目が覚めたらダークライ。そしてトレーナーは可愛い女の子。   作:ただのポケモン好き

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70話 ゴゥー団の新幹部

 あれからナナは一人でハクガ山にいた。ナナは強くなるためにドクソノと戦うことを決めた。ナナの心情にどんな変化があったのかは分からない。しかしなにか思うところがあったのも事実だろう。ナナはボールを投げてスピアーを出す。

 

「いるのでしょう。ドクソノ」

「……ドクソノって奴は知らないが、俺がここに知ってるのに来るのは自分が強いという自惚れからか? 悪夢姫ちゃん」

 

 岩影から黒髪の男が出てくる。ギラギラとした凶悪な目でナナを見てくる。ナナはゴクリと唾を飲んで、戦闘態勢を整える。

 

「お前のポケモン渡せよ。ボールに閉じ込められたままなんて可哀想だろ?」

「お断りよ。あなたの狙いはなに?」

「俺は好きなんだよ……人からポケモンを開放して、トレーナーが目に涙を浮かべる様が。その後に足か腕とか切り落とし……」

「もう喋らなくていいわ。スピアー行くわよ!」

「スピッ(任せろ)」

「ああ……悪夢姫。その可愛い顔を傷つけてしまうのも良いかもしれない。そしたら世間様はどんな反応をするんだろうな?」

「ミサイルばり」

 

 ナナは容赦なくトレーナーへのダイレクトアタックを始める。しかし、それは目の前に現れたキリキザンによぅて防がれる。しかしナナは動揺の一つも見せない。

 

「こんな物騒な相手。絶対に関わるべきじゃないわね」

「ならどうしてここに来た?」

「あなたに言う必要はない……」

「遅い」

 

 その時だった。ナナの目の前にキリキザンが現れる。なんて早い動きだろうか。そしてキリキザンはナナの顔を斬ろうと大きく刃物で出来た腕を振りかぶった。

 しかしナナに当たることはない。何故ならスピアーが瞬時に戻りキリキザンの攻撃を受け止めたから。

 

「ポケモンっていうのはトレーナーを倒すと弱くなるんだけどなぁ……」

「ええ。だから私が倒れるわけにはいかないのよ」

 

 そして激しい技のぶつかり合いが始まる。キリキザンの攻撃を全てスピアーがお尻の針で受け止めている。しかし少しスピアーが押され気味だな。相手はナナと同レベルの強者か。そう思いながら僕はボールから出てナナの方に飛んできた矢を払う。

 ドクソノの方を見ると吹き矢を構えていた。相手はトレーナーに直接攻撃を加えてくるのか。もしも僕の反応が遅れたらナナが怪我をしていたところだ。

 

「ダークライ。信じてたわよ」

 

 しかしナナは動揺の一つも見せない。このポケモンバトルでナナは一切の指示を出さずに冷静に見ていた。明らかに今までのナナとは違う。ナナはなにを考えてる?

 とりあえずここで僕がドクソノを倒せば……

 

「私達がやるのはポケモンバトル。あいつらと同じ土俵に入る必要はないわよ。ダークライ」

「デモ……」

「今は黙って私に従いなさい」

 

 ナナが圧をかえてくる。僕もそれに不服ながら黙る。そしてナナはボソリと呟く。

 

「私に足りないのはポケモンを信じるということ。もしも私がルール無用で殺気溢れた相手にビビらなかったら、それが出来るようになると思わない?」

「マサカ!」

「この勝負で私は一切の指示を出さない。全力で私を守りなさい」

 

 まさかナナは自分の命を賭け金にして修行しているのか! たしかに動揺の一つどころか指示も出さずに勝てたら、それは自分がポケモンを信用出来ているという確かな事実として残るだろう。それでもいくらなんでも危険すぎる!

 

「どうすればダークライ達を信用出来るのか私には分からない。だけど信用しないと出来ないことを成し遂げたら出来るようになったということでしょ?」

「危険ダ!」

「どうして? みんなが私を守ってくれるでしょ。それに私が怪我をしても自己責任。あなた達を責めたりしないし、気にすることでもないわ」

 

 その時だった。キリキザンが吹き飛ばされた。スピアーのメガホーンが見事に当たったのだ。明らかにスピアーの方が押され気味だった……どうして……

 

「スピッッッッ!(ナナには傷一つ付けさせねぇ!)」

 

 いや、理由を求めるのは野暮だな。スピアーはナナへの想いで成長した。それだけだ。高ぶる感情はなにかを成し遂げたいと思う想いは時に大きな力を与える。

 しかしキリキザンはすぐに起き上がる。大したダメージにはなっていない。これは僕も加勢した方が良さそうだな。

 

「スピアー。手を貸そう」

「ああ……頼むぜ!」

「うむ。とりあえずお手並み拝見といこうか」

 

