目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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59話 現状とこれから

 キンランさんの案内で来たのは客が殆どいないBARだった。まず最初にナナにボールが三つ渡される。入っているのはムンナにスピアー、そして色違いのツタージャだ。

 

「ノエルからの預かりものよ。あの子だけはナナが生きてるって疑ってなかった」

「ありがとうございます」

「あとでポケモン達に謝っておきなさい。この子達は相当怒ってたわよ」

「怒ってる?」

「それだけ懐かれてるってことよ。幸せ者ね」

 

 そしてキンランさんがワインに少しだけ口をつける。恐らく話の本題はここからなのだろう。まだゴォー団の問題は解決していない。

 

「あと幹部のマリアはしっかりと私が捕まえたわ」

「そうですか」

「でも数日もしたら保釈されるでしょうね」

「どうしてですか!」

 

 ナナが驚きの声をあげる。今までは証拠がないから捕まえられなかった。しかし今回は明らかに現行犯逮捕だ。それなのに数日で……

 

「まずゴォー団に所属していただけでダークポケモンに彼女が関与した証拠が得られなかった。そして次に彼女は大金持ちで金の力でどうにでも出来る」

「そんなのって!」

「これが現実よ。あの女は強すぎる。トレーナーとしてはもちろんだけど自分の保身の立ち回りが上手い。あれを正当法でどうにかするのは無理よ……」

「なんですか……それて、」

「続いて本題のメアの話。あれは厳密に言えば拉致じゃない」

「え?」

「今回ゴォー団のボスの情報は一切得られなかった。だからメアは拉致されたフリをしてもらって侵入したのよ」

「なんでメアが!」

「というより気が付いたらそうなっていた。私達もメアがワザと拉致されたと知ったのは一連のゴォー団のことが終わったあとの手紙だもの」

 

 つまりメアはゴォー団どころか僕達も騙したのか。メアが自主的に動いてゴォー団のボスの情報を掴もうとしている。なんて女だ。可愛い顔して、この場にいる誰よりも頭が回って恐ろしい女じゃねぇか。

 

「恐らくメアは誰よりも先にゴォー団のボスがいないことを察した。だから身内すらも騙して侵入という大規模なことを考えた。そして無事に成功させてメアの作戦通りに物事は進んでいる」

 

 ナナの元に顔写真が一つ渡される。見覚えのある顔だ。これほど強烈な人物を忘れるはずがない。

 

「名前はラルム。ゴォー団のボス。そして追加資料で彼はナナと同じダークライを持っているトレーナーで……狙いはダークライの病気を治すこと。そしてその狙いは果たされてゴォー団は必要なくなったから私達にアジトの情報を流して潰させた」

「どうしてそこまで知ってるのですか?」

「全てメアが流した情報よ。もしも全てが合っていたら私はメアが恐ろしいわ」

「恐ろしい?」

「まだ十二歳の少女が国際警察が必死になっても得られなかった情報を意図も容易く入手して、さらに悟られることなく発信した。あまりに異常な光景。しかもメアは誰にもそんな芸当が出来ることを悟らせなかった。ハッキリ言って天才の域を超えて恐ろしいレベルよ。ねぇナナ。彼女は何者なの?」

「普通の女の子かと……」

「一つ言っておくわ。もしも彼女が本気でポケモンバトルをしたら誰も勝てない。ナナやノエルはもちろんだけど、私はメグ。それにカナタでも相当難しいと思うわ」

「バトルの才能とそれは別では?」

「……直感よ。ただメアが目指すのはトップアイドル。だからポケモンもバトル専門に育てているわけじゃないにも関わらずあの強さよ?」

「……」

「まさか一番とんでもないのがナナでもノエルでもなくてメアだとは思わなかったわ。恐らく全てがメアの思惑通りに進んでるのでしょうね。それにこうとも書いてあったわ。恐らく仮想戦闘祭でラルムはナナに正体を明かしている……と。それに関してはどうなの?」

「口止めされてるから言えませんとだけ」

 

 そこまで感付いたのか。それともラルムと親密な関係になって吐かせたのか。どちらにせよメアは情報を入手して、こちらに流したのは事実だ。

 

「ただ肝心のメアの現在地は不明。こちらもメアの奪還は不可。そしてメアも自力で抜け出すのは不可能という状況よ。言うならば『囚われのお姫様』ね」

「メアを助ける手は……」

「ないわね。ただメアからなんかしらのアクションがあるはず。だからナナはその時に問題なく動けるように強くなりなさい。具体的に言うならジムバッジを7つ集めて。8つは私がいるから無理だと思うけど」

 

 これからはジム巡りか。今までみたいにのんびり鍛えるわけにもいかなくなった。なるべく早く強くならなければならない。そして強くなるにはジム戦をするのが一番手っ取り早い。

 

「はい!」

「それともう一つ。カイヨウシティで三日後に『スピアーカップ』が開かれることになったわ」

「スピアーカップ?」

「ルールは簡単。スピアーに乗って一番早くシノノタウンに着く。簡単に言うならレースよ。だけど自分のスピアーで他人のスピアーへの攻撃はあり。そして優勝者には『スピアナイト』が与えられる。その意味が分かるわね?」

「……メガシンカですか」

「使う使わないは後にして、強くなる手段の一つとして持っておきなさい」

 

 そしてキンランさんと別れた。ナナはベアルンと合流して再びテレポートで彼の部屋にいる。ナナはベアルンに全て話した後に彼につまみを作ってもらい、それを食べながら本を読んでいた。本のタイトルは『足りない速さ! 補います!』というもの。

 

「……素早さを上げてからバトンタッチ……インドメタシンを飲ます……そんなことは8歳の時から知ってるのよ!」

 

 ナナが本を投げる。どうやら望んだ回答は得られなかったらしい。ていうか普通に高度な内容だと思うのだが……

 

「はぁ……そもそも素早さ上げてバトンタッチとか読まれるし、成功するなんて稀。インドメタシンに関してはノーコメント。ベアルンがポケモンの体作りの一環として料理に使ってくれてるという話は聞いたけど……」

 

 マジかよ。完全は初耳だったんだが……僕達ってドーピング剤を飲まされていたのかよ。もっともインドメタシンがどんなものか知らないが……

 でもベアルンの食事を食べると体から力がみなぎるのはそういう理屈だったのか。

 

「真面目に考えましょう。まず手っ取り早く速くするなら『こだわりスカーフ』を持たせるのが無難。だけど、それだと技が一つしか出せなくなる。今回のルールだと妨害もあり。それを考えると技の固定は痛い……まず原則として『こうそくいどう』を使うのは当たり前で……そこから一気にゴールを目指す、相手のスピアーを全て倒すの二択で……」

 

 ナナがボソボソと呟く。そこから先は少し内容が高度過ぎて分からない。ただナナのことだから確実に勝てる作戦を組むだろう。それに今回はスピアーしか使えないのだから僕の出番はない。ボールの中から観戦でもしておこう。

 

 しばらくして作戦も無事に決まったようでナナは風呂に入って歯磨きをした後に眠りについた。

 




現在の状況

ナナ『無事。これからメア救出の日に備えて修行』
メア『拉致。現在身動き不能』
ノエル『無事。ナナと同じく修行に専念』
ボルノ『国際警察としてメアの行方の調査』

ゴォー団『ほぼ壊滅』
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