目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

50 / 92
49話 悪夢姫

 仮想戦闘祭が終わった。改めて実力が足りていないと実感させられた。ナナが目指すのはチャンピオン。今回はギリギリの勝ちだった……しかしそれじゃあダメだ。危険の一つも感じないくらい強くならなければ。僕たちが目指すのはそういう道だ。ナイトメアシフトの5%では恐らく本気のジムリーダーには通用しない。もっと出力を上げなければ……

 

 この世界に来て気づいた。この世界にギリギリの接戦なんてない。あるのは呆気ない勝利だけ。もしも接戦があるとしたら、それは負けないように必死に足掻いている時。つまり自分が不利な状況が有利な状況に変わろう。もしくは有利から不利になろうとしている時。ギリギリの接戦なんて起こってはいけないのだ。いつだって余裕の勝利じゃなければならない。

 

「……ダークライ。今回の敗因はなんだと思う?」

 

 そしてナナと反省会。まずエンテイの時。あれは悪くはなかった。いま出来る最善のことをした。問題はニンフィアとローブシン。あの時はどうすれば良かったのだろうか。今回の行動は本当に最善手だったのだろうか?

 

「そうよね……絶対にもっとうまく立ち回れた。でも私達にはその方法が分からない。どうすれば良かったのかしら……」

 

 そんな時だった。ムンナがボールから無理矢理出てくる。ナナは少しだけ驚きの表情を見せる。しかしすぐに冷静になり、ムンナが言いたいがあるのだと察して、ムンナに喋るように促す。

 

「ンナッ。ンナ(あれはいくらなんでも無理。勝てただけ奇跡)」

「そうだけど……」

「ンナ……ンナ(そもそもダークライ一人に背負わせすぎなんだよ……ポケモンにも有利と苦手。得意と不得意がある)」

 

 そこで気がつく。僕が全てやる必要はない。もしも僕一人で全て大丈夫なら、他のポケモンはいらないはずだ。僕一人でナナをチャンピオンにするわけじゃない。ムンナやスピアーとみんなでナナをチャンピオンにする。僕が勝てないならムンナやスピアーが……そして逆にムンナ達で勝てないなら僕が勝つ。それでいいんだ。

 

「そうだね……ごめんね。ムンナ。スピアー」

「ンナッ(俺達も頼れよ)」

「……敗因はダークライ一人に全て背負わせたことね。私はポケモントレーナー。ダークライ一体が全てじゃないのよね」

 

 そして今日の反省会を終える。ナナは手元にあった新聞を読む。その新聞を読んでナナが少しだけ真剣な表情になっていく。

 

「レジアイスの捕獲……? 前のジムリーダー含む大規模なレジアイス討伐部隊が組まれたが全て返り討ち。さらにレジロックに関しては事情ありとは言えキンランさんが取り逃がすようなポケモンよ? いったい誰が……」

 

 新聞の記事には新人トレーナーがレジアイスを激闘の末に単独で捕獲と書かれていた。さらに記事の写真を見て驚く。そこにはグソクムシャを相棒にしてる僕たちのよく知っているトレーナーが写っていたから……

 

「ノエル! 彼は一体どこまで強くなってるの!」

 

 レジアイスを捕獲したのはノエル。新聞には大々的に取り上げられていて、インタビュー記事まで書かれている。ノエルもチャンピオンを目指している。恐らくポケモンリーグで戦うことになるだろう。レジアイスを一人で捕まえるようなトレーナーと戦わなければならないのか。

 

「そして国際警察が秘密裏に確保していた色違いのボルケニオンの情報はデマだと判明? 正体はメタモンであり、悪質なトレーナーが色違いボルケニオンの姿を覚えさせてデマを拡散していたことが判明……国際警察は裁判を起こす気でいるがどうなるか不明……か。これはどうでもいいわね」

 

 それから他の記事にも目を通す。色々な記事がある。小さくだがナナのことが書かれた記事もある。最近ではナナに熱心なファンが出来て、意外と記事の需要はあるらしい。もっとも何故かナナの元にインタビューはこないが。それに今夜の仮想戦闘祭のことも書かれている。それにやはりラルムのことも書かれている。それよりもメインは……

 

「ポケモンリーグ新規参加者予想リスト。やっぱり連載されているわね」

 

