目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。 作：ただのポケモン好き
グソクムシャが殴りかかる。ラティオスが上に回避。それに対してスピアーがミサイルばりで援護するが、ラティオスは素早く、当たらない。
「ノエル！ どうする？」
「あいつにりゅうせいぐんを使わせる！ そうすれば技の威力が落とせる！」
「りゅうせいぐんに耐えられる保証は？ ポケモンは大丈夫でも私達が巻き込まれて死ぬ可能性もあるわ！」
「じゃあどうするんだよ！ 俺のグソクムシャもバテてきたぞ」
あれから数分が経った。ラティオスは逃げと回避に専念していて、こちらの攻撃は当たらない。それに当たったとしても……
「……それを考えてるのよ！」
「ああ！ そうかよ！ なら俺が大きい一撃を叩き込んでやるからグソクムシャをラティオスの前に飛ばせ！」
「……あれは切り札よ！」
「今やらないでいつやるんだよ！」
「必ず仕留めなさいよ！ ムンナ！ サイドチェンジ！」
「ンナッ（了解）」
その瞬間、ラティオスとムンナの位置が入れ替わってグソクムシャの目の前に現れる。そしてグソクムシャが手を振りかぶって一気に殴り込む。
「グソクムシャ！ であいがしら！」
ドシンと重い一撃がラティオスに叩き込まれ、一気に壁に練り込み。もちろんナナもラティオスに生まれた一瞬の隙を見逃さない。
「スピアー！ 追撃のメガホーン！」
見事な連携攻撃。それでラティオスを一気にダメージを与える。しかしラティオスはビクともしないで紫色の光線を放つ。技名は『りゅうのはどう』。ドラゴンタイプの基本技と言っても過言ではない。スピアーに当たりそうになるがグソクムシャが間に入り、スピアーの代わりに受ける。そして気にするなという表情を見せる。
「ナナ。これで手が一つ潰れたぞ」
「大丈夫。手はまだある。それにレジアイスだってまだ残ってるでしょ？」
「そうだが……出すとヤバいことになるぞ？」
「とりあえず、まだ全ての手を明かしたわけじゃない。それに私にも切り札はあるしね」
「まさか……」
「Ｚワザ。意識を手放す覚悟をしたら一発は撃てるわよ？」
「それはやめてくれ。そんなナナは見たくないし、三日は昏睡状態になるだろ」
「ここで殺されるよりマシでしょ？」
「そうならないように俺が倒してやるよ！ グソクムシャ！ であいがしら！」
再びグソクムシャがラティオスの元に近づき、殴りかかる。しかしラティオスは簡単に躱す。ラティオスは速すぎて先程から攻撃が殆ど当たらない。
「そういえばノエルのグソクムシャ。ボールから出た直後じゃなくてもであいがしらを撃てるのね！」
「そう呼んでるだけだ！ 実際は不意打ちにならないから普通に見切られるし、出た直後より速度も落ちる！ ただ不意を突かなくて良いならであいがしらと同じ威力で殴ることは理屈上なら出来るだろ？」
「それなら一緒だけ私が気を引く。そしたらであいがしらの要領で拳をグソクムシャに連打させられないかしら？」
「やってみよう」
「ムシャ（了解した）」
連打って……つまり某ジャンプ漫画のオラオララッシュをグソクムシャでやるのかよ。ナナもえげつないことを考えるな。でもそれなら当たればラティオスに相当なダメージを……
「いくわよ！ スピアー ミサイルばり！」
スピアーがミサイルばりで牽制をしていく。しかしラティオスは容易く飛んで回避。しかしナナは完全に予想済みのようだ。そして指を鳴らす。その瞬間にムンナが眩い光を放つ。ナナが使い道はないだろうが、あっても困らないよねということで覚えさせた『フラッシュ』という技。まさか役に立つ日が来るとは……
「サンキュー！ グソクムシャ！ 頼んだぞ！」
「グソク（任せろ）」
しかしラティオスは一瞬だけ怯んだだけで、すぐに動こうとする。だがラティオスは動けない。何故ならスピアーから出された糸に縛られているから。
