目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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2話 僕のトレーナー

「ナ、ナナさん!……どこでそのポケモンを……」

 

 ナナのポケモンになってから小さな村に連れられた。彼女の話だと今日は初めてのポケモンゲットだったらしい。そしてゲットしたポケモンを学校の先生に見せて、ちょっとした余興の後に正式なトレーナーとなり、旅に出るみたいだ。ちなみに彼女の持っていたコラッタは借りたポケモンで彼女のポケモンではないとか。

 

 ちなみに僕は現在ボールの中にいる。モンスターボールは入ってみると狭いなんてことはなかった。広さ的には十平米くらいはあるだろうか。少なくとも多少の運動なら出来るくらいだ。外の景色も見ることが出来る。モンスターボールの赤い部分がクリア素材になっていて、そこから見ることが出来るのだ。そのためボールに布などを被せられたら外は見れなくなるだろうが。もちろん外の音も聞こえる。

 

「どこって……エラニ森です……」

「あなた、このポケモンがなんだか分かっているんですか?」

「いいえ……ただ、このポケモンが寄ってきて、自分からボールに入って……」

 

 そして学校の先生は大騒ぎだ。さすがにダークライは僕の思っていた通り珍しいポケモンに分類されるらしい。もっとも、問題はそこではないみたいだが……

 

「このポケモンはダークライと言います。個体の目撃数が極端に少なく、世の中では幻のポケモンと呼ばれています。それこそ何人ものトレーナーが喉から手が出るほど欲しがる超が付くレアポケモン。下手したら悪い大人がダークライ目当てに寄ってくるかもしれませんね」

「で、でも、この子は私が初めて捕まえたポケモンです! 私はこの子と旅がしたいです!」

「……問題はそこじゃないのです」

「え?」

「ダークライ。その特性はナイトメアと言われていて、周りの人やポケモンに悪夢を見せるのです。ダークライと旅をするということは眠りにつく度に悪夢に苛まれます。特にイッシュ地方であったストレンジャーハウスの事件は……っと、少し話がズレましたね。ともかく、あなたはそれに耐えられるのですか?」

 

 先生が指摘する問題点。それは僕の特性だ。ダークライの特性が一番の問題なのだ。

 

「それは……」

「出来ないなら逃がしなさい。その方があなたにとってもダークライにとっても良いでしょうね」

 

 少しだけ間が空く。それからナナが小さな口を開いて恐る恐る発言した。目上の人に反発する。それがどんなに勇気のいることか。それでも彼女は、その発言にどんな責任が伴うのか彼女は小さきながらに理解した上で口を開いた。

 

「耐えられます! この子と一緒なら耐えられます! そして乗り越えられます!」

「……いいでしょう。今の発言を忘れないでください。ポケモンと一緒に乗り越えるという考えはトレーナーとしての大事な考え方の一つですから」

「それじゃあ!」

「はい。ナナがダークライを連れて旅をするということ。そしてトレーナーになることを認めましょう」

「ありがとうございます!」

「それとこれを持っていきなさい」

 

 そういうと先生は三日月の形をした緑色の羽を取り出した。とても綺麗な羽だ。これはなんなのだろうか? トレーナーであることを証明する免許証みたいなものだろうか?

 

「これは?」

「『みかづきのはね』と言う道具です。一説によるとクレセリアというポケモンと関係があるそうですが、詳しいことは不明。その羽は悪夢を払うと言われています。少しは効果があるでしょう」

「みかづきのはね……そんな貴重そうなものを本当にいいんですか?」

「昔に知人に貰ったものです。そういうこと言うなら別に渡さなくてもいいんですよ?」

「もらいます! もらいます! ありがとうございます!」

 

 みかづきのはね。なんとなくだけど思い出してきた。ゲームでダークライの悪夢を払った道具。もっというならダークライの悪夢を払うだけの道具だ。僕の悪夢への効果は約束されているようなものだろう。

 

「それとポケモン図鑑です。出会ったポケモンの情報が全て保存されるメモリー機能と調べたいポケモンの名前を入れて、調べる辞書機能の二つがあります」

「はい」

 

