!」

「フィア!(さぁここからが本番だよ!)

 それと同時にメアはルンパッパを出した。しかしフィールドの外。ルール違反擦れ擦れだがアウトではない。そしてルンパッパはギターを持っていて音楽を奏で始める。

 そしてメアが綺麗な歌声で歌いながら、踊り始める。

 

「……まさか!」

「フィィィア!(優れた音楽は生き物の更なる力を引き出す!)」

「ダークライ! 出来る限りニンフィアと距離を取って!」

 

 しかしニンフィアの方が早い。ニンフィアは僕より早く動き、背後を取り、後ろ蹴りを食らわせる。

 それもトレーナーの指示を一切受けることなく。かなりの痛みを伴ったが、なんとか踏みとどまる。

 だが、明らかに先程より早い! 一体どうなっている!

 

「自己判断による行動。メアは歌っていて指示が出せない。だから、その場でニンフィアが最適解を考えて動いている。そして特性はフェアリースキン。それによりニンフィアの攻撃は全てフェアリータイプになり、あくタイプのダークライは抜群を突かれる……厄介ね」

「……ナ!」

「歌も無意味じゃない。ニンフィアはメアの歌で気分が高揚している。少し電子ゲームで使う表現をするならば歌と踊りでバフをかけている」

「ご名答! これがアイドルの戦い方だよ! ニンフィア決めるよ!」

 

 曲が間奏の部分になり、メアが受け答えした。初めて見る戦い方だ。そして明らかに歪な戦い方。だけど間違いなく言える。メアのトレーナーの腕はかなりのものだ。ポケモンの力の引き出し方というものを把握している。現に僕の身体能力は上がっていない。恐らく、この歌はニンフィアにしか効かない。ニンフィアのための歌……

 

「ドレインキッス!」

「フィア。(お疲れ様)」

 

 ニンフィアが僕に近づいてキスをした。それに体力がゴッソリ吸われて、身動き一つ取れなくなっていく。まるで体が干からびていくようだ……

 

「戦闘終了かな?」

 

 体を動かそうとする。しかし動かない。電光掲示板にそれを見て勝者ニンフィアの表記がされる。それを見てナナが僕に寄ってきて傷薬を使った。するとみるみるうちに体力が回復していき、体が動くようになる。

 

「これが私の戦い方。虹でなにもない場所をステージに変えて、歌でポケモンのテンションを上げていつも以上の力を引き出す。指示を出すだけがトレーナーじゃないんだよ」

「初めて見たわ……」

「今まで理論はあったんだよ。だけど指示を出さなくても技を撃てるポケモンっていうのがいなくてね。そんな時に賢いイーブイを見つけたの」

 

 完全に初めて見る戦い方。しかし、どこか反則の気がする。たしかにルールは破っていないのだが、どうも納得いかぬ。これじゃあまるでニンフィアに負けたというよりトレーナーに負けたという感じだ。もっともポケモンと人間が互いに力を引き出し合っているわけだから理想形の関係と言えば理想的なのだが……

 

「これでリベンジ達成だよ。ナナ」

「次は負けないわよ」

 

 そして勝負が終わるとナナは少なくない金銭をメルに支払っていた。もっともこの前に二十八連勝なんていう記録が立つくらい。つまり全体で見れば黒字だ。そして、それからメアと一緒に夕食を取ることになった。どうやらナナ的にもメアがの戦術は気になるところがあるようだ。

 

「ねぇナナ。私の戦い方をどうやって突破する?」

「そうね……ハイパーボイスで歌を掻き消す。黒い霧を使うというのもありね。それに一時的な身体能力強化なら吠えるとかで強制的に交代をさせるっていうのも悪くはないわね」

「うんうん」

「でも一番手軽な対策は歌が終わるまで待つこと。例えばダークライのあやしいかぜの追加効果による身体能力とかはボールに戻すまで有効。しかしメアの歌は『メアが歌をやめたら解除される』じゃないかしら?」

「そうね。でもそれが出来るトレーナーが何人いるのかな?」

 

 これがナナの同期の実力。ノエルといい、メルといい凄いトレーナーばかりだ。事実としてメアの歌が歌い終わるまで待つのは困難を極めるだろう。これならナナが学校で最下位だというのも頷ける。それほどまでにメアは強かった。

 

「それにナナは一つだけ読み誤った」

「どこかしら?」

「私が指示を出していないという点。たしかに技の指示は出していないよ。でも動きの指示はすべて出してるんだよ」

「どうやって!」

「踊り。踊りの脚の動きや靴底を鳴らす音で指示を出してるんだ」

「驚いた。ほんとにすごい技術ね」

 

 ナナでさえ見抜けない合図。ナナレベルの人間を誤魔化せるなら相手に動きがバレることはまずありえない。しかも、これだけの実力でバトルは本業ではないと言うのだから驚きだ。

 

「私は見つけたいの。私にしか出来ないポケモンバトル、私にしか出来ないポケモンとの関わり方を。そして、それを見つけるために旅をしてるの」

「素敵ね」

 

 自分にしか出来ないポケモンバトル。ナナはその言葉を静かに呟いた。なんとなくナナの考えていることが分かる。きっとナナは悩んでいるんだ。今の戦い方は本当に自分にしか出来ない戦い方なのかと。それこそパチリスの言った通り、ナナはここに来て自分の戦い方を疑い出している。それこそ『私は本当に僕たちの力を最大限に引き出せているのか』と。

 でも同時に確信した。ナナはトレーナーとして申し分ない。しかしもっと先にいける。まだまだ強くなれる。

 

「……メル。もっと教えて! あなたの戦い方を! 私も見つけたい。自分だけの戦い方を! そのために色々なトレーナーの戦い方を知りたいの!」

 

 ポケモンバトルを通して強くなるのはポケモンだけではない。トレーナーもそうなのだ。色々なトレーナーと戦って戦術を見て学ぶ。自分の想像もつかない観的からのポケモンのアプローチを知って、視野を広める。そうしてトレーナーとしてのレベルも上げていく。

 

「いいよ!」

 

 メアとの勝負。結果としては負けたが得られたものは大きかった。

 




The補足
メアの歌はバフと解釈していただければ幸いです。どのくらいのバフなのかというと本編ポケモンでいうところの『全てのパラメータがぐーんと上がった』と同じ状態です。
メアの戦術が公式戦で許されるかどうかというとグレーでしょう。理由としてはメアの出したルンパッパが『てだすけ等の補助技を使っているのではないか』と疑われるからです。もしもメアがルンパッパを出さないで自分で歌うだけならセーフになります。
そして今回アウトにならなかったのはナナが異議申し立てをしなかったからです。トレーナーから異議があれば反則負けになることもあります。ただ実際のところは前例がないケースなのでどうなるか分かりません。しかしアウトだとしてもメアは作中でも言っていた通り『ポケモンリーグ出場を目的としていない』ので公式戦でアウトだとしても問題ないのです。
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