目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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31話 つよいポケモン

「ダークライ! もっと上に飛んでゴルーグの追撃を逃れなさい!」

 

 準々決勝。現在はナナが僕一人で相手のポケモンを二体倒して有利。しかし最後の一体が大問題だった。ゴルーグとかいう巨人みたいなポケモン。めちゃくちゃ強いのだ。

 

「逃げながらあくのはどう!」

「ゴルーグ! ラスターカノンで向かえ打って!」

 

 最初はいつも通り一撃だった。しかし問題はゴルーグだ。あくのはどうを撃つが全てシャドーボールで迎え撃ってくるのだ。そして空中から攻撃を仕掛けようと考えたナナは僕を空に飛ばした。問題はその後だ。

 

 なんとゴルーグは手足を収納してロケットみたいにゴォォォオと炎を出しながら飛んだのだ。それには思わず唖然とするしかない。まさかあの巨体が飛ぶなんて思わないだろ!

 そして現在は激しい空中戦となっている。ていうか3m近くの巨体が飛びながら襲いかかってくるのマジで怖いんだが! ていうか本当にこいつポケモンなのかよ! 絶対に古代人が作った兵器とかだろ!

 

「決めるよ! ゴルーグ! はかいこうせん!」

 

 ゴルーグが一点にエネルギーを集め始める。待って! これ絶対にヤバいやつだから! ていうかはかいこうせんって僕の記憶だとポケモンで一番威力の高い技だった気がするんだが!

 

「ダークライ。五秒後に体から力を抜いて落ちなさい」

「……エ?」

「いいから従いなさい」

 

 そしてナナは動揺の一つも見せない。なんであんなヤバそうなのと戦って冷静にいられるんだよ! 相手はゴルーグとかいうポケモンかどうかすら怪しくて、歴代最強の敵と言っても過言じゃない! ていうか下手したら伝説のポケモンだったりするだろ! 絶対に!

 

 しかしナナにも考えがあるのだろう。僕は体から力を抜く。そうすると飛んでるから重力に捕まり、地面に落下するわけだ。そのおかげではかいこうせんの下に入り、見事に回避に成功。さすがナナ! 避ける算段があったんだな! さすがに僕もあれを食らって平気な自信はない!

 

「はかいこうせんを撃ったあとは隙が生まれるわ! あくのはどうよ!」

 

 あくのはどうを撃ってゴルーグに一撃を浴びせるがゴルーグはビクともしない。ていうか終始無言でめちゃくちゃ怖いんだが!

 

「ダークライ。大丈夫。ダメージは間違いなく入ってるわ」

 

『両者一歩も譲らぬ接戦! ダークライにここまで苦戦を強いたポケモンが今まで存在しただろうか! そしてナナはどうやってゴルーグを攻略するのか!』

 

「ナナ……」

「ダークライ。ダークホールはダメよ。あれはいざという時の切り札。今はまだ使うときじゃない」

 

 ダークホールで眠らせればすぐなんだよな。まぁたしかに準決勝に決勝を控えてるから手の内を晒したくないというのは分かるが……

 

「でも眠らせるのが手っ取り早いか。ダークライ。戻って。そして頼んだわよ! ムンナ!」

「ンンナッ(準々決勝はダークライだけじゃなかったのかよ?)」

「ごめんね。思ってた以上にゴルーグが強かった」

「ンナッ(まぁいいけどよ)」

「へぇーダークライを戻すんだ。なんか策があるのかな? でも「つきのふえ」は私のものよ!」

「……ダークライだけが強いって思われてるけど、私のムンナもダークライと同じくらい強いのよ。舐めてると痛い目に遭うよ?」

「まぁいいわ! ゴルーグ! ラスターカノン!」

 

 ムンナはナナの指示通りに従い、避ける。しかしボール越しから見てもゴルーグってマジでデカいよな。それに個人的にビジュアルも好きだ。もしもトレーナーになってたら間違いなくゲットしてるな。うん。

 

「よし! ムンナ! あくびよ!」

「ウソ! ゴルーグ! 起きてよ!」

 お、ゴルーグが寝た。つまり生物なのか。なんか少しだけ安心した。ていうかめちゃくちゃ強いしカッコイイ。野生で見つけたらナナに手持ちに加えてもらうようにお願いしよう。

「ムンナ。あくむ」

「ゴルゥゥゥゥゥゥぅぅグゥゥゥゥゥ!」

 

 ゴルーグが悪夢にうなされて倒れる。そのまま戦闘不能だ。まさか敗因が悪夢になるとは。どんなにカッコイイポケモンでも怖い夢には勝てないんだな。

 

『勝者ナナ! 強いのはやはりダークライだけではない! 彼女のムンナも強かったぁぁぁ!』

 

「ムンナ。ダークライ。お疲れ様」

 

 そしてフィールドを後にする。しかしゴルーグは強かった。しかし知識があったら変わったのだろうか。そろそろ全てのポケモンを覚えるべきな気はしてきた。

 

「ゴルーグ。ゴーレムポケモンで古代人に作られて、謎のエネルギーで動くポケモン。しかし作られたというわりには進化前のゴビットが存在していたりと少しだけ謎は多い。タイプは地面とゴースト。また胸の封印を剥がすとエネルギーが暴走するポケモンよ」

 

 ナナがボール越しに察したのか図鑑と同じくらい詳しく説明する。まさかナナはあのポケモンのことを知っていたとは……

 

「貴方みたいな幻のポケモンと伝説のポケモンを除いて今の図鑑に載ってるポケモンならタイプと特徴くらいなら全て頭に入ってる。そうしないとチャンピオンを目指す土俵にすら立てない」

