目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

38 / 92
37話 VSゴゥー団

 ノエルは私に近づいて縄を切る。それで私は自由の身になる。手足も動く。しかしポケモンはいない。完全に戦力外。でも出来ることはあるはずだ。

 

「……ナナ。これは」

「モンスターボール。中身はメアのニンフィアだ。お守り代わりに持たせてくれた」

 

 ありがとう。メア。これで私も戦える。たしかメアのニンフィアはハイパーボイスを使えたはず。基本的にはそれを軸に戦う。そして接近されたドレインキッスで勝負を仕掛ければいい。それだけ把握してれば充分だ。

 

「……ノエル。ここはどこなの?」

「飛行船の中だ。国際警察のブルールさんとジムリーダーのキンランさん、それにメグ先生とテレポートを使って四人で潜入した。それとナナは戦えるか? 無理そうなら戻すが……」

「戦えるわよ。そういえば相手は誰なの?」

「ゴゥー団だ。もちろん使ってくるのはダークポケモン」

「なるほど……厄介ね。それでどうする? 私としては今すぐにダークライを取り返したいわ」

「それならダークライのボールを探そう。それと今回の目的は二つ。ナナの奪還……それとゴゥー団の幹部を捉える。つまり制圧戦も兼ねている」

 

 制圧戦か。これをチャンスとばかりにゴゥー団を完全に壊滅させるつもりね。四天王とジムリーダー。面子としては充分。だけど逃げられる可能性はもちろんある。こちらがテレポートで移動したように相手もテレポートで逃げられる。そうなると『くろいまなざし』を覚えたポケモンがほしいところだけど……

 

「ただ戦闘は避けるぞ。それは大人に任せよう。俺達はナナのボールを隠れて探す」

「分かったわ」

「行くぞ」

 

 ノエルが歩くと同時に私もノエルの後ろにつく。物陰に隠れながら散策する。辺りは慌ただしい雰囲気だ。サイレンがガンガンに鳴って頭が割れそうになる。これはキンランさん達が攻め込んでいるからだろう。そんな時だった。

 

「バチュ」

 

 私の足元にバチュルが現れる。普通のバチュルだ。話には聞いていたが随分と小さい。どのくらい小さいかと言うと私の小指に乗るくらい……ポケモンだから戦えるだろうがバチュルが戦うところはイメージが出来ない。そんなバチュルはまるでついてこいと言いたげに歩き始める。このバチュルは一体……

 

「キンランさんのバチュルだ。恐らく場所が分かったから案内するつまりだろう」

「なるほど……ジムリーダーのポケモンってことは戦力に数えてもいいのかしら?」

「いいと思うぞ。言うことを聞くかどうか分からんが」

 

 それはそうだ。バチュルに頼むのは本当に危ない時だけ。基本的にはメアのニンフィアで済ましたいところ。しかし、そんな簡単にいくとは思えない。相手はゴゥー団。しかも今回は前の襲撃と違って敵の本拠地に乗り込む形になっている。

 そんなことを考えてると目の前に赤と白の色を合わせ持つ戦闘機のようなポケモンが吹き飛んできた。ノエルが合図する。これは敵だと。

 

「グソクムシャ! であいがしら!」

「ニンフィア! ハイパーボイスをお願い!」

 

 二つの攻撃。そのポケモンは意図も容易く避ける。しかし避けた時の行動が隙になった。カプ・コケコが目の前に現れて、そのポケモンに電撃を喰らわせる。しかし、そのポケモンは結界のようなものを作り、攻撃を防ぐ。そして透明になりこの場から消える。

 

「ノエル! あのポケモン分かる?」

「恐らくラティアスだ! 伝説のポケモンで……」

「カプ・コケコ! ナナの後ろにワイルドボルト!」

 

 キンランさんがやってきてカプ・コケコに命じて私の方にカプ・コケコを飛ばしてくる。私は慌ててしゃがむ。するとカプ・コケコはなにかにぶつかる。そこから先程のラティアスというケモンが現れる。

 

「ここは私に任せていきなさい! ラティアスクラスのポケモンが相手だと邪魔よ!」

「分かりました!」

「気を付けて。このラティアスは幹部のポケモンよ! そして見ての通りダークポケモンになってない。ダークになってないのに命令を聞くということは伝説のポケモンに認められるだけの強者よ!」

