目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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51話 3つ目のジム戦

 そしてツタージャを加えてデウスシティに到着する。ツタージャはボールの中でスヤスヤと寝ている。生まれてからすぐに寝たため会話もしていない。ていうかボールの中以外で眠られると困るんだよな。僕の特性はナイトメアだから……

 

「そういえばツタージャに名前は付けるの?」

「付けないわよ。少なくとも私は」

「だよねー」

 

 名前を付けない理由。それは単純に責任を負いたくないのだ。もしもポケモンが気に入ら名前を付けたら悲惨だ。それをずっと背負わせることになってしまう。だから名前を付けずに種族名で呼ぶ方が無難である。あとは単純に他の人にも種族名の方が伝わりやすいというのがあるが……

 

「とりあえずジム戦をしましょう」

「そうだね」

 

 そしてジムに行く。幸いにもジムリーダーは空いていて今からでもジム戦が出来るそうだ。相手は少し大人の男性。髪の色は黒髪。細身だがしっかりとした筋肉が付いている。

 

「……ナナか」

「私を知ってるんですか?」

「話題の人だからな。知らぬ者の方が少ない。あぁ……勝てる気がしねぇな。前のノエルというトレーナーも化け物みたいに強かった。せめて俺が全力で戦えればいいんだがな……まぁ出来る限りのことはするか」

 

 ドンとナナの目の前に立ち塞がる。すごいプレッシャーだ。たしか相手のポケモンはかくとうタイプ。僕は滅法不利なんだよな。

 

「それじゃあ問おう。挑戦者ナナ。お主のジムバッジの個数は?」

「二つです」

「我が名はクロバラ。規約に従い俺はポケモン一体のみ使う。全力で倒してみせよ」

 

 クロバラがボールを投げる。そこから現れたのはゴロンダという大きなパンダみたいなポケモン。しかも見た目からしてかなり凶悪そうだ……

 

「……あくとかくとうの複合タイプ。苦手だわ」

「お主のポケモンは把握している。ダークライは格闘に弱い。そして残りはスピアーとムンナ。そしてムンナは悪タイプに弱い」

 

 これやばいな。完全に対策されてる。たたでさえ強いジムリーダーがこっちを研究して対策して勝負を挑んでくるとか難易度がハードだな。もっとも裏を返せばジムリーダーもナナを舐めておらず、強者だと判断したからだろうが。

 

「お願い! ムンナ!」

「ンナッ(いてぇ……)」

 

 そうすると火傷したムンナが出てくる。ジムリーダーはナナがなにをしたいのか察して顔が青ざめていく。そして試合開始のコングが鳴る。

 

「ムンナ。トリック!」

 

 ムンナの方が早い。ゴロンダは燃える玉を持ち、火傷する。それに対してムンナはラムのみを食べてやけどを回復させる。理屈は簡単だ。ムンナは勝負が始まる前に『かえんだま』という持つと火傷する道具を持っていた。そしてトリックは相手の道具を奪うだけではなく渡すことも出来る。それでゴロンダが『かえんだま』を握らされて大火傷。

 そしてゴロンダの持っていたラムのみをムンナは奪って頬張り、やけどを回復。恐らくラムのみは僕のダークホール対策に持たせたんだろうな。単純に裏目に出たな。

 

「……ゴロンダ。なげつける」

「ゴロッ!(あちぃんだよ!)」

 

 クロバラの冷静な指示。それからかえんだまが高速でムンナの方に飛んでいき、吹き飛ばされる。ムンナはなんとか立ち上がるが再びやけどを受けてしまう。ムンナが苦しそうな表情を見せる。そしてゴロンダは根性で火傷を治す。最悪だ。一気にナナが不利になった。

 

「ムンナ。大丈夫?」

「ンナッ……(ああ)」

「すまないね。こう見えて日頃からゴロンダとのコミュニケーションはしっかりしてるんだ。仲の良いポケモンは気合で致命傷を耐えたり、状態異常を治したりする。他の地方だと『ポケリフレ』と呼ぶみたいだよ」

「そのくらい知ってるわよ!」

 

