目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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39話 強くなりたい

「改めて聞くわ。挑戦者ナナ。ジムバッジは二つで間違いないかしら?」

「はい!」

「三つ目のジムになるのね。規約に沿って私は一体のポケモンしか使わないわ」

 

 ジムの規約によりジムリーダーは挑戦者のバッジ数に応じて使うポケモンを変えなければならない。一つ以下の場合は育て始めて半年以下のポケモンを二体。二つの場合は事前にジム協会に申請した少し強力なポケモンを一匹。そして六つ以下はジムリーダーの各自の判断に任せて適切なポケモンを使う。そして七つ集めたトレーナーが挑戦者としてやってきた時にはジムリーダーは一切の手加減をせず、本気で戦う。そんな感じの内容だ。

 ジムの一番の難関。それは三つ目と言っても過言ではない。何故なら圧倒的な力量差があるポケモンを数や機転で倒せるのかどうかを試すものなのだから……

 

「それじゃあ行くわよ。シビルドン」

「お願い! ムンナ!」

「ンナッ(任せろ)」

 

 キンランさんはシビルドンという電気ウナギみたいなポケモンを出す。このポケモンは見たことがある。ナナのお兄さんが使ってたポケモンだ。それに対してナナはムンナ。果たしてどう立ち回るのか……

 

「ムンナ! お……」

「でんじほう」

 

 一瞬だった。電気を帯びた球が飛んできて、ムンナを弾いたのだ。ムンナはなんとか立ち上がるが、体が痺れているのか思うように動けないでいる。

 

「あなたがシノノカップでやった速攻術。同じことをしただけよ」

 

 同じだ。僕はあくのはどうで他のトレーナーを瞬殺していた。それと同じことをキンランさんはやっているのだ。まさかやる側からやられる側になるとは……

 

「ムンナ! まだやれる?」

「ンナ……(ああ……)」

「もう一度でんじほう」

 

 そんなやり取りをしてる間に再び飛んでくる。ムンナは避けようとするが体が痺れて動けない。呆気なく当たり、一撃で戦闘不能になる。まるで砲台だ。あんなのどうやって攻略すればいい……いや、違う。攻撃方法が遠距離に変わっただけでメガルカリオの時と同じなんだ……

 

「まだやるわよね?」

「ええ……ありがとう。ムンナ」

 

 ナナはムンナをボールに戻す。あの時と同じだ。このままじゃメガルカリオの時と同じだ。それならどう対応する? それを考えなければ……

 

「スピアー! お願い!」

「スピッ!(お任せを!)」

「そちらからどうぞ!」

「一撃で決めるわよ! メガホーン!」

 

 スピアーが特攻する。それに対してシビルドンは尻尾を振るい、スピアーを叩いた。幸いにも大きなダメージはないようでスピアーはすぐに起き上がる。

 

「無駄よ。無駄なのよ」

「……もう一度メガホーン!」

「でんじほう」

 

 シビルドンが電気で出来た球体をスピアーに飛ばす。スピアーはそれを避けてシビルドンに近づくが、球体は転回してスピアーを背後から叩いた。明らかに物理法則に反した動き。そんなのありかよ!

 

「スピアー!」

「私は一言もでんじほうが一度避けたら終わりなんて言ってないわ」

 

 スピアーは戦闘不能だった。ナナは「ありがとう」と一言だけ呟いてスピアーをボールに戻す。そして無言で僕を出した。さて、どう攻略するか。

 

「ダークライ。ダークホールを使う時のやみのちからを意識しなさい」

「……なんですか?」

「折角だから稽古してあげるわ。また暴走されたら面倒だし」

 

 ナナが下唇を噛む。なにかを言おうとするがグッと堪える。そして別の言葉を吐いた。それは驚くべきことだった。

 

「……よろしくお願いします」

「随分と素直ね」

「ゴゥー団に襲われて私は強くならないといけないと思ったんです。私のポケモンを守るためにも。だから私は……」

「そこまででいいわ。とりあえずダークホールを撃つイメージでやみのエネルギーを貯めなさい」

「ダークライ。やってみて」

 

 言われた通りにする。ダークホールの要領で体内のエネルギーを流す。ダークホールの時はそれを放出していた。しかし今は違う。体内に抑え込むんだ。段々と頭がボォーとしてくる。視界がぼやける。体の中から破壊衝動が涌く。全てを壊したい……!

 

「今よ! 外に放出!」

 

 キンランさんが叫ぶ。言われた通りに一点に集めて手からエネルギーを放出する。それは今までに体験したことのないような威力を誇り、フィールドを抉った。シビルドンはそれを飛んで回避。誰にも当たらない。しかしナナは威力の高さに唖然とする。それから僕の手に激しい痛みと脱力感に襲われる。ダメだ……体が動かない……

 

「キンランさん……今のは?」

「あくのはどうよ」

「……明らかにいつものと威力が桁違いです!」

「デルビルとヘルガーのあくのはどうが同じ威力? 違うでしょ。伝説や幻のポケモンのあくのはどうなら本来はこのくらいの威力があるはずよよ。簡単な話。今までのダークライのあくのはどうが未完成だった。それだけの話。驚くことじゃないわ」

「……なる……ほど」

「今から私はダークライにとどめをさす。ナナはどうする?」

「降参します」

 

 そうしてジム戦は終わった。あまりに呆気なく負けた。最後には稽古になるというあまりに酷い負け方だ。でも何故か清々しい気分だった。ナナとキンランさんが握手をする。

 それからナナが頭を下げた。そしてキンランさんにお願いする。

 

「キンランさん! お願いがあります!」

「なにかしら?」

「私にポケモンバトルを教えてください! 私はもっと強くなりたい! ダークライの力を引き出せるようになりたい!」

 

 ナナはキンランさんに教えを乞いたのだ。キンランさんは少しだけ考える。そしてナナに一言だけ問いかける。

 

「ナナ。あなたはなんのために強くなりたいの?」

「自分を変えたいからです。強くなれば変われる……違う。変われば強くなれる。私は強くなりたいわけじゃありません。今の自分から変わりたい」

「……なるほど。いいわよ。でもハードだから覚悟してね」

 

 そうしてナナの修行が本格的に始まるのだった。

 




これで三章は終了です。
ちなみに修行シーンは全て飛ばして4章は修行後から始める予定です。

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