目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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48話 ナイトメアシフト

 宙を賭ける。ここではビルの壁を床にしてエンテイとメガラグラージが物理法則を無視して戦っている。僕は背後からエンテイにダークホールで襲い掛かる。しかしエンテイは簡単に回避。そのまま僕に襲い掛かってくる。そのエンテイの勢いをあくのはどうで殺して距離を取る。いくら物理法則を無視した動きだとしても物理法則から逃れられるわけじゃない。少しでも気を抜けば落下だってする。だが本気のあくのはどうでも勢いを殺すくらいの威力しか出ないのかよ! 明らかにデタラメじゃねぇか!

 そんなエンテイが僕に追撃をしようとするが、それが幸いにもメガラグラージが間に入り、パンチでカウンターを決めてくれたおかげで僕に攻撃は届かない。

 

 世の中はレベル差が全てだ。レベル差は相性も上回る。レベルが離れれば電気タイプの技でも地面タイプに効いたり、ゴーストタイプの技がノーマルタイプに通用したりする。僕がメロエッタにシャドークローを当てた理屈がそれだ。そして防御面も然りだ。弱点を突こうがレベルの離れたエンテイには通用しないことすらありえるだろう。それでも勝ちたい!

 

「ダークライ! もっと強く! 今のあなたの力はそんなもんじゃないはずよ!」

 

 ナナからの 責。そうだよな。レベル差は絶対だ。しかし勝負中にレベルが上がらないと誰が決めた? レベルが足りないなら上げればいい……体よ……一瞬だけ持ってくれよ!

 

『ナイトメアシフト・5%・あくのはどう』

 

 一時的にやみのエネルギーの放出量を上げる。そして体がダメージを負わないギリギリのあくのはどうをエンテイに叩きつける。メガラグラージに完全に気を取られていたエンテイはあくのはどうを直撃して、吹き飛ばされる。しかしすぐに起き上がってくる。全力でも吹き飛ばすだけかよ、しかもダメージにすらならない。がちでメガラグラージがいなかったら瞬殺されてるな。

 

「まったく……随分と暴れてくれる。でも貴様らが暴れいてるということは市民は眠れぬ夜を過ごすということ。そんなの私が許さん!」

 

 エンテイが炎を体に纏う。明らかに火力が桁違い。当たれば間違いなく即死。がちで入院クラスのケガをするぞ。それにあんな炎を纏えばエンテイ自身も相当なダメージを負うはずだ。どう対処すれば……

 

「ヴィランは私が討つ! エンテイ! フレアドライブ!」

 

 方法はあるだろ。忘れるな。僕には必殺技がある。レベル差があろうが、それが実態を伴った攻撃なら僕には通用しない。僕はダークライだ。その辺のポケモンとは格が違う!

「なんだと!」

 

「そのチャンスを逃さないわよ! ラグラージ! たきのぼりからのたたきつける! そしてじしん!」

 

 エンテイは僕に突進した。しかし僕には当たらない。体が透けてエンテイの攻撃を避ける。エンテイは実態を捉えられていない。通過を相手の攻撃に合わせて行うことで攻撃を避ける。付け焼き刃だけど上手くいった。そしてメガラグラージはその一瞬を見逃さない。あれほどの一撃を奪った。必ず倒すという確信が無ければ打てないだろう。だからこそ外した時はどんなに強いポケモンだろうが一瞬だけ隙が生まれる。その隙があればメガラグラージがエンテイを倒すのには充分だ。

 

 メガラグラージはそのままたきのぼりでエンテイを宙に吹き飛ばす。メガラグラージのダメージをクリーンヒットしたのは初めてだろう。相当なダメージを負ってすぐには体勢を整えられない。そんな一瞬にメガラグラージが自慢の拳で殴り、地面に叩きつける。そして地にエンテイが落ちた瞬間にメガラグラージはエンテイを殴る。エンテイを震源地として大地震が起こり、ビルが倒壊する。そんな様子をナナが遠目で見る。

 

 しばらくして地震が収まると辺り一面にビルの瓦礫が散らばっていた。そして中心には戦闘不能のエンテイ。そしてメガシンカが解除されてヘトヘトのラグラージ。

 ただのじしんでここまでの威力。改めて思うととんでもないな。だが、ここ一帯の都市が崩壊しただけでまだ都市は残っている。しかしラグラージがじしんを連発したら容易く平らに出来るだろう。これがポケモンリーグ優勝者の実力……恐ろしいな。

 

「……あなた。名前は?」

「悪夢姫よ」

「ナイスファイト。最後のフレアドライブを避けたのがなかったらもっと長引いてたよ」

「前回ポケモンリーグ優勝者。ポポ。あなたのヴィラン名は?」

「ブレイカー……あとメガシンカしてラグラージも体力を相当消費してるから拠点に戻るまで護衛してくれると嬉しいな」

「もち……」

 

 そんな時だった。マッハでコンクリートの柱が飛んできてラグラージを吹き飛ばす。それから人型のポケモンが飛んできてラグラージをタコ殴り。それによりラグラージが戦闘不能。何者だ!

