目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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58話 脱出

 僕は水に手を入れる。ナナはボールを構えて戦闘準備をしていく。正直に言うと作戦は極悪非道。最悪も良いところだ。ナナ曰く昔から水ポケモンを呼び出すならビリリダマ漁の一択らしい。しかし我々も危険な状況。手段を選ぶ余裕はない。少々荒いが許せよ!

 

「ダークライ! 10まんボルトよ!」

 

 キンランさんとの修行で教えてもらった技は多い。その中でも一番最初に教わったのは10まんボルトだ。海は電気を通す。そして水タイプのポケモンは電気に弱い。だから海に10まんボルトで電気を流して、ポケモンを一網打尽にする。

 

 しばらくすると戦闘不能のクズモーやコイキングがプカプカと浮かんでくる。それも数体ではない。数百体の規模だ。しかし改めて思うとやってることは悪役だよな。もしかしたら僕達は悪役になって好き放題に生きるのが一番の幸せなのかもしれない……

 

 しばらくすると目当てのドラミドロも浮いてくる。しかし戦闘不能だ。たしかタイプはどくとドラゴンで電気技は高価抜群ではないと思うのだが……

 だけどナナは浮いてくるドラミドロには目もくれない。まるでなにかを待ってるようだ。

 

「私達が狙うのはここら辺のヌシよ。折角なら一番の大物を狙いましょう」

「ヌシか……」

「大丈夫。ここまでポケモンを倒してヌシが黙ってるはずがないわ。あのトロピウスの時もそうだったもの」

 

 ナナはいつの日か戦ったトロピウスクラスのポケモンを狙っていたのか。まぁヌシを狙うというのはそういうことだ。それなら少しは警戒しないとな。あのトロピウスは一人でZワザを使ってきた。ヌシならそれに相当するなにかがあるはずだ。

 

「ドラァァァァァァ!(妾のナワバリでなにをしている!)

 その時に大きなドラミドロが現れた。それは大きく、僕の二倍近くの体調がある。あれは相当強いな。僕はナナの方を見る。ナナは戦う気だ。どうやら捕まえるのはこのドラミドロに決めたらしい。

 

「ドラァァァァァァア! (溶かしてくれる!)」

「ダークライ。払いなさい」

 

 毒の爆弾が飛んでくる。技はヘドロばくだん。もしも当たれば育ってないポケモンなら毒で一晩は動けなくなるかもしれない。それどころか体が溶けるかもしれない。それほどまでの威力だ。僕はそんなヘドロばくだんを当たる前に手を右に振るい、風圧で軌道を変えて弾いた。あやしいかぜの要領で風を起こしただけだが。

 しかし威力が前よりも上がっている。ナイトメアシフト8%の状態でこれだ。恐らくラティオスとの戦いでレベルアップしたな。

 

「ド、ドラァ(な、なに……)」

「……遅イ」

 

 僕はドラミドロの背後にいた。ドラミドロは僕が喋るまで背後を取られたことに気付かなかった。僕は迷わずシャドーボールでドラミドロを吹き飛ばして地上に飛ばす。しかしドラミドロは普通に起き上がり、普通に浮いて空気の中を泳いでいいた。てっきり地上に出たら身動き一つ出来なくなると思っていたんだが。

 

「ダークライ。水生ポケモンは普通に空を飛ぶわよ。でも個体次第だけど飛べて数分が限界。それに水中よりも動きは遅くなる」

 

 ポケモンってすげぇな。でも数分か。正直に言うとバトルで使うには少し厳しいな。たしかに思い返してみればアズマオウやネオラントといった水生ポケモンは見たことがなかった。恐らくそういう背景もあるのだろうな。

 

「ドラァ!(勝ったつもりか!)」

 

 今度は紫色の光線だ。これはラティオス戦で見た技。名前はりゅうのはどう。しかしラティオスと比べても劣らないくらいの高威力。

 

「特性は『てきおうりょく』みたいね。自分の同じタイプの技の威力が大きく上がるわ。まぁドラミドロのてきおうりょくは少ない珍しい特性だけど目撃例がないわけじゃないわね。まぁヘドロばくだんの時から、そんな気はしていたけど」

 

 僕は迷わずあくのはどうで迎え撃って、りゅうのはどうを相殺する。そして闇の大玉を作り、そこからマシンガンのようにビー玉サイズの闇の玉を飛ばしていく。ドラミドロも危険を察知して避けようとするが、そんな簡単に避けられるものではない。闇の玉は見事にドラミドロに当たり、深い眠りに落とす。

 

「ダークホール。ナイス判断よ!」

 ドラミドロはドスンと地に落ちてぐっすりと眠る。それもスヤスヤと。しかしおかしい。僕の特性はナイトメア。だから悪夢を見るはずだ。しかしドラミドロは悪夢をみている様子はない。もしかして僕の特性が消されたのか?

