目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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65話 悪と男とポケモンの御伽噺

 どこか深い海の底。むかしに水の民によって作られた海底神殿アクーシャというものがありました。そこには海の王冠があるとかないとか言われています。しかしそんなことはどうでもいいのです。今回大切なのは海底神殿アクーシャというのは海流に乗って常に移動しており、それは皆既月食の時にしか人の目で見ることが出来ないという点、そんなの悪の組織の隠れ家にはピッタリではありませんか?

 

 そしてもう一つの仮定を追加しましょう。もしも誰かが海底神殿アクーシャの作り方を知っていて、作ることが出来るとしたら?

 

 さて、長々と話しても仕方ないので結論から言いましょう。どうやって知ったのかということは置いといて、今の時代は海底神殿アクーシャの模造品が作られ、それを拠点にする悪の組織のボスがいます。その男の名前はラルム。彼は現在は『メア』を連れて『レプリカ』と名付けられた海底神殿に立てこもっておりました。

 

「……ここは海の底。脱出は諦めるんだな」

「最初から逃げも隠れもする気はないよ。逃げる気ならとっくに逃げてる」

「生意気だな。まぁ気分が良いから今は許そう」

 

 しかし不思議とラルムに怒りは湧いてきません。海底神殿レプリカにはどこからか幻想的な音楽が流れています。それはメロエッタの音楽。メアは拉致されると同時にメロエッタを透明化させて音楽を奏でさせました。

 

 そしてメロエッタの音楽は感情を操ることが出来ます。それにメアはラルムを良い気分にさせて全ての情報を吐かせました。そんな中でメアに一つの問題が出来ました。

 

 それは『ラルムのしたことは悪いことなのか』というもの。

 ラルムはダークポケモンを作り出した。それはメアも疑うことなく悪だと思っている。しかし彼の動機はダークライを救うためだった。愛のために世界を敵に回す覚悟をしたのだ。彼は『有象無象のポケモンよりダークライを選んだ』だけ。その選択自体は悪だったのだろうかと。

 

「……それならどうして逃げない?」

「それは……」

 

 逃げようと思えば逃げれる。それでもメアは何故か逃げる気にはならなかった。逃げないのはラルムへの同情か。それともラルムが捕まってほしくないと判断したからか……

 

「分からないんだな」

「ただ私がいればナナやノエルが来る。私はナナ達が貴方と会話して、どう思うのかしりたい。はたして貴方を悪として罵れるのか……良くも悪くも、それはナナのためになると思うから」

「随分と偉そうな言い方だ。まるで自分だけは上の存在と言いたげだ」

「違うわね……私がナナに貴方の処遇の判断を委ねたいのかもしれないね」

「まぁいい。とりあえず俺は誰が来ても潰す。返り討ちにする。それだけだ。ここで俺が逃げないのは善意だと思え。お前の問いかけに応えてやるための」

 

 そしてラルムはボールを眺める。中に存在しているのはカラマネロ。ゴゥー団の幹部を務めていたポケモン。彼はそんなカラマネロに向かって舌打ちする。

 

「くそっ……お前が小娘の歌にさえ魅了されなければ」

「気晴らしに一曲歌いましょうか?」

「別にそれはいい」

「あら残念」

「……ウソだ。やっぱり一曲だけ頼む」

 

 そしてメアはいつものよう歌う。彼女の歌は悪の組織のボスさえ虜にする。それほどまでにメアの歌は魅力的で、魔法と呼んでも差し支えないレベルまで上がっていた。

 

***

 

「これは?」

 

 その頃の悪夢姫ことナナ。彼女はご存知の通りジムバッジを四つ集めてメガシンカの勉強をしようとしていた。そんな中で彼女に手紙が届いた。ナナは手紙を見る。そして手紙の内容に驚愕する。

 

「……マリア。ほんとに捕まらなかったというの?」

 

 そんな手紙を読んでるナナをボール内部から不安そうに眺めているのは彼女の相棒と言っても差し支えないダークライ。そしてダークライはマリアからの手紙だと気付くと怒りを露わにする。それから一人で深く考え込んでいた。ナナはダークライが考え込んでいることに気付くが、いつものことだと無視をする。

 

「マリアって……あの二ロロノクス社の社長じゃないですか!」

「表向きはそうね。でも本当の姿はゴォー団の幹部よ」

「え! ちょっと待ってくださいよ! そんな大物がゴゥー団と関与? いったいどうなってるんですか!」

「私に言われても知らないわよ……」

「しかも二ロロノクス社ですよ! アローラ特有のエネルギーを解明して世界各地でZワザを使えるようにしたという……」

 

 ナナと一緒にいた赤髪の男性が驚き混じりの声を挙げる。それに対してナナは知ってるわよと言いたげに流す。ベアルンの言っていることは事実だ。ゴゥー団の幹部のマリアはZワザのメカニズムを完全に解明することで巨万の富を築いた。それにより様々な事業を展開して、会社を世界レベルまでに拡大。今では知らぬものはいない存在だ。

 

「Zワザの解明が六年前。そしてラルムがダークライ復活のためのエネルギー研究を始めたのは十年前……もしかしたら逆なのかもしれないわね。大物がゴォー団になったんじゃない。ゴゥー団から大物が現れたのよ」

「待ってください! それじゃあ手紙ってゴォー団から……」

「そうよ」

「これって危険なんじゃ……」

「どうかしら? ただ、本気で私に仕掛ける気なら名前なんか書かないでしょうね」

「つまり?」

「今のところは敵対する気は無し。でも私の対応次第では殺されるかもしれないわね」

「殺され……る?」

「相手はゴォー団。人殺しくらいなら平気でやるわ」

 

 そしてナナは頭を悩ませる。マリアの元に行くか、それとも手紙を見なかったことにするか。また同時にナナは思った。どう転んでも良いことにはならない。

 

「そんな人間がナナになんの用なんですか?」

「相手の目的が分かったら苦労しないわよ……それに手紙に同伴者も二人まで許可されている」

「ナナ。誰を連れていくんですか?」

「そうね……今の私じゃポケモンバトルに勝てないからキンランさん。それに一人は国際警察の知人でも連れていくわ」

「え! 国際警察に知り合いがいるんですか!」

「そのくらいいるわよ……ベアルン。悪いけどまた留守番を頼むわ」

「分かりました。美味しいものを作って待ってますよ」

 

 そしてナナの方もゴォー団に本格的に巻き込まれようとしていた。世間では壊滅されたとされるゴォー団。しかし実際は違う。むしろこれからと言っても過言ではないだろう。

 




これで五章は終わりです。
いつも通りエピローグはサクッと今後の流れを匂わせて、短めにしています。
また昨日は更新出来ずにすみませんでした。最終話までの構成は既にあるのですが、この時期は私のリアルが忙しくなる時期のため、執筆する時間が得られないことが増えてしまいます。そのため今後も更新出来ない日が出てくるかもしれませんが、よろしくお願いします。

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