目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「ナナ! 私も行くわ!」
ポケモンセンターをナナが出ようとした時だった。メアがナナの後を追ってきて、声をかける。ナナは振り返ることなくメアに言った。
「あなたにもノエルからメールが!」
「ええ! おそらく……」
「おう、お前ら! ノエルからの指示だろ! 乗っていけ!」
そんなタイミングでウィンディに乗ったボルノが現れる。ナナもメアは頷くと躊躇うことなくウィンディに乗った。そして乗ると同時にナナは僕をボールに戻した。
「タイミングから考えてメールは三人に一斉に送信されたよね」
「状況から判断してなにかあったのは間違いない」
「メールの内容は『早急に手を貸してほしい。場所は森の墓場』という内容だけ」
なるほど。なんとなく事態は掴めてきた。ノエルは間違いなく何者かに襲われている。そして、その相手はノエルの手に余る相手だと判断したから援軍を呼んだ。そんなところだろう。そしてナナ達はノエルに手を貸すために、動いた。
「……でも、なんでジョンサーさんじゃないんだ?」
「理由は二つだと思う。一つ目は電話を出来る状況じゃない。そして二つ目は私達の方が早く着くから。誕生日に先生から私達の貰った石を覚えてる?」
「ああ。メアがみずのいし、オラがほのおのいし」
「そして私がつきのいし、ノエルがやみのいし。恐らくノエルの貰った石を覚えていて、ガーディを捕まえてウィンディにしてると考えてるからだと思う」
「たしかにウインディの速さはポケモンでも指折り。着くのは一瞬だと考えたわけか!」
そんな話をしていると墓場で数人相手に戦ってるノエルが見えた。相手はゴゥー団か!
「パチリス! ほうでんだ!」
同時に数十体の禍々しいオーラを放つポケモンを倒す。しかしポケモン達はすぐに起き上がってくる。そしてナナはムンナを出して、あくのはどうでダークポケモンを吹き飛ばす。そしてメアはルンパッパのみずでっぽう。ボルノはそのままウェンディにかえんほうしゃをさせて相手のポケモンを抑制しながら登場する。
「みんな!」
「シエル! 状況は!」
「見ての通りだ! 怪しい奴らに襲われている!」
「あとは任せて!」
「気を付けろ。奴らのポケモンは何度でも起き上がってくるぞ」
見た感じだとポケモンは約十三体いた。どれもダークポケモンだ。そして団員の数は四人。三人はスーツだが、一人だけは赤いスーツだ。恐らく黒スーツは下っ端。そして赤スーツは偉い役職の人か。
しかしノエルは十三体ものポケモンと同時にやりあっていたのか。それだけでも相当の実力だと分かる。しかも見た感じだとパチリスは無傷。もっとも疲れてきてはいるが。
「ガキが増えて面倒ですね。早く始末してしまいなさい」
「イエッサー」
「やれやれ……大人しくグソクムシャを寄越せばいい話だというのに」
「ニンフィア! お願い!」
メアがニンフィアを繰り出す。それを見てボルノもフシギソウを出した。なるほど。たしかにポケモンを複数出さない理由はないな。
「……ナナ! ノエル! 他のポケモンは!」
「まだなにがあるか分からないわ。動けるポケモンを一体は残しておいた方がいいと思う」
「ナナに同じく。だから僕もグソクムシャは温存だ」
「そういうことですか。そろそろ時間もありませし、舐められるのも癪なので私も動くとしましょう」
赤いスーツの男はそう言うとボールからスピアーを出した。もちろんダークポケモンだ。そしてスピアーはとてつもない速さでシザークロスを撃ち、ニンフィアとフシギソウを吹き飛ばした。フシギソウはなんとか踏ん張るもニンフィアはその一撃で戦闘不能になる。メアはニンフィアをボールに戻すと悔しそうに赤いスーツの男を睨むしかなかった。
「スピアー。フシギソウにもう一度シザークロス」
「……ピア(……助けて)」
スピアーがジザークロスでフシギソウを吹き飛ばして戦闘不能に追い込む。そしてスピアーの声を聴いて僕はボールから飛び出してスピアーにあくのはどうを撃っていた。やっと初歩に踏み込んで、まだ完成には程遠かった技。しかし今の一撃は完璧に成功していた。今ならハッキリとやり方が分かる。悪意とはこういうことか。絶対にゴゥー団を許さない。
「そうね。あなたなら怒るよね。だって、あのスピアーは……」
それだけ言うとナナはムンナをボールに戻した。ムンナもそれを受け入れる。あのスピアーは僕がエラニの森で戦って初めて負けた個体。自分でも気づかないうちにそんなスピアーに愛着が生まれていたみたいだ。だって、あのスピアーを汚されて、こんなにも怒りが湧いてくるのだから。