「グソククククククククククゥゥゥ！」
グソクムシャがラティオスをタコ殴りにして一気に畳み掛ける。しかし途中でラティオスがこちらを睨み、一気に加速。そして爪で引っ搔きグソクムシャに手痛い一撃を喰らわせる。技はドラゴンクロー。それによってグソクムシャがボールに戻っていく。
「ノエル！ なにを……」
「ききかいひだ！ 頼んだぞ！ レジアイス！」
「そういえばグソクムシャにはそんな特性があったわね……ていうか寒いわよ！ ヘクチッ」
「安心しろ！ 俺も同じだ！」
ナナが可愛らしくクシャミをする。しかしボールの中にいても寒い。これがレジアイス。なんてポケモンだ……
「レ・ジジジジジジジ」
言葉が分からない。レジアイスの喋ってる言葉がまったく分からない。少し他のポケモンとはワケが違うのか。
「ナナ！ くるぞ！」
「スピアー！受止めなさい！」
ラティオスが瞬速で動き、スピアーにドラゴンクローを仕掛ける。しかし間一髪でスピアーがお尻の針で受止める。だが、力負けして吹き飛ばされてしまう。
「……ナナ。すまん。少しだけミスをした」
「え？」
「足元を見ろ」
「ちょっとなにをしてるのよ！」
ナナの足首から下が凍っていた。ナナが動こうとするが氷から足が抜けずに身動きが取れない。どうしてそんなことになった！
「……俺達が暴れまわって壁を破壊しただろ？」
「そうね。それで水が流れ込んできて……今の水位は足首くらいだし大丈夫かなと思ってたけど……まさか！」
「ああ。レジアイスがボールから出たことで水が凍り、俺達は氷の足枷を嵌めることになった」
「仕方ないわね！ これは貸しよ！ ツタージャ！ お願い！」
「タジャ（任せて）」
ツタージャがボールから出てきてナナ達の足元の氷を砕く。それでナナ達も身動きを取れるようになる。身動きが取れるようになると同時にナナはツタージャをボールに戻す。しかし地面が凍ったのは厄介だな……これじゃあ滑る。
「レジジジ・ジジジジ！」
レジアイスがラティオスに向かって、れいとうビームを放つ。しかしラティオスは綺麗に避けて吠える。すると暗雲が現れて、一気に雨が降り始める。それに対してナナの顔色が一気に悪くなる。ノエルもラティオスの狙いを察したのかレジアイスをボールに戻す。
「……最悪ね。あのラティオス。完全に私達を殺しにきてる」
「ああ……恐らく逃げ回っていたのはずっとレジアイスが出てくるのを待っていたんだ」
そういうことか。レジアイスは辺りの水を瞬時に凍らせるくらい冷たいポケモン。そんなポケモンがいる中で雨が降られたら……
「それに水位が一気に膝まできてるぞ」
「一回の雨で水位ってそんなに上がるものかしら？」
ナナが少しだけ考える。そしてしばらくして叫んだ。
「違う！ ラティオスは逃げ回りながら他のポケモンに『あまごい』をするようにテレパシーで命じていたのよ！ それに下手したら壁の破壊も……」
「なんだって！ いや、たしかに辺りにダークポケモンを放ったって誰かが言ってたような」
「あのラティオス。この基地と一緒に沈めて私達を水死させるつもりよ！」
水死だと！ それなら今すぐ逃げないと手遅れになる。そしてラティオスは完全にやる気だ。恐らくナナ達を逃がしてくれない。
「ナナ。どうする？」
「あのラティオスは逃がしてくれるのかしら？」
「さすがにありえないだろ」
「なら水位が上がる前に倒すしかないでしょ？ ノエル。ポケモンは？」
「水があるからシャンデラは無理。パチリスは電気技を使おうものなら俺達が巻き込まれる。そしてレジアイスは……」
「さすがにこの水位の水が凍ったら破壊は難しいわよ？」
そんな時だった。背後からシャドーボールが飛んできてラティオスを吹き飛ばした。それから美しい歌が聞こえて、ラティオスをオレンジ色の髪をしたポケモンが一気に殴り飛ばす。そしてバレリーナのように一回転して、こちらに微笑む。