 

「悪夢姫。あの時は逃したが、次は逃がさない」

「国際警察メデア!」

「今はヒーロー。ロブロブだ!」

 

 まだ退場してなかったのか。これはマズい。あいつはヒーローの中でも主要戦力の一人。まともにやって勝てる相手じゃない。しかも毒も完治されている。あのマッハパンチを避けられるだろうか。初撃は通過で避けたとしても、その後はどうする?

 すぐに対抗策を見つけてくるだろう。ここは退くしかないか。僕はナナを抱えて上から逃げようとする。上ならローブシンは追えない。しかし獣のような四つ足のポケモンが飛んできて、僕を蹴落とす。ドシンと音がする。幸いにもナナは僕が下になったおかげで怪我はなさそうだが……よりによってこいつまで……

 

「逃がさないよ! ナナ……ううん、悪夢姫! このキュートガールの名前に賭けて!」

「メア……最悪のタイミングね」

 

 近くにはニンフィアもいる。かくとうタイプとフェアリータイプ。どちらもあくタイプの僕が苦手なポケモン。それに一体の相手ですら厳しいというのに……

 

「戦闘開始だよ!」

 

 メアが歌い始める。そしてローブシンが明らかに先程も早く、重く殴りかかってくる。僕は通過させて攻撃を回避する。それと同時に腹がグゥーとなる。これはマズい。あと一度でも通過したら空腹で動けなくなる。そんな時に背後にニンフィアが現れて僕を後ろ足で蹴る。重い一撃で吹き飛ばされるが、幸いにも致命傷にはならない。

 

「ダークライ! しゃがんで!」

 

 ナナの声に直感的に従う。すると真上をコンクリートの柱が掠る。間違いなくローブシンのマッハパンチ。もしも当たっていたら一撃で戦闘不能になっていた。

 しかしメアの歌で明らかにローブシンもパワーアップしている。そういえばメアが言っていたな。どんなポケモンでも力を増強させる歌が唄えるようになったと。改めて思うとメアが強すぎる。あの歌で様々な強者をパワーアップされたら、一気に戦況がヒーロー陣営が強くなる。あまりにメアという存在が団体戦において厄介。サシの勝負でも勝つのは困難なくらい強いと言うのに……

 

「ロブロブ! 笑顔を絶やさないで! 笑って勝つからヒーローなんだよ!」

 

 少し真剣な表情をしていたメアがロブロブに 責する。しかしどうするんだよ……いや、やることは決まってるだろ。もう負けないと誓った。どんな強敵だろうが僕は勝って乗り越える!

 

「ダークライ! いくよ。常時ナイトメアシフト・5%!」

 

 ナナの指示通りにナイトメアシフトをする。今までの限界値は2%。その更に向こうの力。今の僕に耐えられるか分からない。でも不利な相手に勝つというのはそういう無茶をするということだ!

 

「……あくのはどう!」

 

 体から闇が溢れてくる。まるで闇の霧を纏っているみたいだ。体が裂けそうなくらい痛いが、動けないほどではない。さっきのエンテイを吹き飛ばした時は一瞬だけの5%。でも今は常に5%の出力……とりあえずナナの指示通りに手を振るう。あのエンテイを吹き飛ばした威力のあくのはどう。それはローブシンを吹き飛ばすには充分だった。接近してきたローブシンを遥か遠くに吹き飛ばす。しかし、すぐに起き上がってくるだろう。その間にニンフィアを片付けなければならない。影を爪として纏い、瞬足でニンフィアに接近。連続的に闇で構成された爪で引っ搔き、ニンフィアの体力をゴッソリと削っていく。しかしニンフィアは耐えて、大きな声をあげる。それは衝撃波となり、僕の体を少しだけ吹き飛ばした。しかし距離は大きく離されていない。そのままあくのはどうをニンフィアに叩き込み、大打撃を喰らわせる。ニンフィアは大きなダメージを負って動くのが厳しそうだ。今がチャンスだ!

 

「ダークライ! 深追いは絶対にダメ!」

「ン?」

 

 その時だった。頬が物凄い衝撃で殴られる。顔をあげるとローブシンの持つコンクリート柱が頬に練り込んでいた。物凄い痛みだ。だが、ここで意識を手放すわけにはいかない。ここでやられたらメガルカリオの時と同じだ。大きな後悔を残す。なんとか耐えるんだ。

 

「ダークライ! ダークホール!」

 

 ナナは信じていた。僕が絶対に耐えると。だから耐えることを前提でダークホールを命じる。僕もナナの指示通りにダークホールを撃つ。一撃を喰らわせて勝ったと思っているローブシン。不意打ちに近い形で打つことになったダークホール。それは必中だった。ローブシンが深い眠りに落ちる。そして悪夢にうなされて呻く。

