目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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56話 漂流

「ティィィィィィアアアア!」

「ラティオス。あなたは強い。だけど私のダークライには勝てないわ! あやしいかぜ!」

 

 右手を振って、一気にラティオスを突風で吹き飛ばす。威力が桁違い。広範囲の風は素早くても回避は不可能。これが風というものだ。

 

「続いて、やきつくす!」

 

 左手で炎を巻き起こす。風に持ち上げられた青い炎は渦となり、ラティオスを包み炙っていく。ラティオスを抑えて間に水位を見る。水位は既にナナの腰まできている。これはマズい、さっさと倒さなければ!

 

「ナナ! 一気に決めるぞ!」

「ええ! ノエル! いくわよ!」

 

 ナナの考えがダイレクトで伝わってくる。ここでZワザをやるんだな。あくのはどうでも充分かもしれない。しかし万に一つでもラティオスが耐えたら最悪。今は一刻も争う状況。だからこそオーバーキルになろうが絶対的な力で倒さなければならない。

 ノエルがナナの手を握る。そしてノエルのZパワーリングで輝き、ナナのZパワーリングも輝き始める。ナナとノエルも既にZワザを使っていて二度目は無理だ。でも二人で一緒なら一度だけ撃てる。

 

「私達の全身全霊のゼンリョクよ! 逃れようのない闇の飲まれて、負けを認めなさい!」

 

 体から沸き立つエネルギー。やみのエネルギーとは明らかに違う。温かいエネルギーだ。それを流れに任せて一気に放つ。今の僕達に出来る最高の一撃。これなら確実にお前を倒せる!

 

「「ブラックホールエクリプス!」」

 

 暗黒の玉。それがラティオスを吸い込み、一瞬で粉砕する。言葉通りのブラックホール。一度吸い込まれたら脱出は不可能。そして逃れることも出来ない。チェックメイトだな。

 

「……終わったわね」

 

 技が終わると同時にラティオスがバタッと倒れてくる。完全に戦闘不能だ。それと同時にナナとのシンクロも途切れて、姿が元に戻る。さすがにラティオスはしばらく動けないだろうな。そしてナナは僕をボールに戻して、驚きの言葉を発した。

 

「ねぇノエル。私のポケモンをお願い……」

 

 ナナはノエルに僕以外の三つのボールを預ける。それに対してボールの中からムンナ達が驚きの表情を見せる。

 

「ナナ! なにを!」

「このラティオス。放っておいたら死ぬわ。だから私はテレポートの使えるポケモンを探してくる」

「待てよ!」

「もしかしたら間に合わないかもしれない。だからムンナ達をお願いね?」

「このラティオスは俺達を殺そうとしたんだぞ! そこまでやる理由があるのか!」

「当たり前でしょ! どんなポケモンだとしても死んだら悲しむトレーナーがいる! だからラティオスを見殺しにする理由にはならないわ! 私は大丈夫よ。ダークライがいるもの」

 

 水位は既に胸まである。完全にこれはキツイな。それでもナナはラティオスを背負って歩き出す。これは間に合うのか……

 

「……なにを言っても無駄だな。ナナ。必ず生きてラティオスを助けて帰って来いよ!」

「もち……きゃっ!」

「ナナ! 俺の手を!」

 

 そんな時だった。一気に壁が壊れて水が流れ込んでくる。それにナナは攫われた。ナナもノエルの手を掴もう必死に手を伸ばすが、届かない。ナナは広い大海原に投げ出される。それでもナナは諦めずにラティオスを背負ったままバタ足をして海面を目指す。途中で鞄から手当たり次第に色々なものを投げていく。しかし途中で呼吸が続かず、ナナの意識が飛ぶ。

 

「ナナ!」 

 

 僕はボールから出てナナを抱き抱える。そして、そのままナナだけを抱きかかえて海面を目指そうとする。しかしナナが朦朧とする意識の中でぎゅっと俺の胸を掴む。

 

「ラティオスを……見捨てないで」

 

 ああ! 仕方ねぇな! 僕は転回してラティオスの体を空いてる方の手で掴む。そしてラティオスをなんとか拾う。想像以上に重いな。そして必死に上を目指す、ラティオスの体が重くて殆ど上がらない。ラティオスを見捨てればナナだけなら助けられる。でもナナは望まない。二人とも助ける方法を……

 

「ホェェェェェェェ」

 

 そんな時だった。目の前にホエルオーが現れて僕達を一気に飲み込んだ。もちろん抵抗しようとした。だけど間に合わない。成す術もなくここで終わりか……

 ああ……もう少しナナと旅をしたかったな……そんな時だった。声が聞こえた。

 

「海底洞窟に連れていくが構わんか? 漂流者」

 

 気が付いたら空気もある。それに地面はピンク色の柔らかいなにかだ。僕達は一体どこにいるのだろうか?

