目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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69話 Next Stage

 ナナは目を覚まして夕食を食べる。あれからキンランさんはジムの仕事があるので一度帰宅した。この場にいるのはナナとボルノとマリアだけ。そして眼の前には今まで見たことないような豪勢な食事……

 

「ナナはこれからどうするの?」

「……決めてません」

「それならこれに行ってきなよ。おそらくレベルアップに良いと思うわ」

 

 ナナの携帯に一つの記事が投げられる。その記事によるとハクガ山付近に出没してるトレーナー狩りの通り魔とか。しかも負けたトレーナーはポケモンを全て奪われるとか書いてある。なんて物騒な……

 

「少し逸れるけどイッシュ地方にプラズマ団という組織がいるのよ」

「プラズマ団? それってなんです?」

「ゴォー団に似たようなものよ。そのプラズマ団にいた強い団員。名前はドクソノというのだけど彼のすることは過激すぎて報道規制で名前すら語れることのない男。そいつがデトワール地方にやってきた」

「え!」

「まぁヒーローウルトラによって制圧されて三年前にメラオ大監獄にぶち込まれました。めでたしめでたし」

「なら関係ないじゃ……」

「しかし不幸かな。少し前にメラオ大監獄を私達が襲撃した時に彼も逃げ出しました」

「なにやってるんですか!」

「メラオ大監獄なんて歴史から抹消されるような極悪人だけが送られる収容所。一人でも逃がしたら大問題。だから絶対に報道は去れない。でもウルトラとか国際警察が血反吐を吐きながら走り回ってるじゃないかしら」

「……ボルノ」

「マリアの言うことは全て本当だ。逃げ出したのは十八名。そのうち現在は十三名を既に逮捕している。ただ残りの五名は……」

「あら、国際警察がそこまで言っていいのかしら」

「構わない。内部でも悪夢姫ナナにも事情を話して協力を仰ごうという話も出ているくらいだしな」

 

 逃げ出した悪党達か。おそらくナナが会わなかったのは事件が起きてるルートを避けて旅をしていたからだろうな。名前が分からなくても事件が起きた場所くらいは把握されるからな。

 

「それじゃあ話を戻すわ。このトレーナー狩りの通り魔。恐らくプラズマ団のドクソノよ。もっとも三年も監獄に入れられていたら除籍されてるだろうから元という言い方になるでしょうが」

「……それに行けと?」

「安全の確保されたポケモンバトルなんて温いわ。そんなの積み重ねても強くならない。強くなりたいなら命のやりとり。死と隣り合わせのポケモンバトルをしなさい」

「嫌です。私は自分のポケモンを危険に晒したくない」

「私達のアジトに乗り込んできてよく言うわ。それにあなたのポケモンを危険に晒さないなんて不可能よ。あなたのダークライを欲しがる人は星の数ほどいる。自分で攻めるか攻めないかの違いしかない。幻や伝説のポケモンを持つトレーナーが平穏に暮らせるわけがないじゃない」

「それは……」

「私の話をしましょうか」

 

 それからマリアは語り始めた。自分の過去の話を……

 

「まず私は十六の時に父に連れていってもらった南の孤島で初めてポケモンを捕まえた。それがラティアス」

 

 ナナのボルノも静かに彼女の話を聞く。マリアは自分の話を通してなにを伝えようとしているのだろうか……

 

「それからしばらくするとラティアスを狙って何人もの密猟者達が襲いかかってくる。それどころか弟もラティアスに目が眩んで私のポケモンを狙って夜な夜な襲いかかってくる。その怖さが貴方達に分かる? 家族すらも物欲に塗れた目を向けられる気持ちが」

「それは……」

「やがてラティアスは奪われた。それも私の弟が情報を流して……」

「ひどい!」

「その時の私は世界を恨んだ。そんな時にラルムという男が現れた。彼は私に言ったわ。助ける代わりに全てを渡せと。私はそれに従うしかなかった。私は弱かったから自分を守るためにゴォー団に入るしかなかったのよ。ラティアスと一緒に暮らすためには悪に生きるしかなかったの」

 

 少し重いな。まさかマリアにそんな背景があったとは。ずっと悩みの一つのなく人生を謳歌しているとすら思っていた……

 

