目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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35話 夢

 ナナがベッドで泣いている時と同時刻。決勝戦を無事に制したボルノはある男と部屋の一室で話していた。

 

「新入り。シノノカップを勝ち進み、無事につきのふえを回収出来たようだな。約束通り入団試験は合格だ」

「ありがとうございます。ブルールさん」

「……恐らくつきのふえを求めてゴゥー団の襲撃。それも幹部格……下手したらボスレベルが現れる。早速で悪いが、その時に私のチームの一員として働いてもらうぞ」

 

 この男は国際警察の一人である。国際警察は基本的に幾つかのチームに分かれて行動している。そのチームを任されている一人がここにブルーㇽ。そして彼の率いるチームをブルールチームと呼ぶ。そしてボルノはブルールチームに入るべく入団試験を受けていた。内容は簡単で『つきのふえの入手』である。

 

「ゴゥー団はコスモッグというポケモンを保持している。そしてつきのふえで呼び出すルナアーラというポケモン。それはコスモッグと大きく関わっているという話もある。そんなものをゴゥー団に渡すわけにはいかないからな」

「しかし、どうして大会中に襲撃しなかったのでしょう?」

「あの場にはキンランがいた。彼女と正面からやるのはゴゥー団も避けたかったはず。だから狙うなら優勝者につきのふえが渡った後だ。」

 

 ボルノには夢があった。それは国際警察に入り。悪を取り締まるという夢が。しかし国際警察に入るなんて簡単なことではない。国際警察に入る条件は昔から一つだけだと言われている。それは国際警察を見つけ、その人に頼んで入団試験を受けさせてもらう。まず最初に国際警察を見つけられるのかという試練で試されるのだ。

 

 そしてボルノは先日ナナ達とゴゥー団と対決した。その際に偶然にもボルノは見つけてしまったのだ。国際警察の人間を。それは彼にとってまたとないチャンスだった。そして彼は必死に頼み込み、実技試験から筆記試験など様々な困難を与えられることになる。しかし彼は必死に乗り越え、なんとか入団試験を受けさせてもらうまで進めた。そして現在に至るのだ。

 

「ボルノ。改めて聞くが国際警察は甘い仕事じゃない。時には死ぬ危険もある。そういう場所に身を置くという覚悟は出来てるか?」

「はい。このボルノには悪を倒すという夢があります。その夢のためなら――なんだってやります」

「そうか。だが、ここに誓え。従うのは国際警察ではない。己の正義、そして法に従うことを」

「誓います」

「フッ……これから頼むぞ。ボルノ。あとは追って連絡する」

 

 そして男がボールからエルレイドを出して、テレポートをして消える。部屋にはボルノが一人残されることになった。そして誰かが部屋をノックする音がする。ボルノを訪ねてくる客だ。ボルノは席から立ち、扉を開く。

 

「ああ……ノエルか」

「ボルノ。今から俺とポケモンバトルをしないか?」

 

 そして夜のフィールドを借りて行われる。内容は簡単な一対一。単純な実力勝負だ。

 

「しかしノエルから勝負を仕掛けるなんて珍しいな」

「ちょっとした敵討ちだ。俺の好きな人をボコしたんだ。そのくらい許せよ」

「ナナへの気持ちは今も変わらずか」

「当たり前だ。俺はナナに振り向かせるためにチャンピオンになるんだからな。グソクムシャ。少し俺のワガママに付き合えよ」

「ルカリオ! 頼むぞ!」

 

 この戦いは二人しか知らない。ノエルの想いに限ってはボルノしか知らない。ノエルはチャンピオンになる日まで絶対にナナへの想いを明かさない。ノエルが強さを求めるのは全てナナのため。彼はナナのためならなんだってする覚悟だ。

 

「……早くメガシンカしろよ。本気のお前を倒さなきゃ意味がない」

「ルカリオ! 行くぞ!」

 

 ボルノとルカリオが光り、ルカリオの姿が変貌する。しかしノエルは怯みもしない。グソクムシャも動揺せずに冷静に構える。

 

「そちらからどうぞ」

「ルカリオ! はどうだん!」

「グソクムシャ。やれ」

 

 青い弾。グソクムシャは頷くと迷わず拳で叩き割った。それからボルノがはどうだんで追撃を命じる。メガルカリオは何発も撃ってグソクムシャを追い詰めようとする。しかしグソクムシャはゴツイ腕を使って全て対処する。まるで出来て当たり前と言いたげに。

 

「そろそろ行くか。グソクムシャ……であいがしら」

 

 声と同時にメガルカリオは宙に舞っていた。空中で態勢を整えてカウンターを狙う。ボルノも見逃さない。すぐにカウンターの一撃を指示する。

 

「ルカリオ! インファイト!」

「グソクムシャ。腕を掴んでそのまま叩き落せ」

 

 グソクムシャはメガルカリオのインファイトを完璧に見極めていた。最初の一撃のパンチ。それを少しだけ体を捻り、回避。腕を掴んで、メガルカリオの体を回して勢いをつけた後に地面へと叩き落した。ドシンと音が鳴り、地面にクレーターが出来る。