 

「……おかしいわね。いえきやスキルスワップは受けてない。それなのにダークライの特性が発動しない?」

「アア……」

「まぁいいわ。とりあえず捕まえましょう」

 

 ナナはダイブボールを寝ているドラミドロに投げる。しかしボールは弧を描いて壁にぶつかる。完全に忘れていた。ナナは運動音痴。狙った場所にボールを当てられないということを。

 

「……ごめん。ダークライ」

「……」

 

 さすがに寝ているポケモンにボールを外すなよ……ナナは急いでダイブボールを拾ってくる。幸いにもボールは壊れてなさそうで。ポケモンにも当たっていないからもう一度使える。そしてナナは寝ているドラミドロに近づき。優しくボールで触れる。そうするとドラミドロはボールに吸い込まれて、何度かボールが揺れる。やがてカチッという音がしてボールの揺れが止まる。もうこれからはボール投げないで素直に直接触れてくれ……

 

「ドラミドロ。ゲットね」

 

 随分とあっさりとしたゲットだったな。これは強くなったということで良いのだろうか。ドラミドロも弱いわけではないと思うが……

 

「やっぱり野生ポケモンじゃ相手にならないわね。ポケモンはトレーナーが育てて、適切な指示を出すことで何倍も強くなる。野生ポケモンなら伝説や相当優秀な個体じゃない限りは、こんなもんね」

 

 まぁそれもそうか。もしも今のドラミドロにトレーナーがいたら苦戦は間違いなかった。技の威力も低いわけではない。むしろ野生であの威力なのだ。トレーニングもしないであれだけの威力を出せるのだ。そう考えるとゾッとする。そんな強いドラミドロはナナのポケモンになった。もしもしっかり育てたら……

 

「とりあえずドラミドロ。出てきなさい」

 

 ナナがドラミドロのボールを投げる。そうするとドラミドロが怒った様子で出てきた。それもそうだ。いきなりナワバリを荒らされて、捕獲された。怒るなという方が無理な話だ。

 

「ダークライ。頼んだわよ」

「ワカッタ」

 

 僕はドラミドロの元に行く。まずはドラミドロと和解しなければ……

「ドラミドロ。話を聞いてくれ」

「……妾を倒して捕まえる実力。それは確かなものだと認める。しかし貴様らは妾の大切な民達に手を出した。だから嫌いだ」

「あれにはワケがある。僕達はここから出て街に行きたい。そのためにドラミドロの力が必要だったのだ」

「それなら一匹だけ捕まえればいいじゃろ! ここまでやる必要はないだろ!」

 

 うん。ごもっとも。

 だけど僕達はそうする以外の方法が分からなかった。それに……

 

「彼女はチャンピオンになる。だからこれから一緒に過ごすポケモンが並大抵のドラミドロというわけにはいかなかった」

「……そんなの、ここから脱出したら逃がせばいいだろ」

「ナナはそんなことはしない! 絶対に自分で捕まえたポケモンを無責任に逃がしたりしない! ナナは一度捕まえたポケモンをお絶対に手放せない! だから強いドラミドロじゃないとダメだったんだよ!」

「理解不能じゃ……だが言いたいことは分かった。妾の背中に乗れ。街までは妾が送ってやる」

 

 ドラミドロが背中を見せる。これは乗れということだろう。しかしナナは動かない。

 

「ドラァ?(どうした?)」

「ごめんなさい。ここのラティオスが目覚めるまでは離れられないわ」

「ドラ……(ボールに戻せばいいじゃろ……)」

 

 僕はナナとドラミドロの間に入って今までのことを説明する。ここに遭難したこと。ラティオスが自分のポケモンではないということ。その他諸々を……。しかし話しているうちにラティオスが目覚めて、僕達を軽く見て、ドラミドロの姿を確認すると一瞬で海に潜って去っていった。ナナはそれを啞然としていた。

