目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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24話 新たな可能性

 次の街はシノノタウン。行き方は蒸気機関車。歩いて行く案もあったが、『機関車の旅も素敵よね!』というメアの一言で機関車に乗ることになった。

 主要時間は約二時間。つまり今すぐにでも次のジム戦に挑める。あの女にリベンジマッチを挑むことが出来るのだ。

 

 次の列車発車は翌日の十時。この大都市であるカイヨウシティともお別れだ。少しだけ名残惜しい気がしないこともない。そして実を言うと観光らしいことを初日しか出来ていないのであった。そのためナナはメアと一緒に観光をしていた。

 

「しかし、くっつきばりは意外だったよ 絶対にナナは使わない戦術だと思ってたから!」

「あれはスピアー自身が言い出したのよ」

「それめちゃくちゃ頭良くない? さすがエラニの森のスピアー……」

「おい、そこの女」

 

 歩いているとナナが男の人に呼び止められた。顔はフードで隠れていて見えない。そして声から察するに三十代近くの男性……

 

「なんですか?」

「ナナ。絶対に関わらない方がいいよ……」

 

 不安そうに隣で見つめるメア。新手のナンパか?

 だったらスルー安定過ぎる。そもそも女の子に話しかける成人男性とか事案だ。というよりロリコンだ。うん。

 

「……私は強さを追い求める者」

 

 男の人はガンッとナナに肩をぶつける。そして明らかにわざと本を落とす。しかし本を拾う素振りは一切みせない。そのまま立ち上がり、どこかに歩いていった。今のは……

 

「ナナ! だ、大丈夫?」

「ええ……でも、この本……」

 

 それは随分とボロい本だった。タイトルは『シンオウ昔話』というもの。

 興味本位で軽く開くと、そこには人間の大人より一回り近く大きい巨大な黒いポケモンが描かれていた。そして名前のところには『ダークライ』と。しかし僕の知っているダークライとは姿が少し違うような……

 

「……ナナ?」

 

『そのポケモン。周りを全て闇に包む。そして自身も闇に包まれる時、真の姿を見せた。その力、強大につき伝説のポケモンにすら引け取らぬ。名をダークライとする』

 

 ナナは本の一文を読んだ。なんだこれは? どういうことだ?

 

「あ!」

「メア。どうしたの?」

「メガシンカだよ! きっとこれはメガシンカしたダークライのことなんだよ!」

「……本当にメガシンカなのかどうかは置いといて、ダークライに真の姿があるのは間違いなさそうね。とりあえずこの本は預かっておきましょう」

 

 ナナは本をバッグに入れた、恐らく偶然ではない。ナナが僕を所持しているのを知っていて、わざとぶつかった、ナナにこの本を渡すためだけに。しかし誰だ?

 あの男の人は何者なんだ? 強さを追い求める者。言っていたのはそれだけだ。

 

「ナナ。そういえばシノノタウンで大会があるらしいよ」

「賞品は?」

「なんか、つきのふえという骨董品みたい。賞品目当てで大会に出る人は殆どいなくて、腕試しって人が多そうな感じ」

「腕試しか……折角だし出てみようかしら」

「うんうん! 応援してるね!」

 

 旅は順調に進む。色々な災難はあったが、確実に進んでいる。最初はナナと二人で始まった旅だったが、仲間も増えた。これからもまだまだ増えていくだろう。

 

* * *

 

「……このヒトモシは個体値が悪い」

 

 グソクムシャを連れた少年はそう言いながらヒトモシを見逃す。グソクムシャもそれを無言で見つめていた。まるでこのトレーナーはそうやると分かっているかのようだ。

 

「チパッ」

「パチリス。俺は昔から三値説を信仰している。絶対に人間にも才能があるようにポケモンにもバトルが得意な個体、不向きな個体というものがあるはずだ」

「チパッ」

「俺は絶対にチャンピオンになりたいんだ」

 

 その少年は既にジムバッジの数は四つ。強さは折り紙付きだった。また全てのジムを苦戦することなく無傷で突破している。まさしく鬼のような強さ。

 

「弱いポケモンなんかいらない。欲しいのは強いポケモンだ」

 

 そして少年の足元には大量のスーツ姿の人間が転がっていた。その数は二十人に及ぶだろう。全て少年が一人で倒したのだ。

 

「い、いけっリザードン!」

 

 最後の残った一人がモンスターボールを投げる。それと同時に禍々しいオーラに赤い目をしたリザードンが現れる。少年はそれを退屈そうに見ていた。

 

「ダークポケモン……個体は強くてもトレーナーの命令を無視するようじゃ弱いよな」

「……え?」

「言い忘れてたけどグソクムシャ。アクアブレイク」 

 

 次の瞬間にリザードンは空から落ちた。少年はグソクムシャに命じてボールを破壊させる。そして迷うことなくリザードンを捕獲する。

 

「ダークポケモン。訓練には良かったんだけど、もう相手にもならない。ゴゥー団残党狩りのレベル上げも終わりかな」

「な、なにを!」

「僕がゴゥー団の残党狩りをする理由。それはレベル上げだ。ポケモンのレベルを上げるには格上を倒すしかないからね」

「ひ、ひぇ!」

「それと罪はきちんと償ってもらう。反省もしてもらう。お前達はこれから刑務所で暮らすんだ。僕は悪人ではない。悪い人を見つけたら警察に突き出す。そのくらいの常識はある」

 

 少年は強くなるために手段は選ばない人間ではない。自分が悪いと思ったことは絶対にしない。それなのに三値説を信仰する理由。単純に彼は三値説のなにが悪いのか分かっていないのだ。彼のモットーは『自分がされて嫌なことはしない』である。

 だからポケモンを盗んだりはしない。しかし個体値厳選はする。何故なら自分が個体値厳選されても良いと思っているから。

 

「しかし強いヒトモシ探しとゴゥー団の残党狩りの両立は疲れるな」

「パチリッ!」

「ヒトモシがいたか。パチリス! でんじは!」

 

 そうして少年ノエルの個体値厳選が終わったのは四時間後だった。またノエルが墓場でゴゥー団に襲われたのは偶然ではない。ノエルは自分からゴゥー団を襲撃した。そして頃合いを見て、同級生がどのくらい強くなったのか確認するために呼び出した。そしてグソクムシャを使わなかったのはパチリスのレベルを上げるため。

 

「やっぱり強くなるには本気の四天王かジムリーダーと戦うのが一番か。しかし、どうしたら俺に本気を出してくれるか……」

「そういうことなら私が手伝ってあげようか?」

 

 そんなノエルに近づく女性がいた。それからノエルと女性は少し会話する。ノエルは女性の提案を快く受け入れた。ノエルの修行の旅はまだ続くのだ。

 




これで2章は完結です。
3章はバトル多めになると同時にナナにとって辛い展開が続くと思います。そしてナナとダークライの旅は始まったばかり。本当の壁はここから……

この作品の更新方法についてです。二択なのでどちらが良いか答えてくださると幸いです。

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