 

 それから軽い爆発が起こる。カプ・コケコとラティアスの激しいぶつかり合いだ。ここにいるのは危険だ。私達は走ってその場を後にする。

 

「……ラティアスは光を屈折させて姿を消すポケモンだ」

「だから、あの時に消えたのね。しかしどうしてダークポケモンにしないのかしら?」

「弱くなるからだろうな。ダークポケモンは身体能力として上がるが言うことを聞かなくなる。だから基本的には強いトレーナーが育てたポケモンには劣るんだ」

「なるほど……もしもそれを理解した上で敢えてダークポケモンにしてないなら厄介ね」

 

 ラティアス。聞くまで名前すら分からなかった。もしもキンランさんが来なければ透明化に対応出来ず死んでいた。ここにきて知識不足が響いてきた。帰ったら少しだけ勉強しないと。しかし再びラティアスと同レベルのポケモンが出たらどう対処すればいいのか……

 

「ナナ! あの部屋だ!」

 

 そんなことを考えながら走っていると、ある部屋に辿り着いた。そして部屋の中には私を拉致した例の女がいた。

 

「私のラティアスからよく逃げられたね。潜入者」

「ダークライを返して!」

「嫌よ。ラティオス。やっておしまい」

 

 ボールの中から今度は青と白の戦闘機のようなポケモンが出てくる。ラティアスの色違いのようなポケモンだ。最悪だ……まだいたなんて……

 

「ラティオスとラティアス。どちらも高額を叩いて買った『むげんのチケット』で行った南の孤島という場所で捕まえた正真正銘の私のポケモンよ」

「なるほど。あくまでラティ兄弟に関しては非合法なことはしてないと」

「そうよ。さぁラティオス。シャドーボール!」

「ラティ!」

 

 こちらにダイレクトに技が飛んでくる。しかしノエルのグソクムシャが素早く動き、私達を庇う。そしてノエルの指示を動くことなく反撃に移行。だがラティオスは素早く、簡単にグソクムシャの攻撃を躱す。それと同時に私はニンフィアに命じて行動をさせる。ニンフィアは頷いて私の指示通りに動き出した。

 

「見事ね」

「……ラティオスは争いを好まないポケモンだ。それをまさかここまで好戦的な性格に出来るとはな」

「争いを好むラティオスがいても不思議じゃないでしょう。人間にも色々な考え方を持つポケモンがいるのと同じよ。それとも争いを好むラティオスはラティオスに在らずと言いたいわけ? だとしたら不快ね」

「いいや、本来は争いを好まないポケモンをここまで好戦的に育てたことに素直に感服したんだよ。でも話を聞く限りだとラティオスは元々そういう性格みたいだけどな!」

 

 このラティオス。なついてる。それに相当な信頼関係もある。ゴゥー団と言えどトレーナーとしては真っ当な強者ということか……

 しかし、それにも関わらず人のポケモンを平気で盗る。ポケモンと切り離されることがどんなに辛いことか理解した上で平然と行える。恐らく彼女は『自分に関係なければなんでもいい』と思ってる。それが彼女の悪の部分。

 

「ああ……思い出した。どこかで見たことあるような気はしてた」

「なにかしら?」

「お前。二ロロノクス社の社長だろ。どうしてこんな大物がここにいるんだよ」

「何故か? 私を捕まえて吐かせればいいじゃない」

 

 二ロロノクス社。エネルギー関係の研究をしてる大企業だ。たしか最近に長女が会社を受け継いだと聞いたことがある。本来なら次男が受け継ぐ予定だったが、あまりに馬鹿だったからとか……あれ? そういえば?