 

「え?」

「吾輩の体内なら空気はある。少しは生き長らえられるだろう」

 

 そういうことか! ホエルオーは餌だと勘違いしたわけじゃない。僕達を助けようと口の中に入れてくれたのか。つまりここはホエルオーの体内……

 

「空気のある場所ならどこでもいい!」

「了解した。しかしお主のトレーナーに感謝することだな」

「え?」

「あの娘が海に様々なものを投げてくれねば気付かなかった。あの娘が投げたものの中に食材があって、匂いに惹きつけられたら偶然見つけたのだからな」

「……なんで助けてくれた?」

「困ってる人がいたら手を貸してやるのは野生ポケモンとして当然だろ」

 

 優しいホエルオーで良かった。そんな中でナナが水を吐いて、目覚める。ナナが無事で良かった!

 

「ゴホッ……ゴホッ……ここは?」

「ホエルオー……」

「ありがとう。ここはホエルオーの腹の中……私達はホエルオーに助けられたのね」

 

 いや。随分と察しが良いな! まぁナナなら朝飯前なのだろうが

「バッグは全て流されて手ぶら。あれ? これは?」

 

 ナナはホエルオーのお腹の中で青色のボールを見つけた、これは一体……

 

「ダイブボールね。これで適当な水ポケモンを捕まえれば帰れるかしら?」

「エ?」

「恐らくホエルオーは地上まで送ってくれないわよ。ホエルオーを欲しいトレーナーは山ほどいる。だから自衛のためにホエルオーは絶対に島とかに近づかないの。連れていってくれるとしたら海底洞窟辺りかしら?」

「ホエェェェェェ(察しが良くて助かる)」

「正解みたいね。そして海底洞窟ってことは、そこから脱出する手段も必要になるわ。だから水ポケモンを捕まえて、そのポケモンの力を借りて出るわ」

「なるほど……」

「ただ手元にあるのはダイブボール一つ。チャンスは一度だけ……あああああ!」

「ナナ! どうした!」

「ダークライ! 大変よ! 流されたってことは『みかづきのはね』が無くなったのよ!」

 

 え? 待て。それってマズくないか? 間違いなくヤバい。みかづきのはねで今までナナは僕が外にいても悪夢を見なかった。しかし無くしたとなると、もしもナナが僕の傍で寝ようものなら……

 

「まぁボールに入っていれば特性のナイトメアは発現しないのは確認済みだけど……色々と不便ね」

「……ソウダナ」

「あ、鞄あったわ。ホエルオーが一緒に飲み込んだみたい。それに中のものも近くに散らばってるわ」

 

 いや、あるんかい! さっきの心配を返せよ!

 

「でも捕まえるのは水生ポケモンだし、モンスターボールがあってもダイブボールを使わせてもらうけどね」

「ン?」

「ダイブボールはボールの中が水で満たすことが出来るの。だからコイキングやトサキントといった水生ポケモンはダイブボールで捕まえましょうねという話よ。まぁあくまで満たすことが出来るだから普通のボールのように水がない状態でも使えるけどね」

 

 なるほど。ボールにもちゃんと役割ってあるんだな……

 

「まぁ基本的にモンスターボール以外は高いし、滅多に市場に出回らないからモンスターボールを使うのが殆どよ」

 

 ナナはそんな話をしながらラティオスの方へと向かう。ラティオスは一向に目を覚ます気配はない。ナナはラティオスを起こさないように気を遣いながら体を調べていく。

 

「やっぱり傷が相当多いよね。ダークライ。きずぐすり探してきてくれる?」

 

 ナナが鞄を逆さにする。バッグからはなにも出てこない。そして少し目線を向けると様々な道具が錯乱している。

 

「道具が全てバッグから落ちたのよ。恐らくホエルオーも一緒に飲み込んだからあると思うのだけど……」

「コレカ?」

「そうそう。ありがとう」

 

