目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

19 / 92
18話 カイヨウシティへ!

 意外なことにナナはメアの提案を受け入れた。それにゴゥー団の動きは大人しくなる見通しだといえど、壊滅したわけではない。いつ襲撃されてもおかしくはないのだ。その時にナナもメアも一人だとあまりに危険過ぎる。そう判断したことからだ、

 そしてメアと旅を始めて二日が経とうとしていた。森を抜けて現在は平原で休憩も兼ねた昼飯中だ。

 

「ゴゥー団の本部がお兄ちゃんの活躍によって壊滅。しかしボスと幹部格には逃げられる。当分は大人しくなる見通し。しかし一部の残党はいるので注意すること」

 

 ナナが新聞を読みながら僕に報告をする。あの赤いスーツの男はゴゥー団の幹部だったらしく、色々なことが判明したそうだ。その結果としてチャンピオンであるナナの兄の手を借りて基地を一つ制圧する作戦が組まれた。結果としては大成功。なんでも無傷で終わったとか。

 

「ナナのお兄ちゃん強すぎない?」

「まぁお兄ちゃんだし、あのくらいなら朝飯前だよ」

 

 しかし無傷か。スピアー一体に苦戦を強いられていた僕たち。明らかに格が違うな。

 それにやっぱりこの世界にはまだ見ぬ強敵がうじゃうじゃいるということ……

 いくらナナが強くなったと言えど、まだチャンピオンの壁を破るには足りない。

 

「そして……」

 

 ナナが三つ目のボールを持ちながら見つめる。中身はスピアー。一度博士に送り、ダークポケモンではなくなった。普通のスピアーだ。あれから引き取り手のいなかったスピアーはナナの手持ちになっていた。

 

「どうしようか」

 

 ナナはどうすればいいか。分からずにいた。恐らくスピアーも人間に対して相当なトラウマを抱えている。だからナナとしても、どう関わればいいのか分からないのだ。その結果として未だにボールから出せないでいる。

 

「でも、そろそろ出さないと……おいで、スピアー」

 

 ボールを投げて、あの事件から始めてスピアーを出す。スピアーはボールから出て怯えた表情を見せると、すぐに暴れ始めた。ナナがスピアーを落ちつかせようと触れようとするが、スピアーが腕を振り回してナナを傷付ける。

 

「いたっ!」

 

 ナナの手から少し血が溢れる。僕はカッとなってスピアーにキレた。この野郎! ナナを傷付けやがって!

 

「ダークライ。やめて」

 

 スピアーを叩こうと近寄る僕をナナは静かに静止する。自分を言い聞かせて必死に怒りを抑える。ナナが再びスピアーに触れる。今度は怪我をしないように慎重に……

 

「スピアー。大丈夫だよ……私達は敵じゃない」

「……」

 

 スピアーはなにも言わず、自らボールに戻った。ナナは少しだけ寂しそうな表情をした。それからバッグから傷薬を出して、自分に使ってすぐに傷を治す。

 

「やっぱりダメか……」

 

 スピアーに植え付けられた人間への恐怖心。それはあまりに大きかった。人に心を開くのはムンナ以上に時間がかかるだろう。

 そんな時だった。上空を大きなボーマンダが飛んだ。ボーマンダの動きは早いだけではなく、突風も起こり体が吹き飛ばされそうになる。まるで真上をジェット機が走るかのようだ。

 それから間もなく人が降ってくる。その人は落ちながらボーマンダを戻し、ナナの目の前に立った。

 

「お兄ちゃん!」

 

 再びチャンピオンが僕たちの前に現れたのだ。

 そしてチャンピオンはナナの頭を撫でる。

 

「ナナ。ゴゥー団の件。頑張ったな」

「うん!」

 

 なんの用だろうか。この前にハクガ山で会ったばかりだ。あまりに早い再会ではないか?

 

「……さて、今回はちょっとした話だ。まず最初にダークポケモン。これは昔にオーレ地方という場所で研究されていたシャドーという男の研究を元に作成されたものだと分かった」

「なぜそのような話を?」

「敵については知っておけ。そうすれば見えてくるものがある。俺はお前にそれを教えるために来た。あと少し別れの挨拶だ」

「別れ?」

 

 そんなナナの疑問を無視してチャンピオンは自分の話に戻す。

 ナナもその話を真剣に聞いている。

 

「オーレ地方の事例とは違い、ポケモンは死ぬまで起き上がり、オーラは一般の人でも視認できる。そして当然ながらレベルも上がり、技も覚える。その代りオーレ地方の時よりもポケモンへの負担は大きい悪質な事例だ」

「なんてことを……」

「ダークポケモンの作成には莫大なエネルギーが必要なことも分かった。そして莫大なエネルギーは『コスモッグ』というポケモンから抽出している。そして現在は謎のポケモンであるコスモッグを助けるべく、その所在を調べているところだ。そんな中でアローラにコスモッグに関する資料があることが分かった」

「お兄ちゃん……」

「だから俺はちょっとアローラに行ってくる! あと、これは俺からの些細なプレゼントだ!」

 

 チャンピオンはそう言ってナナの手になにかを握らせるとボーマンダに乗って飛び去って行った。ていうか、この状況でチャンピオンがアローラに行くのかよ。

 もしもゴゥー団がコスモッグでネクロズマとかを引っ張り出して暴れたら誰が対処するんだよ……

 

「ナナ? なにを貰ったの?」

「これは!」

 

 ナナが手を開くとそこには遺伝子を連想させるデザインが刻まれた七色に光る宝珠が嵌め込まれた指輪あった。しかし、まさか指輪のプレゼントとは……

 なんかこうもっと冒険やバトルに役立つものが欲しかった。

 

「ナナ! これって!」

「キーストーン、でもメガシンカはポケモンにかなり負担を背負わせるから好きじゃないのよね。もっとも貰い物を捨てるのも悪いし、持っておくけど」

 

 キーストーン。なんだそれは? しかしナナも使う気はないようだし関係のない話。

 しかもなんだかんだ言って指輪を普通に右の人差し指に嵌めているし。しかもアクセサリーとしても似合うな! おい!

