目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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30話 メアのわがまま

「ナナ。一回だけ私と本気で戦ってみない?」

 

 メアから早朝にそんな提案をされた。これからシノノカップの四回戦も控えている。しかしムンナとスピアーはやる気だ。ナナもそれを察して受け入れる。

 

「もちろんよ。私もそろそろ本気でメアに勝ちたいと思ってた頃だったから」

「良かった! 私! 早くウルガモスと全力でバトルしたいの!」

 

 バトルが始まる。メアが最初に出したのはウルガモス。前よりも生き生きとした姿を見せている。ナナはそれに対してムンナを出す。

 

「ムンナ! 行くわよ! 楽しみましょう!」

「ンナ!(ああ!)」

「ウルガモス! 教えてあげるわ! 本当のバトルの楽しさというやつを! 戦闘開始だよ! まずはねっぷう!」

「ムンナ! ウルガモスより早くころがるよ!」

 

 ナナの指示より先にムンナはころがり始めていた。しかしウルガモスは強く羽ばたき、熱風でムンナの勢いを相殺していく。

 

「ンナッ!(あっつ!)」

「良いよ! ウルガモス! 次はぼうふう!」

「ムンナ! 三右に十三、四左八十四、前方に十二センチ、後方に三歩……」

 

 辺り一面に竜巻が舞い起こる。逃げ場なんてない。見事なまでのフィールド全体の攻撃だ。しかしナナは片目を抑えながら、竜巻の動きを全て見極めて暗号に近い指示を送る。ムンナもそれに従い、ぼうふうを全て避けていく。

 

「さっすが! でも、これで終わりよ! ウルガモス! ねっ……」

「今よ! ムンナ! あくび!」

「しまった! もどってウルガモス!」

 

 ムンナはピタリと立ち止まり、ウルガモスを眠気に誘った。そして寝落ちする前にメアは素早くウルガモスをボールに戻し、ニンフィアを出す。

 

「着地の瞬間を逃さないで! おんがえし!」

「ニンフィア!」

 

 おんがえしはニンフィアにクリーンヒットする。しかしニンフィアは踏ん張って空中で一回転して後ろ足でムンナを蹴り、カウンターの一撃を決める。ムンナは少しだけ吹き飛ぶが、すぐに態勢を立て直す。

 

「驚いた。まさかぼうふうからねっぷうに切り替わるコンマ数秒の隙であくびを撃つなんてね」

「こちらこそよ。あそこまで大規模な範囲攻撃をしてくるなんて……」

「ウルガモスが優秀だったからよ。それじゃあニンフィア! ハイパーボイス! 決めちゃうよ!」

「ムンナ!」

 

 ムンナがハイパーボイスで一気に吹き飛ばされる。その一撃は重く、ムンナが戦闘不能になる。あのニンフィアは嫌いだが、実力は本物だな。そしてニンフィアとも決着をつけたいと思っていたところだ!

 

「……ダークライ。やる気ね! ムンナ。お疲れ様。そしてお願いね! ダークライ!」

「フィア~(また負けにきたの?)」

「……勝チに来タ!」

「ダークライ! やきつくすでニンフィアの周りを覆って!」

 

 青い炎を地面に走らせて、ニンフィアの逃げ道を奪う。さぁ一気にいくぞ!

 

「真上からダークホールよ!」

 

 空に飛んで、巨大な闇玉を作る。そして闇玉をニンフィアへと叩きつける。ニンフィアは避けようとしたが、周りが火に囲まれていることに驚愕する。逃げ場はないぞ!

 

「……ニンフィア。炎に突っ込んでダークライに近づいて」

「フィア(それしかないね)」

 

 ニンフィアは迷うことなく炎に突進する。体中が火傷するが、ダークホールから逃れられたようだ。そしてニンフィアは飛んで、僕に一撃を喰らわせようとする。

 

「ダークライ。遠慮なくあくのはどうで地面に叩き落としなさい」

「ニンフィア!」

「空からの遠距離攻撃。それだけで飛行能力のないポケモンを完封することだってありえる。空は取られたらバトルの敗北が決まるという人がいるくらいには重要な要素になる」

「そうだね。お疲れ様。ニンフィア」

 

 戦闘不能になったニンフィアがボールに戻される。あのニンフィアに遂に勝ったのか!

 やった! ニンフィアに勝てた! 遂に勝てた!

 

「良かったわね。でも、まだバトルは終わってないわよ。ダークライ」

「そうだよ! それじゃあルンパッパ! 戦闘開始だよ!」

 

 ボールから出ると同時にルンパッパはギターを鳴らす。それと同時に僕の元まで飛んできて、地面に蹴り落とす。あまりに速い! まったく気付けなかった!

 

「さぁ空の有利はなくなったよ」

「ルンパァァ!(バトルしようぜ!)」

「ルンパッパ! そのままあまごい!」

 

 ルンパッパが雨を降らす。やばい! 例のあれがくる!

 

「ミュージックスタート!」

 

 メアが歌い始める。まさか……!