 それ初耳だ。でも言われてみれば何度か致命傷を受けても立ち上がったことあったな。あれは根性論じゃなくちゃんとした名称があったのか。もっともナナは知っていたみたいだが。

 

「ンナッ!(仲の良さなら負けてねぇよ!)」

「ムンナ!」

 

 ムンナが気合で火傷を治す。これはナイスだ。しかしこれからどう立ち回るのだろうか。あのゴロンダは相当強い。火傷した状態のなげつけるであの威力だ。しかもタイプ相性も不利ときた。

 

「さて、一気に攻めますか」

「……ん?」

「ムンナ。おんがえし」

 

 その時だった。ムンナが素早く動いて体当たりでゴロンダの巨体を一気に吹き飛ばした。それでゴロンダが壁に練り込む。しかしすぐに起き上がり、戦闘態勢に戻る。

 

「……この小さな体でゴロンダを吹き飛ばすか」

「私のムンナは強いのよ?」

「ゴロンダ。かみくだくだ!」

「ムンナ。まもるよ!」

 

 ゴロンダのムンナに噛みついてくる。それに対してムンナがバリアを一瞬だけ展開してゴロンダの攻撃を完全に防ぎきる。しかしゴロンダはムンナに対して連続的に拳で殴りかかってくる。

 

「まもる。瞬きするくらいの時間だけどんな攻撃でも防ぐ技。使うタイミングは相当シビア。この猛攻を全て防ぎきれるかな?」

 

 ナナは不気味に笑う。そして手を叩く。ムンナはそのタイミングでまもるを使って全ての攻撃を受けていく。ナナはクロバラに一言だけ言う。

 

「悪いけど超余裕」

 

 ナナは相手の癖などを分析して未来予知に等しい読みが出来る。だからこそ的確なタイミングでコンマ数秒のズレもなくまもるを展開してゴロンダの攻撃を完全に防ぐことが出来るのだ。普通のトレーナーなら不可能。そもそも瞬きするくらいの時間だけ無敵になる技を扱えるトレーナーなんて殆どいないだろう。しかし未来予知に等しい読みの出来るナナなら扱える。

 

「トレーナーは余裕でもムンナが疲れてくるんじゃねぇか?」

「その前に勝負はつけるわよ! ムンナ! 隙を見ておんがえし!」

 

 ムンナがゴロンダの攻撃を弾く。そして一瞬で懐に潜り込み、顎に体当たりして、今度は巨体を宙に舞わせる。ズシンという音と共に落ちてくるが、ゴロンダはなんとか立ち上がってくる。

 

「……想像以上に強いムンナだ、俺達も全力で行くぞ! ゴロンダ!」

「ゴロッ!(おう!)」

 

 ゴロンダが雄叫びを上げる。そしてクロバラの腕が光る。あれはマズい。

 

「俺たちはお前を挑戦者とは思わない。対等な実力をもった強者と思っている。だから本気で勝ちに行く! ブラックホールイクリプス!」

 

 大きなブラックホールが生み出され、それがムンナを飲み込む。そこからはなにが起こったか分からなかった。しかし一つ言えることがある。それはムンナが戦闘不能になっていたということだ。

 

「Zワザは分かるわ。でもアクZってなによ? 格闘タイプのジムリーダーでしょ」

「こちとらナナを侮ってないからな。使える手はなんでも使う。ただでさえポケモンが一体というハンデを背負ってるんだ。許してくれ」

「ありがとう。ムンナ。それじゃあスピアー。お願い」

 

 ナナがムンナをボールに戻してスピアーを繰り出す、もうZワザは使えない。そしてこちらは絶対的なエースのスピアーだ。勝ったも同然だろう。

 

「一気に決めるわよ! スピアー! メガホーン!」

「スピッ(了解)」

「ゴロンダ。受け止めてともえなげ!」

 

 ゴロンダの胸にスピアーのメガホーンが当たる、しかしゴロンダはそのまま掴みスピアーを投げ飛ばす。それによってスピアーがボールに戻される。

 

「ツタァ?(なに?)」

 

