目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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幕間2『レジアイスとの戦い』

「シャンデラ! ほのおのうずでレジアイスを包め!」

「シャン~」

 

 炎がレジアイスを包む。しかしレジアイスは瞬きをする暇すら与えずにで炎を凍らせて粉砕する。そして次はシャンデラを凍らせようとれいとうビームを撃つが、光線はシャンデラの体を見事にすり抜けた。その事実にレジアイスは一瞬だけ怯む。もちろんノエルは一瞬の隙の見逃さない。それを見逃すようなら、この場にはいないだろう。

 

「シャンデラ! れんごくで焼き炭にしてやれ!」

「シャァァァアアアアアンンン!」

 

 大きな火柱がレジアイスに襲いかかった。レジアイスはそれに身まで焦がされそうになる。しかしすぐさま炎の柱を凍らせることで対処。ノエルは内心でビビる。シャンデラのれんごくは並大抵のポケモンなら耐えられない。それを余裕を持って凍らせるのは規格外も良いところだ。だが凍った火柱は割れる気配を見せない。ノエルはすぐに事態が深刻だと判断した。シャンデラに再びれんごくで燃やすように指示。しかし遅かった。

 

「レ・ジジ・ジジジジジジジ!」

 

 レジアイスは体を回転させて氷を破壊。しかも傷の一つも受けていない。ノエルはすぐにからくりに気付く。レジアイスは凍った火柱の中で眠って体力を回復させていたということに。つまり『ねむる』という技を使用したのだ。だからダメージは全てリセットされている。レジアイスは追撃をせんとばかりにシャンデラに手を突っ込む。技はれいとうパンチ。もちろんシャンデラは通過させて避ける。しかしノエルだけはすぐにレジアイスの狙いに感付いた。

 

 

「シャ……シャン」

 

 一部のポケモンは物体を通過することが出来る。それはゴーストタイプのポケモンに多く見られる特徴だ。しかしデメリットがないわけではない。使えば使うほど腹が減るのだ。そしてレジアイスはそれを狙ってシャンデラに通過させた状態で手を止めた。シャンデラを空腹で動けなくさせるつもりなのだ。

 

「シャンデラ! レジアイスから距離を置け!」

 

 シャンデラは主人の指示に従い、離れようとする。しかしレジアイスはピタリとくっついて離れない。レジアイスは通過というものの弱点を完全に見破り、シャンデラを離す気はなかった。恐らく数秒もすればシャンデラは空腹でバタリと倒れるだろう。

 だからノエルは敢えて命じた。離れないということは大技をレジアイスは避けきらないということ。これはチャンスだと!

 

「そっちがその気ならこちらも決めるぞ! シャンデラ! ダイナミックフルフレイム!」

 

 ノエルの腕のバンドが光り、シャンデラも輝き始める。そして爆炎を身に纏いレジアイスに特攻。大爆発が起こり、森中が紅蓮の炎に包まれる。しかし見事なタイミングで雨が降り始めて、炎が鎮火されていく。

 

「シャンデラ。お疲れ様」

 

 ノエルは体力を使い果たして戦闘不能になったシャンデラをボールに戻す。レジアイスは相変わらず無傷。しかし明らかに先程よりも弱まっていた。そんな時にノエルの後ろにグソクムシャが現れる。

 

「グソクムシャ! であいがしら!」

「グソクッ!」

 

 グソクムシャの俊足の一撃。それでレジアイスは吹き飛ばされて初めて傷らしいものを負った。そしてノエルがレジアイスに落ち着いて解説を始める

 

「レジアイス。お前は炎技から身を守るために冷気を毎回使用していた。そして冷気というのは冷たい空気のこと。なら周りを温めたら冷気は消えるだろ」

「レ・ジジ……」

「それじゃあ冷たい空気はどこから出ていたのか。恐らくお前の体からだろうな。だから俺はシャンデラでお前の体を温めて体温を上げていった。これでお前はお得意の冷気はつかえないだろうな」

 

 そんな解説を聞きながらレジアイスは電気を巻き起こす。レジアイスには切り札があった。それは『かみなり』だ。自然の大災害の一つの名を関する攻撃は伊達ではない。そしてグソクムシャは電気に弱い本来なら倒すのに充分な威力。しかし不思議なことに落ちたのは軽い電撃。グソクムシャにダメージは殆どなかった。そしてグソクムシャは煽るかのように踊り続ける。

 

「……おきみやげ。シャンデラが退場する前に撃った技だ。やられる前にはなんとしてでも使えと叩き込んでるからな。それによってお前の攻撃は殆ど通用しない。諦めるんだな」