 

「ダークライ。言わなくても分かるわよね?」

 

 ナナが冷や汗をかく。ルンパッパは陽気な音楽で細胞を活性化させている。それに加えて特性で素早さをあげている。さらにメアの歌のドーピング……

 

「どんなに強くても寝たら終わりよ! ダークライ! ダークホールで眠らせてあげなさい!」

「ルンパッパ! なみのり!」

 

 なみのりという名の津波が襲いかかる。波が届くまでの数秒でダークホールをルンパッパに当てるのは至難の技。まずは闇の玉を作るまでに数秒。そして玉が出来たとしても、それは大玉。動きも遅くて簡単に避けられる。それならどうすればいい。そうだ! もっと小型にすればいい!

 

 思い付いたら、すぐに実行へと移す。体から湧き出る闇を一点に! ダークホールのイメージは全てを闇に叩き落すイメージだった。でも今度は違う! 麻酔弾を撃つイメージだ! 銃のイメージ! 素早く的確にルンパッパの胸を貫け!

 

「……デキタ」

 

 手の中にドングリサイズの闇の玉が出来る。僕は迷うことなくルンパッパにそれを撃った。それはルンパッパに命中して、ルンパッパの力が一瞬だけ抜ける。そのおかげで波の力は弱まる。しかしルンパッパはすぐに目覚めて、僕の目の前に現れる! しまった!

 

「ルンパッパ! ハイドロポンプ!」

 

 ハイドロポンプは僕を壁まで突き飛ばした。最後に見たルンパッパ。それは片手できのみを食べていた。あれは間違いなく、カゴのみだ。あれで眠りから目覚めたのか……

 そういえばポケモンの道具ってポケモンが持てるなら何個でも良いの忘れてた……

 

「ダークライ!」

「私のルンパッパのハイドロポンプを耐えるポケモンなんていないんだから!」

 

 体が動かない……ああ……戦闘不能か。すまない。ナナ。

 

「あとは任せてダークライ。それじゃあスピアー! お願い!」

「スピッ! (お任せを!)」

 

 その時だった。雨が止んだ。その隙をナナは見逃さない。メアもナナのしたいことに気付くが指示が間に合わない、先程は曲のフレーズの合間を使って指示を出していた。しかし今はサビの途中。歌を中断するのは不可能。中断すればルンパッパに動揺が生まれる。

 

「スピアー! こうそくいどうからのメガホーン!」

「ルンパッパ!」

 

 スピアーの一撃はルンパッパを吹き飛ばして一撃で戦闘不能まで追い込んだ。さすがスピアーだな。

 

「ルンパッパ。お疲れ様。そしてナナはやっぱり強いね」

「強いのはメアも同じよ」

「でも負けないんだから! お願い! ウルガモス!」

「ガモスッ!(私の番だ!)

「……スピアー。シザークロス」

「うそ?」

 

 それは一瞬だった。こうそくいどうをしたスピアーの動きは想像以上に速く、一撃でウルガモスの急所をシザークロスで攻撃したのだ。ウルガモスがバサッと倒れる。そしてウルガモスは立ち上がろうとするが上手く立てずにいる。

 

「エラニの森のスピアーは狡猾……シザークロスの時に両手の針を使ってウルガモスに麻痺毒を注入したんだね」

「そうよ。私のスピアーは狡猾で強いのよ! スピアー! 今のうちにメガホーン!」

 

 スピアーはそのまま勢いをつけてお尻の針を使い、メガホーンを打ち込み、ウルガモスを吹き飛ばした。その一撃でウルガモスは戦闘不能になる。この勝負! ナナの勝ちだ!

 

「今回は勝てたと思ったんだけどな~」

「お疲れ様。とりあえずポケモン達を回復させて私達も朝ごはんを食べましょう」

「そうだね」

 

 二人はいつも通り過ごす。しかし僕はメアに勝てたことが物凄く嬉しかった。あの強力な歌を攻略して、ぼろ負けしたニンフィアにリベンジも出来た。それが物凄く嬉しかったのだ。

 

 そして朝食を食べて、のんびりしてるとすぐに四回戦が始まる。メアとバトルをした後だが疲れもなく、体も問題なく動く。むしろ準備運動になったくらいだ。ナナは戦うためにフィールドに移動する。すると派手な紹介が行われた

 まぁナナが初戦というのもあるだろうな。

 

『四回戦! 開幕! 本日も突如現れた新人歌姫のメアちゃんが勝負を盛り上げるぞ! 彼女は無名だが可愛さ、歌、踊り! 全てが完璧! このような逸材を発掘したシノノタウンのジムリーダーのキンランに感謝だ!』

 

「みんな! よろしくね!」

 

 メアの一言で一気に歓声が巻き起こる。まさか既にメアのファンが出来ているのか! 歌い始めてたった一日。しかもウルガモスの一件もあり途中で退場したんだぞ!