 

「……求めていたわけじゃないけど、お礼の一つくらいあると思っていたわ。まぁなんでもいいけど」

 

 そしてナナはすぐに気を取り直してドラミドロに近づく。

 

「そういうわけでドラミドロ。用は済んだから私達を外に運んでくれていいかしら」」

「ドラァァァァァァ(早く乗れ!)」

「ありがとう。それとダークライもボールに戻って」

 

 ナナが鍋に乗せていた服を取って着る。もうボロボロだ。そろそろ新しい服を買う時期か。とりあえず僕はナナに言われた通りにボールに戻る。ナナはドラミドロに駆け寄り、体に抱きつく。振り下ろされないように力強く。

 

「それじゃあ頼んだわよ! ドラミドロ!」

 

 ドラミドロが一気に海底に潜る。そして海を猛スピードで泳いで海上に浮上。ナナの体に太陽に照らされる。やっと出られた! 外の世界に!

 

「あそこはカイヨウシティ! ここは北西の海ね! そのままカイヨウシティ……あそこの大都市に行ってちょうだい!」

 

 ドラミドロはそれに従って猛スピードでカイヨウシイを目指す。まるで水上バイクに乗っているかのように速い。そしてカイヨウシティの浜辺に到着して、ナナが浜辺に降りる。周辺には人がいてザワザワという声がする。

 

「……ナナ?」

「ナナはゴォー団を襲撃した結果死んだんじゃ……」

 

 野次馬から様々な声がする。世間でナナは死んだことになっているのか。そういえばゴォー団のアジトに乗り込んだが、あの後はどうなったんだろうか。

 

「……少し新聞を借りても良いかしら」

 

 ナナは近くの人から新聞を拝借して目を通す。まず最初にナナ死亡という情報。次にカラマネロを除く全てのゴォー団の幹部を捕縛したという情報。そして最期に……

 

「……噓でしょ」

 

 メアがゴォー団に拉致されたということが書かれていた。メアはカラマネロに洗脳されて拉致をされたと書かれていた。もっと細かいことはキンランさんやノエルといって当事者に聞いた方が良さそうだ。

 

「ありがとう」

 

 ナナは新聞を返す。しかし気が付いた時には人が集まり始めていた。ナナは人に臆することなく前に進み、華麗に宣言する。

 

「私……ナナは生きている! 死亡説は嘘よ!」

 

 そして自分がナナであることのアピールのために僕をボールから出す。それに周りはザワザワと騒ぎ始める。そんな中で一人の男がナナの元に駆けてきた。

 

「ナナさん!」

「ベアルン。丁度良いところにきたわね。私はお腹が空いたわ」

「今すぐに!」

 

 見事なタイミングでベアルンがやってきてナナをテレポートで連れていく。恐らくカイヨウシティ周辺はちょっとした騒ぎになっていることだろう。

 

「しかし驚きましたよ! メアは拉致! ナナは死亡したという記事が出回ったんですよ」

「まぁ私は色々とあったけど生きてるわ」

 

 ナナは出来た料理を端から食べていく。そこに一切の品はない。まるで掃除機のように料理を吸い込んでいく。しかし食べながら普通に喋っているのだから器用なものだ。

 

「あとメアの拉致について聞きたいわ。」

「世間一般ではゴォー団のアジトに乗り込んだ結果としてゴォー団の使うカラマネロに催眠で拉致されたことになってます。そもそもゴォー団のアジトに乗り込んだってなにをしてるんですか……」

「まぁそれはあとで説明するわ。他のゴォー団関係の顛末をお願い」

「とりあえずゴォー団は幹部のマリアとアカイを捕縛。また団員名簿も入手して残りの団員も近いうちに捕まる。しかしボスに関しては名前すら不明で存在しているかどうかも不明だとか……」

「キンランさんはしっかりと捕まえてくれたのね」

「ちなみに死傷者は……」

「それはいらないわ。聞いても暗くなるだけだもの」

 

 死傷者か。それもそうだ。アジトが完全に沈んだんだ。少なくない人数のトレーナーやポケモンが死んでいてもおかしくない。

 

「国際警察はどうなった?」

「国際警察? そんな単語は出てませんよ。ボランティアでゴォー団のアジトに乗り込んだのではないのですか?」

「なるほど……国際警察は飛び火しないように最初から無関係だったことにしたわけね」

 