 ポケモン図鑑ってそんなハイテクだったかと頭を悩ませる。それに図鑑は博士から貰うもので、学校の先生から貰うものではないはずだ。そもそも僕の知っているポケモンの世界では学校なんてなかった。もしかしたら僕がゲームでやっていたポケモンとは大きく違うのかもしれない……

 普段なら詳しく問いかけたいが、ポケモンがそんなことに興味を持つのはあまりに不自然だ。もっというならポケモンらしくない。それどころか気味が悪いと言われるのがオチ。つまり僕から聞くことは出来ない。

 

「先生! いま帰ったぞ!」

 

 そんなことを考えていた時に扉が開いて、二人の男の子が入ってくる。一人は赤毛で黄色のTシャツに膝までしか丈のないズボンを着た男。もう一人は耳が隠れるくらいまで長い黒髪に白いロングコートを見事に着こなした少しカッコイイ少年だ。

 

「おかえりなさい。ちゃんとポケモンは捕獲出来ました」

 

 その先生の声に対して白いロングコートの方の男の子が丁寧に答える。

 

「はい。俺はコソクムシ。ボルノはフシギダネをゲットしました。それとお借りしたコラッタをお返ししますね。先生」

 

 そう言って二人はポケモンを見せる。フシギダネは背中の大きな緑色の種が特徴的で最初に選ぶ三匹として有名だ。そしてコソクムシと彼が言ったポケモン。見た目はワラジムシみたいだが、とても小さくて弱そうだ。もっとも初めて見るポケモンで詳しくは知らないが。

 

「そういえばナナはどんなポケモンを捕まえたんが?」

「私は……」

 

 ナナが僕を出そうとする。そんな時に再び扉が開いた。今後は女の子が入ってきた。茶髪で白いブラウスに緑色のスカートを履いた少女だ。

 

「ナナちゃんは成績最下位よ? ポケモンを捕まえられなかったってオチじゃない?」

 

そして少し性格に棘があるようだ。

 

「そんなことないわ!」

「ええ! うそ! ナナちゃん絶対にポケモンをゲット出来ないと思ってナナちゃんの分のポケモンまで捕まえたのに……」

 

 前言撤回。どうやらツンデレに近いなにかのようだ。もっとも、その表現で合ってるか不明だが。それから、女の子は何事もなかったかのようにテンションを上げてナナに聞く。

 

「どんなポケモン捕まえたの? やっぱりパチリス?」

「私が捕まえたのはこの子だよ」

 

 そして僕がボールから出された。Tシャツの子は興奮して、白いロングコートの子は驚き、女の子は目をキラキラさせながら見ていた。

 

「ナナちゃん! すごくカッコイイポケモンじゃん! 名前はなんて言うの?」

「ダークライ」

「ふーん。ノエルは分かる?」

「ああ……ダークライは幻のポケモンと言われるくらい珍しくて、人々に悪夢を見せるんだ。しかしダークライに悪気はない。近くにいる者に悪夢を見せてしまう特性なんだ。間違いなく初心者向けのポケモンではないと思うよ」

「あ、悪夢! ナナは大丈夫なのかよ?」

 

 随分と騒がしくなってきた。白いロングコートの男の子はノエルと言うのか。先程の言葉遣いにダークライへの知識。おそらく優等生だろう。

 

「一応、先生からみかづきのはねを貰ったから大丈夫だと思う……」

「ふーん。難しくてオラには分からん!」

「みかづきのはねは悪夢を払う道具です。はたしてどこまで効果があるか……」

「まぁーでもナナちゃんが選んだポケモン。私たちが口だしすることじゃないわ」

「それもそうだが……」

「ナナちゃんは成績最下位だけど、いざって時はしっかりやる子だから大丈夫だよ」

「それもそうだな」

「ていうか、これからバトルでしょ? 頑張ってダークライ倒す方法考えないとなー」

 

 ……ん? バトル? まさかこれからポケモンバトルするの?

 

「ダークライ、言ったでしょ。ちょっとした余興があるって」

 




The補足
この世界観では幻と伝説以外のポケモンの研究は進んでおり、データ収集をする必要はありません。そのためポケモン図鑑は言葉通りポケモンについて調べるための図鑑という役割です。
そして図鑑に載っているのは『ポケモンの特徴』『覚えられる技』『生息域』の三つです。

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