「それからは麻薬にポケモン実験に強奪。場合によっては殺人もしたわ。もちろん悪の組織同士の抗争にも巻き込まれた。それでも私はラルムに守ってもらいながら必死に実戦で戦い方を学んだ。時が満ちてからは詐欺まがいのことをして父の会社も奪った。憎き弟も追放してやっと私はラティアスと平穏に暮らせる日々を手に入れたのよ」

「……そういえばラティオスは?」

「あの子は私が社会的な地位を確立させて暮らせるようになってから行ったラティアスの里帰りで偶然ゲットしたポケモン。まだ育成中よ」

 

 マリアの背景は分かる。しかしそれがなんだと言うのだろうか。同情してくれ。私は可哀想な悲劇のヒロインでなにも悪くないとでも言いたいのか?

 

「ナナ。力がなければ私みたいに全てを奪われる。もしも今の生活をしたいなら多少はポケモンを危険に晒しても自身のレベルアップをするべきよ。ゴォー団で色々なトレーナーと戦ってきて分かった。命の駆け引きをしてるトレーナーとしてないトレーナーじゃレベルが段違いなのよ。今よりも強くなりたいなら命を賭けなさい。あなたはその段階よ」

 命の駆け引きをしなければ強くなれないか。ほんとにそうなのだろうか。たしかに死と隣り合わせのポケモンバトルは大きく実力を上げる。それはエラニの森のトロピウスやゴォー団のアジトで戦ったラティオスで身に染みて分かっているが……

「……私はそんな強さ認めない」

「なら終わったあとで後悔するのね」

 

 そして夕食が再開される。しかしどこかナナは落ち着かない様子だった。恐らくナナ自信が一番自分の力不足を実感しいているはずだ。そして強くなるためにはポケモンを危険に晒すしかないと言われた。しかしナナはそれをしたくない。だから探しているのだ。第三の道を。

 

「……そういえばナナのムシャーナ。私のクソ弟のポケモンだったわね」

「違います。私のムシャーナです」

「皮肉なものね。弱いと思って捨てたポケモンがここまで強くなんて」

「あなたの弟は今どうしてるんですか?」

「聞かない方がいいと思うな。そもそもシノノカップ第三回戦が終わってから一度も彼の姿を見てない時点で察した方がいいよ」

「まさか……!」

「想像に任せるわ」

 

 マリアは不気味に笑う。敢えて口には出さないが全員がマリアはどうしたのか察した。こいつは紛れもなく悪の組織の幹部であり。それに相応しい行為をしてくる。そんな人間だ。

 

「ナナ。あなたから見て私の弟はどう?」

「話してて不快でしたね」

「気が合うわね。あそこまでのクズ。私も大嫌い。私は悪の組織だけど許せないことが一つあるのよ」

「なんですか?」

「自分に私利私欲のためにポケモンを扱い、ポケモンを道具としか見ない人。それが許せないの」

「ダークポケモンなんて作っといてなにを言ってるんですか!」

 

 このタイミングでナナが立ち上がった。表情から怒ってるのが見てわかる。それに対してマリアは涼しい顔をして話を続ける。

 

「あれは必要な犠牲だよ。ラルムは愛を選んだ。ダークライへの愛を。そんな彼を見て私は心打たれたのよ。ここまでポケモンを思いやられるなんてカッコいいなと」

「そのせいでどのくらいのポケモンが苦しんだと思ってる! お前達は私利私欲のためにポケモンを使ったじゃない! ポケモンを道具だと思ってるのは……」

「それを言うならナナはラルムを攻めれるの? ダークライのためだけに動いた彼を私利私欲のためにポケモンを扱ったといえるかしら?」

「それは……」

「たしかに理屈的には彼は私利私欲で動いた。それは間違ってない。でも私達には心がある。だから彼を絶対悪とは言えない。正論だから正しいなんてことはない」

 

 ナナが下唇を強く噛む。彼女は口で勝てる相手じゃない。それに彼女のネジはどこか外れている。恐らくまともに会話しちゃダメだ。

 

「特に『人間はポケモンの道具』だと思ってるナナにはよく分かるんじゃないかしら。ラルムは『ポケモンをポケモンの道具』とした。それはあなたの価値観的に悪? 善?」

「……悪。理由は分からないけど……ラルムのしたことは間違ってると思う」

 

 ナナが力なく呟く。それに彼女は満足そうに微笑む。まるで欲しい回答を貰ったかのような感じの顔だ。

 