「メロエッタ？ いや、違う！」
しかし一瞬でメロエッタは消えてスピアーが現れる。あれは幻惑か？ そういえばムンナの進化系のムシャーナは夢を現実にすることで幻惑を見せると聞いたことがある。ムンナはムシャーナに近づきかけているのか？ そしてムンナがナナに寄ってきて少しだけ話しかける。どうやらムンナに策があるようだ。
「ンナ……ンナ……？（ダークライなら勝てるか？）」
「もちろん。ダークライの強さはあなたが一番よく知ってるでしょ？」
「ンナ（なら任せた）」
そしてスピアーの時間稼ぎは終わり、一気に吹き飛ばされて戦闘不能まで追い込まれる。そしてムンナが願う。僕の体が光に包まれる。壊死した右腕が治る。これは『いやしのねがい』なのか？ まさか見て、この場で覚えたと言うのか！
「ムンナ。あとは任せなさい。勝って帰るわよ！ ダークライ！」
「アア！」
ムンナの想いも無駄にしない。ナナを殺させはしない。ラティオスも倒す。それが今の俺の仕事だ。
「絶対に勝つわよ！」
「当たり前だ！」
（ムンナの想いに答えてみせるわよ。ダークライ！)
（ムンナのためにも頼むぞ。ナナ！）
その時だった。体から一気に力が湧いてくる。今までのナイトメアシフトの比ではない。それに体が膨張していく。一体なにが起こっている？ そんな中でラティオスが危険と判断したのかこちらに攻撃を仕掛けてくる。
「させねぇよ」
ノエルがグソクムシャを出して攻撃を見事に受け止めた。しかしラティオスはりゅうせいぐんでグソクムシャを蹴散らす。こちらにも隕石が流れ弾で落ちてくる。だが問題ない。僕は右腕で隕石を容易く払い、軌道を逸らしていく。
「大きさは２ｍくらいか？ しかし前より黒いな。それに白い頭は髪に近くなっているし、目も赤い。まるでナナみたいな姿……これはメガシンカか？ でもメガストーンがないよな。それに闇のベールは一体……」
ノエルが考察している。どうやら見た目も大きく変わっているらしい。もっとも自分では見えないからどうなっているのか分からないが……
「これがダークライの世界……見ている景色がダイレクトに見えるわね」
「まさかキズナ現象！ あれはゲッコウガだけのものではないのか！」
「なんでもいい。ラティオスを倒す！お願い！ ダークライ！」
キズナ現象でもなんでもいい！ さっさと倒そう！ ナナ！
The補足
というわけで前書きで言いましたように『ダークライの変貌』という独自設定を入れさせていただきました。ちなみに24話でダークライには別の姿があることはサラッと出していたりします。さて、最後のダークライの変貌。少しだけキズナ現象とは違いますが、結果としてはかなり近いものですので『きずなへんげ』だと考えていただいて問題ありません。
キズナ現象は原作だとアニメが初出でサトシのゲッコウガのみ起こりました。
そして一部では『石を使わないメガシンカ』という考察もあります。
またデメリットとしてポケモンがダメージを受けるとトレーナーもダメージを受けたり、少しでも気持ちがズレると発動しなかったりとかあります。今回はムンナの想いに応えたいという気持ちが一致したから出来ましたが、一度出来たからと言って完全に使いこなせるようになる代物ではありません。
今回のダークライの場合は理屈で言えば『気持ちが一致したことでナナがやみのエネルギーを肩代わり出来るようになった』ものです。そのため普段なら耐えられない出力をナナと分散して負担することで耐えられるようにしています。そのためキズナ現象とは似て非なるものです、なのでラティオス相手に使ったのは厳密に言うならば『ナイトメアシフト・５０％』となります。しかし姿の変貌,ナナとの視界や痛覚の共有などのキズナ現象に見られる特徴があることから、作者もキズナ現象と考えて書いていきますし、作中でもそのように扱う予定です。