目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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51話 四匹目

 それから何事もなくダグトリオ山脈を抜けた。ナナ達はいつの間に仲良くなっていて、ダグトリオ達から悪戯されることもなかった。そして現在はダグトリオ山脈の頂上。時間は夜。星が凄く綺麗だ。あとは山を下ってデウスシティに行くだけだ。しかしこ暗いので街に行くのは明日になるだろう。そんな時だった。僕たちは光るポケモンが大量にいるのを見つけた。それはまるで地上の星のようだった。しかも赤色や青色、黄色など個体によって色も違う。だけど凄く綺麗だ……あれ? 一体だけ石みたいなポケモンが紛れてるぞ?

 

「……ダークライ。行くわよ」

 

 見惚れているとナナが冷たく言う。まるでそのポケモンに興味がないかのようだ。そしてメアもなにも言わずにその場を後にする。

 

「え!! あのポケモンの様子をみないんですか? 殻から出られなく困ってそうですよ?」

 

 この場を素早く後にしようとするベアルンが陽気にナナ達にそう言う。しかしナナ達は冷たくあしらった。今までにないくらい冷たく……

 

「観察したいなら勝手にすれば? 私は絶対に嫌よ」

「ナナに同感。とりあえず私達はテント立ててくるね」

「ダークライも様子をみたいならベアルンと一緒にどうぞ」

 

 一体なんなんだ。まるで二人共あのポケモンに関わりたくないという感じだ。しかし止めないことから危険はないのだろう。でもどうして……

 

「まぁいいです。ダークライ。二人で観察しましょう」

「ソウダナ」

「無事に周りの子達と同じように光れるといいですね。しかし二人とも随分と冷たいです」

「アア……」

 

 眠くて疲れているからか? いや、でも態度が明らかに不自然だ。

 それからしばらくするが石のポケモンの殻が一向に割れる気配はない。周りの子達も宇宙に行ってしまった。そんな時にナナが寝間着でやってくる……

 

「ダークライ、寝るからボールに戻って」

「ナナ……」

「……分かったわよ。このポケモンの殻が割れるまでここにいるわ。だから最後まで責任持って、このポケモンの面倒をみなさい。たとえどんな結末になろうともね」

 

 そして、この日を終えた。ナナは綺麗な朝日と共に目を覚ます。そして周りに誰も寝ていないことを確認すると僕をボールから出す。僕はベアルンの方に行く。するとベアルンは赤く光るポケモンと遊んでいた。

 

「ダークライ! 昨日の子の殻が割れましたよ!」

「オオ!」

「先程ナナにポケモンの名前を聞いたところメテノというそうですよー無事に他の子達と同じように宇宙に行けると良いですね」

 

 メテノ? そういえばナナが前に言っていたような気がする。

 たしか人がいないと生きていけないポケモンだと……それはどういう意味だろうか?

 

「ダークライ? どうしました?」

「……ナンデモナイ」

「そうですか。しかしメテノというポケモンは可愛いですねー。それじゃあ僕は朝御飯を作ってきます」

 

 そしてベアルンがメテノを連れて朝御飯を作りに行く。今日の朝御飯はサンドイッチでとても美味しかった。それから日課のポケモンバトルだ。メアといつものように軽く手合わせ。それでも時間が余る。そして各自の自由時間だ。ナナはポケモンの知識を深めるために本を読みふける。メアは歌と踊りの練習。僕たちは暇だ。だからナナに許可をもらってムンナと二人でメテノのことに行くことにした。

 

「みなさん! こんにちは! メテノです!」

「おっす。みんなと同じように無事に空に行けるといいな」

「はい!」

 

 ムンナとメテノが無邪気にじゃれ合う。そんな時にベアルンがポフィンを焼いて持ってくる。僕たちはそれを美味しくいただく。しばらくするとウルガモスやスピアーも様子を見に来る。そしてメテノの交えて軽く遊ぶ。途中からルンパッパやニンフィアもやってきて先程よりも賑やかになる。しかしナナとメアだけは混ざることがなかった。

 そして夜になった。さすがにナナ達も外に出てくる。空からは大量のメテノが降ってくる。まるで流れ星のようだ。そして殻が割れて空に飛んでいく。この様は凄く綺麗だった。

 

 もちろん僕たちが面倒を見ていたメテノも例外ではない。周りと同じように空に飛んでいく。僕たちはメテノから目を離さないように必死に目で追う。だけど驚くことが起こった。

 

「……エ?」

 

 啞然とする。メテノが消えたのだ。言葉通り跡形もなく消えたのだ。

 メテノはどこに行ったんだ? おい。無事なのか?