「結局のところ善悪なんて上手く言語化出来ないくらい曖昧なもの。ねぇ……そんなものに縛られるのって馬鹿らしくない?」

「それは……」

「あなたは自分が悪だと思って悩んでいる。間違ってることはしてないのに何故?」

「分から……」

 

 この流れはマズい! 明らかに洗脳の類だ。もしもナナがマリアと会話を続けたら取り返しのつかないことになる! それこそ悪の組織の幹部格の人間になってもおかしくない。僕はボールから飛び出てマリアを押し倒す。

 

「ダークライ! なにをしてるの!」

「……ねぇダークライ。あなたはナナの幸せについて考えたことがある? 世界から歪んだ価値観を持つナナはこんな世界で幸せに生きれるのかしら?」

 

 僕は手に力を込める。この女の話に耳を傾けるな。早く黙ってくれ。そうしないとナナが取り返しのつかないことになる……

 

「世界が間違ってる。ナナが正しい。そんな世界に変えた方がナナは幸せだと思わない?」

「シルカッ!」

 

 明らかに間違ってる。自分の都合だけで世界を変えるなんてしていいわけがない。

 

「ねぇ……すっと思うのだけど幸せってなに? 幸せを求めるのはいけないことなのかしら? あなたにとってナナの幸せはなに?」

 

 幸せ。そんなのは……

 

「ルールを守って、はいはいと言うことを聞いてやりたいことも出来ないのは本当に幸せなのかしら?」

 

 その時だった。僕は強引にボールへと吸い込まれた。ナナが僕をボールに戻したのだ。そしてナナはマリアの手を掴み、一言だけ言った。

 

「私は幸せになります。私は大切なものを見つけた。ダークライにムシャーナにスピアー。そしてツタージャにドラミドロ。それだけじゃない。メアにノエルにボルノ……そしてキンランさんにベアルン……一緒にいたいと思える人達も出来た」

「そう……」

「世界を変えるとかどうでもいい。私は自分のポケモンや大切な人達といられれば満足。それ以上はなにもいらないんです」

「なら、それらが奪われたら?」

「死ぬ気で取り返します。ハッキリと分かりました。ラルムと私は同じ類の人間。私も彼と同じ立場なら同じことをする。ラルムは大切なものが奪われた私。だからこそ私はラルムと同じ過ちを犯さないように強くならないといけないんです」

 

 どうやら僕が思ってる以上にナナは大人らしい。ナナは自分の中で既に確固たる考えがあって、それを貫く意志もある。僕が不安に思う要素なんて一切ないんだ。

 

「……ずっと私はなんで負けたか考えてた。その答えがやっと分かりました」

「なにかしら?」

「自分が納得しないから世界を変えるんじゃダメなんです。だって世界はみんなの物だから。それはポケモンバトルも同じです。自分の中で完結させずにポケモン達としっかり向き合ってポケモンを頼る。それが出来なかったから私は負けた」

「なるほど……」

「ポケモンバトルが自分一人のものではない。それが理解出来ていなかったんだと思います。だから私はスピアーに少し頼る」

 

 ナナは小さな宝石を出す。真ん中には遺伝子のような模様が書かれている。まさか……

 

「スピアー。今度のポケモンバトルからメガシンカ。使うわよ」

 




The 補足 『強さについて』
ポケモンらしく1500スタートのレート換算で表記とする。
また強さは64話終了時点のもの。そしてこのレートはトレーナーの強さを表すものであるため、相手に有利なポケモンを使ったりすることで当然ながら格上を簡単に倒すことだってありえる。

チャンピオン カナタ2500
ゴォー団ボス ラルム2216

キンラン(ジムリーダー)2129
メグ(四天王)2136
アリス(四天王)2159
エンペラー(四天王)2214
ドルマ(四天王)2102
マリア(ゴォー団幹部)2054
ポポ(前年度ポケモンリーグ優勝者)1924

ウルトラ(ヒーロー)1936
ドクソノ(脱獄犯)1822
ニリン(ジムリーダー)1804
アーモンド(ジムリーダー)1793
クロバラ(ジムリーダー)1732
トケイソウ(ジムリーダー)1702
アザレア(ジムリーダー)1660
ブルール(国際警察)1604

ノエル1856
ナナ1732
メア1930
ボルノ1757
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