 

 しかしチリンチリンという音がして、すぐにローブシンは目覚める。音のなる方を見るとニンフィアが鈴のような声を発して鳴いていた。あれは『いやしのすず』か。どんな状態異常でも治す厄介な技。目覚めたローブシンはすぐに戦闘態勢に戻る。そしてニンフィアも起き上がれるくらいまで傷が癒えていた。

 

「避けられるなら、避けれなくするのよ! ダークライ! 雨を降らせなさい!」

 

 そういうことか! 僕はダークホールを空に目掛けて撃つ。それと同時にローブシンが殴りかかってくる。僕はそれを影で出来た爪で受け止めて、やり過ごそうとする。しかしすぐに粉砕されてローブシンは追撃に入る。しかし僕の手の方が早い。空から闇の雨が降り注ぐ。雨粒が全てダークホール。当たれば即眠り。やり過ごせるものなら、やる過ごしてみろ!

 

「ローブシン!」

 

 雨を避けるなんて並大抵のポケモンでは不可能だ。この場にいる全てのポケモンが眠りに落ちる。ニンフィアも眠った。この場には起こせるポケモンはいない。そして僕もガクリと倒れる。ナイトメアシフトも完全に解除。もう完全にダメージが許容限界を超えている。でも速くトドメを刺さないと。そうしないとローブシンはすぐに起き上がってくる。そうじゃないと……

 

『仮想戦闘祭終了! ヴィラン陣営が民間人を二百名以上の殺害を確認!』

 

 そんな時だった。アナウンスが鳴って試合の終わりが告げられた。一体なにが起きた?

 

「……あー負けちゃった」

 

 メアがうなだれる。ナナも呆気にとられる、一体なにが起きたのだろうか。そんな中でローブシンのトレーナーであるメデアが解説する。

 

「あの大地震だな……恐らくあれでゴッソリとマネキンを破壊。数で言うと百といったところだろうな。そしたら残りの百。しかもこっちはウルトラがいない。恐らくヴィランの精鋭達が走り回り、マネキンの破壊に専念したんだろうな」

「あ……」

 

 これはあれだな。ナナも僕も完全に時間稼ぎに使われた。その間にボスが全てのマネキンを破壊した。それにジムリーダーのニシンもいる。不可能ではないはずだ。それにボスの力が未知数過ぎる。その気になれば最初から勝てていたのかもしれない。

 そんな時だった。テレポートでラルムが現れた。雰囲気はまるでラスボスだ。

 

「戦いに専念して、チームワークも連携も出来ていないクソヒーロー。ヴィランを倒すことばかりに気を取られて市民も守れねぇのはどんな気持ちだ?」

「……お前は?」

「ヴィラン名はボス。素性の掴めない男だけど、私達に指示を出していた男よ」

「ああ……デトワール地方で最大級の祭りだと期待してみればこんなものか。張り合いがねぇぞ……」

「……随分と好き勝手言うんだね。それでなにを言いに来たの?」

「あ? ヴィランが勝ったらヒーローを煽るのは当然だろ。むしろ互いに検討を称えあうみたいなヴィランらしくねぇことしろとでもいうのか?」

「……うーん。祭りなんだから互いに気持ちよくなるように心掛けるべきなのかなと私は思うよ」

「それなら俺を気分良くさせてくれよ……お前らが弱すぎるせいで俺の作戦が全て使うまでもなく終わっただろ……まったく……実につまらん。真面目に作戦を寝ないで考えた俺が馬鹿みたいだ。それとナナ。ダークライの使い方はちょっとは分かったかよ?」

「……まだですかね」

「そうかよ。弱かったらなにも守れねぇぞ」

 

 そしてボス……ゴゥー団のボスのラルムはバタフリーのテレポートで消えていく。そして彼の姿は閉会式でも見ることはなかった。

 

 

 

 




The補足
ラルムが気分の悪い理由。
それは作戦がほとんど使うことなく終わったからです。
ラルムは実は祭りを表舞台で悪役が出来ると相当ワクワクしていました。それこそ寝ないで徹夜してウキウキで作戦を考えるくらいです。また自分のダークライにカッコイイ自分を見せたいという思いもありました。
そしてラルムはヒーローなら地震を起こさせる前に対処は当たり前、また全力でやっても勝てるか五分五分くらいだろうと過大評価していました。しかし所詮はお祭り。ヒーロー陣営にはラルムみたいなリーダーもいなければ作戦もありません。そしてヒーローが真面目に作戦を立てて、陣形も組んでいれば間違いなく互角以上に戦えました。それをラルムも分かっています。なのにそれをしなかったからキレてるのです。結局のところラルムがヒーロー陣営は買い被りすぎたのです。
もっとも数日で三百人近くの人をまとめることの出来る人なんて中々いませんし、いたとしてもただの祭りでそこまでやるかというと難しい部分でもあります。

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