 

 素直に凄いよ思った。しかしナナくらいの知識でも伝説や幻を知らないのか。そうなるとホントに伝説のポケモンというのは一般トレーナーには名前すら伝っていない……

 

「ただウルトラビーストだけはエラニの村の人だけは知ってるわ。先生の研究テーマがウルトラビーストと普通のポケモンの違いだから生活してるだけで耳に入るのよ」

 

 そういえばナナは欲しいポケモンでウツロイドと言っていた。思い出してみればウルトラサンで出てきたウルトラビーストというポケモン。設定は異世界のポケモンで、野生でいるようなポケモンではない。それなのにナナは知っていた。周りも驚く素振りを見せなかった。言われてみたらダークライを知らないのにウルトラビーストは知ってると不自然だよな。そしてウルトラビーストを知ってるのは先生……いや、今回は博士と言った方が適切か。その研究テーマだから。たしかにそれなら知っていたも不思議ではないか。

 

「それでも伝説のポケモンをまったく知らないわけじゃないわよ。私もミュウツーくらいなら名前くらいは聞いたこともある」

 

 なるほどな。ナナはボール越しにそんな話をしながら歩いて席へと戻っていく。そうするとナナの観戦席の近くにはキンランがいた。

 

「やっほー」

「なんですか?」

「準々決勝の勝ちを祝いにきたのよ。そして一つだけ質問」

「手短にお願いします」

「もしも仮に『遺伝子改良』の結果、優秀な個体が絶対に産まれる卵があったらどうする?」

「なんですか? そのあまりにピンポイントな問題」

「簡単な話よ。チャンピオンの妹さんはゴゥー団に虐げられたスピアーや弱いから捨てられたムンナのように人に傷つけられたポケモンが多く傍にいる。もっともそのダークライはどうなのか私は知らない」

 

 なるほど。そういうことか。なんとなくキンランの問いかけが見えてきた。

 

「簡単な話。遺伝子改良のあまり強くなりすぎたポケモンというのは優秀故に人を見下す傾向にある。そんな生まれたら人を下に見るようなポケモンにどう接するの?」

「そんな事態になったことないから分かりませんが、恐らく普通に接すると思いますよ」

 

 今までナナが見てきたのはムンナやスピアーという人の被害にあったポケモン。そしてキンランのケースは逆。いうならば加害者のポケモン。

 

「昨日の彼のようにポケモンを卵から厳選するという話は私もよく聞く。厳選をすれば優秀なポケモンが産まれる。しかし何故か、どのトレーナーも自分の言うことをそのポケモンが素直に従うと思ってる。だけどそんなことにはない。簡単な話、強いポケモンというのはトレーナーに多くのことを求めて手懐けるのは困難を極める。もっとも某トレーナーのムシャーナは自分が強いということを自覚すらしていなかったから、そんなことにはならなかったけど」

「……強いポケモンは育てるのにも困難を極める……ですか」

「そう。そういうこと。だから普通のトレーナーは強い個体に手を出すことはあまり褒められた行為じゃない。自分と同じくらいの強さのポケモンと一緒に戦うのがなんだかんだ言って育てやすいし、チームワークも良いから一番強くなる」

「なにが言いたいんですか?」

「最初に言った通りよ。強すぎるポケモンが生まれるのが約束された卵。あなたは孵化させて、そのポケモンのトレーナーになる? それとも他の人に託す? どうするの?」

 

 この世界でよく聞くのが「弱いポケモンはいらない」だろう。しかし逆に「強いポケモンはいらない」というケースも存在する。そして強いから捕まえないというのはやってることは弱いポケモンはいらないと言う人と同じこと。しかし扱える自信がないのに孵化して親になるのは、そのポケモン的には幸せなのだろうか。いっそのこと捨てた方が幸せなのではないか?

 

「……産んでみて私の手に負えなかったら、強いトレーナーに託しますね」

「うんうん。なるほど。まぁ君なら良いね。というわけで例の『遺伝子改良の末に強い個体が産まれることが約束された卵』を渡すね」

「ちょ、ちょっと!」

「これは少し前に取り締まった犯罪組織からの押収品。私が悪いことして作ったわけじゃないから安心してね」

「ていうか、なんのポケモンの卵ですか!」

「御三家とだけ言っておくわ。あとは産まれてからのお楽しみ」

 

それだけ言いとキンランは消えた。ナナは卵を持ちながら困惑してる。まさかこのポケモンがナナの四匹目になるのか?

 

「……ピクリともしないから当分は生まれないのかな? しかし捨てるわけにもいかないし、持ってるしかないじゃない」

 

 しかし強いポケモン。一体どのくらい強いんだ……

 ジムリーダーが強いというのだから相当強いんだろうな……

 

「はぁ……ほんとに困ったわね。しかし御三家か。キモリやヒコザル辺りかしら……」

 

 ナナは卵を抱えて悩みながら試合を見る。今の試合は例のドラピオン使い。もしも勝てば彼と戦うことになる。

 

「……やっぱりそういうスタイルみたいね。ドラピオンにはやっぱりスピアーね」

 

 ナナは卵について考えながらも分析していた。恐らくナナの未来予知も使うことになるだろう。しかし、またドラピオン一体で勝った。相変わらず強いな。そして準々決勝も終わる。準決勝はナナとドラピオン使い、ボルノとギャラドスを使うエリートトレーナーの組み合わせとなった。残ったトレーナーは誰一人として準々決勝までに自分のポケモンをやられていいない。もっと言うならばポケモンを一体しか見せていない。ナナはそんな相手をどう攻略するのだろうか……

 

 


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