目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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17話 四人はいつも

 スピアーの動きは先程より明らかに遅くなった。

 いや、正確に言うならば僕の速度があがったのだ。しかし現在も目に追うのがやっとの速さ。だけど今のスピアーの速さならナナの指示を受ければ、スピアーの攻撃を躱してあくのはどうを叩き込む余裕がある。前よりも何倍も威力が高いあくのはどう。それを喰らってもなお起き上がるスピアー。

 

「なんなのですか! ダークスピアーが平凡なポケモンに負けるわけが無い!」

「その言葉を覚えておきなさい! 次はしゃがんで下からあくのはどう!」

 

 再びスピアーを吹き飛ばす。しかし、それでも起き上がってくる。

 まるでゾンビだ。ていうか普通に活動限界のはずだ! ここまでやって倒れないのは明らかにおかしい!

 

「ダークライ! 攻撃をやめて!」

「何故ダ!」

「このスピアーというよりダークポケモンは恐らく死ぬまで動き続ける! つまり下手な攻撃はいたずらにスピアーを傷付けるだけよ!」

「よく気付きましたね。そう! ダークポケモンは死ぬまで動き続ける最強のポケモンなのですよ!」

「……動揺しちゃダメ。恐らく止める方法はなんかしらある」

「ないないない! そんなものはない!」

 

 それからメアが人差し指を立てた。それを見てナナが冷や汗をかく。

 

「ダークライ! あと一分よ!」

 

 そうだ! メアの歌が途切れたら一気に身体能力が落ちるのだった。そうすると、スピアーと戦うのが厳しくなるのか。つまり一分以内にどうにかしなければならないのだ。

 

「……そういうことなら策がある!」

「ボルノ!」

「スピアーを捕まえるんだ! 頼む。ノエル! さっき言った通りだ!」

「グソクムシャ! であいがしら!」

 

 ノエルがグソクムシャを出すと、グソクムシャは神速で動いて赤いスーツの男の腹を殴り飛ばした。

 

「グヘボベボカホッ!」

 

 男はそのまま空へと飛んでいき、地面に叩きつけられ、意識を失う。

殴ると同時に起用にグソクムシャはスピアーのボールを器用に掴みとっており、咥えてボールをかみ砕く。まさかトレーナーを直接殴るのか! それは盲点だった! 考えてみたらこういう状況ならトレーナーを殴っても問題ないよな!

 

「ナナ! これでスピアーは誰のポケモンでもなくなった! つまり捕まえられる!」

 

 それから同時にグソクムシャはアクアジェットで他の団員に近づき、ボールを奪い取って全て破壊していく。それと同時にノエルとボルノが他のダークポケモンを捕獲していく。

 でも、それはまずい! ナナはボールをポケモンに当てるのが苦手だ。しかも相手は高速で動き回るスピアー。そして、このタイミングでメアの歌が止まる。

 

「ダークライ。大丈夫。ナナはいざという時はやる子だから。そして、もうナナの勝ちだよ」

 

 スピアーがこちらに向かってくる。もう少しでシザークロスが当たる。当たったら物凄く痛いだろうなぁとか思い始める。そしてスピアーの針が目の前に迫った時だった。スピアーはボールに吸い込まれる、ボールは数度揺れてピロンと鳴って止まった。

 

「だから言ったでしょ?」

 

 ダメージが来なかったことに安堵する。それからグソクムシャが僕に近づいてきて頭をわしゃわしゃと撫でた。

 

「ムシャ(よく頑張ったな)」

 

 そうしてグソクムシャは自分でボールに戻っていった。しかし、あのグソクムシャ。相当強いな。男を殴った時に一切の躊躇いがなかった。それにあの素早さ。あの一瞬で的確にボールの場所を判断して、強奪した後に全て破壊したのだ。

 

「いやぁ危なかった。ボルノのボールを壊すという案がなかったらどうなっていたことか」

「しかしノエル。あなたどうして最初からグソクムシャを使わなかったの?」

「あいつはタイマン用だ。ああいう多数のポケモンを相手したり、同時に複数のポケモンと戦うダブルバトルならパチリスの方が適任だからさ」

「それだけじゃないくせに……最初からダークポケモンが死ぬまで動くことを見破っていた。ダークポケモンを苦しめないために攻撃力が高すぎるグソクムシャは使わなかった」

「想像に任せるよ」

 

 ナナの問いかけに曖昧な答えをするノエル。しかし、それから付け足すように言った。

 

「でも死ぬまで戦うというのは本当に知らなかった。知っていたら教えている」

「まぁそれは本当でしょうね。意地悪なこと聞いて悪かったわね」

 

 そして四人の戦いを見て分かった。みんな相当強い。観察することで完全な予測が出来るナナ。歌でポケモンをパワーアップさせられるメア。ありとあらゆる角度から物事を考えて、機転でどんなピンチだって切り抜けるボルノ。そして圧倒的な実力で全てをねじ伏せるノエル。どれもナナと同格以上と言って差し支えないがないくらいに……

 そして恐らく、これから会うトレーナーの中には彼等さえ上回る者もいりだろう。少なくともポケモンリーグに出るトレーナーは彼等以上の天才……

 

