目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作:ただのポケモン好き
「……ダークライ。みかづきのはねはあるよね?」
「ソコに……」
「私ね……今日の夜……悪夢を見たんだ」
「ドンナユメだ?」
「『コロシテヤル』と一言だけ聞こえる夢」
「僕も……同ジ夢を見タ」
「みかづきのはね。昨日、ダークライの傍で寝て悪夢を見なかったことから効果は本物と考えていい。それなのに悪夢を見た。つまり、あれは悪夢ではない可能性が高い……か」
悪夢ではない可能性。
つまりなんらかのメッセージか。そんなことが出来るポケモンがいるのか?
「テレパシーと仮定するか。あれがテレパシーによるメッセージだとすると、ここら辺に私達を好ましく思っていないポケモンがいる」
敵意を持ったポケモン。前に会ったパチリスの話では『相当な荒くれものじゃない限りポケモンは人を襲わない』だった。しかし今回は明らかに『コロシテヤル』という脅迫をされている。つまり人に敵意を持ったイレギュラーな野生ポケモン……
「まぁとりあえず今はやきつくすの練習をしましょう。ダークライ」
ナナは鞄からオレンのみを取り出して、そう言った。
それからはひたすら技の練習が始まった。方法はいたってシンプルで地面に置かれたオレンのみを炎で焼く。僕は何度もそれに挑戦して、彼女も傍で見届けていた。
深く息を吸い、炎を出すイメージで吐く。それを何度も繰り返す。しかし炎が出る気配は一切なかった。
そして、そんな僕を見てナナが一言だけ口を開いた。
「そういえばヤミラミは手から炎を出して、やきつくすをしていたわね」
その発言から数秒後に技には遠く及ばないが、小さな炎が出て、焚火くらいなら出来るようになった。また、今日の昼はナナが釣ってきた川魚を串刺しにして僕が出した炎で焼いて食べた。感想としては少し塩かしょうゆが欲しかった。
そして今日の修行は炎が出せるようになったところから進歩はなかった。そして再びの夜。ナナはマイペースなのか、なんの警戒もすることなく機能と同じように眠りについた。
それに対して僕は起きていた。恐らく、またあのポケモンがなにか仕掛けてくるはずだ。それにあのポケモンがなにをするか分からない。ナナに危害を咥えられたら溜まったものではない。僕はナナのポケモンであり、彼女を守る義務があるのだ。
「ムンナァ……(殺す……)」
あのピンクの貯金箱みたいなポケモンが犯人か。すぐに攻撃をしようとする。何者だろうがナナを傷付ける奴は許さない! そう思った時だった。
「ダークライ。待って」
寝ていたはずのナナが起きて僕を静止する。もしかして彼女は狸寝入りをしていたのか! それに対してピンクのポケモンも驚きを見せる。このポケモンもナナは寝ていると思ってたらしい。
「ムンナァァァァァ!(寝ていたんじゃないのか!)」
「あのポケモンはムンナね。夢を食べるポケモン。おそらく私達の夢を食べてからテレパシーでメッセージを送った。だからあの一言だけが記憶に残った……ってところかしら」
「ナナ……ドウスル……」
「とりあえず様子見よ。ここまで人を恨むなんて相当な事情があるはず」
「ムンナァァァァ!(うるせぇぇぇぇよ!)」
「ダークライ。避けて!」
ムンナが突進をしてくる。明らかにスピアーより遅い。僕は余裕を持ってムンナの攻撃を回避する。そして、あやしいかぜで追撃も出来そうだ。しかしナナから追撃の指示は出ていない。それはやめておこう。
「なんて攻撃力……」
「ソウカ?」
「今のは技でもなんでもない体当たりよ。もしも、このムンナが技としてのたいあたりを覚えたら今の三倍の威力は出るわね」
「コワッ……」
「ムンナァ……(ああ、ならこうしてやる)」
「この技はマズい……でもムンナを攻撃するわけにはいかない……ダークライ! これを受け取って!」
そう言ってナナはカゴのみを僕に投げた。僕はそれをキャッチする。それからムンナは欠伸をした。その欠伸と共にナナが倒れこむ。それから僕も強い眠気に襲われた。
「あくび……受けた相手を眠くする技……ダークライ。攻撃だけは……ダメ」
そういってナナは倒れていびきをかいて眠り始める。こちらも一瞬だけ意識を失ったが、気付いたら目覚める。手元には齧ったカゴのみがあった。おそらく眠らされたのだろう。しかし幸いにもカゴのみで起きれたということか。
「人は裏切るぞ。お前もいつか裏切られる」
ムンナが僕に語りかける。憎悪のこもった目でこちらを見ながら……
「ゴミ個体値! 真面目な性格だからいらない! そう言われたことはあるか!」
「……ない」
「いいか。人なんて碌なものではない。ポケモンを道具としてしか見ていないのだ!」
「……お前になにがあった?」
「知りたきゃ教えてやろう。俺は……」
~~~
俺の名前はムンナ。
生まれた場所は自転車の上だった。その時には近くにはウルガモスというポケモンがいた。彼が俺の主人だ。彼と一緒に冒険が始めるんだ。幼い俺はそう思ってワクワクしていた。しかし、そんな期待は一瞬で裏切られた。
『うわ、攻撃がⅤで性格が真面目。くそゴミじゃん……いらねぇ』
そう言われて自転車から投げ捨てられた。それから俺は様々な野生ポケモンに襲われながら日々を必死に生き抜いた。三年が経ってやっと安住の地を見つけた。そんな時に再び人間に会った。草むらで怯える俺にモンスターボールを叩きつけて、捕獲した。そして次の主人はこう言った。
『真面目とかシンクロ要因に使えないから(笑) ゴミポケモン乙。死んどけ』
そう言って、俺はボックスで放置された。周りには様々なポケモンが死んだ目をしてボックスを彷徨っていた。与えれる人口フードを無心で食べる生活。そんな生活が五年続いたある日、俺は見知らぬスーツの男に逃がされた。なんでも『ポケモン愛護管理法違反』だそうだ。
今度の地は見知らぬ地。そこにも様々なポケモンがいた。生きるのにも一苦労。しかしやっとの思いで、俺は俺が普通に暮らせる場所を見つけた。しかし、そこにお前達が現れた。その時の俺は怒りで狂いそうだったよ。トレーナーと仲良く笑ってるお前の存在が!
~~
「なんだよ……それ……」
ムンナの話に思わず啞然とした。あまりに鬼畜過ぎる。そんなことがまかり通っていいのか。僕は怒りに震えそうだった。許せない。いくらなんでも酷すぎる。
「なんで俺ばかり、こんな目に遭うんだよ! 俺がなにをしたって……」
「ダークライ。もう攻撃していいわ。あやしいかぜ」
そんな時だった。氷のように冷たい声が響いた。間違いなくナナの声だ。しかも今まで聞いたことのないくらい冷たい声。
「早くそこのムンナにあやしいかぜを撃ちなさいって言ってるのよ!」
フラフラとした足取りで睨むようにムンナを見ながら僕に指示を出す。僕は首を横に振る。そうするとナナはさらに強い口調で言った。
「ダークライ! あやしいかぜ! さっさとムンナに攻撃しなさい!」
その時のナナはいつもの優しいナナと違って、とても怖かった。
The補足
『ポケモン愛護管理法』とはポケモンを守るための法律である。一般的な虐待はもちろんのこと、ポケモンが傷付いてるいるにも関わらず回復をさせなかったりした場合も罪に問われる場合もある。そして作中のようにボックスにポケモンを長年の放置も厳罰の対象である。