 

『実はメアちゃん! バトルも相当強いらしいぞ! 聞いた話によると今日の朝に例のダークライ使いと互角の接戦だったとか!』

 

「ちょっと~どこで見てたんですか?」

 

『そして第一セットは本大会で一番の注目株! 先程の話にも出てきた少女! メアとの関係も気になるが今は置いておこう! また三回戦でアクシデントもあったが圧倒的な強さとダークライという謎のポケモンを使い、熱狂的なファンを作りながら順調に駒を進めるナナだ!』

 

「……こういう時はなんてコメントすればいいのかしら?」

 

『しかも噂によると現デトワール地方チャンピオンの実の妹だとか! そして続いて現れるは、期待の新人のジョニー! 毎回ギリギリの接戦を繰り広げ、気合いと絆で駒を進めてきたぞ! さぁナナのダークライをどう攻略するのか!』

 

 それから少しの雑談が入り、試合が始まる。ナナが出したのは僕だ。そして相手が出したのは駒みたいに回るポケモンだ。名前はカポエラーというらしい。

 

「それじゃあ戦闘開始だよ!」

「カポエラー! にど……」

「ダークライ。あくのはどう」

 

 メアの合図でカポエラーが仕掛けようとしたが、ナナの方が早い。ナナは僕に命じて一瞬でカポエラーを吹き飛ばす。僕もなにも考えずにナナの声と同時にあくのはどうを撃つようにしてるため、すぐに反応できる。

 

「カポエラー!」

 

『相変わらず強い! ジョニー選手のエースのカポエラーが一撃で戦闘不能だ! どうする! ジョニー選手!』

 

「ありがとう。カポエラー。それじゃあ頼んだよ! ラッキー!」

「ダークライ。少し右方向にあくのはどう」

「右に躱せ! ラッキー!」

 

 少年は正面に来ると踏んだのか、ラッキーを右に移動させる。しかしナナの方が上手。ナナはラッキーが右に移動することまで読んで、僕に命じた。ラッキーにあくのはどうは直撃するがラッキーは普通に起き上がってくる。

 

「……忘れてたわ。ラッキーって丈夫なポケモンだったわね」

 

『すごいぞ! 本大会で初めてダークライのあくのはどうを耐えた! もしかしたらジョニーは勝てるんじゃないか!』

 

「ダークライ。もう一度あくのはどう」

「ラッキー!」

 

 ラッキーを再び吹き飛ばす。その一撃でラッキーは起き上がることはない。戦闘不能というやつだ。さすがに一撃で倒れないのは焦ったな。

 

「いくらラッキーと言えど一撃は絶えられても二撃目は無理よ」

 

『ラッキー戦闘不能! 手相変わらずの強さを見せつけたぞ!』

 

「あああああああああああああああああああああ!」

「……くだらない」

 

 ジョニーが発狂しながら頭を抱える。ナナはそれを静かに見ていた。ジョニーは自暴自棄になりながらボールを投げる。最後のポケモンはモウカザルだ。ナナが出てくると同時に僕にあくのはどうを命じて一撃で戦闘不能に追い込む。うるさいくらいの実況が鳴り響く。ナナは相手に目もくれずにフィールドを後にした。ナナの強さに観客は魅せられて歓声が上がる。実力差を痛いくらい見せられた相手は放心状態だった。

 

「ダークライ。お疲れ様」

 

 そして観客席の戻り、ナナは試合観戦を続ける。四回戦にもなると試合のレベルも高くなっていく。その中でも特に目立つのは三人。一人はボルノ。もう一人はドラピオン使いのミススという男。そしてギャラドスを使うエリートトレーナーのルイだ。この三人とナナだけは二体目を出すことなく勝ち、強さが飛びぬけている。

 

「しかし随分と私も観客に好かれたものね」

 

 ナナはボールからムンナを出して抱き抱えながら試合を眺めていた。しかし観客に好かれたというが狙い通りだろ。

 

「私の名前は知られた。私が来たって世界に知らしめられたかな?」

「ンナァ?(それ意味があるのか?)」

「優れたトレーナーは幼少期から逸話がある。つまり今の私でも結果を残して、話題になれるようにならないとチャンピオンなんて夢のまた夢。それにネームバリューはあると便利だしね」

 

 たしかに。やっぱり今回の大会でナナは敢えて一撃で倒すように立ち回っているな。それだけじゃない。スピアーにムンナを使わず、僕を使うことで大きく注目を集めている。そうして観客にアピールしているんだ。

 

「……準々決勝は恐らくダークライだけで終わる。でも準決勝以降はそんなに上手くいかない。ムンナもバトルに出る準備をしといて。それとスピアーもよろしくね」

 

 準決勝の相手は恐らくドラピオン使いのトレーナーか。キンランはあまり注目してなかったがナナは警戒してるようだな。そして決勝戦はボルノかギャラドス使いと戦うと思って間違いないだろう。ボルノはナナと同じエラニの村出身。絶対に一筋縄ではいかない。間違いなくメアと同等以上に苦戦を強いられる……

 

「そろそろ準々決勝が始まるわね。行きましょうか」

 

 そしてナナは次の試合の準備をする。

 

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