 

「グソクムシャ。ぼさっとするな。アクアブレイクで追撃だ」

 

 グソクムシャは拳に水を纏い、それを力に変えてメガルカリオの腹に一撃。それから二撃、三撃と追い打ちをかけていく。そして六撃目を撃とうとした時に手を止める。

 

「……ムシャ(もう終わりだな)」

 

 地面には意識を失ってるルカリオがいた。もちろんメガは解除。戦闘不能だ。それを確認すると「お疲れ」と一言だけ言ってノエルはグソクムシャをボールに戻した。

 

 

「ボルノ。俺の勝ちでいいよな?」

「完敗だよ……ノエル」

「こんな夜中に俺の我儘に付き合ってくれてありがとな」

 

 ノエルがそれだけ言うと帰ろうとした。そんな時に息を切らしながらメアが走ってきた。その様子に二人はキョトンとする。

 

「……ゴゥー団が襲撃にやってきた!」

「なんだって! ジムリーダーに連絡は!」

「した! でも、いきなりテレポートで現れて大混乱よ!」

 

 そう。二人が戦ってる間にゴゥー団の襲撃があったのだ。ポケモンのテレポートで現れて襲撃。そのため物音一つしなかった。ノエルはグソクムシャを出して、すぐに事態の収集のために走る。しかし目の前にダークドヒドイデが三匹くらい現れる。それに対してノエルは舌打ちをする。

 

「くそっ! よりによってドヒドイデかよ……」

「ノエル! それだけじゃない! 近くにゴゥー団がいない! つまりボールを破壊して無力化が出来ない!」

 

 走ってきたボルノが辺りを分析して言う。ダークポケモンは死ぬまで戦う。そのためボールを破壊して、野生になったところを捕獲して無力化させていた。そしてボールはゴゥー団の団員が持っている。そして今は近くにゴゥー団はいない。つまりボール破壊の技が使えないのだ。

 

「……こんな時にナナがいたらダークホールで眠らせて無力化出来るのに」

 

 メアがぼやくように言う。しかし既にウルガモスを出して自衛の準備は出来ていた。

 

「しかし、なんでここにゴゥー団が来るのよ」

「分からん。だが考えるのは後だ!」

「そうね! それとドヒドイデのトーチカに気を付けて! 下手したら毒状態になる!」

 

 メアがウルガモスに命じて炎でドヒドイデを払う。しかしドヒドイデは怯まず、こちらに襲いかかってくる。それに対してメア達は後ろに一歩下がり対応する。

 本来ならグソクムシャ等で吹き飛ばしたい。しかし触れたポケモンに毒を喰らわせるトーチカを恐れ、接触技を使えないのだ。ダークドヒドイデというポケモンは厄介極まりない。高い耐久がダークになり、更に上がる。そして触れたポケモンを毒を浴びせる可能性がある。

 攻略するのは困難を極めるのだった。ダークドヒドイデに任せ、団員は別のところにいる。その采配はあまりに賢い一手だった。

 

「……どうする?」

「一人が足止めして、二人が進むのが無難だと思う」

「ボルノに同感だ。またはジムリーダーかメグ先生が来るのを待つか……」

「待つ? それまでに被害は増えるよ。ノエルとボルノが動けば少しは被害を減らせるんじゃないかな?」

「なら囮になってくれよ! メア!」

「任せて! さぁ行きなさい」

 

 メアがルンパッパを出して毒を受けることを覚悟でドヒドイデを吹き飛ばす。それと同時にノエルとボルノが駆け抜けてダークドヒドイデを突破する。そして走りながらノエルが問いかける。

 

「ボルノ! ルカリオは戦えるか!」

「無理! さすがにあの傷だとキツイ! ていうかノエルのグソクムシャがやりすぎなんだよ!」

「ムシャ……(すまん……)」

「なるほど……ゴゥー団の相手は?」

「それはウィンディで大丈夫! これからどうする?」

「俺はナナの部屋に向かう! 他は任せていいか!」

「お前はホントにナナが好きだな! でもナナの力も借りたいのは事実! 行けよ! ナナの部屋に!」

「恩に着る!」

 

 ノエルがそのまま走る。それから何匹かダークポケモンが出てくるが、ノエルは難なく全て吹き飛ばしていく。そして起き上がってくる前に走って逃げる。そして階段を見つけて駆け上ぼり、ナナの部屋を真っ直ぐ目指す。

 

 

 

「ナナ!」

 

 そしてナナの部屋に辿り着いた。そこにはぐっすりと死体のように眠るナナ。そしてナナを抱き抱える黒髪の女性がいた。

 

「あら、随分とイケメンが来たわね!」

「……あなたは?」

「ゴゥー団の幹部よ。名前はマリアでいいかしら」

「ナナを離せ!」

「嫌よ。じゃあね」

 

 女はケーシィを出してテレポートをして消える。ノエルは舌打ちしてだけ叫んだ。ノエルの雄叫びだけが辺りに響き渡った。

 


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