 今度はナナの顔が青ざめていく。ともえなげは一番後ろのポケモンと強制的に交換させる技。その結果、生まれたてのツタージャがバトルの場に出される。これはマズいとナナは急いでツタージャをボールに戻そうとする。しかし……

 

「ゴロンダ。とおせんぼう」

 

 ゴロンダに妨害されてツタージャをボールに戻せない。ナナが舌打ちをする。これだけはやばい。最悪の展開だ。

 

「そんなに慌ててどうした? ナナ。この色違いのツタージャは非合法なものだったりするのかな?」

「……簡単よ。このツタージャ。生まれて間もないのよ。しかも数日なんてものじゃない。ほんとに数時間前に生まれたばかりの……その無理を言ってるのは分かるんだけど、さすがに戻させてくれないかしら?」

「なるほど。つまりレベルが低いということだな! しかしそれならここに連れてくるべきではなかったな!」

 

 ゴロンダがツタージャを叩き潰そう。ナナが舌打ちする。まぁそんな甘い話があるわけないよな。だがツタージャは涼しい顔で避けた。あれは間違いない。どう動けば良いのか本能的に理解している。

 

「ツタッ(遅い)」

 

 ナナと僕は理解した。ツタージャがバトルの才能をあることに。しかし相手はジムリーダー。才能だけで勝てるほど甘くない。ツタージャが負けてもスピアーでバトルには勝てるだろう。しかしツタージャは絶対に自分が負けるとは思っていない。もしも負けたらナナのせいだと思うだろう。つまりツタージャがナナに心を閉ざしてしまうのだ。だから『生まれたてのツタージャで勝つ』という道しか残っていないということも。

 

「……ツタージャ。私の指示に従ってくれるかしら?」

「タジャ(この程度は私一人で勝てるわ)」

「なら勝手にしなさい。でも勝てないと判断したら私に頼りなさい。勝たせてあげるから」

 

 これはマズいな。状況は最悪過ぎる。ナナはツタージャでどうやって倒すつもりなのだろうか。ハッキリ言って今までの中で最高レベルに厳しい。そしてナナの腕がもっとも問われる。

 

「ゴロンダ! ほのおのパンチ!」

 

 ツタージャはステップで避けながらつるのムチで反撃していく。しかし、それがマズかった。ゴロンダにつるのムチを握られて、体を引っ張られて地面に叩きつけられてしまう。

 

「タジャ!(いたっ!)」

 

 それからツタージャが逃げようとするがゴロンダが足で踏みつけてツタージャの動きを封じる。そして手に炎を纏い、殴ろうとしていた。ツタージャっは足掻くがゴロンダから逃れられない。絶体絶命のピンチ。そんな中でナナが静かに口を開いた。

 

「……ツタージャ。メロメロよ」

「タ?(え?)」

「あなたは世界で一番可愛いわ。ゴロンダを魅了してあげなさい!」

「タジャ(うん!)」

 

 それからツタージャが甘えるような瞳でゴロンダを見つめる。するとゴロンダから一瞬だけ力が抜けて、隙間が出来る。ツタージャはそれを見逃さずに脱出。そしてナナの近くに行き、ゴロンダを見る。

 

「ツタージャ。あなた一人じゃ勝てない。だから私に従いなさい」

「ツタッ(うん)」

「メロメロ……厄介な技を」

「タマゴの時から世界一可愛いアイドルを見てきた女の子よ? メロメロの一つも覚えない方が不自然よ」

 

 だからか。ナナはメアが近くにいたからタマゴの時からメアを見ていたツタージャなら相手を魅了する術を本能的に知っている。だからメロメロが使えると判断したのか

「……ふぅ……ツタージャ。二秒後に飛んでリーフストーム!」

 

 ゴロンダが突進してくる。しかしナナの予想の範疇だ、ツタージャ。は指示通りに動いてゴロンダの攻撃を完全に避ける。それで真上から草の嵐でゴロンダを襲う。しかしゴロンダはビクともしない。

 

「弱い! そんな攻撃は効かねぇぞ!