 それから間もなくジュンサーさんが来て、彼等の身柄は引き渡された。これから詳しく調べることでゴゥー団の内情も分かるだろうとのこと。また赤いスーツの男を捕まえたことで少しはゴゥー団の動きが大人しくなるだろうとも言っていた。つまり問題なく旅を再開出来る

 そして捕獲したダークポケモン。それに関しては既に元に戻す機械を開発済みであり、すぐに戻れるだろうとのことだった。しかしトラウマは残り、人間に怯えながら生きていくだろうとも言っていた。ちなみに機械に関して言えば開発したのはナナの先生を兼任していた、あの人だ。しかもダークポケモンの個体を確認してから三日で完成させたとか……

 なにはともあれ、ゴゥー団の一件はとりあえず解決した。

 

 

 

「……いや、だから絶対にヤドンの尻尾料理は残虐よ!」

「でもアローラの家庭料理だぜ」

 

 それから間もなくして、理由はともかく四人集まったんだからということでポケモンセンターの一部屋を借りて打ち上げも兼ねた宴会をしていた。もちろん手持ちの全てのポケモンを出してだ。

 

「そもそもオラはヤドンに痛覚があるかが問題だと思うんだ」

「ていうか、こんな下らない話やめない?」

 

 しかしヤドンのしっぽか。やっぱりポケモンを食べる文化はあるのだろうか。ナナはポケモンを食べるのは断固反対みたいだが。

 

「そうだな。それにしても全員が手持ちは二体か。これもなにかの縁かな」

「そういえばノエルはやみのいしをどうするの?」

「俺はヒトモシを捕まえたら、そいつに使おうかなと思ってる。それよりナナはムンナにつきのいしを使わないのか?」

「ええ、ムンナが進化したいと思う時までは温存するわ。それに体格が変わったらムンナも困るだろうし」

「ンナッ!(俺はまだムンナのままでいいや!)」

「そっか。しかしお前ら二人は随分と使うの早かったな」

「だってールンパッパが好きなんだもん!」

「右に同じっす! ていうかコソクムシの進化随分と早くね?」

「ああ。それはちょっとヘマして主のフシギバナに襲われてさ。それで頑張って倒したら、その時に進化してたわ。ちなみにこのパチリスもその時に捕まえた奴」

「ヌシと言えば私も襲われたわ。その時はトロピウスだったんだけど、トレーナーいないのにZワザを撃ってきて命の危険を感じたわ」

「俺が相手したフシギバナなんてメガシンカしてきたからな。それに比べたらマシだろ。まさか野生ポケモンがメガシンカするなんて思ってもいなかった……あれってトレーナーとのキズナでやるものだろ」

 

 積もる旅の話に華を咲かせる。ナナとノエルのどちらの旅が大変だったか争いが始まったり、ほんとに賑やかで楽しい空間だった。

 しかし、彼等はライバルだ。特にノエル。僕たちは彼を超えなければならないのだ。ライバルとこんな関係で良いのかと少しだけ思うが、ギスギスしてるよりマシという結論にすぐに落ち着いた。そして次はどんなポケモンを捕まえたという話になった。

 

「やっぱり私はメロエッタ! 音楽のポケモンなんて素敵!」

 

 メアがそう言うとボルノが幻のポケモンだから無理と言う。隣にダークライという幻のポケモンを最初に捕まえたナナがいることを忘れて。

 

「やっぱりオラはゲッコウガ! あの忍者みたいな姿がカッコイイ!」

 

 そしてボルノに関しては、ノエルから御三家を更に増やすのかと呆れられていた。ちなみに御三家というのは初心者オススメのポケモンの総称だとか。ちなみに御三家に含まれるポケモンは全てゲームで最初に選ぶポケモンである。

 

「やっぱり俺はヒトモシ。昔からシャンデラってポケモンが好きでさー」

 

 それに対してナナも突っ込まなければとツッコミを考えるが、なにも浮かばないでアタフタする。それが少し可愛かった。そしてナナの捕まえたいポケモンは……

 

「昔にアローラにやってきたウツロイドというポケモンがいるんだけど、私はその子のが……」

 

 そしてナナの言ったポケモンはそれだけはやめとけと全会一致で言われた。どうもウツロイドというポケモンは相当ヤバいポケモンらしい。一体どんなポケモンなのだろか……

 

 そんな会話が少し続いた後に、この会はお開きとなった。みんながそれぞれの旅路へと戻っていく。少なくとも僕はそう思っていた。翌朝、メアのこの一言を聞くまでは。

 

「ナナ! これから一緒に旅をしよ!」

 




The補足
もしもポケモンを持っている人がなんらかの事情でポケモンの入っているモンスターボールが壊れてしまったら、そのポケモンは野生のポケモンとなります。しかしボールが壊されようがトレーナーとポケモンの間にたしかな絆があれば、ポケモンはトレーナーの元に戻ってくるので、問題視する声は少なく、またモンスターボールを壊れることを恐れるトレーナーは少ないです。何故なら彼等は自分のポケモンはボールの束縛が無くても自分の元に戻ってくることを知っているからです。
しかしボールを壊されることはトレーナーとポケモンの両者が極端に恐れます。なぜなら壊されるということは引き離されるということだからです。
ちなみにモンスターボールは丈夫なので壊されるなんてことはまずありえません。
作中でモンスターボールが壊れたのは単純に『あのグソクムシャが強すぎた』だけです。


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