 この時期になると毎年恒例のものだ。若手の注目ルーキーやベテラントレーナーを集めて今年のポケモンリーグが誰が出るか予想記事が書かれる。そこに書かれているトレーナーというのは当然ながら新参者。つまり期待のルーキーとして扱われている一目置かれた存在ということになる……

 

「……え?」

 そこにはナナとノエルの名前。それにボルノの名前も書かれている。まぁボルノはシノノカップで優勝しているから当然。ノエルもレジアイス捕獲という実績もある。ナナに関してはシノノカップで高成績を収め。キンランの弟子。そしてチャンピオンの実の妹ということで注目株だ。だが……メアがどうして書かれている?

「わぁー私が書かれてる! でもポケモンリーグは興味ないし、バトルは嗜む程度なんだけどなぁ……」

 

 メアがひょっこりと現れてナナに後ろから記事を眺める。しかし嗜む程度とは言ってもメアって相当強いんだよな。少なくともバトルで小遣い稼ぎ出来るくらいには。

 

「ていうか私たちの全員がポケモンリーグ出場候補になってるわね」

「あ、私はポケモンリーグに出ることは確定してるから!」

「……ふへっ?」

「いやぁ……まぁ選手としてじゃないんだけど。シノノカップからしばらくしてポケモンリーグ委員会からバトル中に歌ってほしいという依頼が来てね。だから流れで……って感じ?」

「いつの間に……凄すぎて言葉も出ないわ」

「ほら、実は雑誌のインタビューとか受けてたり?」

 

 そしてメアが雑誌を渡す。それはファション誌だった。ページを開くと可愛らしくメアが色々な服を着ている写真がある。ほんとにいつの間に有名人に……

 

「まぁでもポケモンリーグの話はオフレコだけどね」

 

 もうメアは本物のアイドルだな。しかしメアもかなり注目株になってきた。そう思ってた矢先だった。ピンポンと部屋のベルが鳴った。ここはポケモンセンターで宿屋として一室借りているが、用がある人は普通にインターホンを使用する。それどころか頼めば配達員が来たりもする。

 

「誰かしら? 私が出るわね」

 

 ナナが出るとそこにはスーツの男がいた。ゴォー団の服もスーツだが少し形状が違う。恐らくゴォー団とは無関係だな……

 

「あ、ナナ様ですか? それとメア様もいますか?」

「そうですけど……」

「実は私はこういうもので……そのファション誌の表紙トレーナーのモデルになってくれませんか?」

「はぁ……」

「衣装はいつもの黒いロリィタ服で大丈夫ですよ。実はナナ様の容姿に魅了されるトレーナーが意外と多くてこっちの業界ではシノノカップ以降ずっと話題になってるんですよ。それなので今回は『話題のトレーナーナナのファション!』という記事を書こうかなと」

「今回のファションは私はこんな服を着てますよーという記事を書きたいから、いつもの服でいいということですね?」

「はい。それとずっと前から声をかけようと思っていたんですが……ジムリーダーのキンランさんに修行の邪魔になると門前払いされてですね……ずっと私達もナナ様の写真を撮りたくてもどかしかったんですよ?」

 

 なるほど。考えてみたら強くて可愛くてダークライを使い、さらに現チャンピオンの妹のナナが話題にならないわけがない。しかしナナに記者とかは来なかった。それはキンランさんが全て払っていたからか……全てが繋がった。

 

「別に良いわよ。でも賃金は出るのかしら?」

「もちろんです」

「いくらくらい?」

「そうですね……ごにょごにょ……くらいはどうでしょう?」

 

 ナナがニヤリと笑う。そして二つ返事で写真撮影を受けた。

 

 

 翌日。待ち合わせ場所にメアと共に呼ばれた場所に行く。ナナはいつも通りの黒のロリィタ服。メアは可愛い黄色のスカートに白のブラウスという現代日本にいてもおかしくない感じの衣装だ。そして待ち合わせ場所は廃墟だった。アメコミタウンは様々な建物がある。それらは全てが映画撮影用。ここで作られた映画はポケウッドとしてデトワール地方各地に送られる。しかし映画撮影だけではなく、このようにファション誌の撮影や仮想戦闘みたいな祭りにも使われていたりする。

 