「タジャ!(私の必殺技が……)」

「問題無いわ! ツタージャ! そのまま攻撃を避けて!」

 

 ゴロンダの猛攻をひたすら避けるツタージャ。しかし疲れが見えてくる。ツタージャはつるのムチで反撃しようとするがナナに止められる。一方的に押されるばかりだ。あれではツタージャの体力が持たない。

 

「今よ! 股をくぐり抜けて背中にリーフストーム!」

 

 再びリーフストームが命中する。しかも明らかに前よりも威力が高い。ゴロンダがうめき声をあげる。どういうことだ?

 

「……そのツタージャ。あまのじゃくだな?」

「そうよ。撃てば撃つほどリーフストームの威力は上がる。それで次で決めるわ!」

「悪いが俺の方が速い! ゴロンダ! バレットパンチ!」

 

 瞬足だった。明らかにツタージャの体が反応出来ていない。あれでは避けきれない。もしも当たれば致命傷。一撃でノックアウトだ。どうする……

 

「ツタージャ。避けようと思わないで。相手を睨みつけなさい」

 

 ツタージャがギロリとゴロンダを睨んだ。それによってゴロンダの動きが痺れたかのように止める。あれはへびにらみ。睨んだ相手を麻痺にする技だ。そうか。ツタージャは蛇だからへびにらみが使えるのか。

 

「その一瞬を逃がさない! グラスフィールド! そこからリーフストーム」

「タァァァァァァァァジャャャャャャ!」

 

 足元に草木が覆い茂る。そしてフィールド全体に台風のような草の嵐が舞う。それは物凄い勢いでゴロンダを飲み込み、体をシェイクした。そして嵐が過ぎ去った後には戦闘不能になったゴロンダと無傷で立つツタージャがいた。

 

「……完敗だな。ナナ。君の勝ちだ。さすが話題のルーキー」

「ありがとうございます」

「トレーナーとしての腕は既に並大抵のジムリーダーと同格以上……少なくとも俺より上だな。本当に恐ろしいよ。そういえば色違いのツタージャはなんだったんだい?」

「キンランさんにタマゴで渡されたんです。なんでも悪の組織に非合法な方法で作られた卵とかで……さすがに初戦でジム戦はヒヤリとさせられました」

「なるほど……それで珍しい『あまのじゃく』の特性。さらにリーフストームという大技を覚えていたのか。しかし君が非合法なことをしてなくて安心した」

「はい……さすがにリーフストームを覚えているかどうかは賭けでしたけど」

「とりあえずエリューバッジを渡すよ。それと君にこれを」

 

 目の前でクロバラさんが腕のバンドを取る。そしてナナに手渡す。これは一体なんなんだろうか……

 

「いいんですか?」

「君は俺と違って大物になる。その時に絶対に必要になるはずだ。Zパワーリングが」

 

 Zパワーリング。それはZワザを使うのに必要な道具。まさかこんな貴重なものを頂けるなんて……

 

「それとアクZも渡そう。俺は戦ってないから、明言は出来ないがダークライの役に立つはずだ」

「ほんとにありがとうございます!」

「その代わりと言ってはなんだが、チャンピオンになったらここに来てくれないか?」

「いいですけど……」

「今度は規約に縛られないで本気のフルバトルで手合わせしたいんだ。それで次こそは絶対に勝つ!」

「ええ。でも私も負けませんよ」

 

 ナナとクロバラが硬い握手をする。ナナは三つ目のジムバッジを手に入れると同時にZワザという新たな武器を得たのだった。しかし翌日ナナの元に国際警察がやってくることになる……

 




ナナ (12)

・二つ名
『悪夢姫』

・容姿
髪色『銀髪』
髪型『腰くらいまでのロング』
瞳『赤色』
身長『148cm』
世間からの評価『可愛い部類だが少し近寄り難い雰囲気がある』

・手持ち
ダークライ(相棒)
ムンナ(マスコット&対かくとう,高防御ポケモン)
スピアー(エース)
ツタージャ(New)

・持ち物
ジムバッジ×3
黒いロリィタ服(普段着)
キーストーン(指輪)
携帯電話(必需品)
みかづきのはね(大切なもの)
つきのいし(道具)
Zパワーリング(New)
アクZ(New)

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