 

「……ダークライ。メテノは空に飛んでいくと――死ぬのよ」

「ウソダッ!」

「そういうポケモンなのよ……だからメテノとは関わりたくないのよ」

 

 二人の冷たい態度の理由が分かった。二人ともメテノというポケモンについて知ってたんだ。メテノの寿命が長くないということ。そして仲良くなれば別れが辛くなるから関わらないようにしてた。

 

「そんな……死……ぬ?」

 

 ベアルンがガクリと膝を折って、地面に足をつく。ナナはそれを無言で見ていた。ポケモンも死ぬ改めて、そのことを強く実感させられた、ポケモンだって生き物で寿命がある。身近な死を体験することで強く思い知らされる。

 

「ああああああああああああああぁぁあぁあああ! メテノ! メテノ!」

 

 ベアルンが叫ぶ。声がこだまして帰ってくる。ふと周りをみるとムンナもニンフィアもみんな泣いていた。ナナとメアだけは無言で立っている。そしてメアは興味がないかのように、その場を後にする。しかしナナはその場に残り傍にいた。

 

「そうだ……ボールで……捕まえれば!」

「ボールの中なら殻を再構築出来るから生きられるわね。だけどメテノだって一体じゃない。全ての個体を同じように可哀想と思って保護してたらキリがないわ」

「でも……」

「それに死ぬのが不幸ってわけじゃないわ。メテノだって自分が空に飛んでいけば死ぬのはわかっていたはず。それなのに空に飛んでいったのはどうして?」

「僕は……」

「少なくとも私が見たメテノは死ぬ時に悲しそうな表情をしてなかったわ。それどころか嬉しそうだって。きっとベアルンと一緒にいれて幸せだったと私は思う」

 

 ナナはベアルンの隣に座ってメテノを眺める。綺麗な光景。しかしメテノが全て死ぬということを知ってしまうと素直に楽しめない……なんか手はなかったのかな。

 

「死ぬから不幸なんて思うのはメテノに失礼よ。私達が思っても良いのは寂しいということだけ」

「そうですね……」

「……これだからメテノとは関わりたくないのよ。だって別れが約束されてるんだもの」

 

 ナナの言葉に妙に納得した。どうにかして生かそうとするのはメテノへの冒涜かもしれない。メテノは死んだ。しっかりと自分の生を全うして死んだのだ。だから外野がとやかく言うことじゃない。

 しかしナナは大人だな。年齢はまだ十二歳のはずなのに心が僕なんかよりよっぽど大人で……強い。きちんとメテノという生き物に敬意を払って自分の感情に流されずに生物として尊重出来る様は誰が見ても大人の行為だった。

 

「でも……死ぬポケモンはなるべく減らしたいわね」

 

 そしてナナもその場を後にする。僕もナナに続いて立ち去る。ナナはそんな僕の頭を軽く撫でる。それは少しだけ気持ちいい。ナナは僕たちが思っているより何倍も強い。改めてそう思った。だから安心してナナを信じられる。ナナの指示に身を委ねられる。ナナなら勝たせてくれると……恐らくそういうのはバトルの腕だけじゃない。ポケモンに対する考え方や理解に尊重。そういうのもなければ成立しないだろう。僕のトレーナーがナナで本当に良かったと改めて思う。

 

 

 翌朝。メテノの件を忘れたわけじゃないし、まだ少しショックもある。それでもデウスシティに行こうとテントを片付けて準備をしていた。しかし途中で思いもよらなかったことが起こった。

 

「ツタァァァァジャ!」

 

 ナナの持っていた卵が孵って産声を上げたのだ。

 

「……色違いのツタージャ。しかもメス。あの人はとんでもない卵を渡してくれたわね」

 

 生まれたのはなんと色違いのツタージャだった。そしてナナの手持ちに四匹目が加わることになる。

 

 

 

 

 




The補足
今回タマゴから孵ったツタージャ。
色違いなのは偶然ではありません。31話で言った通り『遺伝子改良』で作られた卵だから人工的に色違いになるように仕組まれています。
ちなみに遺伝子改良はゲーム本編で言うところの『孵化乱数』に該当するものだと思っていただいて問題ありません。また性別がメスなのは遺伝子改良で性別まで固定されたからなのか、それとも偶然なのか。それは想像にお任せします。

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