 一度不信感が生まれたら信用を失い。国際警察の力が弱まる。当然といえば当然の処置で合理的か。ここで国際警察の名前を出しても利点はなに一つない。もちろんナナも理解しているようで口に出すことはない。

 

「ごちそうさまでした」

「お粗末様です」

「これで完全復活よ。それじゃあキンランさんの元に行きましょう。詳しい話は彼女に聞いた方が早い。恐らく私の生存報告を見たら間違いなくカイヨウシティに来るはずだわ。だからメールしてカイヨウシティから動かないのが適切ね。そういうわけだからカイヨウシティに帰してもらっていいかしら?」

「はい」

 

 そしてナナはキンランさんに軽くメールで要件を伝える。それからカイヨウシティに戻って少しだけ買い物を済ませていく。海に流されて使えなくなったものも多い。まずは新しい携帯電話の契約。その後に新しい服を買いに前と同じお店に行く。

 

「ナナ様。 お待ちしておりました」

「……え?」

 

 そして店に入ると何故かVIP対応だった。ナナはこの店になにかしたのだろうか。僕はナナの方を見るがナナは首を傾げる。

 

「ナナ様が当店の服を着てくださったおかげで服の売り上げは倍近く伸びています。これは私達の感謝でもありません」

「そういうこと……」

 

 ナナの知名度って相当上がっているんだな。裏を返せばナナがそれほどまでに強くなったということ。もう彼女はデトワール地方指折りの実力者として認識されているのだ。

 

「それで本日の注文はなんでしょう?」

「ごめんなさい。ワケあって服が少しボロボロになってしまって新調したいのだけど……」

「そういうことですか。了解しました」

 

 そしてナナが店の奥の方に連れていかれる。それからスリーサイズを図られたりと色々とされている。これは一体……

 

「ナナ様の場合はオーダーメイドにさせていただきます。まずナナ様はこれからも旅をするのでしょう。恐らく派手に動き回り、険しい山道を登ったり、海底の奥深くに潜ることもあるでしょう。そのためには服の機能性が必要になります」

「そうね……」

「しかし、それに応えようとすると手間もかかりますし、素材も高価になるため商品としての販売は不可能になります。だからこそのオーダーメイドでの対応となります」

「でも……お金は?」

「これは投資です。私達はナナ様がチャンピオンになると確信しています。もしもチャンピオンになればナナ様は立派な広告塔となります。なのでお代は結構です。ただ私達の服でポケモンバトルをしてくださればいいのです」

「分かったわ。ならお言葉に甘えておくわ」

 

 そして数時間くらい待たされてナナの服が完成する。前と変わらない黒いロリィタ服。しかしスカートにはフリルが増えたり、肩はレースになっていたりと可愛らしさが増している。ナナは服を着て軽く跳ねる。それから間もなく驚きの声をあげた。

 

「すごいわ! 羽のように軽いし、動きやすい!」

「お気に召したようでなによりです。しかしそれだけじゃありませんよ」

「気づいてるわ。この服は防塵に防刃、それに耐熱や防寒までしっかりされてる。これならどんなに激しいポケモンバトルでも耐えられる。でもこれって下手したら数百万くらいしないかしら?」

「ナナ様にはそれくらいの価値があるということです」

「なんかここまで持ち上げられると怖いわね。でも、ありがたく服はもらっていくわ」

「ええ。なにかあったらまた寄ってください。それと今後も当店を贔屓してくださることを祈っております。それと今まで着ていた服は……」

「そうね……折角だから記念にもらっておくわ」

 

 そしてナナは店を上機嫌で後にした。新しい服を着て、テンションが大きく上がっている。それに前よりもナナが心なしか可愛く見えた気がした、いや元々可愛いのだが、それ以上に……

 

「ナナ!」

「きゃっ!」

 

 そんな時だった。ナナが背後から誰かに抱きつかれた。少しだけの驚きの声をあげるが、ナナは彼女の顔を見て安堵する。

 

「キンランさん」

「もう心配したのよ! あんな無茶はしないでもっと自分を大切にして!」

「でもラティオスが……」

「ナナが死んだら悲しむ人がたくさんいるのよ! もっと自覚しなさい! ポケモンよりもまずは自分の命を絶対に優先して!」

「……ごめんなさい」

「それじゃあ、とりあえず現状報告したいから人目のないところに行きましょうか」

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