「グソク」

「レ・ジジジジジ!」

「雨を降らせた理由? 鎮火だよ。山火事になったら大変だからな。もちろんそれだけというわけじゃないが」

 

 その時にレジアイスは気付く。グソクムシャの踊りが煽りではないことに。これはマズいと本能的に理解する。すぐさまレジアイスを凍らせようとするが、周りには冷気がない。そしてグソクムシャは踊りをやめた。

 

「グソクムシャ。つるぎのまいは充分か?」

「グソク」

「レジアイス。お前はグソクムシャのであいがしらでも倒れないくらい丈夫なポケモンみたいだな。だから俺も本気で殴る必要があるんだよ。アクアブレイクだ」

 

 つるぎのまい。それは攻撃力を大きく上げる技。さらに天候は雨。雨の時の水技の威力は桁違いに上がる。今のグソクムシャの一撃は最大級の一撃だった。

 水を纏ったグソクムシャがレジアイスに特攻して吹き飛ばす。本来のレジアイスなら冷気により、グソクムシャに触れられる前に凍らせていた。しかし現在はそれが出来ない。だがレジアイスは冷気がなくとも並みのポケモンよりも高い耐久がある。しかしグソクムシャはそれを上回る。グソクムシャの一撃がレジアイスを吹き飛ばすのだ。

 

 レジアイスは必死に考える。グソクムシャに勝つ方法を。そして思い出す。自分達には一つだけ大技が残っていることに。その技を使えばグソクムシャを倒して、逃げられる可能性は高い。しかしデメリットとして当分の間は自分達が動けなくなってしまう。もしも白いロングコートのトレーナーにポケモンがもう一体いたら負ける。しかしいなかったら逃げることが出来て、冷気だって時間を置けば回復する。そしたら二度と負けることはないと。

 

 そしてレジアイスは賭ける。ポケモンがグソクムシャで最後である可能性に。レジアイスは最大の大技を放つ。名前は『はかいこうせん』ありとあらゆるものを破壊する禁断の技。グソクムシャは避けきれずに当たる。それによりレジアイスに勝ちを確信した。

 

 ――しかしグソクムシャは仁王立ちしていた。

 

「随分と舐められたものだな。はかいこうせん程度で俺のグソクムシャがやられるわけないだろ。お前の負けだ。レジアイス」

 

 そしてレジアイスは負けを確信した。自分はこのトレーナーには敵わないと。赤いボールがレジアイスに向かって飛んでくる。レジアイスはそれを避けることなくぶつかる。そして吸い込まれて、ボールは何度か揺れてカチャと音を立てて止まる。

 

 

「レジアイス。捕獲完了。寒いのは二度と御免だな」

 

 ノエルはレジアイスを捕獲。無事に卒業試験を終えたのだった。同時にグソクムシャがガクリと膝をつく。グソクムシャも無敵ではない。ダメージもきちんと負うし、負けることもある。ノエルはグソクムシャに近寄り優しく抱きしめる。

「やっぱりおきみやげをしてもレジアイスのかみなりを受け切るのはキツイか。グソクムシャ。よく頑張ったな。お前は最高の相棒だ」

「グソク」

 

 ノエルのグソクムシャは飛びぬけて強いわけではない。それ故にあらゆる攻撃を余裕で受けているフリをして主人を心配させまいとする。どんなに辛いダメージを負っても瞬き一つしないで余裕を演じる。グソクムシャはノエルがチャンピオンになると確信している。だからこそノエルは舐められるわけにはいかない。そんなノエルのポケモンである以上は上面だけでも強いと思わせなければならないのだ。そしてノエルもそれを分かっている。

 

「安心しろ。俺は絶対にチャンピオンになって俺の夢を叶える。お前の今までを絶対に無駄にしない」

 

 グソクムシャは満足気に頷いた。ノエルはグソクムシャをボールに戻す。ノエルは三値説を信仰している。それ故に個体値厳選等も行うこともある。しかしグソクムシャだけは強いとか弱いとか考えないで選んだ。何故ならコソクムシだった時の怯えた彼の目が幼い時の自分の目に似ていたから……

 

「個体値が全てだ。そんなことは分かってる。でも俺はグソクムシャと大舞台に行きてぇんだよ。俺は誰よりも三値説を信じてる……だけど努力がきちんと報われてるとも信じてる。だから誰よりも努力したグソクムシャはどんなポケモンよりも強い」

 

 ノエルはグソクムシャが自分を弱いと思ってることを知っている。それ故に無茶をしていることを知っている。そして世界で一番強いポケモンだということも知っている。だからノエルはグソクムシャとならチャンピオンになれると確信している。

 


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