「よく来てくれました!」

「こちらこそ、お仕事の紹介ありがとね。ところで今回はポケモンは出すの?」

「そうですね……たしかにナナと言えばダークライという節もあり、ダークライも見た目の良さから大変人気が高いんですよね。それにメアさんのニンフィアも……うん、予定にはありませんがポケモンを出すと読者受けが良さそうですね。両方の写真を撮りましょうか」

「いいよー」

「それじゃあ本日のスケジュールの確認です。まずナナ様とメア様だけのツーショット写真。その次にお二方にポケモンを出して頂いて一枚。それを終えましたらメア様だけの写真を数枚、ナナ様だけの写真を数枚撮って解散という流れになります」

「おっけー。ナナもそれでいい?」

「ええ」

 

 そして僕とニンフィアがボールから出される。このニンフィアとツーショットとかマジかよ。今すぐメロエッタとチェンジしてほしいのだが……

 

「フィア~(ダークライに写真撮影は少し早いんじゃない?)」

「ア?」

「フィア(こういうのは私みたいな品のあるポケモンが……)」

「ニンフィアはこれ以上煽るのはやめようか」

 

 メアがニンフィアを軽く叩く。ざまぁだな。トレーナーに注意されるとかまじでポケモンとして情けねぇ。いや面白れぇわ。

「ダークライも小馬鹿にしない。しかしニンフィアとダークライは本当に仲が悪いわね」

 今度は僕がナナに叩かれる。なんだよ……ちょっとニンフィアのことを笑っただけじゃないか。まったく……

 

「とりあえず二人とも後でお仕置きだね」

 

 メアが笑いながら言う。しかし目が笑ってないから怖い。あとでいったいなにをされるのだろうか……ああ……考えただけで寒気が……

 

「それじゃあ写真を撮りますよー私の指示通りにポーズをしてください」

 

 それから本格的に写真撮影が始まる。フワンテにぶら下がったチョンチーが証明の代わりになったり、オニドリルが影になるために飛んだりと本格的だ。しかし写真撮影までポケモンを使うのか……

 写真はポーズや向きを変えてたくさん取る。あとで聞いた話だが一枚というのは乗せる枚数であり、枚数だけはたくさん取るらしい。しかしどんな写真が撮れるのか楽しみだな。

 

「それとすみません。大変申し訳ないのですが私のカメラ写真を一枚だけいいですか? ナナとの思い出。私はナナと一緒にいたという証拠を写真として残したいんです」

「ええ。いいですよ」

 

 メアが写真撮影が終わりそうなタイミングでカメラマンに声をかける。カメラマンも二つ返事でOKを出した。そしてメアがボールを投げてポケモンを出す。ルンパッパにウルガモス、それにメロエッタだ。

 ナナもそんなメアを見てボールを投げてムンナとスピアーを出す。そして鞄から卵を出して抱える。

 

「ナナ? その卵は?」

「せっかくの記念撮影だもの。これから仲間になるこの子も入れてあげたいの」

「そっか」

 

 カシャリとシャッター音が鳴る。記念写真が一枚撮られて、思い出が形として残される。これからなにがあろうと、この写真が僕たちの関係の証明になるだろう。

 

「撮れました」

「ありがとうございます。無茶なお願いしてすみませんでした」

「いえいえ。このくらいお安い御用ですよ」

「……メア。あとで写真を一枚貰えるかしら?」

「うん。いいよ!」

 

 その後は個人の撮影に変わる。カメラマンの指示に従って先程と同じように写真を取る。早朝から始まった写真撮影は気が付いたら昼頃になっていた。

 

「そういえば多くのトレーナーは二つ名がありますよな。ナナ様はあるのですか?」

「そうね……一応『悪夢姫』というのがあるわよ」

「そちらの服と相まって素敵な二つ名ですね。ご自身で考えたのですか?」

「いいえ。私の大切な人に付けてもらったのよ」

「そうですか」

 

 それで写真撮影が終わり、お開きになった。後日ナナとメアが表紙を飾った雑誌が販売される。そこには「『悪夢姫』ことナナ。彼女の魅力に迫る」と少しファション誌からズレたインタビュー記事が記載されたりもした。そしてこの一件以降ナナは『悪夢姫』の二つ名と共に大きくデトワール地方に知られることになった。

 

  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。