 

「そっちの嬢ちゃんは私のことを知ってるはずよ。だって貴方は私の弟をシノノカップで倒してるもの」

「……ムンナの捨てたトレーナーのお姉さんですか」

「正解。もっともあそこまで失態を晒されると、私も恥ずかしいし、なによりあんなのが弟だと思われたくないから秘密裏に処理しちゃったけど」

 

 ああ。だからあれから見かけなかったのか。少しだけ納得した。ぶっちゃけどうでもいい。それよりも今はどうやって彼女を倒すか。弟の方とは違って相当な強さだ……

 

「……それはそうとそちらの男の子は誰に連絡したのかしら?」

「メグ先生。この地方の四天王と言えば分かるか?」

「そう……楽しみだわ。私と四天王。どっちが強いのかしら!」

 

 次の瞬間にグソクムシャが吹き飛ばされる。グソクムシャは戦闘不能。ノエルもすぐにボールに戻す。やっぱり力の差は歴然か……

 

「そして、あなた達も終わりよ。でもチャンスはあげる。ポケモンを全て捧げてゴゥー団に入り、私の部下になる。そしたら見逃してあげる」

「断る」

「残念だわ」

 

 ラティオスがシャドーボールをこちらに撃とうとする。それと同時に私の元にニンフィアがやってきて私を庇うように覆いかぶさる。そしてニンフィアはボールを咥えていた。私はそれを受け取り、夢中で投げて、中のポケモンに指示を飛ばす。

 

「ダークライ! あくのはどうで迎え撃って!」

「なんですって!」

 

 助かった。グソクムシャと会話で気を引く。その間にニンフィアがボールを『ほしがる』を使って入手した。ほしがるは相手の道具を自分の道具にする技。それを使って奪い返したのだ。全てが上手くいって助かった。

 

「ラティオス! すぐにトリックで取り返して!」

 

 しかしラティオスは動けない。まるで痺れたかのようだ。よく見るとラティオスの首元にバチュルがいた。バチュルのでんじはでラティオスを麻痺にしたのか!

 

「ナナ! 逃げるぞ!」

「待って! ムンナとスピアーが……!」

「これだろ?」

 

 驚くことにノエルの手には私のボールがあった。いつの間に

「モシッ」

「俺のヒトモシのトリックで返してもらった。もう滞在する理由はないだろ」

「ありがとう!」

「気にするな。俺達は仲間だろ!」

 

 私達はそのまま走って部屋を後にする。ラティオスはバチュルが抑えている。ここは撤退して逃げるべきだ。ゴゥー団の相手は大人たちに任せるべきだ。

 

「やっほー二人とも大丈夫?」

「メグさん! 敵は二ロロノクス社の社長でラティオスを使います!」

「分かった! とりあえずテレポートで飛ばすよ! あとは任せてー」

 

 そして私達は瞬く間にシノノシティに戻された。無事にポケモンを取り返して帰還に成功したのだった。

 




The補足

伝説のポケモンのレア度に関して。
本作品では伝説のポケモンは下記のように扱う。

EX
アルセウス

S(存在すら怪しいポケモン)
セレビィ,ジラーチ,ビクティニ,フーパ

A(文献でのみ確認されているポケモン)
ユクシー,アグノム,エムリット,ディアルガ,パルキア,ギラティナ,ゼルネアス,イベルタル,ジガルデ

B(目撃例も少なく、一体しか存在していない可能性のあるポケモン)
ミュウ,ホウオウ,マナフィ,マーシャドー

C(目撃例があり、複数の個体が確認されてるポケモン)
ルギア,グラードン,カイオーガ,レジギガス,クレセリア,ダークライ,ゼクロム,レシラム,キュレム,ケルディオ,メロエッタ,カプ・コケコ,カプ・テテフ,カプ・ブルル,カプ・レヒレ

D(目撃例が多数あり、目撃者も多く所持してるトレーナーもそこそこいるポケモン)
ファイヤー,サンダー,フリーザー,ライコウ,エンテイ,スイクン,レジロック,レジアイス,レジスチル,ラティオス,ラティアス,ヒードラン,シェイミ,コバルオン,テラキオン,ビリジオン,トルネロス,ボルトロス,ランドロス,ディアンシー,ボルケニオン,ゼラオラ

例外
ミュウツー
・一体しか存在しないが人工的に作られたポケモンで資料もあり、情報が揃ってるため。

レックウザ,デオキシス
・宇宙では多くの個体が確認されているため。

フィオネ
・海に多くの個体が存在していて、幻のポケモンとして扱われていないため。

ゲノセクト
・悪い奴らに改造されたポケモンとして最近確認されて現在は厳重に保護されているため。そして化石があれば背中の砲台が少し変わるが復元可能なため。

マギアナ
・作られたポケモンとして保護されており、資料やデータも充分なため。

UB全種
・幻や伝説のポケモンとして扱わないものとする





▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。