「戻って。ムンナ。さすがにこのスピアーはダークライに集中しないと勝てない」
「ナナ……」
「このスピアーは私とダークライに引き受けさせて。みんなは他のダークポケモンをお願い!」
「訳ありなんだな! 分かった!」
それと同時にスピアーは僕の目の前に現れてシザークロスを叩き込む。だけど、一度見た動き。それに僕だってあの時より成長している。見切れないほどではない。
「ダークライ! あくのはどうを撃って、すぐに横にずれる!」
ナナの指示を忠実に守る。スピアーにしっかりと一撃を決める。しかしスピアーはすぐに起き上がり、再びシザークロスが来る。だけどナナに言われた通りに動くことで回避に成功する。
「やきつくすでスピアーの動きを封じて、そのままあやしいかぜでぶっ飛ばして!」
スピアーにやきつくすで炎を絡ませる。炎に一瞬だけ怯むが、すぐに炎を払い、シザークロスをしようと接近してくる。しかし僕は既にあやしいかぜを撃つ体制に入っている。そのままあやしいかぜでスピアーを飛ばす。しかも運よく体に力が湧いてくる。恐らくあやしいかぜの追加効果の身体能力強化。これは運がいい。
「さすがダークライ! しかしスピアーは虫タイプのポケモン! 相性ではこちらが有利なのですよ! さっさと止めをさせてしまいなさい! スピアー! こうそくいどう!」
「まずい! 技が避けきれなく……いや、まだいける! 考えろ! 私!」
そしてナナが指示をする。右や左と移動する方向を言う。僕も無心で信じて従う。ナナが間違えるわけがない。そんな確信があった。
「……なぜだ! なぜ当たらない!」
「分かるのよ……スピアーがどう動くか。数秒先のスピアーの動きが手に取るように分かる」
この速さだと目で見てからの判断は間に合わない。だから相手が動く前に指示をするしかないのだ。そのためには予測をするしかない。ナナの観察眼はピカイチだ。その観察眼があるからこそ、スピアーの動きの癖などを全て見切り、未来予知に近い予測をする。
「私はずっと考えていたの。自分にしか出来ない戦い方。そして答えは出た。先生に優れてると褒められた観察眼を使った完全なる予測! これが私にしか出来ない戦い方よ!」
「そうですか! でも避けてばかりで攻撃が出来ませんよ! それにこれ以上速くなったら、もう対応出来ないんじゃないですか! スピアー! さらにこうそく……」
「このタイミングでこうそくいどうをするのは予測済み! そしてこうそくいどうをする時だけは攻撃をやめる必要がある! ダークライ! やきつくすとあくのはどうを同時に撃って!」
言われた通りに技を撃つ。あくのはどうの勢いに乗せて撃つやきつくす。威力はあくのはどうには劣るが、やきつくすの威力が上がる。悪意による上乗せされたやきつくす。虫の弱点は炎。その炎技をストレートに喰らったんだ。もう戦えないはずだ。誰もがそう思っていた。しかし完全に甘い考えだった。僕たちはダークポケモンを舐めすぎていた。
「……ピアッ(戦いたくない)」
「嘘でしょ!」
「さて、スピアー。こうそくいどう」
スピアーのこうそくいどう。もう無理だ。完全に追いつけなくなった。ナナの予測による指示を受けても反応が間に合わないのだ。
「ダークライ! 諦めるんじゃないわよ! まだ勝負は終わってない!」
そんな時にナナに 責を受ける。そうだ。まだ勝負は終わっていない。諦めるには早すぎるのだ。このくらいの困難、乗り越えてやる!
「追いつけない? ならバトルの中で成長すればいい! 工夫でも技術でも追いつけないなら、成長で超えていく!」
ナナの叫びと同時に背後から音楽が響いた。それから間もなくメア歌声が響いた。
「ダークライ。勝負はこれからだよ! さぁ戦闘開始!」
その合図と共に体中から力が湧いてくる。今までの比ではないくらい力が湧く。メアの歌はポケモンの身体能力を上げる。それはニンフィアとの戦いで実践済みだ。
「ナナ! ダークライ! こんな奴らやっつけちゃえ!」
ああ、勝負はこれからか。絶対に勝つ! そしてスピアーを救う!
The補足
まえに『メアの歌はニンフィアのための歌だからニンフィアにしか効果がない』と言っていたのに、メアが天才だからです。
メアは時間さえあれば、そのポケモンがもっとも望む歌を歌えます。
つまりメアは即興でダークライのための歌を組み立てたのです。そして、それが出来るのはメアが天才だからと言うしかありません。