 ナナにきずぐすりを手渡す。ナナは手際よくラティオスの傷を治していく。そしてある程度の治療を終えて、自分のスカートを破って包帯代わりに巻いて終わらせる。

 

「ナナ……」

「気に入ってた服だけど良いのよ。服なんて買えばいいのだから」

 いや、その……かなり派手に破いたものだから太ももが露出されて目のやり場に困るというか……

「でもラティオスも相当な無理をしてたみたい。恐らく数日は目を覚まさないでしょうね。あそこまで攻撃を叩き込んだのだから無理はないか。それとダークライ。右腕を見せなさい」

「……?」

「いやしのねがいで回復させたって言っても傷の確認くらいはしとくわよ。ポケモンの技で正式な治療じゃないし、傷口が開く可能性もあるのだから」 

 

 もっともだな。僕はナナに右腕を見せる。そしてナナはまじまじと見る。なんか少しだけ恥ずかしいものがあるな……

 

「完璧に治ってるわね。さすがムンナ。でもダークライ。絶対にナイトメアシフトの100%だけは使用しないこと。やるにしても40%に抑えなさい」

「ナナ……」

「今度ナイトメアシフトで自損することがあったら二度とバトルには出さないから覚悟しておきなさい」

「スマン……」

「それはそうとよく頑張ったわね。少しぐちゃぐちゃになったけどポケットに入ってたポフィンでも食べる?」

 

 ナナがポフィンを渡す。海水に濡れてぐしょぐしょだ。でも少しだけお腹も空いた。僕はナナに遠慮することなくナナからポフィンを受け取り、口に含む。少し塩味がするし、濡れてて感触も最悪だ。でも少しだけ甘味もあって優しい味がする……

 

「ホエェェェェェ(ついたぞ)」

「ホエルオー。ありがとう」

 

 ホエルオーが口を開き、眩い光が差し込む。ナナはラティオスを必死に背負いながら砂浜へと降りる。そしてホエルオーは僕たちが降りたことを確認すると去っていった。

 

「光はコケによるもの……そして砂浜を少し歩くと岩場になって奥に洞窟」

 

 ナナが砂浜に指で図を書いていく。まるで岩に囲まれた監獄だな。そして出口は目の前の海から泳いで出るしかないと。

 

「風がないことから、あそこの洞窟は地上に繋がってないと考えてもいいわね。そして空気はある。ただ食料は無いから長い滞在は不可能。ダークライ。やきつくすで炎を出してもらってもいいかしら?」

「マカセロ」

 

 僕は火を起こす。そしてナナが適当なものを燃やして焚火にする。それから鍋に少し細工をした後に海水を汲んできて沸かし始める。

 

「よいっしょ……」

「ナナ!?」

 

 ナナが目の前に豪快に服を脱いだ。そして服を鍋に被せていく。ナナは完全に下着姿。こればかりはさすがに目のやり場に困るで済むような話じゃない。

 

「布はなかったから服で代用。これで真水の確保……あとは脱出のための手段だけど……ていうかダークライ。顔を赤くしてどうしたの?」

「ソ、ソノ……」

「ポケモンが人間の体に反応してるんじゃないわよ……今は非常事態。慣れなさい」

 

 ナナの察しが良くて助かるというか……プライドがズタボロにされたというか……なんというか複雑な気分だ。ていうかナナの裸体に反応してることに気付いても顔を赤くしたり、照れたりするどころか軽くあしらわれてしまった。

 

「とりあえず少し様子見に泳いでくるわ。待ってて」

 

 そしてナナが下着姿のまま海に飛び込んだ。数分してからナナが海面に浮上してくる。

 

「……ぶはっ! とりあえず潜ったところ、コイキングやクズモーが多かった。あと少し大きな影もチラッと見えたから、もしかしたらドラミドロもいるかも! それに深さもあるから泳いで出られるものじゃない。つまり現実的な脱出案としてはクズモーもしくはドラミドロの捕獲になるわ。まぁ頑張ろうー!」

 

 ナナが明るく言う。そして僕達の漂流生活が始まろうとしていた。そういえばドラミドロって縄張り意識が強くて、自身に近づくものを見境なく攻撃する凶暴なポケモンだよな?

 果たして僕達は生きて帰れるのだろうか……

 




少しリアルの方が立て込んでしまったので、次の更新は11月5日になる可能性が高いです。すみません。
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