 

「一応ナナのポケモンだとスピアーがメガシンカ出来るのかな?」

「だから、させる気はないわよ……それにスピアナイトも持ってないし」

「そうだね。まぁ当分は出番がないか」

 

 そうして休憩は終わり、旅は再開される。長い平原をひたすら歩く。なにもない平原に整えられた道。途中でケンタロスの群れが走ったり、羊毛のために飼育されているメリープの牧場があったりと飽きることはなかった。

 途中でメアがケンタロスを捕まえて乗って行こうと言ったがナナは却下する。なんでも旅なのだから歩くことに意味があり、歩くことで新たな発見がるとか。ハクガ山で僕にお姫様抱っこをさせたくせによく言えたものだとも思うが。そして夜になる。夕暮れ時に夕食を食べて、寝袋を広げて平原に寝転んで夜空を見る。夜空を見ると満点の星空に目を奪われる。生前では縁のなかった光景。日本でも田舎の方に行けば見ることが出来たのかもしれないが僕は見たことがなかった。

 

「ナナー! 流れ星だよ!」

「……そうね」

「どうしたの?」

「星は綺麗でいいわね」

「なにを考えてるの?」

「メテノというポケモンのこと」

 

 メテノ。初めて聞くポケモンだ。一体どんなポケモンなのだろうか……

 

「メテノは宇宙から降ってきて人がいないと死んじゃうポケモンなの」

 

 そんなポケモンがいるのか。しかし人がいないと死ぬか。世の中には色々なポケモンがいるんだな。そして、の旅でメテノというポケモンにも会うのだろうか。

 

「……人がいないと生きられないポケモンに対して人の存在が苦痛になるポケモンもいる。私のスピアーみたいにね」

「難しいね……でも人とポケモン。手を取り合って生きていけたらいいなと私は思うよ」

「メア。私は……なんでもない。おやすみ」

「おやすみ。ナナ。また明日」

 

 そうして僕もボールに戻される。しかし人が捕まえないと死ぬポケモンか。もしも彼等がゴゥー団のような連中に捕まったらどう思うのだろうか。ダークポケモンになっても生きられて良かったと思うのだろうか。もっとも僕はメテノではないので分からない。しかし人とポケモンの関わり方。そのテーマは長い時間考えることになるだろう。

 人がポケモンにどう接するか。それと同じようにポケモンが人に接するのか。それも難しい問題。そしてポケモンだけではなく、人と人でも同じことだ。互いに適切な距離感というものがあり、近すぎてもダメ。そして遠すぎてもダメ。それではスピアーとの適切な距離はどのくらいだろうか。

 

 早朝に目が覚める。日が昇る前にナナ達も起きて、荷物を片付ける。そして綺麗な朝日に照らされながら街を目指して歩く。遠くに見えるハクガ山。そしてぼんやりと見える都市。それがカイヨウシティ。感慨深いものがある。エラニの村から始まり、森を抜けて山を越えて、再び森。そして長い平原をひたすら歩いてここまで来た。まだまだ旅は続く。それでもここまでよく歩いてこれたなと思う部分はある。

 

「……さて、ダークライ。ここからが大変よ」

「ン?」

「ここからはカイヨウシティ名物のバトルロード。金銭のやり取りが発生しない代わりに目が合ったら無言で始まるポケモンバトル。私達がどれだけ強くなったのか再確認よ!」

 

 そうして僕たちはカイヨウシティを真っ直ぐと目指した。それもノーストップだ。もちろん色々なトレーナーがいる。それでも足を止めない。

 

「サンダース! かみな……」

「ダークライ! 撃たれる前にあくのはどう! 続いて前方のゴーストにあやしいかぜ!」

「ルンパッパはみずでっぽうであそこのナックラーに攻撃!」

 

 なにがポケモンバトルだ。常にトレーナーがポケモンを出していて、いきなり攻撃を仕掛けてくるじゃないか! まるで無法地帯だ。しかし、こっちも見つけたら攻撃を仕掛けて良いというのが有難い!

 

「多いわね! ダークライ。戻って! そしてムンナ! 出番よ!」

 

 僕がボールに戻され、ムンナがボールに出てくる。そして状況をボールの外から見て把握していたのか、出てくると同時におんがえしで近くにいたヤナップを吹き飛ばす!

 

「ンンンンンナッッ!(やっっっと俺の出番きたあぁぁぁ!)」

「良いわよ! ムンナ! そのままころがるで突き抜けて!」

「ンンナッ!(よしきた!)」

 

 そうして特にムンナはやられることなく無事にカイヨウシティに到達した。

 二つ目の街、そしてナナと来る初めての大都市だ!


▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。