  僕は念じてキリキザンの足元に影の結晶を槍として生み出す。段々とイメージも明確になってきた。影さえあれば簡単に生み出せる。もっとも技と呼ぶにはあまりにお粗末で威力も足りないためポッ拳の域を出ないが、汎用性は高い。影の結晶は壁となり、その場に残りフィールドの制圧にも使える。

 

 だが、キリキザンはそれを意図も容易く切り裂き、こちらに接近してくる。問題は耐久性の無さか。少しの衝撃で簡単に壊されてしまう。ここは要改善だな。そして近づいてきたキリキザンはこちらに切りかかってくる。僕はそれを後ろに下がって回避。そしてダークホールを放って眠らせる。これで終わりだな。しかし相手は相当な手練れだと言っていた。これだけだとは思えない……

 

「あれ? ダークライ。お前の特性のナイトメアが発動してないぞ」

「そうなのだ……何故か最近は発動しないのだ」

「うむ……」

「ああ。情けない、これだけの攻撃で負けるとは情けない。だから弱いポケモンは嫌いなのですよ……おい、起きろよ」

 

 それによりキリキザンは恐怖を浮かべながら目覚める。こういうスタイルのトレーナーか。相手にするのは少し厄介だな。

 

「そもそもキリキザンは野生で捕まえたポケモン。私の本来のポケモンを使えば……」

「もう終わりよ」

 

 ナナが静かに口を開いた。ナナの手元にはキリキザンのモンスターボール。そして後ろにはムシャーナがいる。ナナはキリキザンのボールを地面に置くと遠慮することなく足で踏みつけてボールを破壊した。

 

「ああああああああ! お前! ふっざけんなよ! ぜってぇにゆえるさねぇ!」

「モンスターボールにポケモンを閉じ込めたままなんて可哀想って言ったのは貴方。だから私はボールを壊して開放してあげただけじゃない……」

「てめぇ! ぶっ殺して……」

 

 その時だった。ドクソノがドサッと倒れ込んだ。少し服がめくれて見えた腹に小さな拳痕が一つある。それと同時にナナの顔色が一気に変わる。僕も肌で分かる。明らかに別格のヤバいやつがいる。それこそ下手したらゴゥー団の幹部格クラスだ。それにキリキザンを攻撃したポケモンすらわからなかった。そんな時だった。ドクソノが何者かの回し蹴りで意識を刈り取られた。

 

 そこには仮面をつけた少女がいた。その少女はヤバいと本能が訴えかけてくる。間違いなく逃げた方がいい。何故か僕の体は本能的に身震いを始めていた。

 

「ドクソノ。ある目的でプラズマ団に入った変態。その目的はポケモンの開放を免罪符に人から奪うことに興奮する特殊性癖者。そんな信念の欠片も無い人間がナナに勝てるわけないじゃん。ていうかドクソノと関係ない別人だし。もっとも彼はドクソノについて知ってるみたいだけど……」

 

 その声に僕は戦慄した。よく聞いた声。なんで彼女がここにいる。僕の脳内も混乱していた。ナナも彼女の正体に気付いたのか動揺を見せる。

 

「こんばんは。元ゴゥー団のボスの側近を務めているメアだよ。久しぶりだね! ナナ!」

「……メア。これはどういうこと?」

「悪と男のポケモンの御伽噺。物語は常にハッピーエンドであるべきかな」

「答えて! それにドクソノじゃないってどういうこと!」

「それなら分かりやすく言うね。この男はドクソノじゃない。ただのチンピラ。時期と手口が一致したから勘違いしたのかな。というより意図的に似せていた?」

「ていうかメアがどうしてラルムの側近をしてるのよ!」

「私はラルムの味方になると決めたんだよ。イメージとしてはゴォー団の幹部的なポジションになるのかな。まぁゴゥー団自体が楽して強くなろうとするやつらの集まりだから私もゴォー団は嫌いだけどね」

 

 それと同時に後ろからパンチが飛んでくる。僕はそれを反射的に反応して避ける。しかし腹に激しい痛みが走った。まさか同タイミングでも攻撃だと! しかし姿は見えない……まこれは透明化か!

 

「メロエッタ。そのままインファイトだよ!」

「メロ♪(ごめんね♪)」

 

 メロエッタの連続的な攻撃が僕を襲う。明らかに前よりも重い。レベルが段違いで上がっている。そして連撃が終わる頃には体中が痛む。なんて重い攻撃……

 

「メロメロ!(今回は私の勝ち!)」

「メア。これはなんの冗談?」

「ポケモンバトルだよ、話し合うよりそっちの方が分かるでしょ?」

 

 そしてメアは笑顔でナナにポケモンバトルを申し込んだ。

 




少しドクソノ(仮)とのバトルシーンが呆気なく終わりすぎたので改稿をしようとしていたら遅れました。また改稿を繰り返してもドクソノ(仮)を強く書けなかったので、これはドクソノ(仮)の運命なのだろうと思い、そのままにすることにしました。
また次は少しだけ百合要素あるので注意です。
そしてタグ付けしてない理由は次の後書きで書きます。

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